時は来た。
さあ、始めよう。
選ばれしポケモントレーナー達による、世界最強の座を賭けた戦いを。
集え、このヨハロ地方に。
マスターリーグという名の宴を、始めよう。
COM マスターリーグ篇
第1話
頂上の戦いの幕開け
Phase.1 マスターリーグへの想い
俺は今、船の上にいる。
トーホク地方の最東端に位置する小さな港町、シズキタウンから出港した船だ。
目的はこの船の行く先、トーホク地方最大の港町・マラギシティ。
…から出航する『伝説の地』こと、ヨハロ地方へ渡るためだ。
今から3年前、俺はジョウト地方で2度目のリーグ制覇を達成した。
あれから今日に至るまで、俺は必死に特訓を続けてきた。
これから俺が戦う事になる、マスターリーグ。
そこは、想像を絶する強敵達が揃う過酷な戦い。
この先どんな出来事が待ち構えているのかなど、想像できる筈もなかった。
やれるだけの特訓は積んできた。
今の俺に出来る事は、その成果を十二分に発揮する事だけだ。
どんな強敵が待ち構えていようとも、必ず勝ち抜き優勝する!
そんな決意を胸に秘めながら、ここまで頑張ってきたのだから…。
やがて船は、目的地であるマラギシティに到着した。
今から4年前、この町は『終焉の道標<エクストレーム>』の幹部・ヒマザの手によりほぼ壊滅状態に陥った。
だが、今見る限りでは復興は大分進んでいる。
以前の面影は無いが、地方最大の港町としてはちゃんと機能していた。
そして、ポケモンリーグトーホク大会の舞台ともなったスタジアム。
あそこも以前破壊されてしまったのだが、すっかり再建されている。
いや、前よりも立派になったようにも見えた。
そして同時に蘇る。
4年前のトーホク大会を戦った時の記憶…。
アヤ、そしてユキヤ…。
並居る強敵・ライバル達に打ち勝ち、俺は優勝した。
そのライバル達が、これから行く先で再び俺の前に立ち塞がるかもしれない。
だけど、俺もここまで来て負けたくは無い。
アヤやユキヤが相手だろうが、負ける訳にはいかない。
気が付けば、俺は右手で強く拳を握り締めていた。
「よし…。行くか」
独り言のように俺は呟くと、今迄乗っていたのとは別の船の停泊する場所へ向かっていった。
Phase.2 上陸
ヨハロへ向かう船は、とても大きかった。
カントーとジョウトを結ぶ便でもある『高速船アクア号』や、ホウエン地方にある大型船『タイドリップ号』と比べても、この船の大きさは桁違いだった。
特筆点を挙げるならば、まずこの船自体が小さな一つの町のような機能を持っているということ。
ポケモンセンターは勿論の事、様々な店が並んでいたりと、本物の街中のような光景だった。
それだけこの船は大きかった。
まあ、頂点を決める戦いに赴く者達の乗る船だから、別段違和感は無いが…。
やっぱり、最初はこの船の中の光景に圧巻だった。
その場の雰囲気に呑まれそうだったので、一先ず俺は甲板に足を運んだ。
するとそこには一般的な公式試合で使われるようなバトルフィールドが、複数用意されていた。
そして、今も何人かのトレーナーがバトルを行っている。
流石に各地の大会を制覇しているものだけが乗る船だけあって、乗客全員のレベルは高い。
今の俺だからこそ勝てるレベルだが、昔の俺では到底敵わないレベルのトレーナーばかりだ。
だが、ヨハロに着くまで大分時間が空いている。
それまでのんびりしていては、ポケモン達も身体が鈍ってしまう。
3年間の特訓の成果を試す意味も含めて、俺は近くにいた一人の青年にバトルを申し込んだ。
相手の青年は、武人(タケト)と名乗った。
突然赤の他人である俺からバトルを挑まれたにも関わらず、快く挑戦を受けてくれた。
中々の好青年という印象が強かった。
バトルは、3VS3のルールで行った。
先程のバトルの結果は、ダウンポケモンの数が2−3で俺の勝利に終わった。
だが、タケトはまだ全力を見せてないように感じた。
それでギリギリ勝ちという事は、あいつが全力を見せたら…。
間違いなく、マスターリーグで大きな壁になる。
このバトル一つで、俺はまだ弱いほうなのだと実感してしまうほどだった。
一先ず俺はこの船の中で割り当てられた自室に戻った。
先程のバトルで少し疲れが出たのか、ベッドの上ですぐに眠りに就いた。
しばらく睡眠をとった後、俺はベッドから身体を起こした。
すると、甲板のほうから何やら賑やかな声が聞こえてきた。
とりあえず気になったので、俺も甲板に足を運んだ。
甲板にある手摺から身を乗り出すと、船の行く先に巨大な大地が見えてきていた。
「あれが…、ヨハロ地方か」
先程の声は、あれが見えてきたからだったのかもしれない。
そして同時に、遂にこの時が訪れたのだと実感した。
世界最強の座を賭けた戦いの幕が開く時が来たのだと。
Phase.3 懐かしき再会(1)
私がここ、ヨハロ地方の玄関口とも言える町『アロナシティ』に到着したのは2〜3日前。
ホウエンとシンオウ、その二つのリーグを何とか制覇してここまで来れた。
彼とは、4年前別れたっきり会ってないし、連絡も取ってない。
だけど絶対にここに来る。
そう信じて、私はここで大会が始まるまでの日常を過ごしていた…。
最初に私が船を下りて街中に入った時、丁度バトルが行われてるところだった。
沢山の人だかりが出来ていたけど、私も何とかバトルの様子を眺められるポジションを獲得できた。
そうしたら…。
凄いとしか、言い様が無かった。
戦っている2匹のポケモンのどちらもが、とてつもなく強かった。
攻撃力・速さ・防御力。
そのどれを取っても、私が今迄見てきた中ではトップクラスの実力だった。
「凄い…」
単純な台詞だったけど、今の私にはその言葉しか出てこなかった。
昔、ある人からこの地方の人達はみんなレベルが高いって聞いたけど…。
『百聞は一見にしかず』とは、まさにこの事だと思ったわ。
話に聞いてたよりも、戦いの迫力なんかが全然違ってた。
負けてられないと思った。
多少の無謀は覚悟の上で、私は近くにいたトレーナーにバトルを挑んだ。
「バクフーン、行くよ!!」
私は、最初から全力でバトルに臨んだ。
だけど…。
ドサッ
「…っ、嘘でしょ…」
『多少の無謀』だなんて、甘かった。
無謀どころか、命知らずと思われても仕方が無かった。
私の相棒のバクフーンが、全く歯が立たなかった…。
これじゃ私はおろか、『アイツ』でもマスターリーグの優勝は難しいとすぐに感じた…。
…だからこそ、私は使う事にした。
ここのトレーナー達にも引けをとらない、私のバクフーンの最強能力。
これを使い始めてからは、何とかここのバトルにも付いていけるようになった。
「これで、何とかマスターリーグでも戦えるかな」
ポケモン達をボールに戻すと、私は港の方に足を運んだ。
今日は、また船がこの町に寄港する日。
別に期待しているわけじゃないんだけど、『アイツ』がその船に乗っていないかどうかを確認したかった。
既に船は港に到着していて、何人もの乗客たちが船から降りてきていた。
今のところ、『アイツ』らしき人影は見当たらない。
ううん、もしかしたら見落としてるのかもしれない。
あれから何年も経ってるんだし、見間違えるくらい身体が成長しててもおかしくなかったから。
だから私は、必死に叫んだ。
『アイツ』の名前を。
この船に乗っているという事を信じて。
…そして、その時が遂に…。
「誰だ?」
船から下りてきたばかりの一人の青年が、声を出した。
背丈が少し大きくなってるけど…。
あの髪の色と、懐かしいこの声。
……間違いない。
「おーーい!!」
私は気が付けば、大声を出しながら手を上に振っていた。
先程の人影も、私のところに歩み寄ってきていた。
「………久し振り」
私は一目で解った。
彼が、マサシだという事が…。
「ああ、本当に久し振りだな。アヤ」
懐かしい再会を果たしたところで、二人は落ち着ける場所へ移動した。
ぶっちゃけ、ポケモンセンターなんだけど(何)。
円形のテーブルを挟むようにして、2人は向かい合って座っていた。
「それにしても、本当に久し振りね。4年前に別れたきりだったっけ」
「ああ。そう言えば兄貴から聞いたんだがお前、3年前に一度フヅカタウンに戻ってきたそうだな」
「え?あ、うん。少し休暇をとって、その後またシンオウに行ったんだけどね」
「2〜3日のニアミスってのは本当だったか」
「?」
「俺も、フヅカタウンに帰ってきたのが3年前だ。しかも、お前がシンオウに旅立ってから2〜3日の入れ違いだったそうだ」
「嘘…」
アヤは一瞬、口を手で覆った。
驚愕の表情が丸解りだった。
「それにしても、お前も随分大人っぽくなったな。性格は別にしても…」
マサシはマサシで、アヤの姿を見て驚いていた。
背丈はともかくとして、身体が大分大人びてきていたのだから。
特に、昔と比べてむn(ry)。
おっとっと。
ここいらで解説は自粛しておこう(何)。
「ねえ、性格は別にしてもって…どういう意味よ?」
「昔とあんまり変わってないって意味だ。まあ、そう簡単に性格なんて変わるものじゃないけどな」
「…むぅ」
「それより、ここに来るまでにしっかりとポケモン達は鍛えてあるよな?半端なレベルじゃ、ここの連中には太刀打ちできないだろうからな」
「その点は大丈夫よ。今日までに何人かとバトルしたけど、何とか勝てるくらいにまでレベルを上げることは出来たわ」
「そうか。じゃあ、俺も一回くらいバトルを挑んでみるか」
「私も観戦させて貰うわよ。マサシがどれだけ強くなったのか知りたいし」
「まあ、好きにしろ」
会話を終えると2人は席を立ち、センターの外へ出て行った。
Phase.4 懐かしき再会(2)
ポケモンセンターを出た所で、二人は建物の裏手にあるバトルフィールドに足を運んだ。
そこでなら、大体数名トレーナーが集まっているからだ。
「…?何だ」
だが、今回は違った。
バトルフィールド周辺に、人だかりが出来ていた。
今丁度、バトルが行われている最中のようだった。
ぱっと見る限り、戦っているポケモンはガブリアスとエビワラー。
どちらも近距離からの凄まじい打撃攻撃の応酬を続けていた。
そんな中、エビワラーが大きく距離をとる。
直後、一瞬姿が消える。
そしてほんの刹那の間を挟み、強烈なパンチがガブリアスを吹き飛ばした。
「今の技って、マッハパンチ≠ゥ!?」
「信じられない…。今の、どう見てもきあいパンチ°奄フ威力はあったわよ」
驚くマサシ達を余所に、ガブリアスは立ち上がる。
まるでダメージを受けていないかのように、あっさりと。
「ダメージを受けてないのか! あのガブリアス」
「どっちも、相当鍛えられてるって訳ね」
それならばと、エビワラーが攻める。
次々とガブリアス目掛けてパンチを放つ、放つ、放つ。
ガブリアスはその攻撃を軽々と見切り、回避している。
「…やれ」
ガブリアスのトレーナーは、そう指示するのみだった。
その指示だけで、ガブリアスは腕の下に伸びる鰭のような箇所で受け止める。
そして逆にエビワラーを弾き飛ばす。
最後に、ガブリアスは右腕を上段に構えて振り下ろす。
巨大な真っ白の閃光が一直線の飛んでエビワラーを切り裂いた。
更に後から、その閃光の通った後を中心に衝撃波が巻き起こった。
余程今の攻撃が強かったのだろう。
エビワラーがあっという間にダウンした。
「雑魚が」
ガブリアスを戻すと、そのトレーナーはこの場を立ち去っていった。
「今のガブリアス、強かったね。あんなに凄い人がまだまだ沢山いるんだよね」
「……」
マサシは、あのバトルが終わって以来沈黙を守ったままだった。
「マサシ?どうしたの?」
「あのガブリアスと、そのトレーナー…。 まさか!」
何かに気付いたかのように、マサシは突然走り出す。
先程のトレーナーの後を追っていった。
突然の事ではあったが、アヤもマサシの後を追いかけていく。
ポケモンセンターから程近い場所にある、人通りも激しい大通り。
まさしはそこで、先程のトレーナーの後ろ姿を捉えていた。
だが、向こうは突然足を止めた。
「…早かったな。俺の予測よりも、随分と」
「さっきのバトルを見て、やっと気付いた。やっぱり、相当に腕を上げたみたいだな」
「…」
「ねえ、ちょっと、待ってってば!!」
少し遅れて、息を切らしながらアヤがこの場所に追いついてきた。
アヤも改めて、そのトレーナーのほうに視線を向ける。
「懐かしい顔ぶれだと思わないか?アヤ。トーホク大会のトップ3全員が、この場に揃ったんだからな」
「え…?という事は、あんたは…」
「懐かしい顔ぶれだと、お前も思わないか?『ユキヤ』」
「……。そうだな」
その言葉と同時に、彼はマサシ達の方を振り返る。
紫色の髪の毛と橙色の瞳。
4年前のあの時までの面影を感じるその顔。
そして、声。
紛れも無く、マサシ達がよく知る少年の成長した姿だった。
3人が再会を果たしたところで、今後の事を話し合う事になった。
「…え?今回のマスターリーグは、この町から始まる?」
「ああ。日にちでいえば今日、開催宣言が出る筈だ」
「じゃあ、リーグ会場はこの町にあるのか?」
「それは知らん。詳しい事は何も聞いていないからな」
「…」
とりあえず今は、その時を待つしかなかった。
今の時間帯は昼。
何時までもここにいた所で仕方が無いので、3人は一度ポケモンセンターに戻る事にした。
#ポケモンセンター
建物の中が、先程までとは若干雰囲気が違っていた。
物凄く混み合っていたのだ。
「どうしたんだろう?」
「…いよいよ来たか」
「来た…? まさか!」
「……そうだ。遂に始まる。頂点を決める世界最高峰の戦いが」
覚悟は出来ていた。
今迄、この時のためだけに頑張ってきた。
そして今、今迄の自分の頑張りの全てをぶつける時がやってきた。
頂上決戦、マスターリーグ。
その幕が今、開こうとしていた………。
To Be Continued
後書き
遂に突入。COM マスターリーグ篇!
とうとう始まる、世界最高峰の頂点を決める壮絶な戦い。
今迄のシリーズと比較しても、一番長くなる気がするシリーズでもあります。
このマスターリーグ篇は、前のジョウト篇から3年が経過しています。
その為、マサシも年齢が17歳になっています。
あ、ユキヤは年齢1個下だけど(何)。
とりあえず、次回から戦いの幕が開きます。
強敵とのバトルに次ぐバトル。
ハイレベルなバトルに加えて、いつ戦いになるのか解らない緊迫感を上手く演出できるように頑張っていきたいと思います。
次回、マスターリーグ篇第2話『予戦開幕』。
お楽しみに。
[一言感想]
成長したんですね、アヤ……色々と(何)。
マスターリーグでは、そうそうたる顔ぶれが参戦する事でしょう。
予選から誰か脱落するような展開があったら、凄いと思います(ぇ)。