マスターリーグは、その幕を開けた。

 とうとう、始まる。

 俺のポケモンマスターへの道。

 その目標に向けての、最後の戦いが。






COM マスターリーグ篇
第2話
予戦開幕







 Phase.5 ランク分け





 ポケモンセンターでは、マスターリーグ開催宣言が大モニターを超えて行われていた。
 いきり立つトレーナー達。
 決意が、ひしひしと建物の中に満ちていく。

 開催宣言が終わったところで、建物の奥から係員風の男性が現れた。
 そこで聞かされたのが、最終トーナメント選抜のルール。
 それは、あまりにも意外。
 そして想像を絶する、過酷なものだった。



 マスターリーグ予戦。
 そのルールを大まかに要約すると、以下のようになっていた。


 1.予戦中は3人一組の行動を原則とする。

 2.各チームごとに、予戦開始前に予め大会内でのランクを設定する。

 3.予戦のバトルは基本的に、トレーナー数3VS3の総力戦とする。

 4.自分のチームのランクより上のチームにバトルで勝てば、相手チームのランクまで昇格できる。

 5.チームにはリーダーを一人選出し、そのリーダーが敗北した場合、強制的にそのチームの敗北となる。

 6.ヨハロ地方のどこかにいる、大会側が放った4名のトレーナー全員を倒し、その証を手に入れること。

 7.6の条件を満たしておき、尚且つランクがベスト8までのチームが最終トーナメントに進出できる。

 8.予戦の期間は3ヶ月。それまでに上記の条件を満たせなかった場合は、強制失格となる。





 そのルールを聞かされた事で、大会参加者達の間で動揺が広がっていた。
 無論、マサシ達も含めて。

「何よ、それ…。単なる大会ってレベルのルールじゃないじゃない!!」

 愚痴を叫び声のようにして声を荒げたのは、アヤ。
 だが、残る2人は至って冷静だった。

「流石に、世界最高峰の大会だな…。最終トーナメントに進出するだけでも、とてつもない労力を使う事になるな」

「…ふん」

 だが、気になったのは大会前にチームのランク付けを行うという事。
 マサシは、とりあえずこの場にいる3人でチームを組む事にした。
 残りの2人も、その事に反対している様子はなかった。

「とりあえず、俺とアヤとユキヤ。考えてみれば、俺達の知る限りでの最強メンバーだな」

「そうね」

 という訳で、マサシ達3人のチームが組まれた。
 この場にいるその他大勢のトレーナー達も、どんどんチームを組んでいった。


 しばらく経ち、ポケモンセンターの外に数名の制服を着た集団が現れた。

「何だ?」

 彼らは自分達を、マスターリーグ予戦のランクを決める係員だと名乗った。
 そしてその為に彼らとバトルを行う…と。

「チームの代表者が我々と1VS1で戦い、そのバトルの内容・結果次第でそのチームの予戦開始時のランク付けをさせて頂きます」

 一通り説明を受けると、全てのトレーナーが同じチームメイトと向き合う。
 まだ、リーダーを決めていないチームが殆どだったからだ。
 無論マサシ達も例外ではなかった。

「リーダーは、ユキヤが相応しいと思う。実力は勿論の事、いざという時冷静な判断が出来そうだからな」

「いや、マサシ。お前がやれ。俺に、チームのリーダーなど柄じゃない」

「私もそれがいいと思う。マサシなら、しっかりリーダーとしての役目を果たしてくれると思う」

「………」

 二人の意見を聞いて、マサシは黙り込む。
 しばらく考え込んだ後、結論が出た。

「…解った。じゃあ、俺がチームリーダーを引き受ける」

 この3人の中で、他の2人の推薦を受けた事で、マサシがリーダーを務めることになった。
 それからしばらくして、他のチームも少しずつまとまりを見せ始めていた。

「じゃあ、行ってくる」

 全てのチームリーダーが、ポケモンセンターの外に出て行く。
 残りのメンバーは、その場に待機という状態になった。











 先程、ユキヤがバトルを繰り広げたセンター裏のバトルフィールド。
 そこに各チームのリーダー達が集められた。
 バトルフィールドを挟んで反対側に、先程の制服姿の集団が待機していた。

「えー、先程も説明したとおり、今から各チームリーダーである貴方がたは、我々と使用ポケモン1VS1のバトルをしていただきます。そのバトルの結果如何で、本大会予戦内でのランクを付けさせていただきます」

 制服姿の男性の一人が、簡潔に説明をした。
 すると、マサシと同じチームリーダーの一人が一歩前に出る。

「チマチマ小難しい説明してんじゃねぇよ。要は、テメェ等とバトルするんだろ?だったらさっさと始めろよ」

 背丈は、マサシより少し大きめの180cm前後で髪の毛は紺色。
 若干柄の悪そうな言葉遣いをしていた。

「では、そろそろランク付けバトルを開始します。では、貴方が最初のバトルでよろしいですか?」

「当たり前だ!俺は、さっきからバトルをしたくて疼々してんだよ!!」

「貴方は…、ミノルさんですね。では、早速試合を開始します」

「へっ、ようやくか」

 待ちわびたかのように、ミノルと呼ばれた青年がボールを構える。
 彼よりも先に、向こうのトレーナーが先にポケモンを繰り出す。
 中から現れたのは、フォレトスだった。

「行きやがれ、トリデプス!!」

 ミノルが繰り出したポケモンは、トリデプス。
 シンオウで発掘出来る化石から復活したとされるポケモンだった。

「(フォレトスとトリデプス…。このバトル、ジリ貧になるな)」

 バトルを観戦するマサシは、この戦いの経過を予測していた。
 フォレトスとトリデプス、共に物理防御力が並外れて高い。
 しかしその分、相手にダメージを与える火力に欠けている。
 如何により大きなダメージを相手に与えるかが、勝敗の決め手になりそうだった。

「フォレトス、じしん=I」

 相手のトレーナーが、指示を出す。
 フォレトスはその身を強く地面に打ち付ける。
 その衝撃によって強烈な振動を地上に発生させる。
 トリデプスの弱点を突く、強烈な先制攻撃となった。

「けっ、もうテメェは終わりだな。トリデプス、メタルバースト≠セ!!」

 ダメージを受けたトリデプスから、グレーのエネルギーが発光し始めた。
 それはトリデプスの目の前に収束すると、フォレトス目掛けて襲い掛かる!
 ドォォォォォッ!!


 そのエネルギーが命中した瞬間、フォレトスを中心に周囲を巻き込む爆発が発生。
 そしてそれは、相手のフォレトスのパワーの強さをもアピールしていた。

「(メタルバースト≠ヘ、最後に受けたダメージを大きくして相手に返す、カウンター≠ノ似た技。だが、トリデプスの反撃であそこまでの威力を発揮するということは、あのフォレトス…)」

 トリデプスの逆襲の一撃をまともに喰らったフォレトスは、それだけでダウンしてしまった。
 実に呆気ない決着だった。

「お見事だ。全てのチームリーダーのバトルが終わった後にランキングを算出するので、それまでしばらく待っていてください」

 係員的な立場の男性が、たった今バトルを終えたミノルに告げる。
 ミノルは踵を返すような返事をすると、遠くからバトルの様子を眺める事にした。

 それからは複数の場所に分かれて、バトルが行われる事になった。
 それでも此方の人数が圧倒的に多く、どの場所も大行列が出来上がっていた。
 行われるバトルの中には敗北してしまうチームリーダーもいて、がっくりと肩を落としていた。
 やがて、マサシが行列の先頭に立つ。

「では、バトルを始めます」

 相手のトレーナーが一言告げると、ポケモンを繰り出す。
 現れたのは、モジャンボだった。

「(新参メンバーをここで戦わせてみるか)」

 マサシは予め戦わせるポケモンを決めていたようで、迷わず一つのボールを放る。
 その中から現れたのは、漆黒色の身体に鋭い爪を持つポケモン・マニューラだった。

「行け、マニューラ」

 マサシが指示を出すと、マニューラは低く唸るように返事をした。
 最初からいきなりスピードを全開で発揮して、まばたきを一回するほどの刹那の時間で距離を詰める。

「甘いですね」

 しかし、動きは読まれていた。
 マニューラが攻撃の姿勢に入った時既に、モジャンボは無数のつるのむち≠上空に伸ばしていた。
 『ヤバイ』と言う表情を、マニューラは見せた。
 しかしすぐにその顔が偽りである事を、マサシの口から証明する。

「だましうち=v

 モジャンボのつるのむち≠ェ振り下ろされる直前の事。
 再びマニューラの姿が消えた。

 そして突然、背後から強い打撃攻撃が炸裂!
 ドゴォォッ!!


 真正面からの攻撃と見せかけ、一瞬で背後から攻撃を仕掛ける。
 完璧なフェイント攻撃が炸裂した。
 しかしそれだけに留まらず、今の攻撃でバランスを崩したモジャンボに更なる連続攻撃を仕掛けていく。
 ザシュザシュザシュザシュッ!!



 これだけの攻撃を受けても尚、モジャンボは立ち上がる。
 マサシの顔にも、いつしか冷や汗が流れ始めていた。

「流石にしぶとい。これだけ攻撃しても、まだ倒れないか…」

 マサシは、攻め方を変えた。
 マニューラの爪に氷のエネルギーを纏わせ、振りぬかせる。

 それにより、冷気を含む突風が巻き起こる。
 そしてその突風の中心を突き抜けて、モジャンボに懇親の一撃を叩き込む!

「…!」

 冷気の突風の中を突っ切った事で、マニューラの爪に強力な氷エネルギーが満ちていた。
 一閃、一直線の青白い閃光のような爪の斬撃が、モジャンボを切り裂いた。
 そしてその後から襲い掛かる、冷気の突風。
 度重なる弱点属性の攻撃を喰らい、モジャンボは遂にその場に崩れ落ちた。

「ふぅ…」

 額の汗を拭うと、マニューラをボールに戻して列から外れた。
 後続のトレーナーが、次のバトルを始めようとしていた。

「随分と脆弱なポケモンだったな」

 マサシに話しかけたのは、先程バトルを終えたばかりのミノル。

「俺だったらあの程度のポケモンは一撃で打っ潰してるぜ?」

「…それがどうした。それはお前の戦い方だろう。俺には俺のやり方がある」

「チッ、退屈な野郎だな。まあいい、どの道テメェがリーダーのチームなんて残りの奴らも大した事無ぇだろうな。せいぜい、他のチームの桁違いの実力差で踏み潰されないように気をつけることだな」

 嫌味に近い捨て台詞を残して、ミノルはこの場を去って行った。

「さて、後は結果を待つだけか」

 マサシはしばらくその場で待つ事にした。
 その間およそ30分。
 残りのトレーナー達も全員バトルを終えた。







 Phase.6 壮絶サバイバル





 マサシ達はポケモンセンターに戻り、チームメイト達と合流した。
 そこで各リーダー達は、携帯型の端末のような物を渡された。

「これは…?」

 画面に、上から順番に何やら名前が映り始めた。
 その名前の左端には数字。
 映った順に、数字が1から順番に付けられている。

「これって、そのチームのランキングなのかな?」

 端末の画面を覗き込んでいたアヤが、一言。
 確かにそんな風に見えなくも無い。
 画面には、第60位までのチームが表示された。
 つまり、この予戦を戦うチームがマサシ達を含め、60チームも存在すると言う事だった。

「総勢180人…。その中で最終トーナメントに進出できるのは最大8チーム・24人か…。かなり厳しいな」

「マサシ、俺達の順位はどの辺りだ」

「ちょっと待ってくれ。えっと……」

 マサシは必死にランク表を検索する。
 そして遂に、マサシは自分のチームを発見した。
 そこに表示されていたランクは…。

「第46位…。随分下の方からのスタートになるな」

 各チームがランキング表を確認し終わったところで、一人の男性がケーシィと共に建物の中に現れた。

「それではこれより、マスターリーグ予戦を開始します。尚、各チームはこのケーシィがランダムにテレポート≠ノよって飛ばされた先をスタート地点とします」

 180人全てのトレーナーの表情が、厳しくなった。

「つまり、スタート地点が何処になるのかすら解らない訳か…。ただ、この端末にはマップ機能もついてるみたいだ。これなら、迷う事もないな」

 そして、遂に予戦開幕の時が訪れる。
 1チームずつ順番にケーシィのテレポート≠ノよってこの建物から消えていく。

「さて、行くか。ここから、俺達の最後の戦いが幕を開ける」

「うん。行こう!」

「…」

 マサシ達3人、決意を胸に秘めてケーシィの前に並ぶ。
 ケーシィが動きを見せると、マサシ達3人は視界が真っ白く覆われた。







 意識がはっきりすると、そこは見渡す限りの緑の絨毯。
 空は風によって雲が西から東へ流れていく。
 草原のど真ん中に飛ばされたようだ。

「何、ここ…。周り、何にも無いじゃない!」

「ちょっと待て。今、位置を確かめる」

 早速端末画面に地図を表示する。
 ヨハロ地方は、東西がとてつもながく広い土地。
 その地図上で西側付近の内陸部で赤い印が点滅していた。

「結構西の辺りだ。アロナシティは地方の南側だから、随分と遠くまで飛ばされたみたいだ」

「じゃあ、ここから私達のマスターリーグ予戦が始まるって事?」

「ああ。ここから先、出会うトレーナーは全て敵だと思った方がいいな。街中でも安心できるような状況じゃ無さそうだ」

「移動するぞ。この場所は、目立ちすぎる」

 ユキヤに促されて、一先ずマサシ達は場所を移動する事にした。
 地図をよく確認すると、この場所から少し北に向かった所に町があるらしい。
 ルートを確認しつつ、3人はその町へ向かってみることにした。

「けど、よく考えたら私達は他の参加者だけじゃなくて、証を持つ大会側のトレーナーも倒さなくちゃいけないんでしょ?3ヶ月で間に合うのかしら?」

「そうだな。ただでさえ俺達のランクは低いんだ。その証を持つトレーナーの手掛りが無い現状は、少しでもランクを上げることに集中するべきだ」

 歩きながら、今後の大まかな方針を話し合っていた。
 そんな中、突然ユキヤが足を止めた。

「ユキヤ?どうした」

「早速お出ましだ」

「…!」

 ユキヤの視線の先から、マサシ達と同じ3人組が此方を向いていた。
 真ん中に立つ女性の手には、マサシが持っているのと同じ機械が握られていた。

「大会参加者…!こんなに早く遭遇するとは」

「おまけにこの予戦に於けるバトルは試合形式ではなく実戦形式。要するに、何でもありと言う事だ」

「…!」

 ユキヤの言葉は、既に敵が攻撃を仕掛けていると言う合図だった。
 即座にその意図を理解すると、マサシ達はバラバラに散る。
 それから数秒の間を置き、サイドンが地面の下から飛び出してきた。

「チッ…!」

 3人は拡散しながらも、敵を視界から外さない。
 そしてまず、アヤが最初に動いた。

「ブーバーン、行って!」

 アヤが繰り出したポケモンに、マサシは見覚えがあった。
 4年前の戦いで、ヒマザが繰り出したのと同じポケモンだった。

「オーバーヒート=I!」

 初手からいきなり大技を繰り出す。
 ブーバーンの放った巨大な熱の塊が、相手チーム3人に襲い掛かる!

 それに対し、向こうは向かって左側の青年が前に出る。

「エンペルト、ハイドロカノン=I!」

 冠のようなのが頭にあるペンギンの姿をしたポケモン、エンペルト。
 そのポケモンが口から発射した、高密度の水属性エネルギー弾。
 それがブーバーンの攻撃を一撃で相殺してしまう。

「…!」

「アヤ、ボーっとするな!」

 マサシの呼びかけで、アヤは我に返る。
 既にマサシとユキヤは相手チーム目掛けて特攻を始めていた。
 マサシはフローゼル、ユキヤはガブリアスを繰り出し、共に相手に向かっていく。

「地殻変動=v

 そう呟くのは、残る右側の男性。
 その声を発した直後の事。
 ゴゴゴゴゴゴッ…!!


「な、何だ…」

 突然、辺りの地面が陥没し始める。
 かと思えば、至る箇所の地面から巨大な岩山が誕生し始める。
 それは留まるところを知らず、更地だったこの場所を即席の山岳地帯へと変貌していった。

「さっきのサイドンの仕業か!?ここまで地形を大きく変化させるとは…!それに…」

 マサシは周囲を見渡す。
 だが、すぐ近くにアヤとユキヤの姿は無い。

「(さっきの地形変化の時に逸れたのか…。他2人を分断させて、俺一人に集中攻撃を仕掛けるつもりか…)それなら…」

 マサシは一計を案じ、準備を始めた。


 それから数分が経ち…。

「あら、逃げも隠れもしなかったのね。それとも、貴方のところに来るのが一人だけだと思ってたのかしら?」

 先ほどの3人組のリーダーである女性。
 美しい青色のロングヘアーをたなびかせながら、マサシに歩み寄る。
 その後ろには、残る2人の青年の姿。

「いや、予想通りだ。やっぱり3人一緒にここへ来たか。この予戦、リーダーを倒せば相手チームに勝利と言うルールだからな」

「なら、尚更理解に苦しむわね。向かってくるのが3人と解っていながら、何故身を隠さなかったの?」

「3人一緒に纏まって来ていれば、一網打尽に出来るからだ」

「…?どういう…」

 ゴォォォォォォッ!!

「!!」

 突然、見当違いの方角から炎が放たれてきた。
 それに気付いた3人はバラバラに散った。
 だが…。

「リコナさん、上!!」

「え?」

 リコナと呼ばれた、リーダーの女性。
 上を見ると、巨大な落石が3人に迫ってきていた。

「任せろ!サイドン、つのドリル=I!」

 最初にマサシ達に不意打ちを仕掛けたサイドンが、姿を見せる。
 そして顔面にあるドリルを回転させると、落下してくる岩を削り取り、攻撃を凌いだ。
 だが、それでまだ安心は出来なかった。

「クロス・ダークネス=v

 何処からか、別の男の声が聞こえた。
 その直後、落石の更に上からグライオンが降下してきていた。
 そして両方の鋏のような腕を駆使して、黒いX状の斬撃をサイドンに叩き込んだ。

「な…!?」

 度重なる攻撃に、相手チームはすっかりたじろいでいた。
 一連の攻撃が終わると、水色髪の少女と紫髪の青年がマサシの横に降り立った。

「何で、こんなに早く合流できるの…!?それぞれかなり遠くまで分断した筈なのに」

「分断した『筈』…か。つまり、お前達から見ても俺達がそれぞれ何処にいるのかまでは、特定出来ていなかったという事だな」

「それが…、何?」

「お前達が俺を集団で狙う事は読んでいたって言ったよな。だからお前達が俺を見付ける前に飛ばしておいたのさ」

「飛ばしておいたって…」

 ふと、リコナは空を眺める。
 すると、一匹のフライゴンがマサシの前に降りてきていた。

「この地形の死角をうまく掻い潜って2人を見つけ出し、俺のいる方角を伝えさせたのさ」

「だとしても、どうしてこんなに早く…」

「こういう時便利なのが、空を飛べるポケモンなのよね」

 会話に割り込むような形で、アヤが口を開く。
 そして同時に、一個のモンスターボールを手に取った。

「私は何かあったときのために、飛行できるポケモンを手持ちに1匹は入れるようにしてるの。今回はそれが幸いしたって訳」

 アヤが手に取ったボールから現れたのは、ムクホーク。
 そしてユキヤの傍にも、グライオンが降り立った。

「それにしても、お前がグライオンを手に入れてた事には驚いたな」

「飛行できるポケモンが、今まで俺の手持ちにはいなかったからな。旅先でこいつと気が合い、連れてきた」

「成る程…。貴方、マサシだったかしら。腕前もそうだけど、頭の方もかなり切れるようですね。相手にとって、不足はありませんね」

「お前の名前は、リコナだったか。予戦内ランクは…、第51位か。2人とも」

「ええ、解ってるわ!」

「ここで敗ければ、最終トーナメントが余計遠のく」

「ああ。だからこのバトルは、何が何でも勝つぞ!」

 マサシの言葉で、覚悟を決めた3人が改めて向こうの3人と対峙する。

「リコナさん、俺はあの紫の髪の奴とやります。マサシ君との戦いに水を刺されないように足止めしますよ」

「じゃあ、僕はあの女の子の相手か。仮にもマスターリーグに出場できたトレーナーだ。がっかりする程度の実力じゃない筈だしね」

「駄目です。相手は私達よりランクが上の相手。バラバラに戦えば、それこそ勝ち目がなくなります。この地形を利用した集団戦で戦えば、私達にも勝ち目はあります」

「集団戦か…。俺達にしてみれば初めての戦いだが…」

「大丈夫よ。お互いの手の内はよく知ってるし、連携も取りやすいでしょ?」

「そういう事だ。いつもと何ら変わりはない」

「それじゃあ、始めるか!」

 マサシチームとリコナチーム。
 合計6人のトレーナーが、一斉に戦闘を開始した。







 Phase.7 集団戦





 この場は、トレーナー6人と複数のポケモンが入り乱れる乱戦状態になった。
 戦いの初手を決めたのは、アヤ。
 ムクホークが上空に飛翔して、高密度のエネルギーを纏って急降下してきた。

「サイドン、ロックブラスト=I」

 それを阻止するために、サイドンが無数の中サイズの岩をムクホーク目掛けて発射する。
 だが、それをマサシが食い止めに動いた。

「させるか…!マニューラ、こおりのつぶて=I!」

 サイドンが発射した岩目掛けて、マニューラが同サイズの氷の塊を飛ばす。
 しかしその氷の塊を、エンペルトの攻撃が打ち砕く。

「なっ…」

「グライオン」

 マサシが攻撃している間に、ユキヤのグライオンが全ての岩を切り裂いていた。
 そのままムクホークの攻撃はサイドンに激突。
 だが…。

「相性が悪い攻撃は、あんまりダメージは無いよ」

 サイドンのトレーナーたる少年が、そう喋る。
 しかしアヤは全然作戦をミスした様子は伺えない。

「それがどうしたの?」

「…なっ!」

 何と、ムクホークは強引な力技でサイドンの巨体を吹き飛ばしてしまう。
 今の攻撃、ブレイブバード≠フ反動で消耗したムクホーク目掛けて、エンペルトが仕掛ける。

「アクアジェット=I」

「くっ、させるか!!」

 マサシが新たにポケモンを繰り出す。
 そのポケモンもまた、全く同じ技でエンペルトに向かっていく。

 エンペルトと真正面からぶつかり合ったのは、フローゼル。
 このフローゼルもまた、先ほどのムクホーク同様力だけでエンペルトを弾き飛ばす。

「やるね」

「ガブリアス」

 フローゼルとエンペルトの攻防が終わった直後、ユキヤの声がした。
 ガブリアスが空中を猛スピードでリコナ目掛けて飛んでいく。

「アーマルド、まもる≠ナす!」

 リコナが繰り出したのは、アーマルド。
 そのアーマルドは、攻撃を完全に防御するエネルギーの幕を作り出し、ガブリアスを食い止める。

「シザークロス≠ナす!」

「ドラゴンクロー=v

 アーマルドの放ったX状の閃光と見紛う斬撃を、ガブリアスは受け止めた。
 強引に撥ね退けると、残った方の爪で懇親の一撃を叩き込む!

 が、その直前に横槍が入る。
 先程フローゼルの相手をしていたエンペルト。
 奴が氷属性を収束させた光線を発射してきたのだ。

「!」

 この攻撃は、予測出来なかった。
 エンペルトの攻撃は、寸分違わずガブリアスに直撃する。

「ユキヤ!」

 マサシも、ユキヤのガブリアスがやられた事に気付いた。
 急いでマニューラを向こうに向かわせようとするのだが、それはサイドンに阻止される。

 マサシ達とサイドンを囲むように岩の壁が降り注ぐ。
 つまり、マサシと彼のポケモン達は孤立してしまった事になる。

「やっと落ち着いて、1VS1で戦う状況を作れたね」

 サイドンの横に並ぶ一人の青年。
 マサシは、そっちに振り向いた。

「勝てるかどうかは解らないけど、僕は少しでも君を消耗させてみせるよ」

「…」

「僕はキンジ。さあ、相手をしてもらうよ」

「…悪いが、リーダー以外の奴に時間を割くつもりは無い。速攻で…」



 一瞬、空気が振動した。

 マサシの繰り出すフローゼルから、凄まじい量の銀色のエネルギーがあふれ出す。

 その状態となったフローゼルの存在が、更に振動を大きくしていく。


「なっ…! 何だ…、これ!?」

 直後、銀色のエネルギーが立ち上るのと同時に凄まじい爆音が響き渡った。






 一方、岩壁の向こうでは未だにアヤ&ユキヤの2人が戦い続けていた。
 アヤはエンペルトを持つトレーナー、ユキヤがリーダーのリコナと対峙していた。

「ブーバーン、だいもんじ=I!」

 ブーバーンが、エンペルト目掛けて炎を吹き出す。
 噴出した炎がエンペルトに向かう最中、大の字型に変形した。

「無駄だよ!エンペルト、ハイドロカノン=I!」

 だが、その攻撃も無駄に終わる。
 エンペルトの放った水属性のエネルギー球体がブーバーンの炎を全て飲み込んでいった。
 そしてそのまま、ブーバーン目掛けて襲い掛かる!

「調子に乗らないで」

 アヤは、一言だけそう喋った。
 直後。
 ズドォォォォンッ!!


「!?」

 ブーバーンが一発だけ発射した炎。
 それがエンペルトのハイドロカノン≠貫通した。
 そしてそのまま炎がエンペルトをも吹き飛ばす!

「うわああああっ!!」

 爆発の衝撃で、エンペルトのトレーナー諸共吹き飛ばされる。
 吹き飛ばされた先で岩の壁にぶつかり、そのまま気絶してしまった。


「! タスク君!?」

 リコナも、アヤの相手をしていたトレーナーが敗れた事に気付いた。
 だが、今はそちらに気を配れるほどの余裕が無かった。

「バンギラス」

 ガブリアスが倒れた後に繰り出したポケモン、バンギラス。
 そのバンギラスの猛攻が、リコナのアーマルドを徐々に追い詰めていく。

「止めだ。いわなだれ=v

 辺りが岩山である地形を利用した攻撃を仕掛ける。
 周囲の壁の上部から、大小無数の岩が降り注ぐ。

 その岩の一つ一つが、まるで隕石のような破壊力。
 地面にぶつかった瞬間、巨大なクレーターを生み出していた。
 そしてこの攻撃に、掻い潜れるような隙間は無し!

「…!!」

 結果は明らかだった。
 今のアーマルドに、この攻撃を凌ぎきるほどの技は持っていない。
 そのまま、バンギラスの攻撃に倒されていくのを待つのみだった。



 To Be Continued



後書き
ぐはぁっ!何だ、この長さ…(汗)。
普通に第1話の長さを大幅に超えてしまっている…。
いや、もしかしたら今まで書いた話の中で一番長かったかも(汗)。
色々と話を詰め込んだらこんなに話が長く…。
とうとう1話の長さが20KBを超えてしまいました。
まあ、この第3章はこのくらいの長さでこれから進めていこうと思っていたので、実は丁度よかったり。
ただ、やっぱり最初は長いと言う感が拭い去れませんでした。
とりあえず、次回もお楽しみに。

 

[一言感想]

 まずはチーム戦ということで、マサシ、ユキヤ、アヤの即席チームが結成されました。
 そして戦いは始まったものの、実戦形式とはどこぞの裏世界の戦いみたいですね(ぇ)。
 もっとも、マサシ達はこれまでそんな戦いばかりだったので、そうそう遅れを取らないとは思いますが。
 しかし最高峰の大会ともなれば、強豪ぞろいで気は抜けない事でしょう。

 

戻る