この戦いに、最早ルールなど存在しない。

 負けたくなければやるしかない。

 その決断が出来なければ勝ち抜けない。

 これは確かに、想像を絶する戦いの宴だ…。






COM マスターリーグ篇
第3話
分断







 Phase.8 傍観者





 時は少々遡る。
 マサシチームに戦いを挑んできたリコナチーム。
 その中の一人が、大規模な地形変化を促す技を発動した時。

 そこから少し離れた場所に位置する高台。
 丁度そのバトル場全体を見渡せるような位置で、とあるチームが様子を観察していた。

「お!早速バトルが始まってるみたいだよ!」

 3人の中で一番先頭に立つ若干音声のトーンが高い少年。
 双眼鏡を使ってマサシ達のバトルを観戦していた。

「ふむ…。それで、何処のチームが戦っているのかは解りますか?」

 少年の少し後方。
 その少年に背を向けるように腰掛けている赤紫の髪の毛をした男性が質問をぶつけた。

「えーっとね…。第46位のマサシチームと第51位のリコナチームだね」

 マサシ達が持つのと同じ端末に表示される情報と併せて、遠くでバトルを繰り広げているチームを確認していた。
 それを聞くと、赤紫の男性は『フッ』と呟くとその場に立つ。

「傍観するまでも無いだろうね。クニヤ君の言う事が正しければ、どちらも我々のチームからすればどちらも遥か格下」

「でも、油断しちゃ駄目よ。ダイシ」

 赤紫の髪の毛の男、もといダイシの横に赤いロングヘアーの女性が降り立った。
 疑問をぶつけるような感じで、その女性に視線をぶつけた。

「この予戦内でのランクは、あくまで大会側の基準で付けられたもの。つまり、信憑性はあんまり無いのよ。幾ら予戦用ランク第10位の私達だからって、軽蔑視は敗北に繋がりかねないのよ」

「心配は要らないさ。何しろ俺達のリーダーはそんな些細な事など無意味な事を証明してくれる。そうだよね?チームリーダー、クニヤ君」

「そうだね。こうやって傍から見る限りでも、実にレベルの低い戦い。僕達の敵にもならないね」

「だそうだ、リミカ。君は少し慎重になりすぎる節があるね」

「五月蝿いわね!大体、あんたこそそうやって落ち着いた風で妙に嫌味な口回しするし…。はっきり言って、どうしてあんたなんかとチームをくんじゃったのか…。あの時の自分の理性を疑いたいわね」

「何っ? おま、そこまで言うか!?ついさっきチームを組んだばっかりの俺に向かって」

「付き合いの長さなんて関係ないわ。私は、あんたのそういう態度が気に喰わないって言っただけよ。全く、本当に馬鹿みたい」

「馬鹿とは何だ! そんなに俺と一緒に居るのが嫌なら、さっさとこの大会を棄権すればいいだろ!」

「それは嫌よ。あんたと一緒の行動は嫌だけど、ここまで来て辞退するのも嫌。出来れば、あんたとバラバラになることが出来て、この予戦を突破できればいいんだけど。そしてあんたなんか、この予戦で消えてしまえばいい」

「狽ソょっと待て!お前、そんなに欲張るなよ!大体この予戦は、最初に組んだ3人と常に行動するのがルールだ。もし別行動したら、その時点で失格になりかねないぞ」

「だったら大会側に直訴して、チーム内での単独行動を認めさせてくるわ」

「狽サこまでして俺と一緒に居たくないのかよ!?いい加減あきらめろって!!」

「はいはい、2人とも落ち着いて落ち着いて」

 このまま延々と続きそうだったこの二人の口喧嘩を、クニヤと呼ばれた少年が仲裁に入った。
 何とか、この場は収まった。

「まあ、今更グダグダ言っても仕方ないわね。今のは少々はしたなかったわ」

 そう言いながら、リミカは先程クニヤが居た場所に足を運ぶ。
 そしてマサシ達の戦いを観戦する。

 その時点で、ユキヤのバンギラスの攻撃がリコナに襲い掛かっている所だった。







 Phase.9 大混戦





 バンギラスによって引き起こされた岩山の崩落。
 無数の岩が、リコナの頭上から降り注いできていた。
 そして彼女が現在外に出しているポケモン、アーマルド。
 アーマルドも、バンギラスの猛攻でほとんど力を残していなかった。

「終わりだ」

 ユキヤも、これで勝敗が決したと思っていた。
 だが…。
 ズババババッ!!


「!?」

 突然、横から発射した高密度に圧縮された水流が全ての岩を切断した。
 その方角に視線を向けると…。

「エンペルト…だと!?」

 何と、先程アヤがぶっ飛ばしたエンペルトだった。
 戦闘不能になったのかと思いきや、再び立ち上がってリコナの窮地を救ったのだった。
 しかし、当のエンペルトのトレーナーは気絶したまま。
 どうやらエンペルトだけが、独断で行動を起こしたらしい。

「エンペルト、助かったわ…。ありがとう」

 にっこりと笑顔で頷くと、エンペルトは主たるタスクの身体を揺すり始める。
 その振動で、タスクは意識を取り戻した。

「うっ…。しまった、気を失ってたのか」

 頭を手で押さえつつ、タスクは上半身を起こす。
 その状態で、バトルの現状を確認していた。

「こっちはまだみたいだな」

 奥の方から、マサシの声が聞こえた。
 フローゼルを一旦ボールに戻しつつ、ユキヤ達の戦っている場所に歩いてきていた。
 その背後では…。

「! キンジ!」

 サイドンと共に、トレーナーであるキンジが岩壁に凭れ掛かって倒れていた。
 どう見ても戦いが続けられるような状態ではなかった。

「このっ…!」

 闘争心剥き出しの表情で、エンペルトに指示を出す。
 鋼の高度に達した翼でマサシに攻撃を仕掛ける。

「フライゴンッ!!」

 咄嗟にフライゴンを呼び戻して、攻撃を防御する。
 ドガンッ!!


 エンペルトが攻撃による衝撃波が、周囲に拡散する。

「くっ…」

 エンペルトのパワーに押されながら、フライゴンは何とか攻撃を横に受け流した。
 勢い余ってバランスを崩したエンペルト目掛けて、自分の尾で力いっぱい殴り飛ばした。

「何っ!?」

 その勢いは凄まじく、エンペルトが激突した岩壁が粉々に崩れ落ちた。

「ドータクン、ラスターカノン≠セ!!」

 咄嗟にタスクが、別のモンスターボールからドータクンを繰り出す。
 そして鋼属性のエネルギーを球体状に凝縮した弾丸を発射する。

「ブーバーン、かえんほうしゃ=I!」

 マサシの背後から、声が聞こえた。
 アヤがブーバーンに指示を出した声だった。
 彼の背後から発射された炎は、容易くドータクンの攻撃を飲み込んだ。

「ドータクンッ!!」

 目の前に炎が迫り、ドータクンは防御姿勢で身構える。
 それが功を為したのか、さほど大きなダメージを受けていなかった。

「特性の『耐熱』ね。だから炎攻撃のダメージが…」

「驚いた…。いくら特性の影響でダメージを軽減したと言っても、消耗が大きいよ」

「フライゴン、ドラゴンクロー=I!」

 今度はフライゴンが上空から、エネルギーを纏わせた爪を振り下ろす。
 ドータクンも、鋼の身体で辛うじて受け止めたのだが…。
 息つく暇も無く、更なる追撃がかけられた。

「今よ!」

 アヤの号令と同時に、ドータクンの真正面から巨大な炎の塊が突進してきた。
 否、それは全身に炎を纏った彼女の相棒・バクフーンだった。

「フレアストライク=I」

 バクフーンがドータクンに激突するのと少し遅れたタイミングで、アヤは技名を口にした。
 フライゴンとバクフーン。
 この2匹の同時攻撃は流石に受けきれず、思い切り吹き飛ばされた。

 そんな折、2人の背後から物音がした。
 先程フライゴンが攻撃を受け流した事で、岩壁に激突したエンペルトが復活した。
 そして即座に巨大な水属性のエネルギーの塊を発射してきた。

「やばっ…」

 一瞬、身の危険を感じたアヤ。
 だがそこへ、ユキヤが間に割って入った。

「打ち砕け」

 そう呟きながら、ユキヤはバンギラスを呼び寄せる。。
 バンギラスは、右拳にスパークに似た現象を起こすほどの膨大なエネルギーを纏わせた。
 マサシは、その拳から発せられるエネルギーに覚えがあった。

「この感じは、サンドパンの破壊爪<デストラクションエッジ>≠ニ同じ…!?」

「最早あの技は、サンドパンだけの物ではなくなった。トーホク大会の後、全ての手持ちにこの技を叩き込んだ」

 バンギラスは、向かってくる水の球体目掛けて拳を放つ。
 物凄い衝撃と共に、エンペルトの攻撃を吹っ飛ばした。

「っ!凄いパワーだな」

 半分後ろを振り向きながら、マサシが今見た光景の率直な意見を述べた。
 ユキヤは「ふん」と踵を返すと、そのままエンペルトに向かっていく。

「アヤ、あいつの相手は任せていいか?俺は、直接敵のリーダーを狙う」

「…解ったわ。妨害されないように、ちゃんと私が手を打っておくわ」

「…助かる」

 小さい声で作戦を練ると、マサシが走り出す。
 向かう先は、敵チームのリーダー・リコナの居る場所!

「! させるか! ジバコイル、マグネットボム=I!」

「!」

 タスクの指示した技名が耳に入った事で、マサシは咄嗟に後ろを振り向く。
 まるでマサシをホーミングしているかのように、ジバコイルの発射した鋼のエネルギー弾は一直線に飛ぶ。

 だが、直後に聞こえた声でマサシは視線を前方に戻す事になる。

「マサシ、こっちは任せて!!」

 アヤの声だった。
 その言葉を信じて、全速力で走る。
 ジバコイルの攻撃とマサシの中間に、突然バクフーンの姿が現れた。

「この程度の攻撃、脆いものだわ!バクフーン!!」


 ズドォォォォンッ!!
 背後から、凄まじい爆発音がした。
 その爆発でジバコイルの攻撃は打ち消された。
 それだけに留まらず、爆発は近くの岩山をも粉砕する。

 それによって岩石の崩落が発生。
 乱戦が繰り広げられていた広場が分断されてしまった。
 そう、それぞれのチームリーダーだけが孤立すると言う状況に…。





「よし!作戦成功だわ」

「わざわざ君のチームリーダーを孤立させるなんて…。余程信頼しているのか、それとも唯の馬鹿なのかな」

「何とでも言えばいいわ。マサシは、そう簡単には負けない。私達自身が、その事を一番よく知っているから」

「そういう事だ」

 いつの間にか、ユキヤがアヤと背中合わせで立っていた。
 状況的には、先程マサシに攻撃したジバコイルと今までユキヤが相手をしていたエンペルトに挟まれている形。
 互いが互いを補助しなければ、即・敗北に繋がる状況だった。
 …が、ここで更に状況が悪化する出来事が起こる。

「くっ…。何て強さだったんだ」

 最初にマサシが倒したと思っていたトレーナー、キンジ。
 彼が立ち上がってしまったのだ。

「タスク。大丈夫……っぽいね、この状況」

「いや、僕一人じゃ多分この2人は抑えきれない。2VS2で戦おう」

「オーケー。じゃあ、やろうか」

 キンジは新たに、ゴローニャを繰り出す。
 それによって、アヤ達2人は3方向から囲まれた事になる。

「どれか1匹だけでも倒して、それぞれが1VS1の戦いに持ち込めれば、まだ勝ち目はあるけど…」

「ここが、正念場か」

「行くわよ」

「…」

 アヤの声を合図に、2人は戦いに赴く。
 圧倒的不利な形勢から始まる戦いに…。







 Phase.10 リーダー対決(1)





 アヤとユキヤが戦いを始めたのと同じ頃。
 落石によって隔てられた広場の反対側。
 それぞれのチームリーダー2人だけが隔離されている。
 この状況下で、2人は互いに向かい合っている。

「最初から、こうするのが狙いだったのかしら?マサシ君」

 この状況を作った真意を探るべく、リコナはマサシに言葉をぶつける。
 マサシから返ってきた返事もまた、彼女の想像を裏切らないものだった。

「あんな敵味方が入り乱れた乱戦状態じゃ、いつ決着が着くか解らないからな。大会ルール上、敵チームのリーダーさえ倒せば勝利になるから、その方が手っ取り早いと思っただけだ」

「まあ、それは私も賛成ね。あんまり味方の被害を大きくしすぎると、後に色々とハンデを背負わされる事になるから」

「まあ、消耗した状態で別のチームに遭遇したら、それこそ一巻の終わりだからな」

「だから、早いうちに決着を着けようとした。そうなんでしょ?」

「まあな」

「…それにしても、本当に抜かりが無いわね。こうして会話をしてる間にも、密かに手を打ってるんだもん」

「…!」

 突然、リコナの足元が盛り上がる。
 地面の下から、フライゴンが飛び出してきた。
 しかし寸前のところで気付いたリコナはジャンプ。
 別のボールから、ユレイドルを繰り出す。

「また化石ポケモンか」

「ユレイドル、エナジーボール=I!」

 ユレイドルが口を開くと、緑色のエネルギーの球体を精製。
 それをフライゴン目掛けて発射してきた。

「フライゴン、はかいこうせん=I」

 フライゴンもまた、口を開いてエネルギーを貯め始める。
 そして、己の体躯より2周りほど極太の赤い閃光のごとき光線を発射。
 ユレイドルの技を、この攻撃で食い止めた。

「今だ!」

 リコナは、背後に気配を感じた。
 その方角に視線を向けると、岩壁を足場にして、マニューラがこちらに向かって飛び出してきていた。

「スラッシュエッジ=I!」

 持ち前のスピードと併せた、爪を一閃する事による斬撃がユレイドルを捉える。
 だが、ユレイドルの身体には傷跡が残らない。

「…っ、硬い」

「ふふ。私のユレイドルの防御力を甘く見ないで欲しいわ。ユレイドル、いわなだれ=v

 最初にユキヤがリコナに仕掛けたのと同じ技だった。
 周囲の岩壁に己の身体を打ち付けて、落石による攻撃を仕掛けてきた。
 ましてや今回は、戦うスペースが狭くなっている。
 とても、避けきれるような攻撃ではなかった。

「マニューラ、つじぎり=I!」

 マニューラは、降り注ぐ岩を爪で切り裂こうとしたのだが…。
 その迫力に怯んでしまったのか、攻撃の動作に移ることができなかった。
 よって、降り注いでくる岩の雨をまともに食らってしまい、マニューラはそのままダウン。

「フライゴン」

 マサシは、フライゴンの名を呼んだ。
 その声を聞き入れて、上空から光り輝く爪を強烈な勢いで振り下ろす。

「ドラゴンクロー=I!!」


 ドゴォンッ!!
 フライゴンの爪が、ユレイドルの岩のように硬い身体に突き刺さった。
 そこから力に任せて強引にぶっ飛ばした。

「はかいこうせん=I!」

 ぶっ飛ばされて、ユレイドルの身体は未だ空中。
 その状態での追撃。

 避ける事は、不可能に見えた。

「ユレイドル!」

 リコナはその名を呼ぶと、ユレイドルは動く。
 身体から伸びている触手のようなものを何本か、近くの岩に巻きつける。
 そしてその岩を中心に、空中で強引に進行方向を変更した。

「なっ!?」

 はかいこうせん≠フ反動の影響が出ているフライゴン目掛けて、先ほどと同じ緑色のエネルギー球体を発射。
 それは直撃してフライゴンが吹き飛ぶ。
 しかし、吹き飛ばされている途中で目を見開いて歯を食い縛って、何とか飛ばされる勢いを止めた。

「(一瞬の油断さえ許されない…っ!少しでも気を抜いたら…、敗ける!)」

「ユレイドル、エナジーボール=I」

 3回目の、ユレイドルのエナジーボール。
 マサシは新たに一つのモンスターボールを手に取り、一言。

「ハイドロ…」

 その直後、マサシはそのモンスターボールを放る。
 その先には向かってくるエナジーボールがあった。

「インパクト!!」

 最初の言葉の続きを口にした。
 それと同時にボールが開き、中からフローゼルが飛び出した。
 そしてボールから出ると即座に膨大な量の水を纏い、猛烈な勢いで突進した。

 フローゼルの突進は、向かってくるエナジーボールを掻き消したばかりか、ユレイドル自身をもぶっ飛ばす。
 そのまま背後の岩壁に激突し、蹲ってしまった。

「決まったか」

 マサシも、この攻撃でユレイドルを倒せたと思っていた。
 だが…。

「!」

 ユレイドルは、立ち上がった。
 相当体力を消耗しているのは伺えるが、最後の力を振り絞った感じで再びその身体を起こす。

「…っ、まだ倒せないのか。フローゼルの最強攻撃をまともに喰らったのに…」

「気付いていなかったのかしら?貴方のポケモン達と戦っている合間を縫って、たくわえる≠ニのみこむ≠使って体力を回復していたのよ」

「何時の間に…!全く、気付かなかった。それに…」

「そう。たくわえる≠ヘ、使えば自身の防御能力も上昇する。貴方は気付かない間にどんどん追い込まれていたのよ」

「(くそっ…。思ってた以上にあのユレイドルが厄介だ。おまけに、ユレイドルの特性は『きゅうばん』。強制的にポケモンを交代させる技が通用しない。つまり、自力で何とかあのユレイドルを倒すしか…)」

「マサシ君。水ポケモンのフローゼルをほったらかしにしておいていいのかしら」

「!」

「エナジーボール=v

「しまっ…」


 ズドォォォォンッ!!
 ユレイドルのエナジーボールが直撃した事で、爆発が生じた。
 その爆風でフローゼルが吹き飛ぶ。
 行き着いた先は、マサシのすぐ傍だった。

「(一瞬でも気を抜いたら敗けるって、さっき自分に言ったばっかりじゃないか…。このままじゃ、ちょっと厳しいか…)仕方が無い」

 ふと、マサシが言葉を発した。
 怪訝そうなリコナをよそに、マサシは次の言葉を口にする。

「フローゼル…、『能力回帰:第2段階<セカンドレベル>』発動」


 ドンッ!!!!!
 強烈な轟音と共に、フローゼルから青と銀を混ぜ合わせたような色のエネルギーがあふれ出す。
 そしてフローゼルの力も、幾分か上がっているようにも見受けられた。

「ここからは、少し本気を出させてもらう。フローゼル、ソニックブーム:アクア=v

 パワーアップしたフローゼルが、極度に圧縮した水を尾の周囲に纏わせる。
 そして尾を振りぬき、纏っていた水をユレイドル目掛けて発射する。

 ユレイドルも反撃を仕掛けるが、フローゼルの鋭い水の刃を前に真っ二つに切り裂かれて…。


 ザシュゥッ!!
 ユレイドルも、その攻撃が及ぶのだった。







 Phase.11 初コンビのタッグバトル





 岩壁によって分断された戦い。
 マサシとリコナの戦っている、その丁度向こう側。
 そこは、4人のトレーナーと複数のポケモンが入り乱れる大混戦と化していた。

「ブーバーン、だいもんじ=I!」

 この状態になって、最初に動いたのはアヤ。
 ブーバーンに指示を飛ばし、炎が弱点のジバコイル目掛けて炎を発射。
 だが、ジバコイルは強烈な閃光と共に電撃を発射して炎を打ち消してしまう。

「まだよ!」

 爆煙の中を何か突き抜けて、ジバコイルをぶっ飛ばす。
 その正体は、ライチュウだった。
 ライチュウがその長い尾を思い切り伸ばして、ジバコイルを力任せにぶっ飛ばしたようだ。

「君の戦い方、やっぱりパワータイプだね。こっちが防御しようが関係無しにぶっ飛ばしている。これじゃ、防御をする意味が全く無い」

「…」

「グライオン、シザークロス=v

 アヤがタスクのジバコイルと攻防を繰り広げている間の事。
 ユキヤはバンギラスとグライオンを繰り出して、戦いを続けていた。

 その相手は、タスクのエンペルトとキンジのウソッキー。
 グライオンがウソッキーにX状の2連斬撃を食らわせるが…。
 ウソッキーの身体には、軽い斬撃痕が残るだけだった。
 そこをバンギラスが、巨体を生かした振り下ろし型のパンチを放ち、ウソッキーを押しつぶした。

 その隙を狙って、エンペルトがハイドロカノンを発射する。
 …が、その眼前に別のポケモンが割り込んで攻撃を防ぐ。


 攻撃を防いだポケモン、メタグロスが鋼属性のエネルギーを纏わせた拳でエンペルトを殴り飛ばす。
 否、鋼属性のエネルギーだけではなかった。
 先ほどのバンギラスと同様に、サンドパンの使う破壊爪<デストラクションエッジ>≠ニ同じエネルギーをも纏わせていた。
 最初の戦いの頃からのダメージが蓄積してか、これでエンペルトはダウンした。

「メタグロス、コメットパンチ:破壊<デストラクト>=v

 先程エンペルトに放ったのと思われる技名を、ユキヤは声に出す。
 すると今度は、グライオンが相手をしていたウソッキーを殴り飛ばした。

 その光景を、アヤも背後から聞こえる音と気配で感じ取っていた。

「やるわね、ユキヤ。私も、敗けてられない…!」

 改めて、自分の敵の方に向き直る。
 その視線の先に居るのはジバコイル。
 それと対峙する自分のポケモンは、ブーバーンとライチュウ。

「ブーバーン、オーバーヒート=I!」

 ブーバーンが、相変わらず強大なパワーの熱の塊を発射する。
 その熱の塊は少しずつ膨張し、周囲の障害物を削り取っていく。
 そして…。
 ズドォォォォンッ!!


 熱の塊が炸裂して、爆発と共に熱風が吹き荒れた。
 その爆発の中でジバコイルは、全身から煙を噴出しながら倒れていた。

「ユキヤ、今よ!」

「ふん」

 アヤの号令を合図に、2人はそれぞれ動き出す。
 2人はそれぞれ、ブーバーン・メタグロスと共に目の前に居るトレーナーに向かっていく。

「ゴローニャ!」

「ボスゴドラ!!」

 それに対し、タスクはボスゴドラ・キンジはゴローニャをそれぞれ繰り出す。
 それを見た瞬間、ユキヤは別のモンスターボールをアヤの目の前に放った。

 中から現れたのは、向こうと全く同じポケモン。
 ユキヤもまた、ボスゴドラを戦いに繰り出した。

「お前はこっちのゴローニャをやれ」

「な、勝手にバトルを進めないでよ!」

「早くしろ。そのボスゴドラは強い。俺がやる」

「…ブーバーン、だいもんじ=I!」

 アヤの指示で、ブーバーンは大の字型の炎をボスゴドラにぶつける。
 だが…。

 ボスゴドラは、笑っていた。
 『それがどうした?』と、言わんばかりに。

「嘘…。全然効いてない」

「だから、俺と代われと…」

「効かなかったのは、こっちがパワー不足だったから。それなら…!!」

 突然、ブーバーンから桁違いな熱量が放出され始める。
 それと同時に、ブーバーンの外見にもとある変化が…。

「なっ…、何だ」

 タッグを組んでいたユキヤでさえも驚愕したその変化。
 直後、膨大な炎がこの場を埋め尽くし、大爆発を巻き起こす。

「ボスゴドラが…、一撃…。そんな、事…が…」

 先ほどの爆発の影響で吹き飛んだキンジ。
 彼はそのまま気絶してしまった。

「パワー不足で攻撃が通じなかったのなら、それを更に超えた究極レベルのパワーで攻撃すれば済む話ね」

 先ほどの言葉の続きを、気絶したキンジにぶつけるのだった。





 ユキヤは、アヤがタスクを撃破したのを見届けると、ボスゴドラをボールに戻す。
 そして、改めて自分の敵と対峙する。
 敵はゴローニャ、此方はメタグロス。

「ゴローニャ、ころがる=I!」

 丸い身体を生かして、猛烈な勢いで回転したままメタグロスにぶつかっていく。
 …が、メタグロスは自身の身体を更に硬化させて、攻撃を無力化する。

「無駄だ。その程度のパワーが、メタグロスの防御力を破れると思ったか」

「甘いね。ゴローニャ、だいばくはつ=v


 ズドォォォォンッ!!
 メタグロスに肉迫した状態で、ゴローニャは自分の身体を爆弾のように爆発させた。
 至近距離でその強大な爆発をまともに喰らったメタグロスは、そのままダウンしてしまう。

「くっ…!?」

「そのメタグロスは厄介だからね。捨て身の特攻でも仕掛けないと、倒せそうに無かったよ」

「…」

「じゃあ、次に行こうか」

 そう言ってキンジが次に繰り出したポケモンは、ダイノーズ。
 ユキヤも、ハンドシグナルでグライオンを呼び寄せた。

「つじぎり=v

 グライオンが、腕の先端の鋏でダイノーズを切り裂こうとするのだが…。
 ガキンッ!!


「!」

 ダイノーズの頑丈な身体に、その程度の攻撃は通じず…。

「マグネットボム=I」

 磁石のように執拗に吸い付いてくる鋼のエネルギー弾を喰らい、そのまま呆気なくダウン。
 その瞬間、ユキヤが放つ雰囲気が…変わった。

「…!」

 キンジの額から、汗が滴り落ちる。
 ユキヤのプレッシャーに、気圧されていた。

「サンドパン」

 その名を口に出し、ユキヤの手にしたボールからサンドパンが姿を見せる。
 それと同時に、サンドパンの超絶な一撃がダイノーズに襲い掛かった。
 ドゴンッ!!

「なっ、ぁ…」

 ダイノーズに炸裂した一撃は、凄まじかった。
 グライオンの攻撃でビクともしなかったダイノーズが、一撃でダウン。
 キンジは違いすぎる格の差に、完全に戦意を失ってしまっていた。

「あ、そっちも終わった?」

 戦いを終えたユキヤの元に、アヤがやってきた。

「見て解らないか」

「…ごめん。こっちも終わったし、後は…」

 2人は、落石によって塞がれた広場の向こう側に気を配る。
 そこに居るのは、両チームのリーダー2人。
 この戦いは、リーダー対決を残すのみとなっていた。



 To Be Continued


後書き
今回も普通に20KBを超えてしまいました。それに、マスターリーグ1回目の戦いも未だに終わらず…。−−;
まあ、残りは両チームのリーダー同士の戦いのみなので、次回で終わらせられます。
という訳で、マスターリーグ予戦が本格的に動き出すのは次回です。
色々とやる事が多くて、完結の目処は一切立っていませんが、頑張っていきたいと思います。
それでは、次回をお楽しみに。

 

[一言感想]

 初戦から結構手こずらされているマサシチーム。
 残るはリーダー対決ですが、いきなり出だしで敗れたりはしないだろうから安心……? いや、これって油断?(ぇ)
 大会ものを書くと、ついバトル漬けになってしまう事があります。
 この戦いが終わったら、ひとます間をおくなり、バトルにしても何か驚かされるような展開なりが用意されてるといいですね。

 

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