甘く見ていた。
マスターリーグの戦いは、俺の想像を遥かに超えるレベルだった。
予戦用ランクが下でも、決して楽観視は出来ない。
その事を理解していれば…、このバトルも少しは違っていたかもしれない。
COM マスターリーグ篇
第4話
vsリコナチーム(終幕)
Phase.12 リーダー対決(2)
それぞれの相手を撃破した、アヤとユキヤ。
激闘を終えて、2人は地面に腰掛けていた。
「ふう、ちょっと甘く見てた…。ランクが下の相手だからって、私達より弱い訳じゃなかったのね」
「そうだな。俺も、少々不甲斐なかった」
「マサシは…、大丈夫だよね?あいつは強いけど、向こうのリーダーだって相当な実力者だろうから…」
「…」
激闘で疲弊している2人に、今のマサシの状況を知る術は無い。
せめて、マサシの勝利を願う事くらいしか出来なかった…。
フローゼルの攻撃は、確実にユレイドルに致命傷を与えて撃破した。
だが、リコナが次に繰り出したポケモン・ラムパルド。
そのラムパルドの猛攻に、フローゼルは防戦一方になっていた。
「ストーンエッジ=I」
細長く鋭い形状の岩を、無数に飛ばしてくる。
フローゼルは、向かってくる岩全てを瞬間連射≠ナ破壊するのだが…。
その隙を突き、ラムパルドが突進してくる。
なので、全く反撃の隙を見付ける事が出来ない。
「くっ…。ソニックブーム:乱舞=I!」
苦し紛れに、フローゼルが様々な軌道でソニックブームを飛ばすのだが…。
ラムパルドの岩の身体に、軽い傷跡を残すのが精一杯だった。
「ラムパルド、もろはのずつき=v
「!!」
ラムパルドの、捨て身の域を更に超えたかのような猛烈な突進が、フローゼルを吹き飛ばす。
その強大なパワーの攻撃をまともに喰らってしまい、フローゼルは一撃でダウンしてしまう。
「(これで、俺のポケモンは残り4匹…。向こうもポケモンが2匹倒されてるから、数では互角だが…)」
「ラムパルド、ストーンエッジ=I」
「!」
ズガガガガガッ!!
リコナは容赦なく、マサシを直接狙ってくる。
マサシは向かってくる岩の弾幕の中を回避しつつ、フライゴンを呼び寄せる。
「りゅうのはどう=I」
フライゴンの発射した竜巻状の衝撃波が、ラムパルドを飲み込んでいく。
だが、ラムパルドは容易に岩の弾丸を発射して打ち破ってきた。
「こうなったら…。デザートストリーム=I」
「…?」
聞き慣れない技名だった。
まずフライゴンは、翼を大きく羽ばたかせて砂塵を含んだ竜巻を発生させる。
今度はそこ目掛けて、先程ラムパルドに攻撃したりゅうのはどう≠発射した。
結果、砂塵を含んだりゅうのはどう≠ェラムパルドに牙を剥いた。
「な…!?」
想像外の大技の発動に、リコナも驚きの表情を見せた。
ラムパルドはこの大技を前に、立っていることは出来なかった。
「残り3匹だな。…それにしても」
「何かしら?」
「最初に戦い始めた時から気になってたんだが…。あんたの手持ちポケモンは、アーマルドにユレイドル、ラムパルド…。化石から再生したポケモンばっかりだな」
「ええ。私の手持ちは、その全てが化石より再生したポケモン達。私は元々、シンオウ地方のクロガネシティに住んでいまして…。父が炭鉱で働いているせいか、化石等に興味を持ったのよ」
「…そうか」
「こんな話、貴方には何の関係もありませんね。それでは、続けましょう」
「フライゴン、ドラゴンクロー=v
「つじぎり=I」
一瞬の出来事だった。
リコナが次に繰り出したポケモンが、鋭い両腕の鎌でフライゴンを切り裂いた。
その威力は先のラムパルドと同格で、まともに喰らったフライゴンはこの一撃でダウンしてしまう。
「次はカブトプスか…」
ここに来て、マサシは自分の手持ちの残りを確認する。
これまでの戦いでダウンしたのは、マニューラ・フローゼル・フライゴン。
「(残りはバクフーン・オーダイル・グレイシアだが…。カブトプスを相手に炎系のバクフーンは、まず有り得ない。それに、グレイシアも岩系相手じゃ相性が悪いか…。それなら)」
マサシは決断した。
次に繰り出したポケモンは、オーダイル。
「ハイドロカノン=I!」
いきなり水系最強の技を発動した。
オーダイルの放った巨大な水エネルギーの塊が、カブトプスを飲み込んでいく。
その後そのエネルギー球体は炸裂、この場で洪水を発生させた。
「凄まじいパワーですね…。タスクのエンペルトでも、ここまでのハイドロカノン”は使えなかったわ」
「そりゃどうも」
「だけど、貴方が水タイプのオーダイルを繰り出してくれたことは、此方にとっても都合がよかったわ」
「何…?」
「カブトプス、きんぞくおん=I」
カブトプスは、両腕の鎌をこすり合わせる事で耳を塞ぎたくなるような音を発する。
その直後、オーダイルが緑色に発光する光に包まれる。
「メガドレイン=v
オーダイルを包んでいた緑色の光が、カブトプスに取り込まれていく。
そしてその光には、オーダイルの体力が含まれていた。
「草タイプの体力吸収攻撃…!こんな技まで使えたのか」
「マッドスラッシュ=I」
カブトプスの鎌に、地面と同じ色の光が宿る。
そしてその鎌を一閃、オーダイルを切り裂いた。
ザシュッ!!
「オーダイル、もう一発ハイドロカノン≠セ」
オーダイルも負けじと、再び巨大な水のエネルギー弾を発射する。
しかし今度は、カブトプスの鎌で真っ二つに切り裂かれてしまった。
「なっ…」
「もう、その技は通じませんよ」
「それはどうかな」
だが、マサシの言葉から力強さが感じられた。
懲りずに再びハイドロカノン≠発射した。
…が、今回はエネルギー球体のサイズが先ほどより二回りほど小さい。
「威力を下げたのですか?どうやっても同じです。ましてや、パワーを下げては…」
ハイドロカノンは、先ほどと同じように二つに切り裂かれた。
しかし…。
「(ニヤリ)」
マサシは、笑みを浮かべた。
たった今切り裂いた筈の水のエネルギー弾。
それと全く同じ物が、カブトプスの眼前に迫っていた。
「ハイドロカノン:瞬間連射2=v
マサシの得意技の一つ、瞬間連射だった。
不意に眼前に現れた2発目には全く反応できなかった。
「瞬間連射の、新たな姿を見せてやる」
マサシのその言葉を聞いて、リコナとカブトプスは警戒の姿勢を見せた。
今迄に使ったことの無い、全く新しい技で仕掛けてくることが予測できたからだ。
「行くぞ」
その言葉を合図に、オーダイルがこうそくいどう≠発動して間合いを詰めた。
それから一瞬の間を挟んで…。
ズドドドドドッ!!
至近距離から、5発の瞬間連射がカブトプスを吹き飛ばした。
「まだだ!!」
しかし攻撃は、それだけに留まらなかった。
吹き飛ばした直後に、今と全く同じ瞬間連射を再び繰り出してきたのだ。
その追加の5発も全て、カブトプスに直撃していった。
「瞬間連射の連続発動。成功だな」
「流石にやりますね。私も、本気で戦わなければ勝てる相手ではないですね」
「…」
解ってはいた。
自分が戦っている相手も、まだ全てを出し切っていない事など。
だが、改めて相手の口からその類の言葉を聞かされれば、少なからず動揺が全身を駆け巡る。
マサシもその微かな動揺に影響してか、表情を険しくした。
「オムスター、とげキャノン≠ナす!」
次に彼女が繰り出したのは、オムスター。
蝸牛のように、背中に巻貝のような甲羅を持っているポケモン。
しかし蝸牛とは異なり、甲羅に無数の棘が生えているのが特徴。
そして今、その全ての棘が輝き、光の弾丸を出鱈目に発射してきた。
「これだけの数、先程の技を使っても防ぎきるのは不可能です」
「防ぎきれなければ、避ければいい」
マサシの言葉から、力強さは消えない。
その言葉を発した瞬間には、オーダイルの姿がその場から消えていた。
背後から『バシャァァァッ』と言う音が聞こえ、オムスターはその方角に振り向く。
その場所では丁度、移動の為に発揮した超スピードの勢いを押し殺すオーダイルの姿。
「ハイドロカノン=I!」
そして再び、水系最強の技が牙を剥く。
だが、オムスターは身体を殻の中に引っ込めて攻撃を防御してしまう。
「オムスター、げんしのうず≠ナす」
「(げんしのうず=c!?)」
聞きなれない技名が耳に入った事で、マサシは全身で警戒の姿勢を見せる。
しばらくすると、先程のオーダイルの攻撃で地面に入り浸った水に異変が起こり始める。
少しずつ、微かにではあるが、オムスターを中心として水が渦を巻き始めていた。
「…!」
マサシの居る場所も、水に浸されている。
身の危険を感じたマサシは、近くの高い岩場に飛び移る。
その数秒後…。
オムスターを中心とした水の渦が、上空に上り詰めていく。
まるで、水の竜巻だった。
そしてその規模は徐々に拡大していき、オーダイルが飲み込まれていく。
「ぐっ…!?」
ギリギリ、マサシの居るところにまで攻撃の範囲は延びなかったが、吹き荒れる突風が凄まじい。
真正面から受ける強風に、マサシの髪の毛が思い切り後ろに引っ張られている。
「オーダイルーーーーっ!!」
竜巻の中に飲み込まれていったオーダイルに、必死に呼びかけている。
が、吹き荒れる暴風にその声は容易く掻き消されている。
やがて、竜巻の勢いは弱まって消え去る。
遥か上空から、オーダイルが落下してきた。
が、どう見てもバトルを続けられるような状態では無かった。
「クソ…」
これで、マサシの残りは2匹となった。
しかもその2匹とも、今リコナの繰り出しているオムスターとは相性が悪い。
「(とにかく、今の技だけでも何とかしないと…。もう一度あの技を使われたら、俺のポケモンじゃ耐え切れない…)」
必死に考え抜いた末に、マサシはボールを放った。
その中から出てきたのは…。
「任せたぞ、バクフーン」
自分の今居る岩場のすぐ傍に、バクフーンを繰り出した。
「どう言うつもりかしら?相性が悪いのを承知の上なのかしら?」
「…ああ。まずは、この地形をどうにかしないとな。バクフーン、オーバーヒート=I」
高い岩場の上から、地上の水が張り巡らされた場所目掛けて巨大な熱の塊を発射する。
その桁外れの熱量で、全ての水が一瞬で蒸発してしまった。
「これで、さっきの技は使えなくなった」
所々にある広い岩場を転々と飛び移りながら、マサシは喋る。
彼女も、マサシのその言葉を否定する素振りは見せない。
「凄まじいパワーですね。あれだけの水量を、一瞬で全て蒸発させるなんて…。よく鍛えられてる事が解ります」
「…」
「オムスター、とげキャノン=I」
再び、棘の形状をした光弾を連射してきた。
しかも今度は、バクフーンを包囲するように、全方向からその弾幕が向かってきている。
これでは、逃げ場が無い。
「バクフーン!!」
マサシは大声で叫んだ。
それと同時に爪先に力を入れて、思い切り後退する。
それを確認すると、バクフーンが自分を中心に炎をドーム状に形成する。
そしてその範囲もどんどん拡大していく。
炎の壁に阻まれてオムスターの光弾は、呆気なく消滅する。
「ハイドロポンプ=v
突如発射された、オムスターの水流。
それは容易に炎の壁を貫通し、バクフーンを吹き飛ばす。
「なっ…!?」
「読んでいましたよ。こんな風に防御をするということが」
「く…、そ…」
「オムスター、とどめです!とげキャノン=I!」
そしてとどめの攻撃として繰り出される、とげキャノン。
その弾幕はバクフーンを容易に吹き飛ばす。
更に吹き飛んだ先に居るマサシをも巻き込み、強烈なダメージを与えていく。
「がぁっ…」
全身に傷を負い、更に岩壁に思い切り背中から激突してしまった。
衣服の所々に紅い染みが滲みながら、マサシは地面に倒れていく。
その傷の度合から見て、バトルの続行は不可能だった。
Phase.13 休養
マサシが倒れた事で、リコナはホッと胸を撫で下ろした。
そんな折、彼女が持つ端末から音が発せられた。
「…?」
気になって画面を確認してみると、ランキング表に変動があった。
リコナの名前が46位に上昇しており、マサシの名前がその一つ下にダウンしていた。
「どうやら、勝てたみたい…」
リコナも疲労しているのか、その場で岩壁にもたれかかって座り込んだ。
それから数分、この空間は静寂に包まれた。
だが、唐突にこの静寂は破られる。
「バクフーン、ブラストバーン=I」
岩壁の向こうから、アヤの声が聞こえた。
その直後、巨大な火炎弾が先程広場を遮断していた落石の山を吹き飛ばす。
それに続くように、アヤとユキヤがこの場に突入してきた。
「…!! マサシっ!!」
傷だらけで倒れているマサシが視界に入った瞬間、アヤは即座に駆け寄っていた。
辛うじて意識は残されているが、全身に痛みが走って満足に身体を動かせない。
「マサシが敗けた………?嘘でしょ」
アヤも、この現実が虚構であると信じたかった。
だが、目の前のこの光景を疑う事も難しかった。
現に、マサシは意識が朦朧としている。
恐らく、アヤとユキヤが側に集まってきている事など気付く余地も無かった。
「ユキヤ、すぐにここを離れた方がいいわね。消耗した私達を、何時また別の敵が狙ってきてもおかしくないから」
「…ああ。ましてや、ここは平原のど真ん中に人工的に作られた山岳地帯。景色に溶け込める筈もない」
この場に留まるのは危険だと判断して、ユキヤがマサシを背負ってこの場を立ち去る。
それからしばらくして、リコナも意識を取り戻したチームメイトと共に、マサシ達とは別の方角へ歩き去っていった。
途中色々とあったものの、マサシチームの3人は何とか当初の目的地に辿り付く事が出来た。
この町の名前は、グレマタウン。
ヨハロ地方の中心地区からやや西に広がる草原地帯。
そこの中継地点として設けられた町だった。
アヤ達はとりあえず、先程の戦いで消耗しきったポケモン達を回復させるため、ポケモンセンターを訪れていた。
「だけど、マサシがあそこまでやられるなんて思わなかった…。あの場の状況を見た限りだと、アイツもかなり善戦したみたいだけど…」
「この予戦は、チームでの行動が原則。奴が負傷している以上、俺達はしばらくの間素早い動きが出来なくなる」
「じゃあ、やっぱりマサシが復活するまでこの町に留まるの?…少し危険だと思うけど」
「解っている!」
珍しく、ユキヤが口調を荒くした。
アヤはそれに驚いて、言葉を引っ込めてしまう。
「…済まん。だが、状況はかなり切羽詰っているのは事実だ。マサシがどの程度の期間で回復するのかは解らんが、最低でも1週間は動けないな」
「その間に私達よりランクが上のトレーナーとか、証を持ったトレーナーの情報を集められないかな…」
「このヨハロ地方は、広い。普通にこの地方全域を回るだけでも、半年以上は掛かる」
「…っ! そんな事って…」
ユキヤの言葉に、アヤはショックを隠しきれなかった。
だが、この直後アヤはふと疑問が浮かぶ。
「…ねえ、ユキヤ。あんたどうしてこの地方の事をそんなに詳しく知ってるの?」
「普通に気付かないか。俺は元々、この地方出身だ」
「え…。何でこの地方出身のトレーナーが、私達よそのトレーナーと同じ条件を満たさなきゃいけないの?」
「それをここで話す必要は無いだろう。それより、今の俺達に圧倒的に足りないのは時間だ」
「…そうね。仮にユキヤの話が本当だとしたら…。マサシの回復を待たずに今すぐにでも出発するべきだろうけど…」
「流石にそれは危険だ。リーダーが負傷している事が敵に筒抜けになれば、俺達の状況はどんどん悪くなる」
現状、待つ事しか出来ない今の状況に、アヤは苛々を募らせる。
が、そうした所でどうにもならないのもまた事実だった。
兎に角今は、マサシの回復を待つしかない。
3人はしばらくの間、グレマタウンに留まる事にするのだった。
目が覚めたら、俺は建物の中に居た。
身体には傷の手当をした痕跡があった。
何やら、足音が近付いてくる。
その音はこの部屋の扉の前で止むと…。
扉を開き、足音の主がこの部屋の中に入ってきた。
「マサシ、大丈夫?」
入ってきたのは、アヤだった。
マサシの身を案じて、度々様子を見に来てくれていたようだ。
目を覚ましたマサシは、当たり前の質問をぶつける。
「…アヤ。あれから、どれ位経ったんだ」
「3日。マサシ、結構やられてたけど…。身体の調子はどう?」
「大丈夫だ。3年前、ジョウト地方で天属性が覚醒してからというもの、傷の治りが早くなった。まだ十分なバトルをするには不安が残るが、動く分には何とも無い」
「良かった…。自分で立てる?」
「ああ」
一応アヤは肩を貸そうとした。
…が、マサシはその前に自分の力で起き上がる。
そして両腕を思い切り伸ばした。
「ところで、ユキヤは何処だ?」
「ユキヤは、町の周辺を探索してるわ。近くに私達よりランクが上のトレーナーが居ないか、探しに行ってる」
「…そうか」
と、噂をすれば何とやら。
丁度話題に上がっていた本人が、マサシの部屋に戻ってきた。
「お帰り。様子はどうだった?」
「無駄骨だ。こんな平原のど真ん中を、我が物顔で歩く馬鹿など見当たらなかった。やはり、俺達もそろそろ出発した方がいい。何時までもここにいたところで、他のトレーナーと遭遇する確率は低そうだ」
「ユキヤ、悪いが後一日だけ待ってくれ。明日になれば、万全の状態にまで回復すると思う」
「あまりのんびりし過ぎる訳にもいかんが、用心するに越した事はない…か」
結局、マサシ達は後1日だけこの町に留まる事になった。
翌日。
マサシは、普通に歩ける分には何の問題も無い位にまで回復した。
そして気分転換も兼ねて、街中で色々と話を聞いたりしていた。
…が、やはり然程信憑性のある情報は見付からない。
「マサシ、どう?」
肩を落としていたマサシの元に、アヤがやってきた。
情報収集の成果を尋ねてきたのだが、マサシの返答は『NO』。
アヤも、若干表情を曇らせた。
「…やっぱり、そう簡単には見付からないのね。このヨハロ地方は、とんでもなく広いんでしょ?」
「ああ。目算だが、このヨハロ地方は、シンオウ地方が4つ分は収まるくらいの広さだ」
「狽ヲ…。そんなに広いの!?」
「だから、マスターリーグ参加者に関する情報も集まり難いんだ。やっぱり、彼方此方を旅しながら他のチームと遭遇するのを待つしかないな」
「結局出たとこ勝負なのね?(呆)」
溜息を出しながら、アヤは呆れたように言葉を発した。
そんな状況下で、ユキヤが深刻そうな表情をして2人のところにやってきた。
「ユキヤ、どうしたんだ?そんな顔をして」
「ここから西に少し行った所にある湖の近くで、最近物凄いレベルのポケモンバトルをするトレーナー集団が現れたそうだ」
「「!」」
マサシとアヤも、その言葉を聞いた瞬間表情を変える。
それだけレベルの高いバトルをするトレーナーとなると、一つの可能性が見えてくる。
噂の的になっているトレーナー達が、マスターリーグに参戦している奴かもしれない…と。
「行くだけ行ってみるか」
そう言いながら、マサシは手荷物を整理している。
その噂の場所へ行く意欲を見せていた。
「だけどマサシ、傷は…」
「大丈夫だ。ある程度、身体が楽になった。余程の事が無い限り大丈夫だ」
「…それならいいんだけど」
とりあえず、マサシ達はその湖へ足を運んで見ることにした。
場所は、グレマタウンから西に少し行った場所に位置する湖…。
Phase.14 紛れ込んだ者
町からこの湖までは、然程距離は離れていなかった。
グレマタウン周囲に広がる平原。
その西部の一部に、小さな森林がある。
そこの最奥部に、その場所はあった。
「ここが、その湖か?」
3人は、湖の畔にやってきていた。
広がる景色は見渡しが良くて、湖の反対側まで見えていた。
この場から見渡す限りだと、それらしき人影は見当たらなかった。
「…もう、居なくなった後なのかな?」
「いや、探してみよう。もし大会参加者なら、ランクを上げるチャンスだからな」
今のところ、人影は無い。
3人は散開して、湖近くの雑木林の中を探す事になった。
「しかし、あんな噂まで立ってハズレだったら、笑い話になるな、本当」
とか何とか、一人で色々と考え事をしながらマサシは注意深く辺りを散策する。
だが、周囲から漂ってくる気配は静寂そのもの。
とても人が居るような感じは無かった。
「……。本当に、空振りかもな、ここ」
気配が全く無い為、マサシもやがてガセネタではなかったのかと言う焦りが出始めていた。
だからこそ、マサシは気付かなかった。
足元の草むらを這いずるように、『何か』が接近してきていた事に………。
少し離れたところで、ユキヤも同じように散策を続けていた。
…が。
「…チッ」
突然舌打ちをすると…。
ズガァァァァァッ!!!
突然、ボールからガブリアスを繰り出し、その腕で地面を殴り付けた。
それによって、地面が崩壊して砂塵が立ち込める。
そして砕けた地盤に紛れて、アーボックが気絶していた。
「既に俺達に狙いを澄ませていたか」
独り言のように呟くと、今度はガブリアスが腕を横一閃に振るう。
その腕が少し伸びたような感じで、砂塵が更に攻撃範囲を広くしていた。
それが、周囲の木々を次々と薙ぎ倒す。
その中に、雑木林を主な生息地とするポケモンが数匹紛れ込んでいた。
「そういう事か」
何かに感付いたかのように、ユキヤはグライオンを更に繰り出す。
そしてユキヤは、先に繰り出していたガブリアスの2匹に『ある物』を持たせた。
それを受け取ると、2匹はユキヤの元を飛び去っていく。
「…面倒な事になった」
独り言のように呟き、ユキヤも雑木林を抜け出すべく行動を開始した。
だが、此方は既に一足遅かった。
「これって…、待ち伏せ!?やられた…」
アヤは既に、ユキヤを襲った連中の仲間と思われるポケモン達に囲まれていた。
数はそれ程多くないのだが、1匹1匹から感じる威圧感は本物。
相当に鍛えられた『トレーナー持ち』のポケモン。
四方を囲まれたこの状況で、逃げ切るのは至難の業だった。
「ブーバーン、オーバーヒート≠地面に!」
アヤの指示を受け、ブーバーンが動いた。
トレーナーの指示通り、巨大な熱のエネルギー弾を地面に発射。
そのエネルギーは炸裂し、猛烈な熱風となって周囲の虫ポケモン達を吹き飛ばす。
戦闘不能にするには至らなかったが、それでも逃げ出すだけの隙を作り出すには十分だった。
アヤは即座にその場を脱出した。
そして、少し離れた場所にあった大木の陰に隠れた。
「あのポケモン達、完全に私達に狙いを定めてた…。他にも、あの噂を聞いてここに来る人達が居たかもしれないのに…」
色々と考えるが、埒が明かない。
自分達が狙われている事がはっきりしている以上、今するべき事は一つだけ。
「早く、他の2人と合流しないと」
と、そんな時だった。
アヤの頭上から、一匹のガブリアスが降下してきた。
その手に『何か』を持って…。
「貴方、ユキヤのガブリアスでしょ?何で、私の所に」
アヤの問いの答えを言葉で表現出来ない代わりに、ガブリアスはユキヤから渡された道具をアヤに手渡した。
それは、ボイスレコーダーと呼ばれる道具だった。
そしてその真意とは、ユキヤからの伝言があることを示していた。
「何かしら?」
気になって、録音されている内容を再生してみる。
『俺達は、まんまと嵌められた。あの町で流れていた『凄腕のトレーナーが居たと言う』噂自体が敵の罠だ。大会参加者ならば、そんな噂を耳にすれば必ずここに来るように、遠まわしに俺達をここに誘導していたようだ』
要点だけを告げると、それは機能を停止した。
「つまり、ここに私達と同じ大会参加者が潜んでいるわけね。急いでマサシと合流しないと!」
アヤもまた、マサシとの合流を目指して行動を開始した。
そして、そのマサシは…。
「…」
既に敵チームの3人が、マサシの視線の先に姿を見せていた。
が、マサシはいつも以上に警戒の姿勢を見せていた。
その理由は、向かい合う3人の誰も、チームリーダーの証である端末を所持していなかったからだった。
それはつまり、大会参加者ではない事を意味していた。
「誰だ、お前達は?」
「君はマスターリーグ出場者だな?しかも、チームリーダーだ」
「…ッ」
咄嗟にマサシは身構える。
それと同時に、モンスターボールも手に取る。
この3人組、直感的にヤバイ相手だと感じていた。
「大会出場者でもない奴らが、何故俺を…」
ふと、マサシの脳裏をよぎる昔の記憶。
ジョウトからの帰りに襲撃してきた、ダムラと名乗る男。
その男の言葉…。
「…マスターリーグ出場資格を得たトレーナーを無差別に襲撃していたあの時の男…。奴らの仲間か」
「! ほぉ、俺達の事を知っているのか。驚きだな」
「…昔、貴様達の仲間に襲撃された事があった。その時に聞き出しただけだ」
「成る程。外界に放り出された連中を退けるだけの力量は持っている訳か。…だが、君が退けた奴と俺達を同格視しないほうがいい。俺達は、奴らとは格が違う」
「(まさか、既にこの大会に紛れ込んでいたとは…。大会が始まって、まだ日が浅いこんな時期にやられる訳にはいかないな…)」
マサシは、手に持ったモンスターボールを空に放った。
中から飛び出したのは、フライゴン。
そして、ボールの中から出現すると同時に指示を出す。
「りゅうせいぐん=v
いきなりドラゴンタイプの中でも最強レベルの技を指示した。
指示を受けたフライゴンが天高く飛翔すると…。
隕石にも似た橙色の球状のエネルギー波を、無数に発射してくるのだった。
ズドドドドドドドンッ!!!
一発一発が地面に激突するたびに大爆発が発生し、辺り一帯に煙が充満していった。
To Be Continued
後書き
や、やっと完成した…。
何でか知らないけど、この話は完成するのに滅茶苦茶時間が掛かった…。
やっぱ、20kb越えの話を連続して続けててバテたのかなぁ…。−−;
とまあ、色々苦労はあったものの無事に完成。
リコナチーム戦は、最初は勝利で終わらせようと思ってたんですけど…。
途中で気が変わったので敗北戦闘に(待て)。
つまり、このマスターリーグ篇のバトルは一部を除いて勝敗の行方は僕の気分次第♪(爆)
なので、読者の皆様には勝敗の推測は非常に難しいと思われます(ぇ)。
さて、次回は大会に紛れ込んだ謎の集団とのバトル。
………と見せかけて、次の展開に移行します。
ぶっちゃけ、四六時中バトルシーンばっかりじゃ僕の気力が持ちません(何)。
まあとりあえず、今は次の話に集中します。
それでは、第5話もお楽しみに。
[一言感想]
あ、ほんとに負けた(汗)。
しかし、大会開催地としての範囲は想像以上に広大のようですね。
旅のような形で大会が進む、というのもなかなか面白いと思います。
少なくとも普通の勝ち抜き戦よりもメリハリがありそうなので、楽しみです。