まさか、既にこの大会に潜り込んでいたとは…。

 奴らの実力が未知数である以上、出来るだけ戦いは回避するべきか…。

 兎に角今は、この場所から離れる事が先か…。

 アヤ、ユキヤ…。無事で居てくれ!






COM マスターリーグ篇
第5話
1つ目の証(前編)







 Phase.15 手掛かり




 りゅうせいぐん≠ナ生じた爆発に紛れて、マサシはこの場を脱出。
 爆煙で視界を遮られた敵は、マサシの姿を見失った。

「あの一瞬で大技を繰り出すとはね…。まんまと、してやられた」

「何言ってるんだか。貴方だったら、あの程度の反撃など意に介さず戦えた筈だよ?」

「無茶を言わないでくれ。幾ら僕でも、あんな攻撃を間近で喰らったら危なかった。やっぱりあの少年、チームリーダーだけあって相当な実力者だ」

「それで…、これからどうするつもりなのかしら?見す見す目の前で敵を逃すなんて」

「彼には、『マスターリーグに出場できたから自分は相当の実力を持ってる』なんていう、程度の低い慢心は無いよ。だから最初僕達と相対した時も、警戒の姿勢を崩す事は無かった」

「ふ〜ん…。さっきの彼、そんなに凄いんだね」

「ああいう手合いは、一番厄介だよ。今回の件は無かった事にして、次の場所に向かおう」

 3人の中で、リーダー格と思われる黄土色の髪の男性はそう語ると、その場に背を向けて歩き始める。

「次って、何処に行くのさ?」

 残りの2人、真紅の髪の毛の女性と、彼女より少し背の低い少年も後に続く。
 真紅髪の女性の問い掛けに対し、彼は…。

「リミアシティ。大会側の放った、予戦突破の為の『証』を持つトレーナーが居る町だ。そこに、大会出場者は集まる筈だ」

「OK」

 後ろの2人も頷くと、彼の後を追うようにこの場を去っていく。
 そして辺りには誰も居なくなり、静寂だけが取り残された。


 …しばらく時が流れて、突如この場所の地面が盛り上る。
 そして地面を突き破ってフライゴンが空中に飛び出した。
 その背には、マサシが乗っていた。

「(あいつ等からは、底知れない『何か』を感じた。やはり、身を隠すことで凌いで正解だったか…。それにしても…)」

 地面の下に潜んではいたが、先程の彼らのやり取りはマサシも聞き取る事が出来たらしい。
 そしてその中でマサシの気を集中させる発言があった。

「(リミアシティ…。そこに、『証』を持ったトレーナーが、居る…。場所は…)」

 色々と考えつつ、マサシは端末のマップ機能で場所を確認する。
 すると…。

「(場所は、グレマタウンから北西に少し進んだ辺り…。ここからだと、丁度真北の位置か)」

 位置を確認すると、フライゴンに指示を出してこの場を飛び去る。
 湖畔まで飛行すると、フライゴンは降下する。
 背から降りてボールに戻すと、マサシは周囲を見渡し始める。
 すると…。

「マサシーーー!」

 遠くから声が聞こえた。
 声のした方角を振り向くと、遠くからアヤが駆けつけてきていた。
 その少し後ろに、ユキヤの姿も見受けられた。



 こうして、マサシ達3人は無事に合流する事が出来た。
 そしてマサシは、盗み聞き(ぇ)で得た情報を2人に話していた。

「その話、マサシに仕掛けてきた連中が言ってた事なんでしょ?信じられるの?」

「いや、少なくとも奴らは俺が地面の下に潜んでいた事に気付いている様子は感じられなかった。多分、嘘は言っていないと思う」

「どっちにしろ、真偽を確かめる方法は一つだけだ」

「直接、そのリミアシティって言う場所に行ってみるしかないわね」

 3人の意見は一致した。
 次の目的地は、現在地から北に進んだ場所に位置する町・リミアシティ。







 Phase.16 最初の関門





 湖からシティへの道中、特に難は無かった。
 強いて言うなら、この地方に生息する野生のポケモンと何度か戦ったという程度。
 この地方では、野生ポケモンといえど油断のならない強さを身に付けている。

 だが、マスターリーグ出場者たる彼らからして見れば、大した障害にはならなかった。
 寧ろトレーナー相手と比べれば、どれ程楽だったものか。

「だけど、油断したら負けてたわね。ヨハロ地方の野生ポケモン、予想以上だったわ」

「だが逆に言えば、あの程度で苦戦するようじゃ、この予戦を勝ち残る事は出来ないって事だ。それに、『証』を持つトレーナーの実力だって全くの未知数なんだからな」

「…そうね」

「見えてきたぞ」

 マサシとアヤの会話を遮るかのように、ユキヤが割り込んできた。
 彼の言うとおり、一つの町が3人の視界に入ってきた。
 高層ビルが立ち並ぶ、典型的な都会だった。
 地上から見てもその町の面積は相当に広い事が伺えた。

「あれがリミアシティ…か」

 マサシ達は、遂に一人目の『証』を持つトレーナーの居る町にたどり着いた。







 町に到着した彼らは、まずポケモンセンターで腰を落ち着かせる事にした。
 というのも、ここに来るまでにポケモン達が大分力を消耗していたからなのだが…。

「この町に、そのトレーナーが居る。よその地方で言う、ジムリーダーみたいな存在なんだろう」

「そうね…。だとすると、相当の実力を持っている事になるわね。勝てるのかしら…」

「勝つしかない。でなければ、俺達はここで終わる」

「とりあえずポケモン達が回復したら、その場所に行ってみるか」

 3人は互いに首を縦に振ったのを確認した。
 しばらくして、ポケモン達は全快の状態でマサシ達の元に戻ってきた。
 決意を新たに、3人は証を持つトレーナーの居る場所に向けて歩みだした。





 ズドォォォォンッッ!!



 遠くから、物凄い爆発音が聞こえた。
 その場所ではマサシ達同様、マスターリーグに参加したチームが一人のトレーナーと戦っていた。
 凄まじい事に、相手は一人で戦っているというのに相手チーム3人全てを相手に圧倒的な強さを見せ付けていた。

 だが、チームの3人も決して弱い訳ではなかった。
 3人の手持ちのポケモン全てが、申し分の無いほどに鍛えられており、その3人の連携にも一切の隙が無かった。
 ただ………。



 そう、それは実に単純な話。
 彼らの戦っている相手が悪すぎた事。
 自分達より一回りどころか、二回り以上も格が上の相手に、その連携も一切の意味を為さなかったのだ。
 そして、今…。

「はかいこうせん=v

 そのトレーナーの攻撃が、3人を襲う。
 これが決定打となり、そのチームは全滅となってしまった。

「ぐっ、強すぎる…。俺達の連携が、全く通用しないなんて…!」

「君達の連携は、確かに凄かったよ。だけど、君達の戦いはその連携に頼りすぎていた。それ以外の戦い方で仕掛けてこなかったのが、敗因だね」

 3人に勝利した、爽やかな外見の青年が諭す。
 彼らは表情を悔しさで埋め尽くし、この場を走り去っていった。

「さて、今日は随分と忙しい1日になりそうだ。次の相手は、君達かな?」

 彼は視線はそのままに、近くに居る『誰か』に対して語りかけた。
 その彼の背後に、彼らは居た。
 マサシ達が、決意を固めてこの場所にやって来ていた。

「ようこそ。僕はトウク。マスターリーグ予戦突破の為の、証を持つトレーナーの一人」

「…?証を持つトレーナーも、俺達同様3人のチームを組んでいる訳じゃないのか?」

 ふとした疑問を、マサシはぶつけた。
 すると、彼の回答は…。

「ああ、僕達は全員一人ずつさ。君達は3人纏めて僕と戦ってもいいし、一人ずつ僕の相手をするのもいい。単純な話、どんな手を使ってもいい、僕を倒すことが出来れば君達の勝ちという訳さ」

「…」

 トウクの説明を頭に入れて、マサシは一瞬表情を曇らせた。

「(相手は一人だが、俺達3人纏めて戦っても良いと言って来た…。こいつ、複数人相手でも勝つ自身があるのか…?)」

「ちなみに言っておくよ。さっき僕が倒したチームだけど…。彼らは、3人総がかりで僕に挑んできていたよ。予戦内ランクは、28位のチームだよ」

「「「…!!」」」

 その発言に、マサシ達3人が冷や汗を流した。

「俺達より、19位もランクが上のチームの総がかりを相手に勝ったのか…」

 マサシの表情は、更に険しくなる。
 だが不意に、ユキヤがマサシの一歩前に出る。

「ユキヤ…?」

「俺が様子を見る。お前はここに居ろ」

 そういい残すと、ユキヤが飛び出す。

「メタグロス」

 走りながらボールからメタグロスを繰り出し…。

「コメットパンチ=v


 ドガァァァァンッ!!
 初撃から、いきなりの大技を繰り出した。

 だがそのパンチは、トウクを捉えてはいなかった。
 ただ地面を打ち砕いただけの結果に終わる。

「…」

「リザードン」

「!」

 次のトウクの声は、空から聞こえた。
 上を見上げると、紅い色を持った巨躯の竜とも言うべきポケモン、リザードンが空を飛んでいた。
 その背に、トウクの姿が在る。

「灼熱波動=v

 トウクの指示を合図に、リザードンが口を開く。
 そこから、高熱を持った強烈な衝撃波が真下へ向けて発射された。

「ラスターカノン=v

 上空から迫る衝撃波目掛けて、鋼属性のエネルギーを集めた光線で攻撃する。
 二つの攻撃が正面からぶつかり合い、爆発が生じた。
 だが、相手の攻撃はそれを突き抜けてメタグロスに襲い掛かる。

「…ッ!?」

 結果的に、メタグロスはリザードンの攻撃をまともに浴びてしまった。
 この一撃を貰っただけで、メタグロスはダウンしてしまった。

「そんな…!?」

「ユキヤのポケモンが、一撃でやられた…!?幾ら相性で不利だったといっても、そんな事が…」

 目の前の光景に、マサシとアヤの2人は息を呑むばかりだった。







 Phase.17 VSトウク





 いきなり自分のポケモンが1匹倒されてしまったというのに、ユキヤには動揺している素振りは無い。
 即座に次のモンスターボールを手に取って、バトルを再開する。

「バンギラス」

 ユキヤが2匹目に繰り出したポケモンは、バンギラス。
 ボールから飛び出すと同時に、極太の紅き光線を発射した。

「はかいこうせん≠ゥ! リザードン!!」

 リザードンは、先程メタグロスをKOした技で迎え撃つ。
 だが、押し切れない。
 バンギラスのパワー攻撃を、ギリギリで食い止めることしか出来ないでいた。

「…ッ! へぇ、中々やるね」

「…つじぎり=v

 ユキヤは不意を衝き、背後からグライオンに攻撃を仕掛けさせる。
 だが、トウクはそれを見切っていたようで、バンギラスへの攻撃を中断し、尾でグライオンをなぎ払う。

「シザークロス=v

「フレアドライブ=I」

 グライオンは、X状の閃光と共に斬撃を繰り出す。
 それに対してリザードンは炎を纏い、捨て身に近い突進攻撃。
 二つの攻撃は真正面からぶつかり合い、先ほどより更に巨大な爆発が発生。

 そしてその結果は…。

「な…、に…」

 結果は、グライオンの敗北。
 リザードンの攻撃に打ち負けて、地上に墜落した。
 そのダメージの大きさから考えて、明らかに戦闘不能だった。

「オイ…、ユキヤのポケモンが2匹連続でやられるなんて…」

「この人…、強い!」

「…」

「ユキヤ、一人じゃ無理だ!」

 マサシはユキヤの側に駆け寄る。
 そして同時にフライゴンを繰り出す。
 力強く飛翔して、振り上げる形でドラゴンクロー≠繰り出す。

「甘いよ!」

 だが相手のリザードンは、それを余裕の表情で回避。
 回避された事でフライゴンはリザードンに隙を見せる事になってしまう。
 そこへ炎を灯した尾を力強く打ち付ける。
 ドゴォォォッ!!


 打撃の瞬間、フライゴンは腕で攻撃をガードしていた。
 しかしそれでも吹き飛ばされる勢いは防ぎきれず、後方に身体が投げ出された。
 静止したところで、改めて敵のリザードンを見据える。

「(やっぱりこいつは、半端じゃなく強い…!このままじゃ…)」

「バースト・メテオ=I」

「!?」


 ズドォォォォンッッ!!


 それは、突然の出来事だった。
 突如上空から、隕石の如き巨大な火球がトウクのリザードンに直撃した。
 トウクが攻撃の飛んできた方角を見据えると、其処には…。

「アヤか!?」

「そうよ。でんこうせっか≠利用した大ジャンプ。そこから特大の火球を隕石のようにして繰り出す技」

「(だが、既に上空に居るリザードンの更に上となると、相当な身体能力とでんこうせっか≠ノよる加速が必要になる筈…。アヤの奴、俺のポケモン達のスピードに対抗する事を徹底している)」

 攻撃を仕掛けて、バクフーンは地上に着地。
 だが、相手のリザードンには対してダメージを与えられていない。

「流石に、あの程度の攻撃じゃ通用しないわね」

「あの程度ってお前、今の技は4年前の大会の時使ったバースト・ストライク≠謔閧クっと威力が上だったぞ!?」

「勿論、あの技は昔より更にパワーアップしてるわよ」





―――まあ、私達の真価はそれだけじゃないんだけど。

―――だけどあれは、こんな所で使う訳にはいかない。

―――だから今は…。





「フライゴン、りゅうのはどう=I」

 マサシは引き続き、フライゴンで攻撃を仕掛ける。
 だが、単調な攻撃は全てリザードンに掻き消されてしまう。
 どれだけ強い攻撃を繰り出しても、それを難なく打ち消してしまう。

 決定的に、マサシ達は攻撃力が不足していた。

「くそっ、このままじゃ勝ち目が無い…!」

「私がやってみる。何とか攻撃を食らわせられるように、援護をお願い」

「…解った。ユキヤ、フライゴンとガブリアスの連携で行くぞ」

「成る程、そういう狙いか」

 ユキヤもマサシの考えを理解した様子でガブリアスを繰り出す。
 そしてフライゴンの横に並び、改めてリザードンと向き合う。

「俺はお前が存分に戦える舞台を用意するだけだ。後は任せるぞ」

「要らん心配だ。俺のポケモンが、3度までも容易に倒されることなど無い」

「なら行くぞ!フライゴン、すなあらし=I!」

 フライゴンが雄叫びをあげて、翼を力強く、大きく羽ばたかせる。
 それにより、大量の砂塵を巻き込んだ巨大な竜巻を発生させる。
 その渦の中心に、リザードンを閉じ込めた。

「そんな事をしても、リザードンには通用しないよ」

 いつの間にか、トウクは地上に降りてきていた。
 砂嵐に襲われる直前にリザードンから下りたようだ。

「甘く見ない方がいい。ユキヤのポケモン達は、すなあらし≠ニいう天候の時にこそ真価を発揮するからな」

「…?」

「やれ。ドラゴンクロー=v

 ユキヤの指示が飛んだ瞬間…。





 竜巻の中で、無数の閃光が縦横無尽に迸った。
 無論それがガブリアスによる攻撃である事は言うまでもなかった。

「俺のポケモンは、砂嵐の中へ完全に姿を溶け込ませる。無論、相手からすれば姿が見えないまま攻撃を喰らい続けることになる。それも、全方位からだ」

「成る程…。だけどそれで倒せるほど、僕のリザードンは弱くない。バーストインフェルノ=v

 竜巻の中から外に向けて、橙色の閃光が無数に迸る。
 その直後…。
 ズガァァァァァッッ!!


「…ッ!?」

 巨大な大爆発が巻き起こり、竜巻を吹き飛ばす。
 無論、その中に姿を溶け込ませていたガブリアス諸共。

「馬鹿な…!たった一度の技で、破られた…!?」

「だが、十分だ」

 そう喋りながら、マサシは後ろに視線を向ける。
 そこには、パワーを貯めて準備を終えたバクフーンの姿。
 そしてその傍らには…。

「時間稼ぎ有難う。これで行けるわ!」

「…!(何だ…!?あのバクフーンの凄まじい力…!!)」

「これでも喰らいなさい!バースト・ストライク=I」

「リザードン、フレアドライブ=I!」

 両者共に、強烈な炎を身に纏って真っ向からぶつかり合った。
 その激突は凄まじく、爆風と衝撃波が四方八方に拡散していく。
 そんな凄まじい爆発の中で、2匹は互いに己の力全てを賭けたパワー勝負を続けていた。

 2匹とも歯を食い縛り、目の前に居る敵を打っ飛ばす事だけを考えていた。
 そして、勝敗は決する。

「…!」

 立て続けに連続で爆発が発生し、マサシ達は一度距離を開いた。
 その後、2匹のポケモンが地上に落下した。

「あ…!」

 結果は、相打ち。
 アヤの最強の攻撃を繰り出して、漸く一矢報いる事に成功するのだった。







 Phase.18 そしてバトルは激化する





 バトル開始から、既に10分ほどが経過した。
 しかし、彼らの体感している時間は更に長く感じている。
 それほどこのバトルは激しく、相手が強いことの証明だった。

「驚いたな…。さっきのチームは、1匹も僕のポケモンを倒せなかったのに…」

「だけど私は、ここでリタイアだわ…。最強の技を使って、相打ちに持ち込むのが精一杯だった以上、これ以上は…」

「そうか………。 となると」

「俺とマサシで、奴の相手をする事になるわけか」

「だが、そう簡単に勝てる相手じゃないぞ、こいつは…」

「どうしたんだい?来ないのかい?」

「…フライゴン、はかいこうせん=I!」

 フライゴンは、直接紅い光線をトウク目掛けて発射する。
 それに対してトウクは、新たなボールを手に取り一言。

「メガホーン=v

 トウクの眼前に巨大な一本角を持つポケモンが姿を現すと、その角で破壊光線を受け切ってしまった。
 当然、トウク自身にダメージは全く無い。
 そして、今攻撃をガードしたポケモンも…。

「ヘラクロス…!そいつが、フライゴンの攻撃を…」

「そう。僕のヘラクロスのパワーは、さっきのリザードンの比じゃないよ。行け、メガホーン=I!」

「フライゴン、すなあらし=I!」

 即座にフライゴンに視界を塞がせる。
 突然巻き起こった砂塵に、ヘラクロスの攻撃の手が止まる。

「「ドラゴンクロー=I」」

 マサシとユキヤが、同時に同じ技名を指示する。
 マサシのポケモンフライゴンと、ユキヤのポケモンガブリアス。
 この2匹が横並びにヘラクロスに接近し、同時に爪の一撃を叩き込んだ。
 ズガァァッッ!!

 2匹とも、ヘラクロスの脇を通り抜けながらの一撃だった。
 そしてそれは、不意を衝く形で完璧に決まった。
 だが…。

「…!」

 そう、確かに2匹の攻撃はヘラクロスに懇親の一撃を叩き込んだ。
 なのに、ヘラクロスはビクともしていない。
 何食わぬ表情で、此方に振り向いて来た。

「…ッ!!」

 その様子に焦ったのか、マサシは真正面から勝負を挑む。
 途中、フライゴンから白銀色のエネルギーが溢れ出す。

「能力回帰:第3段階<サードレベル>! サンドソニック=I!」

 マサシの指示と共に、再びフライゴンが力強く翼を羽ばたかせる。
 砂嵐を発生させると共に、今回はソニックブーム≠燒ウ数に放っている。
 ソニックブームは砂嵐を突き抜け、黄土色の衝撃波に外見が変化。

 否、変化したのは外見だけでは無かった。

「ヘラクロス、インファイト=I!」

 向こうは、格闘タイプの大技で勝負を挑んできた。
 得意の格闘技で向かってくる攻撃を弾き飛ばそうとした。



 だが結果は、逆にヘラクロスの方が吹き飛ばされる形で終わった。
 トウクにしてみても、この結果は予想外だったらしく、驚きの表情を見せていた。

「信じられない…。ヘラクロスが打ち負けるなんて…」

「今だ!!!」

 突如マサシは叫び声を出す。
 その意図を即座に理解したフライゴンは、上空へ飛翔する。
 そして…。

「りゅうせいぐん=I!」

 上空からの大技。
 無数の流星の如きエネルギー球体が、ヘラクロス目掛けて襲い掛かる。

「ヘラクロス、ブレイクホーン=I」

 それに対して、ヘラクロスは巨大な白い角状のエネルギーをヘラクロスの角から発生させると…。
 ブゥンッ!!


「な…っ!?」

 それを軽く振るっただけで、りゅうせいぐん≠掻き消してしまった。

「俺の勝ちだ」

 大技を破られたというのに、マサシは自身の勝利を確信していた。
 というのも、ヘラクロスが攻撃モーションを終えたその瞬間、フライゴンがヘラクロスの目の前にいたからなのだが…。

「…!?」

「そろそろ俺も本領発揮しないと本当に勝てそうに無いからな。使わせてもらう」

「何の話だ…!」

「第3段階<サードレベル>:アークスペイザー=v

 マサシはその指示を出すと同時に、フライゴンの口元にエネルギーが収束する。
 それはヘラクロスが触れるかどうかギリギリの間合いで収束していた。
 その膨大な密度を見て、咄嗟に回避しようとしたのだが…。
 それよりも早く、フライゴンの攻撃が放たれていた。

 ヘラクロスは何の抵抗も出来ないまま、その攻撃の光に飲み込まれていった………。

「戻れ、ヘラクロス」

 吹き飛ばされたヘラクロスを、トウクはボールに戻す。
 戦闘不能だという事を理解しているかのような行動だった。

「くっ…」

 相手のポケモンを倒したというのに、マサシの表情からは険しさが消えない。
 それどころか逆に、どんどん焦り始めているようにも見受けられる。

「(第3段階<サードレベル>とは言え、スペイザーまで使う羽目になるとは…!かと言って、こんな所で究極段階<エクストラレベル>を使うわけにもいかない…。どうする…)」

「…」

 マサシの様子が明らかにおかしい事を察したユキヤは、マサシの一歩前に出て…。

「下がっていろ」

 マサシにそういい残し、再びトウクと対峙する。

「ユキヤ…?」

「何をそんなに動揺しているのか知らんが、少し冷静になれ。その間、俺が奴の相手をする」

「………、解った」

 一度深呼吸をして、この場はユキヤに任せる選択をした。
 そのままマサシは一歩後ろに下がった。

「マサシ、大丈夫?」

 横から、アヤが声を掛けてきた。
 アヤもまた、ユキヤ同様マサシの表情のおかしさに気付いていた様子で、心配そうな声を発した。

「大丈夫だ。少し、焦ってた」

「焦る?さっきの感じだと、結構マサシが優勢だったじゃない」

「能力回帰の第3段階<サードレベル>とスペイザーまで使って、相手の2匹目をやっと倒せた位なんだ…。まだ予戦が始まって間もないのに、『奥の手』を使うわけにはいかないって、それで焦ってた」

「そうよね…。私も能力回帰の凄さはよく知ってるけど、第3段階<サードレベル>まで使ってやっと倒せたのが、相手の2匹目じゃ…」

「兎に角、今はユキヤに任せるしかない。あいつも全力を出せば、このまま勝てるかもしれない」

「…今は、見守るしか無いわね」







 ユキヤは、先ほどと同じくガブリアスをバトルに出している。
 更に言えば、破壊爪<デストラクションエッジ>まで発動している状態。

 それに対してトウクは、新たにリングマを繰り出している。
 相手のリングマのパワーは相当凄まじい。
 だが、ガブリアスは機敏な動きと巧みな格闘戦で互角に渡り合っている。

 事実、先ほどからガブリアスはリングマの物理攻撃の直撃を全て避けている。
 が、それでも攻撃による衝撃は凄まじく、それが少しずつガブリアスの体力を削っていた。

「…チッ」

 ユキヤが不意に、舌打ちをした。
 このまま戦いが長引けば、ガブリアスの体力が尽きるのは時間の問題だという事を、理解していた。

「君のガブリアスは強いね。リングマと接近戦でここまで渡り合えているんだから」

「破壊爪<デストラクションエッジ>…、腕<ブロウ>=v

 突如、ガブリアスの破壊爪<デストラクションエッジ>に変化が。
 爪先に纏っていたエネルギーが突如増大、ガブリアスの腕全体を覆っていった。

「消えろ」

 独り言のような声でそう呟くと…。
 ヒュッ ドゴンッ!!

「!?」

 一瞬姿が消えたかと思うと、刹那の間を挟んでガブリアスの右腕がリングマを強襲していた。
 リングマは両腕を交差させて攻撃を凌ごうとした。
 だが、ガブリアスの超絶なパワーでどんどん身体が押されていく。
 そして、この戦いの影響で降り注いできた瓦礫の一つに背中からぶつかり…。



 爆発したかのように、その瓦礫が粉々に砕け散った。

「…」

 リングマはその際受けたダメージによって、ダウン。
 ガブリアスも全ての力を使い果たしたような感じで倒れていった。
 これで、相手のポケモンは残り半分となった。

「凄い…。破壊爪<デストラクションエッジ>が、進化してる…」

「これで、貴様の手持ちは残り半分。そろそろ、決着を付けさせてもらう」

 マサシチームVSトウク。
 バトルの展開は、一切予測が出来ないほどに激化している。
 そしてバトルは、終盤戦に差し掛かっていく…。




 To Be Continued






後書き
疲れたぁ〜〜!! 今回の話、途中ある程度書き進んだところで内容が気に入らず、1から書き直しました。
なのでいつもの倍以上の疲れが…。
そして、このシリーズでは恒例となった容量20kb越え。大分この長さにも慣れてきました(ぇ)。
にしても、どうしても区切りの良いところで終わらせることが出来ません。−−;
このバトルも次回の中盤辺りで終わっちゃいそうだし…。
まあ、大して気にすることでもないか(オイ)。

とまあ、色々と苦難の続きそうなこのマスターリーグ編ですが今後ともよろしくお願いします。
では、第6話をお楽しみに。

 

[一言感想]

 バトルは確かに激化してきました。
 より強力な敵も次々登場しそうですが、とはいえ戦いでは単純に攻撃のやりとりだけでなく、お互いに考えてる事の意見のやりとりが混ざると、なお盛り上がると思います。
 戦いが続けざまになると、単純に消化試合的なものが増えてきそうな気がするので、1つ1つの戦いに意味を持たせてほしいかも。

 

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