マスターリーグ予戦を勝ち抜く為に必要な4つの『証』。

 俺達は今、その証を持つトレーナーの1人と戦っている。

 だけど、正直言って俺達の想像を遥かに超える強さだ。

 それでもこんな所で負けられない。

 俺達はまだまだ、上を目指せるはずだから。






COM マスターリーグ編
第6話
1つ目の証(後編)





 Phase.19 後半戦





 伝説の地、ヨハロ地方の北西エリアの一端に存在する大きな町、リミアシティ。
 今この町で、マサシ達の壮絶な戦いが繰り広げられていた。
 相手トレーナーの名はトウク。
 マスターリーグ予戦を勝ち抜くのに必要な、4つの証を持つトレーナーの1人。
 その彼と相対しているのは、マサシ・ユキヤの2人。
 既に全力を出し切ってリタイアしたアヤは、少し離れたところでバトルの行方を見守っている。

 そして現在、マサシ達は3匹のポケモンを撃破。
 だが、ここへ来るまでにマサシチームも相当消耗している。
 更なる強敵が控えているであろう後半戦、その幕が上がる。

「……ガブリアス!」

 ユキヤは引き続き、ガブリアスで戦いを続行。
 対するトウクはベトベトンを繰り出す。

 相性だけで見れば、ユキヤが圧倒的優勢に見える。
 ………だが。

「なっ…!?」

 信じられない光景だった。
 ベトベトンが繰り出したダストシュート≠フ一撃でガブリアスはダウンしてしまった。

「ダストシュート≠ヘ、毒タイプの中では最強クラスの威力を誇る技。それでも、相性で不利だった地面タイプを持つガブリアスを一撃とは…」

「…」

 今迄ポーカーフェイスを崩さなかったユキヤの表情からも、俄かに動揺している様子が伺える。
 やはり、先程の光景が余程インパクトが強かったのだろうか…。

「ユキヤ、残りの手持ちは何が残ってる?」

「バンギラス ボスゴドラ サンドパンだ。俺の手持ちも、後半分だ」

「俺は、さっきフライゴンがスペイザーを使ったから…。こいつ抜きで数えて、後5匹だ」

「ここまでの流れで、あいつは既にリタイアし、俺達2人で合計4匹がやられている事になるか」

「チッ、少しまずい流れかもしれないな…」

 そう喋りながら、マサシは額の冷や汗を拭った。
 そうしながら、新たにモンスターボールを一つ手に取る。

「(あのベトベトン相手に接近戦は、少し分が悪いか…。それなら)」

 今、マサシは相手のポケモンを見据えながら、繰り出すポケモンの選定を行っていた。
 そして。

「ここはお前に賭ける。頼むぞ!」

 マサシが次に繰り出したポケモンは、バクフーンだった。
 背中からも炎を噴出して、気合が入っている事を体現していた。

「行け、かえんほうしゃ=I!」

 バクフーンは、懇親の炎をベトベトン目掛けて発射する。
 ベトベトンはダストシュート≠放ち、バクフーンの炎を迎え撃つ。
 先程、ユキヤのガブリアスをこの技の一撃で倒したことから、そのパワーは実証済み。
 しかしバクフーンのパワーも、ベトベトンの攻撃に一歩も劣らない。
 と思ったが、バクフーンは既に限界近くまで力を発揮している様子。

 それに対してベトベトンの方は、まだ若干の余裕を残しているような感じ。
 やがて、少しずつではあるがバクフーンの攻撃が押し返されてきている。

「何てパワーだ…!第3段階<サードレベル>のかえんほうしゃ≠押し返してきているっ…!こうなったら…」

 突如、バクフーンは攻撃を中断してジャンプする。
 そして、更に力を貯め始める。

「オーバーヒート=c…!」

 先ほどよりも更にパワーの増した炎を圧縮し、ベトベトン目掛けて発射。
 それはベトベトンに的確に命中し、その火球は一気にエネルギーを膨張させて巨大な火柱に形を変えた。
 ズドォォォォッ……!



 文字通り、バクフーンの全力を込めた一撃だった。
 マサシも今の攻撃に、手応えを感じていた。
 倒すまでには至らずとも、少なからずダメージを与えている…と。

 マサシの予感は当たっていた。
 ベトベトンの全身の所々に火傷の跡が目立つ。
 だが不思議に思ったのは、そこまでの傷を負っているのにベトベトンの呼吸が全く乱れていないと言う事。
 警戒して、バクフーンに距離を開かせた。

「あんまり効いてる様子は……、無さそうだな」

「『オッカの実』」

「…?」

 突如トウクが口にした、何かの木の実の名前と思われる言葉。
 一瞬マサシは首を傾げるが…。

「オッカの実って確か、炎技が効果抜群になる際、威力を弱める木の実だったな。だが、ベトベトンは毒タイプ。オッカの実を持たせてあったとしても、何の意味も無い筈だ」

「……なげつける≠ゥ」

 ふと、横でユキヤが口を開く。
 トウクもユキヤの発言を肯定するように、小さく頷く。

「なげつける≠ヘ、持っている道具によって効果と威力が変化する技…。 …そういう事か」

 マサシも漸く答えに行き着いた様子で、視線を鋭くした。

「そう、オッカの実をなげつける≠ノ使ったことでバクフーンの技の威力を軽減させる事が出来たのさ」

 実際そんな事が出来るかどうかは不明なんだけどね…。−−;
 まあ、この作品だから出来たという事です(何)。

「だが、もう同じ手は使えないだろ。確かに威力が一番でかいオーバーヒート≠フ一発目で大した成果を出せなかったのは痛手だ。だが、今度のは防ぎきれるか!!」

 マサシの表情から、自信は消えていない。
 すると、バクフーンから膨大な熱と共に橙色の光が発生。
 見ただけで、とんでもない大技を使ってくることが安易に予測できた。

「(何を仕掛けてくる…!)」

 尋常ではないバクフーンの力の増大に、少なからずトウクも警戒の姿勢を見せる。
 そして、攻撃の準備は整った!

「オーバーダウン=I!」

 マサシが技名を口にすると同時に、バクフーンが炎を発射。
 その途中、紅蓮色の輝きを発する炎に、更に銀色の輝きも混ざり合う。
 だが、相手も黙って見た目からして危険な攻撃を喰らうほど馬鹿ではない。
 咄嗟にベトベトンにとける≠指示して、徹底した防御姿勢を見せる。



 だが…。
 トウクはすぐに悟る事になる。
 この技の前に、この程度の防御が如何に無意味であったのかを。
 どれほどの破壊力が、この技に秘められていたのかと言う事を。

「…ッ!!(駄目だ…、防ぎきれ…)」

 その事を心の中で叫んだ瞬間…。



 ズドォォォォォンッ!!



 ベトベトンを中心として、炎がドーム状に形を変えて膨大していく。
 そしてそれが臨界点を超えて一気に炸裂。
 途轍もない爆風が一同を襲った。







 Phase.20 回想 修練の経過





 バクフーンの超威力の技が炸裂し、ベトベトンはダウン。
 だが、その反動によるダメージも半端なものではなく、バクフーンもまた倒れ伏した。
 そんな中、マサシの脳裏には修行していた頃の記憶が甦る。
 この技、オーバーダウン¥K得の切っ掛けとなった頃の記憶………。







 今から遡る事数年前。
 マスターリーグでの戦いのために、修行に明け暮れていた頃。
 この日も、いつも通り究極段階<エクストラレベル>を発動したグレイシアとの、実戦形式での修行が続いていた。
 ジョウト地方から帰ってきてから数年。
 漸くマサシの他の手持ちポケモンも、何とか渡り合える域に到達し始めていた。

 そこでマサシは、1匹ごとの修行法を変える事にした。
 基礎的な戦闘能力はかなり上昇した。
 これからは、そのポケモン1匹1匹が持つ特性を最大限に引き伸ばそうとしての考えだった。
 例えるならば、オーダイルとマニューラには更なる超速での戦いが出来るように。
 そしてバクフーンには、何者にも打ち負けることの無い攻撃力をいつでも発揮できるようにする事など。



 そして今日は、バクフーンがグレイシアを相手に徹底的に戦い続けていた。

「バクフーン、だいもんじ=I」

 マサシが、指示を出す。
 その指示に従い、バクフーンが大の字の形をした炎を発射する。
 それに対してグレイシアは、氷の属性を持つ光線を発射するのみ。
 この一発だけでバクフーンの攻撃は消滅。
 否、それだけではなくバクフーンにまで攻撃が到達していた。

 相当の勢いで吹き飛ばされ、倒れる。
 だが、すぐにその身体を起こして戦いを続ける姿勢を見せている。
 しかし、傍目から見てもバクフーンのダメージは相当大きい。
 鋭い視線を向けるバクフーンとグレイシアの間にマサシが割って入り、修行を中断した。

「バクフーン、無理をするな。もう、相当ダメージを受けてる筈だ。少し、休め」

 マサシの言葉に反して、戦いを続ける意思を見せるバクフーンだったが…。
 身体だけは正直だった。
 限界を迎えて、再び倒れた。
 それを見たマサシはグレイシアに呼びかけて、修行の中断を伝えた。

「(流石に疲労が積もってきてるか…。2〜3日は休暇をとったほうがいいな)」

 バクフーンの状態を確認して、マサシは一時修行を中断する事を決意するのだった。







 この日は気分を変えて、遠くへ出掛ける事にした。
 行き先はトーホク地方の東端、シズキタウン。
 海岸線に位置するトーホク南部地区唯一の港町。

 今日一日、この町で思い切り羽を広げることにした。
 マサシのポケモン達も各々、この休暇を満喫していた。
 だが、バクフーンだけが思い詰めたような表情をしている。
 他のポケモン達は、最近メキメキと実力を伸ばし始めている。
 しかし自分だけ、未だにグレイシアを相手に大技の一発も決めた事が無かったからだった。

「…!」

 マサシもそんなバクフーンの表情には気付きはしたが、敢えて言葉はかけなかった。
 この課題は、バクフーン自身が答えを見つけ出さなければならなかったから…。


 日が既に西に沈み始めていて、この町の空は紫に色を変えていた。
 それを見たマサシは皆をボールに戻して、ポケモンセンターに向かう。
 どうやらしばらくの間、この町に留まるつもりらしい。


 数日後。
 マサシ達は気分転換に町を散策していた。
 そんな折、この町の住人と思われる少年二人がバトルをしている光景が視界に入った。

「(ポケモンバトルか…。そう言えばジョウトから戻ってきて、ずっと身内同士で戦い続けてばかりだったからな…。偶には他のトレーナーとバトルでもするべきか)」

 何かを決意すると、マサシはポケモンセンターに戻って身支度を整えた。
 そして、故郷フヅカタウンに向けて足を進め始める。

「よく考えたら、ここ最近トレーナー相手にバトルをしたことが無かったな。帰るついでに、適当にトレーナーが居てくれればいいんだが…」

 独り言のように呟くと、修行のいい手掛かりに巡り合える事を願い、フヅカタウン目掛けて進み始めた。
 
 道なりに進んでいたマサシだったが、途中で足を止める。
 
「ふぅ、少し休むか」

 ふと周囲に視線を向ける。
 近くに町が無いかどうか、探索している。
 そして、町は見付かった。

「(ギノシティ……か)」

 その町の名は、ギノシティ。
 位置的に言えばこの町、第1章でマサシが最初にバッジをゲットした町の丁度東に進んだ先に位置します。

「さて、と」

 マサシは一息つくと、手持ちのポケモン達をボールから出す。

「そろそろ修行を再開しようと思う。いつもとは違う場所だが、何かの切っ掛けが掴めるかもしれない」

 彼のポケモン全員が、頷いた。
 そして各々、今迄どおりの修行に突入していく。

 そんな中、バクフーンもいつもと変わらない修行を開始。
 即ち、グレイシアを相手にした実戦。
 少しの間修行を休んだ事で何かの変化があったのか、今迄以上にグレイシアと渡り合えている。

 だが、それでも………。


 ズドォッ!!

「!」

 音に気が付いて、マサシは視線をその先に向けた。
 グレイシアの攻撃が炸裂して、バクフーンが吹き飛んだ様子。
 バクフーンは身体を起こすも、表情が険しい。
 そして突然、鼓膜を破りかねないほどの雄叫びをあげた。

「…!」

 それに呼応するかのように、バクフーンの背中から発生する炎が猛々しく巨大に燃え盛る。
 それを見たマサシは、一つの事に気付く。

「(そう言えば、あいつはアヤのバクフーンの子供。なら、アヤの『あの技』に順ずる力が遺伝されててもおかしくない!)」

 マサシは表情を変えて、2匹の元に駆け寄った。
 そして…。

「バクフーン、今のお前が持てる限りの力を撃ってみろ。グレイシアも、下手をしたら大ダメージを受ける事になるぞ」

 バクフーンは、両手(前足?)を地面に付ける。
 そして4つの足全てで踏ん張る力を働かせて、懇親の一撃を解き放つ。
 その威力は、ジョウトを旅していた頃の『究極段階<エクストラレベル>』を、遥かに凌駕していた。
 それを見たグレイシアも、咄嗟に身の危険を感じて全力の一撃を繰り出す。

 ズドォォォォッ!!


 物凄いエネルギーの迸りだった。
 そんな中で2匹は未だに攻防を続けている。
 だが、不意に変化は訪れる。
 グレイシアの攻撃が、次第に押され始めてきた。
 相性だけの問題ではなく、純粋な攻撃力の差が、徐々に開き始めていたのだ。


 ゴォォォォォッ!!!


 やがてバクフーンの攻撃を受け切れなくなり、グレイシアの全身をバクフーンの炎が覆っていった。

「…!」

 その光景に、マサシも開いた口が塞がらない状態だった。
 やがて炎の勢いが衰え、グレイシアの姿が確認できるようになる。

 そこには、全身至るところに火傷の跡が残り、身体を斜にして、辛うじて立っているグレイシアの姿。
 意外な形で、修行の成果が出る事になった。

「凄いな。今のが、お前の本当の攻撃力だな」

 バクフーンも最初は戸惑った様子だったが、やがて自信を持った感じの表情になり、頷く。

「後は、今の攻撃を自在に使いこなせるようになる事だな。後、それを別の攻撃にも応用するとか…。今後も色々と大変になるぞ?」

 バクフーンは『やってやる!』という決意を身体で示した。
 マサシもそんな様子を見て、表情に笑みを浮かべた。

「よし、じゃあ行くぞ!」

 マサシ達は、更に修行に明け暮れていった…。







 Phase.21 激闘決着





「(そう。オーバーダウン≠ヘあの時発揮した攻撃力に、天属性も混ぜ込んだ攻撃。スペイザーと違って、撃っても能力回帰は解除されないが、反動が大きい技だ。今後は、なるべく使い処を見極めないといけないな」

 そして時は現在、トウク戦に戻る。
 バクフーンとベトベトンが相打ちで倒れた今、相手の残りポケモンは後2匹!

「こんなに手応えのあるバトルは久し振りだよ。数人で同時に戦っているとはいえ、僕をここまで追い込んだんだから」

「…」

「さて、次はこいつだ。ヘルガー!」

「バンギラス」

「フローゼル!!」

 トウクがポケモンを繰り出したのに反応して、2人も新たにポケモンを繰り出す。
 バンギラス&フローゼルと、ヘルガーが対峙する。
 互いにけん制しあいつつ、中々局面が動かない。

 だが、そんな中でフローゼルが飛び出す。
 相当の勢いで突進し、その上に水を全身から放出している。



アクアジェット



 それに対して、ヘルガーは真正面からフローゼルに挑む。
 何の技を使うわけでもなく、単純な体当たり。
 そして…。
 ドゴォォッ!!

「…なっ!?」

 信じられなかった。
 手持ちポケモンの中で、物理攻撃力でかなりの自信を持つフローゼルが弾き飛ばされた。
 しかも相手は、何の技も使った様子が無い。

「…だったら、ハイドロインパクト=I!」

 マサシは早くも最強の技を繰り出す。
 先程と同じような技でありながら、その身に纏うエネルギーは数倍。
 普通にぶつかるだけでは、まず勝てない技だった。
 それを…。

「…!!」

 先程と同じように、真正面からぶつかって弾き飛ばす。
 フローゼルもこの2回だけで物凄いダメージを受け、戦闘不能となる。

「カウンター≠セ」

 またしても、後ろからユキヤが話しかけてきた。

「! そうか、今使ったフローゼルの技は、どっちも物理攻撃!」

「使う仕草を俺達に全く悟らせなかった…。俺ですら、使ったのに気付くのが遅れた」

「…だったら、特殊攻撃で攻めるか。ユキヤの手持ちは、相変わらず接近戦がメインのポケモンばっかりなんだろ?」

「使わせる暇を与えなければ良いだけの事だ。バンギラス、だいちのちから=v

 ユキヤの指示で、バンギラスが地面を揺らす。
 そしてヘルガーの足元から橙色のエネルギーが、火柱のように立ち上る。

「特殊攻撃で攻めれば、カウンター≠ヘ発動しない。だが、この程度の戦略…」

「ヘルガー、かえんほうしゃ=v

 今の仕返しと言わんばかりに、ヘルガーが炎を発射。
 バンギラスは相性で有利なので、真正面から受けて立つのだが…。

「…!!ユキヤ、駄目だ!!!」

「…!」

 いち早く、マサシが動揺に満ちた叫び声をあげる。
 その直後…。
 ズドォンッ!

「バンギラス……?」

 一撃だった。
 ヘルガーの炎を一発貰っただけで、バンギラスの身体が吹き飛んだ。
 否、吹き飛んだだけでなく戦闘不能となっていたのだ。

「また、ユキヤのポケモンが一撃で……」

「…」

 そんな激闘を、後ろから眺めていたアヤ。
 自分の身体の背後で、一つのボールを手に取っていた。

「(あの人、ユキヤとマサシが2人掛かりで戦っているのに互角以上…。だけど、私にもまだ出来る事は………、ある!)」

 心の中でそう呟いた瞬間、アヤはそのボールをギュッと強く握り締めていた。
 その瞬間。
 ガシャァァンッ!!

「!」

 このバトルの舞台にあるオブジェクトの一つが、粉砕した。
 と言うのも、そこにユキヤのボスゴドラが凄まじい勢いで叩きつけられたからなのだが。

「(ユキヤのポケモンが、後一匹に…!このままじゃ…)」

「……やれ」

 そう囁くと、最後のボールを手に取った。
 その瞬間。
 ドゴンッ!!

「なっ…」

 トウクにも、何が起こったのか理解できていないようだった。
 余りにも突然だった。
 ヘルガーの身体が、相当な勢いで吹き飛んでいた。
 そして、その直接的な原因は…。

「やっと出てきたか…」

 マサシが横に視線を向ける。
 そこには、ユキヤのサンドパンの姿。
 そのサンドパンが、攻撃姿勢を保ったままの状態で立っていた。

「驚いたな…。ヘルガーが反応出来ない位のスピード…。そのサンドパン、相当鍛えてあるみたいだね」

「気に喰わんな。完全にクリティカルヒットした筈だが…」

「…?」

 吹き飛ばされた先に居たヘルガーが、身体を起こす。
 足がもたついているものの、それでもまだ闘志を消していなかった。

「オーバーヒート≠セ!!」

 残る力全てを出し尽くすかのごとく、今までに無いほどの強大な炎が発射される。
 サンドパンは表情を変えずに爪を構えると…。
 ザンッ!!


 破壊爪<デストラクションエッジ>一閃。
 ヘルガーの放った最後の一撃を、一刀両断した。
 その様を見届けた後、ヘルガーの身体は地面に倒れ伏していった。

「これで、後1匹!」

 いよいよ戦いは最終局面を迎えた。
 トウクの残りポケモンは、1匹。
 遂に追い詰めたと言う感が、彼ら2人の内にあった。

「一気に決める!行け、マニューラ!!」

「勝ちを急いだね。残念だよ」

「なっ…!」

 相手が繰り出した最後のポケモンとは、サワムラー。
 そのサワムラーの足がバネのように伸びると、そのまま横に薙ぎ払うかのような足技を繰り出す。

「まわしげり=I!」

 サワムラーの蹴りが、マニューラを打っ飛ばす。
 相当効いているのか、飛ばされている最中姿勢を立て直すだけの余力すらも無かった。
 結果的に、マニューラもこの一発で戦闘不能となってしまった。

「…」

 マサシもふと気が付けば、自分の残りのボールにチラッと目配りしていた。
 彼のポケモンも、これまでに3匹が戦闘不能。
 フライゴンは『スペイザー』を使ったため、この戦いの中では最早戦力外。
 そう考えると、万全の状態で残っているポケモンは後2匹。

 マサシの手持ちの中で最強を誇るオーダイルとグレイシアが、未だに残っている。
 それでも、相手のあのサワムラーを相手に何処まで戦えるのか…。

「オーダイル、頼むぞ」

 意を決して、マサシはオーダイルをバトルに繰り出す。
 長かったこの戦いも、漸く決着と言う終着点が2人の視界に入ってきていた。





 まずは、オーダイルが先制。
 水弾型のハイドロポンプ≠3発ほど、サワムラー目掛けて発射。
 しかしサワムラーはそれを、格闘タイプならではの巧みなフットワークで回避。
 そして今度は大きく跳躍し、上空から強烈な蹴りを繰り出してきた。

「ハイドロストリーム=I!」

 それに対してマサシが取った行動は、巨大な渦を巻く水流を発射する攻撃だった。
 流石のサワムラーもこの巨大な力には逆らえず、ただ身を守るしか術がなかった。

「やったか…!」

 今の攻撃にしても、3年前の戦いで初めて使ったときに比べて格段に威力が増している。
 否、威力だけで考えれば『スペイザー』にも匹敵するほどだと言っても過言ではなかった。
 故に、今の攻撃に確かな手応えを感じていた。

「インファイト=v

 突如サワムラーが水流の中から飛び出すと、オーダイルに急接近。
 そして怒涛の格闘攻撃を浴びせかける。
 ドコズドバキドガッ!!

「オーダイル!!」

 その怒涛の攻撃を受けても尚、倒れない。
 流石はマサシの相棒と言ったところだが、体力は今の攻撃だけで限界に達していた。

「これで…、決めるぞ! ハイドロスペイザー=I!」

 マサシはここで決着をつけるべく、最大の技を指示した。
 だが、それが返って仇となってしまう。

「サワムラー、メガトンキック=I!」

 スペイザーは、エネルギーチャージに多少の時間を必要とする。
 その隙を衝いて、サワムラーが攻撃を仕掛けてきたのだ。

「しまっ…」

 後悔したところで、最早後の祭り。
 既にサワムラーの攻撃は、オーダイルに襲い掛からんとしていた。
 そんな時だった。
 2人の背後から、声が飛んできた。

「ムクホーク、でんこうせっか=I!」

「!!」

 それは、アヤの攻撃だった。
 彼女の手持ちポケモンであるムクホークが、サワムラーに奇襲攻撃を仕掛けてきた。
 予想外の方向からの攻撃に、サワムラーは全く反応が出来なかった。
 従って、ムクホークの攻撃をまともに喰らい、オーダイルへの攻撃が中断されてしまうのだった。

「マサシーーーーっ!!決めて!!!!」

 アヤが、大声で叫んだ。
 それを聞いて、マサシとオーダイルの目の色が変わる。

「おおおおおおっ!!!!」

 そしてマサシも叫ぶ。
 それに呼応するかのように、オーダイルもハイドロスペイザー≠発射。
 オーダイル懇親の一撃が、サワムラーに炸裂した!
 ズドォォォォンッ!!!


 凄まじい爆発に、大地が揺れた。
 そして、この壮絶なバトルの終局。

「サワ、ムラー…」

 爆煙の中から、サワムラーの姿を探すトウク。
 案の定、サワムラーの姿はすぐに発見する事ができた。
 サワムラーは、戦闘不能。
 これで、彼の手持ちポケモン全てが戦闘不能となった。

「僕の、負けか…」

 がっくりと肩を落としつつも、その表情には笑みが浮かんでいるのだった。







 その日の夕方。
 3人はポケモンセンターに戻ってきていた。
 そんなマサシの手には、一つの装飾品のようなものが。

「予戦開幕から数日。やっと、一つ目の証を手に入れられたな」

「だけど今回のバトル、相手が1人だからとはいえ、決して油断できる相手じゃないって言ういい勉強になったわね」

「…ああ。3人がかりを相手にして、あそこまで戦ったトレーナー…。恐らく、残りの3人もあの人と同等の実力を持っていると考えた方がいいかもな」

「その前に、次のトレーナーの手掛かりが無い。またしばらくの間は、地道にランクを上げていくしかないだろうな」

「やれやれ、このマスターリーグじゃゆっくり休息も取れないな…」

 マサシが予め取っておいた部屋のベッドの上で横になった。
 しかし、その表情は晴れ晴れとしている。

「(マスターリーグ予戦、絶対に勝ち抜いてやる!)」

 マサシは右拳を天井に伸ばし、決意を新たにするのだった。







 To Be Continued





後書き


はい。という訳で第6話をお送りしました。
いや〜、やっとキリのよい所で話を終わらせることが出来ました…。
今まで中々区切りのよい所で終わらせることが出来ずに四苦八苦したものです。
とまあ、作者の愚痴はさておき。

今回で、マスターリーグの一つ目の区切りをつけることが出来ました。
次回からは新展開。新たな強敵の登場に、マサシ達は窮地に立つ!(予定)
ぶっちゃけ、あんまり内容に関する予告は信用しないで下さい(ぇ)。
その通りの内容に持っていけるかどうか、自信がないので(汗)。

さて、後書きそろそろ終わり。
それでは次回、第7話『新たなる強敵』。
お楽しみに。

 

[一言感想]

 大会が始まってから、マサシ達は危機的状況に立ちっぱなしで、息つく暇がありません。
 個人的には、特訓やバトル以外の要素も増えていってほしいですね。

 

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