―――ぐわああああああっ!!

 ―――そんな、事が…!?

 ―――力の差が、違いすぎる…!

 ―――こんな奴らが、いたなんて…。


 …それは、ヨハロ地方の一部で繰り広げられていた光景。
 このバトルの舞台となった台地は、原形を留めないほどに粉々になっていた。
 果たして、どれほど凄まじい戦いが繰り広げられたのだろうか…。






COM マスターリーグ編
第7話
新たなる強敵







 Phase.22 調子は良好?





 ヨハロ地方の北側の海岸線に、彼らは立ち寄っていた。
 先日、予戦突破に必要な証の一つを手に入れたマサシチーム。
 今の目的は、彼らよりほんのの少し前にトウクに挑んだチームの行方を追うこと。
 現状、他に近くに居る参加チームの手掛かりが無い。
 そのため、今の時点で予戦内ランクを上げるための最後の手段だった。

「あの時の3人が、確かにこの方向に来ているのよね?」

「ああ。まだあれから3日しか経っていないけど、この辺りにいるかもしれない」

「だが、空振りに終われば相当の時間ロス。すぐにでもここを出発するぞ」

「解ってるよ、ユキヤ」

 とりあえず3人は、この海岸線をメインに近くの探索を開始。
 この辺りの海岸線に、特に町は存在しない。
 そのため、ある程度進行ルートは予測できる。

 このヨハロ地方全域は、途轍もなく広大。
 前にマサシが言ったように、大体の目算だけでもこの地方の面積はシンオウ地方4つ分に匹敵する。
 にも関わらずこの地方に存在する町は、地図の上で見る限りでは疎ら。
 精々大きな町が、両手の指で数えられる程度。
 無論、それ以外の小さな町も数え上げればそれなりの数にはなると思う。
 それでも、やはり町の数が少ないと言う事実を覆す事は難しい。



 リノアシティの近くにある町は、3人が最初に立ち寄ったグレマタウンの他に一つだけ。
 あの町から東に進んだ先にある、ヨハロ地方で3本の指に入る巨大な山『ロズ山』の麓にあるロズタウンのみ。
 しかもその町へ行くためには、今マサシ達が居る海岸線を迂回しなければ辿り着けない。
 そのため、必然的にねらい目がこの付近に絞られる事になった。

「…」

「ねえ、マサシ」

 ふと、アヤがマサシに声を掛けてきた。

「どうした?」

「あそこに居るのって…」

「! 間違いない、あの時の3人!」

 見間違いでなければ、彼らの視線の先に居るのは、トウクに敗れ去ったチームの3人。
 しかもまだ、向こうは此方に気付いていない。
 …仕掛けるのなら、これ以上無い程の好機。

「アヤ、ユキヤ」

 マサシが二人に呼びかける。
 呼びかけられた二人が、マサシの方に視線を向ける。

「仕掛けるぞ!」







 そして、呆気なく戦いの幕は下りた。

「………。なあ、この3人って本当に俺達と同じマスターリーグの参加チームなんだよな?」

 そう語りかけるのは、マサシ。
 そして彼らの側にはうつ伏せで倒れている人間が3人。
 先程、マサシ達が戦いを仕掛けた相手チームの3人だった。

「うん。私、アロナシティに居た頃、この3人を時々見掛けたから」

「それにしては弱すぎないか?最初に俺達の戦ったあの3人の方が、まだ強かった」

「予戦内ランキング。これは、リーダーの実力に基づいて設定されたものだと思っていたけど…」

「当てが外れた…というわけか」

「だけど、この時点で俺達のランキングは28位にまで上昇した。ようやく、半分より上まで来る事が出来たわけだ」

「調子が出てきたわね。このまま残り3つの証も手に入れて、一気に予戦突破よ!」

「元気いいな、アヤ。だけど、その意見には賛成だ」

 3人は身支度を整えると、この場を立ち去っていく。
 現時点で、他のトレーナー達に関する情報は無い。
 宛てのない旅路となった。

「さあ、行くか!」

 マサシの声を合図に、3人は旅を再開した。







 Phase.23 桁外れの敵





 今迄マサシ達が居たのは、ヨハロ地方の西側寄り。
 なので今度は、一路東方面を目指して歩き出していた。
 当初は緑色をした草の絨毯が、地平線の彼方まで続いていた。
 しかし気が付けば、今ではゴツゴツとした岩肌が地表にむき出しとなっている。

 明らかに殺風景極まりない景色だった。

「何か、嫌な感じがするわね…。そりゃ、こんな岩肌だらけの場所だから仕方が無いけど…」

「空が…、暗い」

 ふとユキヤが、独り言のように言葉を漏らす。
 それにつられて、2人も空を見上げる。 
 確かにユキヤの言うとおり、空は分厚い黒い雲に覆われている。
 そしてそれは、視界の続く限り遥か彼方まで広がっている。
 この状態がより一層、彼らの不安を煽り立てている。

「一雨降りそうだな…。近くに町は…」

 マサシは即座に近くに町が無いかどうか、検索を始めた。

「どうだ」

「…ラッキーだ。ここから少し東に進んだところに、ニザシティっていう町がある。とりあえずそこで休憩しよう」

 3人は進むペースを上げ始めた。
 目指すは、ニザシティ。





 ある程度進んだところで、遠くの方から雷鳴が鳴り響くのが聴こえてくる。
 雨が、降り出そうとしている。

「急ぐk」

 2人に急ごうと言う事を促そうとした瞬間だった。
 カッ! ドゴォォォォッ!!!


「「「!!」」」

 すぐ近くで突然強烈な発光。
 そしてその後すぐに大爆発が発生。
 恐らく、落雷が発生したのだろう。

「本格的に天気が崩れてきたな…。急いだ方が」

 そこまで言った瞬間だった。
 突然、マサシ達の目の前に『何か』が墜落した。

「!!」

 落下してきたのは、物ではなかった。
 よく見るとそれは、3人組のトレーナー。
 しかもよく見れば、マサシ達と同じ端末を所持している。

「あの3人も、大会出場者か!」

 その3人は、既に意識が無い
 マサシ達は即座に警戒の姿勢を見せる。
 飛んできた3人ではなく、付近一帯に…。

「……」

 3人とも、言葉を一言も発しない。
 そんなことをするだけの余裕が無いのか。
 それとも、この場に満ちている何ともいえない不安を煽る雰囲気に、呑まれているのか…。
 いずれにしても、すぐ後に何かとんでもない事が起こる。
 そう予感せざるを得なかった。

「来るわ!!」

 最初に敵の気配に気付いたのは、アヤ。
 それに続き、マサシとユキヤがボールを構える。
 その直後、強烈な衝撃波が3人の真正面から襲い掛かる。

「くっ…!?」

 それでも3人は吹き飛ばされないように踏ん張る。
 そんな折、衝撃波の壁の向こうで一瞬、強い発光現象が視界に入った。

「(何か来る…!!)」

 直感的に何かが来ると、感じ取った。
 だが、そこまでだった。
 それ以降何が起こったのかは、彼らの頭では理解できなかった。

 唯、圧倒的な『何か』によって自分達が大敗を喫した事以外には…。

「…ッ」

 しかしそれでも、辛うじてマサシだけは持ち堪える。
 それでも片膝で身体を支えるので精一杯。
 他の2人は既に意識を無くし、横たわっている。

「一体、何が……!!」

「あれ?今ので倒れないなんて、凄いんだなぁ」

 直後に聴こえてきたのは、気の抜けそうなのんびり口調の声。
 その話し方からして、今の攻撃を仕掛けた張本人である事は間違いない。
 そしてその声の主は、悠々とマサシの視界にその姿を見せる。

 その声の正体は、少年。
 背丈がマサシの半分ほどしかない、非常に小柄な体型。
 身なりこそ迫力は全く感じられないが、今の攻撃を放ったのが彼である事は明確。
 マサシの心理には、目の前の彼に対する底知れない恐怖と圧迫感で埋め尽くされていた。

「…ッ!」



―――何だ…、この底知れない威圧感は……。

―――奴から感じるのは…、今までに俺が経験した事のない圧倒的な力の差…!

―――さっきの一撃を喰らっただけで、この身に染み込んだ…。

―――こいつ………、桁が違う………!!





「でもぉ、リーダーは君みたいだからぁ、君を倒さないとおいら達の勝ちにならないんだよねぇ…」

「…チッ!」

 この敵は、途轍もない力を持っている。
 その事を自分の身体で感じたからこそ、マサシは最初のポケモンに彼(?)を選んだ。
 自身の手持ちポケモンの中でも最強を誇る1匹、グレイシア。

「イーブイの進化系かぁ…。偶然だよぉ、おいらも持ってるんだぁ。イーブイ進化系列のポケモンをぉ」

「…!」

「サンダース、頼むよぉ」

「グレイシア…」

 …グレイシアの表情も、険しい。
 マサシの知る限り、グレイシアがこんな表情をするの見た事が無い。
 それ程、目の前にいる彼が強いのだろう。

「あ、そうそう」

「…?」

「おいらはコルカって言うんだぁ。君は、何て名前なのぉ?」

「…マサシだ」

「そうかぁ。それじゃあ、行くぞぉ!」

「…!」

 敵が攻撃の姿勢を見せた事で、マサシ達も身構える。
 …だが。
 バチッ!!



「があああああああっ!!!」

 一瞬何かが弾けるような音が聴こえた。
 その直後、マサシ達を膨大な電気のエネルギーが襲い掛かっていた。

「………ぐっ」

 手も足も出ないとは、正にこの事だった。
 何をされたのかも解らないまま、マサシは意識を手放してしまった。

「あれぇ、もう終わりなのぉ?まだ、これからだったのにぃ…」

 少しガックリと肩を落としながら、コルカと名乗った少年は何処かへ歩き去っていった。
 そして気が付けば、天を覆っていた分厚い黒い雲が、いつの間にか晴れていた…。







 Phase.24 決意





「ぐっ、痛っ」

 暫く時が流れて、全身から悲鳴を上げる痛みに顔を歪ませながら、マサシは身体を起こす。
 他の2人はまだ、意識が無いまま。
 こんな開けた場所で今の状態で居るのは、流石に不味い。
 かと言って、意識の無い2人を抱えたまま連れ歩ける筈もない。

「…ここからニザシティまでそんなに距離は無いか。仕方が無い」

 マサシはゆっくりと立ち上がると、モンスターボールからフライゴンを出す。
 そしてその背中に2人を乗せて、歩き始めた。
 とはいっても、マサシ自身も既にボロボロ。
 足元がおぼつかない、見るからに頼りない歩きだった。

「…うっ」

 途中、何度も目眩が起きた。
 それでも倒れるわけにはいかないと、倒れそうになる身体を何とか動かす。
 少し進むと、遠くの方に町が見えてきた。
 彼らの目指していた町、ニザシティだった。

「やっと、着いたか…」

 町の中に入ると、マサシは早速ポケモンセンターに足を運ぶ。
 だがそこで、マサシは驚くべき光景を目の当たりにした。

「何だ、これは…」

 建物の中は、マサシ達同様にボロボロの状態のトレーナーで溢れ返っていた。
 事情を聞こうと、適当なトレーナーを探した。

「なあ、ちょっと良いか?」

「ん? あ、君は」

 偶然にもマサシが声を掛けたトレーナーは、彼の知り合いだった。
 ヨハロ地方へ向かう船で一度対決した事のあるトレーナー、武人(タケト)だった。

「タケト。この状況は、一体何があったんだ」

「うん。何でもこの付近に、物凄く強いチームがうろついているって噂が立ってて…。今ここに居るトレーナーは全員、マスターリーグの出場者だよ」

「何…!?」

 ざっと見ただけで、このセンターの中に30人前後のトレーナーが居る。
 つまり、大会出場者のおよそ6分の1がこの場に集まっていることになる。

「それと、その噂になっているチームの事を調べてみたら…。予戦内ランキング第3位のチームだったんだ」

「だ、第3位………だと!?」

 驚きだった。
 確かにあの強さは、レベルが違いすぎた。
 それがまさか、予戦内ランクのトップ3に入っているほどだとは、思わなかった。
 念のためマサシは、そのチームの事についてもう少し詳しく聞いてみることにした。

「そのチームのリーダー、誰だか解らないのか?」

「チーム全員の事はよく解らないけど、リーダーの名前ならはっきりしてるよ。確か…、コルカって名前だよ」

「やっぱり、あの時の奴か…」

「あの時?君、もしかして連中と戦ったの!?」

「全く敵わなかったけどな…。お陰でここへ来るまでに、チーム全員ボロボロだ」

 立っているのも辛くなってきたのか、マサシは近くにあった椅子に腰掛けた。

「だけどまさか、そこまでランクが上の相手だとは思ってなかったな」

「それと、あのチームは少し性質が悪いんだ。バトルを仕掛ける相手のランクが下でもお構い無しなんだ。どのチームが相手でも、視界に捕らえれば問答無用で仕掛けてくる」

「成る程。予戦内ランクベスト8に入っているなら、後は証を4つ集めるだけでこの戦いは突破できる訳だからな」

「うん。だからなるべく早く、この町は離れた方がいいと思うよ」

「…ああ。俺も他の2人が回復したら、すぐにここを離れるつもりだ」

「そうだね…。それはここに居るトレーナー全員、同じ意見だと思うよ」

 兎に角こんな場所で何時までも会話を続けているわけにもいかない。
 そう思って、マサシは2人を連れてセンター内の中庭に足を運んだ。
 そして丁度そんな時、アヤが目を覚ます。

「う…、ん…」

「!」

「マサシ…」

「気が付いたか」

「あの時、一体何があったの?私、よく憶えてなくて…」

「敵に襲われただけだ」

「…それだけ?」

「それだけだ。ただ、仕掛けてきた相手が桁外れに強かった。それだけだ」

「…そう。でも、無事でよかったわ」

「そりゃこっちの言葉だ。今の今まで気を失ってた奴が言う台詞かよ」

「それも、そうかもね」

 若干呆れ気味に言葉を返すマサシに対して、アヤは苦笑いで答えた。
 そしてマサシは、先程タケトから聞いた話をアヤに話していた。
 話を聞いていくうちに、アヤの表情も段々と真剣なものになっていく。

「私達を襲ったのが、そんなに強い相手だったなんて…。そのチームが、まだこの町の近くに?」

「ああ。だから出来るだけ早く、この町を離れようと思っていたところだ」

「冗談じゃないわ!あれだけ一方的にやられて、それでいてまた逃げるような行動なんて、私には出来ないわ!」

「だが、もしもう一度あの敵と出会ったとして、お前は勝てるのか!?」

「そ、それは…」

 マサシの問いかけに、アヤは言葉を失った。
 確かに、一瞬にして自分達を蹴散らすほどの敵を相手にどうすればいいのか…。

「正直な話、あいつ…。コルカの攻撃は、グレイシアですら何が起きたのか解らなかったんだ。そんな相手と、どうやって戦えばいいんだよ…」

「らしくないな。そんな弱気な発言をするとは」

「!」

 と、そんな時2人とは違う別の声が聞こえた。
 ユキヤがいつの間にか、起き上がっていた。

「ユキヤ…」

「…そうよ。一回負けた程度で何なのよ! このマスターリーグで、手の届かないようなレベルの敵と戦うなんて事、最初から予測できてた事じゃない!」

 言葉を失っていたアヤだったが、ユキヤの発言で、すぐに自信を取り戻す。

「……。俺もそれは解ってた。自分より遥かに格上の相手と戦うことになるという事も」

 少し落ち着いた口調に戻り、マサシは語りだす。
 アヤ達の発言を肯定し、尚且つ今後どうするのかを真剣に考えていた。
 敵が遥かに強かったとしても、逃げ出すことは出来ない。

 否、それ以前にマサシはこれまで『ある力』を出し惜しみしている。
 ユキヤはそのことに対して、疑問をぶつける。

「マサシ。『究極段階<エクストラレベル>』はどうした」

「…!」

 今までマサシは、切り札である『究極段階<エクストラレベル>』を一度も使っていない。
 ユキヤは、その事がずっと引っ掛かっていた口ぶり。

「お前の事だ。あの時の、能力全消失と言う副作用は完全に克服している筈だ」

「…ああ。確かに、あの副作用は克服した。だけど正直な話、この予戦で出来るだけ使いたくなかったって言うのも事実だ」

「どうしてよ?終焉の道標<エクストレーム>とも互角に渡り合えるほどの力でしょ!?どうして、使うのを躊躇う必要があるの?」

「確かに、あれは凄い力を発揮するよ。でも、俺は逆にその力に頼りすぎてしまうという状態になることが、怖かった」

「…どういう事?」

「究極段階<エクストラレベル>は切り札。だけど使いすぎると、『これがあるから、負ける事はまず有り得ない』という考えを持ってしまうかもしれない…という事だ」

「…」

「解ってはいた事だ。いずれ、これを発動しなければ勝てないような敵に遭遇する……と言う事くらい。だけど、いざとなるとさっきの頼りすぎてしまうんじゃないか?という考えが、どうしても躊躇わせてしまうんだ」

「マサシ…」

「だけど、そんな事で戸惑った挙句、負けたら元も子もないな。もう暫くこの町に滞在して、あのチームを狙う。あいつらとの戦いを境に、俺は『究極段階<エクストラレベル>』を解禁する!」

「うん。私たちも、あいつには一矢報いたいわ!」

「…ああ」

 3人の決意は固まった。
 自分達を一蹴したあのチームを打ち倒すべく、この町に留まる事にするのだった。







 Phase.25 究極段階<エクストラレベル>解禁





 マサシ達3人は、町を出た。
 そして今の自分達の目的、コルカチームを待ち構えている。
 やがて、その時は訪れた!

「…来たか」

 彼らの視線の先には、トレーナーが3人。
 3人の中心に居る人物こそ、マサシ達の目的とするトレーナー。

「あれぇ?君達、この前のチームだよねぇ?こんな所で、何してるのぉ?」

 相変わらずののんびり口調で話す相手チームのリーダー、コルカ。
 彼の問いに対し、マサシは率直な回答をした。
 『お前を倒す』と、一言だけ返答しただけ。
 それを聞いた、彼の反応は…。

「う〜ん…。参ったなぁ。おいら、あんまり戦いたくないんだよぉ」

「戦いたくないって…。お前、この前問答無用で攻撃仕掛けてきただろ(汗)」

「あ〜、あの時はおいら達もランクを上げるために必死だったんだよぉ」

「オイ、もしかして端末のランク表、殆ど確認してないのか?」

「う〜〜ん…、そういえばあんまり確認した憶えはないよぉ」

「はた迷惑な奴だな、お前ら(汗)」

 コルカのあまりのマイペースぶりに、出だしから調子を狂わされるマサシ達だった(ぁ)。
 しかし、そんな彼でも実力は相当なもの。
 それをその身で味わったからこそ、マサシ達も真剣な表情を崩さない。

「…行くぞ!」

 マサシはモンスターボールを手に取り、ポケモンを繰り出す。
 その中から現れたのは、フローゼル。
 更に…。

「能力回帰………!」

 一言だけ、独り言のように呟く。
 そして、マサシの周囲を銀色の光が幕のように覆っていく。
 その状態になった後、更に一言。
 今度は大声で叫ぶかのように。

「『究極段階<エクストラレベル>』!!!」


 ドゴォォォォォッッ……!
 マサシの声を合図に、それは発動した。
 彼と同じ銀色のエネルギーが爆発するかのように、彼のポケモンからあふれ出す。
 実際、爆発があったかのような衝撃波と突風が周囲に巻き起こる。


「…! へぇ、結構凄いねぇ」

 それに対して、コルカは相変わらずのペース。
 それが返ってマサシの表情を更に険しくさせる。

「(これを発動して、殆ど怯まない…。まさか、ここまでの実力が…!!)」

 しかし、いつまでも牽制しあう状態が続く筈もない。
 とうとうマサシが、攻撃に転じた。

「フローゼル、ソニックブーム=I!」

 マサシの指示が飛び、フローゼルが動く。
 空中に飛び出すと、そこで身体を縦回転させる。
 その途中、尾が相手のほうに向けられた瞬間、そこから白色の三日月形の衝撃波を飛ばす。

「サンダースぅ、頼むよぉ!」

 相手が繰り出したのは、サンダース。
 そして前回同様、『バチッ』という音が一瞬鳴り響く。
 その瞬間、マサシは一瞬視線を鋭くした。

「ハイドロインパクト=I!」

 突如、別の技の指示を出す。
 マサシの指示通り、フローゼルは膨大な量の水を周囲に発生させながら突進攻撃を仕掛けた。
 その矢先の出来事だった。
 突然フローゼルの突進していった先で強大な電撃の壁が立ちはだかり、攻撃を食い止めていた。

「やっぱりそうだったか」

 この光景を視界に入れたマサシの口から発せられたのは、この一言のみ。
 無論、何がどうなったのか理解できていないアヤ達はマサシの方に視線を向けた。

「奴のポケモンは、特殊攻撃に限ってその弾速がとてつもなく速かったんだ。それこそ、普通じゃ視界に入れるどころか攻撃自体を悟らせない事だって出来る」

「それって…!」

「ああ、そうだ。前にいつか俺が使った、瞬間連射£P発の超スピード攻撃と似たような技だ。だけどこのスピードは、俺より上だな…」

「だけど今の攻撃、私達には何があったのかさっぱり解らなかった…。やっぱりマサシにしか、あいつの相手は無理みたいね」

「俺だって、反応するのでギリギリだ。一瞬でも指示を出すのが遅れたら、それだけで終わりだ」

「…頑張って!」

 こうして、それぞれのチームリーダー2人が前に出る。
 手っ取り早く雌雄を決する為に、リーダー同士の対決となったのだ。

「………。ッ!!」

 互いに牽制しあいながら、横移動を繰り広げていたフローゼルとサンダース。
 そして余りにも突然に、バトルは始まった。

 最初に仕掛けたのは、サンダース。
 全身の毛を逆立て、攻撃の姿勢を見せる。

「フローゼル!!」

 あの姿勢から繰り出される攻撃は、自ずとある程度予測が出来る。
 それを瞬時に判断したからこそ、マサシは慌ててフローゼルに指示を出した。
 自分の身体を独楽のように高速で回転させ、ソニックブーム≠乱射すると言う荒技。

 無数に飛ばされた三日月形の衝撃波によって、サンダースの放った攻撃を全て打ち消す。
 それを確認すると、フローゼルは改めて攻撃の姿勢に移る。
 最初に繰り出したのと同じ技、ハイドロインパクト≠。

「サンダース、でんげきは≠セよぉ!」

 しかし、マサシは肝心な事を忘れていた。
 特殊攻撃を超スピードで繰り出すことができると言う事は即ち…。
 バチバチバチィッ!!



「…ッ!!」

 例えどれだけ早く攻撃を仕掛けようとも、先にダメージを受けるのは此方側であるという事。
 攻撃姿勢を見せていなかった筈のサンダースに攻撃を仕掛けた結果が、これだった。

「フロー…、ゼル…」

 フローゼルが大きなダメージ。
 このプレッシャーは、マサシに重く圧し掛かろうとしていた。







 To Be Continued





後書き
今回は、全体的にバトルシーンが少なかったように思います。
その代わりやたらと会話のシーンが多くて読み難く感じたかもしれないですね(苦笑)。
なので次回は思う存分バトルシーンです!
…まあ、それは毎度の事なんですけどね(爆蹴)。
出来ればこのバトルも、次の話の中で終わらせられれば良いんだけど、難しいだろうなぁ…。

………。まあいいや(オイ)。
それでは次回もお楽しみに。

 

[一言感想]

 個人的には結構バトルシーンあったと思いますけどね(笑)。
 切り札というのは、使いどころが難しいものです。
 温存しておくことは大事ですが、重要な所で使えず終いでは意味がない……。
 その辺りのタイミングも図れて、初めて『使いこなす』と呼べるのでしょう。

 

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