フローゼルは、倒れたわけじゃない。

 だけど、ダメージは相当大きい。

 正直言って、驚いた。

 …だが、勝算が無い訳じゃない。

 これから見せてやる。

 『究極段階<エクストラレベル>』の、全力を…!!






COM マスターリーグ編
第8話
忍び寄る闇







 Phase.26 マサシVSコルカ





「……」

 それは、余りにも突然の出来事だった。
 大ダメージを受けて、窮地に立たされた筈のフローゼル。
 にも関わらず、今追い詰められているのはサンダース。

 果たして、一体なにがあったのか。

「この3年間の修行で、俺は『究極段階<エクストラレベル>』の力加減をコントロールする術を習得した。お陰で、同じ『究極段階<エクストラレベル>』でも戦闘能力の幅を大きく広げる事ができた」

「それじゃぁ、今はさっきより多少強くなったって事かなぁ?」

「まあ、確かにさっきより力は解放した。それでも、お前を倒すには十分だ!!」

 ドゴォッ!!
 フローゼルが再び動く。
 サンダースもそれに反応して、お互いに激突の際凄まじい衝撃と突風を周囲に撒き散らす。
 互いに真正面からぶつかり合っていたが、サンダースの方が吹き飛んだ。

「(直接攻撃の速度は、普通と同じか。やっぱり、こいつの弱点は接近戦。それなら…)」

 マサシは新たにマニューラを繰り出した。
 そして、そのマニューラに『究極段階<エクストラレベル>』のエネルギーを移動させた。

「マニューラ、でんこうせっか=v

 ザシュッ!!
 マサシが指示を出し終えたその時には、マニューラの爪による切り裂き攻撃が、サンダースを襲っていた。

「え…?」

 当然、相手側から見ても何が起こったのか解っていないのは明白。
 まさに、突然攻撃を受けたかのような錯覚を受けたのだ。

「…まだだ!」

 ザシュザシュザシュッ!!
 一回だけでなく、立て続けに物凄い勢いで攻撃を繰り返すマニューラ。
 切り裂き攻撃が一筋の閃光のように残るのだが、今回の場合、それがサンダースの身体の上を縦横無尽に迸っている。
 何の成す術も無く、一方的に倒れていった。

「強いよぉ、君。おいらも本気でやらないとぉ、勝てそうに無いなぁ」

 そう言いつつ、コルカは新たなボールを手に取る。
 その中から現れたのは…。

「ラグラージ、行けぇ!」

 コルカの2番手として登場したのは、ラグラージ。
 そして登場と同時に、いきなりハイドロポンプ≠発射。
 無論この攻撃の弾速も相当なもの。
 マニューラは、ギリギリのところで攻撃を回避。
 否、若干相手の攻撃が掠ってしまった。

「くっ…!?」






「かわした…!?」

「否、ギリギリのところで掠った」

 一方でこの2人は、後方から観戦中(ぇ)。
 と言うのも、相手チームの残り2人も手出しをする素振りが無いので、留まっているだけなのだが…。

「だけどやっぱり、あの物凄い速さの攻撃は厄介ね。今は辛うじて掠るだけで済んだけど…」

「奴らのリーダーは、あいつに任せろ。今のところは互角だが、問題はこの戦いの終わった後だ」

「! そうか。戦いが互角って事は、決着が着いた時に勝った方は随分消耗してる事になるわよね」

「マサシが勝った時、奴らが消耗したマサシを狙わないとも限らん。その時のために、俺達は力を温存しておく」

「うん、解ったわ」




―――マサシ、敗けないで…!







 ザシュッ!!
 マニューラが、爪を振るう。
 それによってラグラージの発射した水弾を真っ二つに切り裂いた。
 それを見たラグラージは、更にハイドロカノン≠連続で繰り出す。

 それをマニューラは、一発ずつ的確に対処していく。

「ようやく慣れてきたな、お前の攻撃速度に」

「う〜ん…。確かにだんだん攻撃が通じにくくなってるなぁ…。この短時間でおいらの攻撃に対処できるようになるなんて、君って凄いんだなぁ」

「(だが、この距離だから何とか捌ける程度だ。もっと距離を縮めたら、多分まだ反応が間に合わない。相手の指示より先に手を出すくらいじゃなければ、恐らく捌く事は出来なくなる。だが、もし空振りになったらそれで終わりだ…。こうなったら、あれで!)」

 マサシは、目線でマニューラに合図を送った。
 それに頷くと、マニューラは右手を天に伸ばす。
 するとその周囲に、黒いエネルギーの流れが渦を巻くように集まり始める。

「あくのはどう≠物理攻撃として相手目掛けて飛ばす新技、黒翔閃≠セ。これなら、この間合いでもマニューラの物理攻撃力の高さを充分に発揮出来る」

 次に起こった出来事は、正に一瞬だった。
 マニューラが右腕の爪を振り下ろし、それをなぞるように巨大な真っ黒い閃光が迸る。
 そして気が付けば、ラグラージが地面に倒れていた。

「どうだ…!」

「うわぁ、これは少し危なくなってきたぞぉ。しょうがないや、今日は一端引き下がる事にするよぉ」

「なっ…、くっ!?」

 突然、コルカ達の居る方角から強烈なフラッシュが発生。
 それに一瞬視界を閉ざされていた間に、相手チームの3人は姿を消していた。







 Phase.27 蔓延る暗雲





「う〜ん…。おいら、あんなに手応えある相手とバトルしたの、久し振りだよぉ」

 先程、マサシとのバトルを途中で切り上げたコルカ。
 その両隣に、チームメイトのトレーナー。

「確かに、俺もこの大会の中でコルカ君のバトルは何度も見てきた。だけど、さっきの彼ほどコルカ君と渡り合ったトレーナーは居なかった」

 マサシに対する感想を述べるのは、コルカの右を歩く男性。
 紺色の髪の毛をした、コルカの倍近くの背丈だった。

「それでも、まだコルカの方が上に見えたけど?傍から見た感じ、彼が戦わせていたポケモンの基礎的な戦闘能力は、コルカ君よりずっと下だったから」

「ううん。彼、まだ何か奥の手を残しているような感じだったよぉ。しかもぉ、僕でも底が図れないくらいに強いものだったぁ」

 今度は、彼の左を歩く灰色の髪の毛をした少女が発した意見を返した。
 コルカの表情は真剣そのものだったため、言葉を引っ込めざるをえなかった。

「…」

 コルカは、表情が硬いまま。
 何時まで経っても表情が崩れないため、2人は不審に思った。

「コルカ、どうしたの?難しい顔して」

「2人ともぉ、気付かないかなぁ?」

「…?何にだ」

「さっきからぁ、おいら達を見張ってる奴がいるよぉ」

「「!?」」

 コルカに言われて、二人は周囲を見渡す。
 そしてコルカの言葉に納得するかのように、2人の視線も自然と鋭くなる。

「いつもどおりぃ、こっちから仕掛けるよぉ!」

 2人は納得し、一転して進行方向を変えた。
 そしてその方角に全力疾走で向かっていく。

 そして3人の進む先から…。

「ヘルガーだ!」

 そう、突然目の前にヘルガーが出現したのだ。
 しかしコルカチームは慌てずに対処する。

「クロバットぉ、ヘドロばくだん≠セよぉ!」

 向かってくるヘルガー目掛けて、クロバットが精製した紫色のエネルギー球体をぶつける。
 ヘルガーに激突した瞬間、それは水風船のように弾け飛び、その衝撃と突風がヘルガーを吹き飛ばすと同時にダメージを与える。

「エアスラッシュ≠」!」

 そして更に追い討ちをかけるかの如く、クロバットは4枚の翼を羽ばたかせる。
 このアクションにより発生した空気の刃が、ヘルガーの全身を切り裂く。
 この連続攻撃を前に、ヘルガーの体力はいとも簡単に底をついた。

「やったぁ!」

 とりあえず目の前の敵を撃破し、喜びの声を上げたコルカ。
 そして、今倒したヘルガーのトレーナーを探そうと行動を開始しようとした。
 そう、開始しようとした矢先の出来事だった。

 ズンッ…!



 鈍い音と共に、コルカは背後から猛烈な衝撃が全身に行き渡るのを感じた。
 その後を追うかのように、次第に全身を痛みが迸っていく。

「な…」

 何が起こったのか解らないまま、コルカはそのまま地面にうつ伏せに倒れてしまった。










 マサシ達は、先程のバトルでのダメージを回復させた後、ニザシティを出発。
 現状何も手掛かりのない今、地道にヨハロ地方を旅するという選択肢しか残されていなかった。

「それにしても、さっきのバトルで勝ってたら、私達のランクが一気にベスト3になってたのに…」

「流石に高ランクに位置するチームだけあって、引き際も完璧だった。あの短期間のバトルで、俺の力量を完全に把握してた」

 先程のバトルの反省を促すような会話を続けながら、3人は歩く。
 相変わらず、辺りにはゴツゴツとした岩肌がむき出しとなった地面。
 だが、遠くの方で微かに緑の大地が視界に入るようになってきた。

「マサシ。ここを進んだ先に何がある」

「えっと、フォトレタウンって言う町がある。位置的に言えば、丁度アロナシティの北側に進んだ先だ」

「…ねえ。ちょっといいかしら」

 ふと、アヤが2人に声を掛けたため、足を止める。

「どうした」

「この予戦が始まってから、もうどれ位経ったのかな?」

「今日で10日目だ。それが、どうしたんだ?」

「ううん、ちょっと気になっただけ。作者も、殆ど日数経過とか気にしてないんじゃないかって思ったのよ」

 狽、ぉいっ!
 僕だってその辺の事はしっかり考えてあるよ!(泣)

「……」

 突如、ユキヤが黙り込んだ。
 そして3人から見て南東の方角に視線を向けている。
 何かを、察したかのように。

「ユキヤ…?」

「気を付けろ。何か来る」

 遠くの方で、地面が隆起した。
 そしてその隆起が物凄い勢いで、3人に目掛けて襲い掛かってきた。

「バンギラス、だいちのちから=v

 ユキヤのバンギラスがいち早く動き、拳を地面に打ち付ける。
 そして地面から立ち上る火柱のようなエネルギーが、向かってくる地面の隆起を捉えた。
 そしてその部分から、ポケモンが飛び出す。
 三つ子と言えるような同じ顔をした土竜のようなポケモン、ダグトリオ。

 姿を見せたダグトリオが、突如地面を揺らし始める。
 地面系最強の大技、じしん″U撃だった。

「遅い」

 だがしかし、そのとき既にユキヤのサンドパンがダグトリオの頭上に迫っていた。
 そして。
 ドゴンッ!!


 サンドパンが爪を振り下ろし、ダグトリオを捉えた瞬間凄まじい衝撃と突風が拡散した。

「誰だ」

 ユキヤが、ダグトリオが向かってきた方角へ声を飛ばす。
 それに反応するかのように姿を見せた人物とは……。

「お前は……?」

 マサシ達の前に現れたのは、先程のコルカチームのメンバー2人。
 だが、肝心のリーダー:コルカの姿が見当たらない。

「リベンジしに来たのか…?」

「…」

 マサシの問いかけに対して、相手の2人は反応は一切無し。
 否、行動によって、マサシの問いに答えた…と言うべきか。

「…!」

 突如、紺色の髪の毛をした男が仕掛ける。
 手にしたボールから飛び出したポケモン、ザングース。
 いきなり、マサシ達目掛けて攻撃を仕掛けてきた。

「サンドパン」

 しかしそれは、ユキヤのサンドパンが難なく防御。
 逆に強烈な一撃をお見舞いして、返り討ちにした。

「…チッ」

 突然、ユキヤが舌打ちした。
 それを疑問に思った二人だったが、すぐにその理由を理解する。
 ザシュザシュザシュッ!!

「な…!?」

 敵を倒した筈のサンドパンが、何故か大ダメージを受けていた。

「あの激突の一瞬で、サンドパンにここまでのダメージを与えたか…。だが、解らんな」

「…ああ。何で、リーダーのコルカ無しで行動してるんだ…?」

「コルカ君だったら、既に始末したよ」

「「「!?」」」

 マサシ達3人に、戦慄が走る。
 あのコルカを倒したというのもあるだろうが、何より…。

「何で、同じチームのリーダーを…。内部分裂でもしたのか?」

「それは違うよ。僕とパイナは、コルカ君のチームメイトを『演じていた』だけさ」

「演じていた……だと?お前達は、コルカと同じチームじゃないのか?だとしたら、元のトレーナーは何処に…」

「元のトレーナーも何も無いよ。正真正銘、僕達2人が、コルカチームのメンバーだよ」

 頭が混乱しそうだった。
 コルカチームのメンバーだった2人による、謎の行動。
 そしてそれは、この大会に不穏な影を落とす切欠となるのだった。







 Phase.28 敵は外部に在らず







「………そうか。何となく、解ってきた」

 動揺に満ちた己の心理を、深呼吸する事で落ち着かせたマサシ。
 そして落ち着いて、冷静に思考を張り巡らせる。
 それにより、一筋の答えが見えてきた。

 マサシはそれを、相手に向けて問いかける。

「お前達も、大会参加者を潰そうとしているあの妙な連中の仲間か?」

「だったら、どうするの?」

 問いに問いで返してきたのは、パイナと呼ばれた女トレーナー。
 それに対して、マサシは…。

「『それ』が、答えだ」

「!」

 何かに感付いたかのように、2人はその場を慌てて離れる。
 そのほんの一瞬の間を挟んで、マニューラが姿を見せ、空振りに終わった爪が地面に突き刺さった。

「うわっと…。危ない危ない」

「…」

 攻撃がかわされた事を悟ると、マニューラは爪を地面から引き抜いてマサシの元に戻る。
 そして、彼らの会話のやり取りが再開される。

「盲点だった。大会参加者を片っ端から潰そうとしている集団が居る事は、3年前の時点から解っていた。だからこそ、この大会に外部から割り込んでくるとばかり思っていた」

「マサシ、どういう事?」

 マサシの発言が理解できないのか、アヤはマサシに質問をぶつけた。

「奴らは正真正銘この大会の出場者だ。だが、さっき話した出場者を潰そうとしていた集団の仲間って事だ」

「! それって」

「何の不自然さも無く、この大会に溶け込めるって訳だ。それに自分達のチームのメンバーを潰して大会側に異変を感付かれたとしても、奴ら自身が証人だから何とでも誤魔化しが効く。この大会に外部から何らかの妨害をしようとしてるという旨を伝えて、大会に紛れ込んだ者から注意を逸らす事も可能になるからな」

「…!!」

 マサシの推測は、相手2人の表情を一変させた。
 そしてその反応から予測できる結論は、たったの一つだけ。

「驚いたな…。まさか君みたいに勘が鋭い奴がいるなんて思わなかったよ…」

「正解、まさしくその通り。なら、私達がここに来た目的も解っているでしょう?」

「…ああ。悪いが、俺はお前達程度に敗けるほど弱くは無い」

「ふ、それはどうかな」

 今度はパイナがポケモンを繰り出す。
 現れたのはザングース。
 飛び出して早々、鋭い爪をマサシ達目掛けて振り下ろす!

「エーフィ」

 ここで一歩前に出たのが、アヤ。
 手に取ったボールからエーフィを繰り出すと…。
 ドゴォッ!!

「な…!?」

 強烈な攻撃だった。
 ザングースの身体が、エーフィのエスパー攻撃で軽々と吹き飛ばされた。

「ザングースが…!!?」

「この…!!」

 顔を険しくして、パイナは次のポケモンを繰り出そうとする。
 だが、それを制する存在が居た。

「落ち着きなよ、パイナ。君はすぐにカッとなる悪い癖がある。ここは、僕に任せて」

「………。解ったわ、シュイがそう言うなら」

 こうして、シュイと呼ばれた男トレーナーの方が前に出る。
 此方は、引き続きアヤが戦いを続けるらしい。

「ここ最近、私あんまりバトルしてなかったでしょ?その所為で私のポケモン達も鈍っちゃってるから、偶にはバトルさせないとね」

「そう言えば、アヤのまともなバトルを見るのはこの大会で初めてだな」

「行くわよ」

 こうして、互いに戦うトレーナーが一歩前に出る。
 アヤは引き続きエーフィでバトルを続行。
 対するシュイは、グランブルを繰り出す。

「……ッ!!」

 最初に攻撃を仕掛けたのは、アヤ。
 額部分にある紅い宝石が輝き、強烈な念動力の衝撃波が放たれる。
 それに対してグランブルは、耳を塞ぎたくなるほどの大声で雄叫びをあげる。

「この技…、ほえる≠ゥ…?一体何を…」

 後ろでバトルの様子を見ていたマサシは、用心深く相手の様子を伺う。
 すると、ある事に気付く。

「(そういう事か)」

 グランブルが叫び声をあげることによって生じた音波の振動。
 それが、エーフィの繰り出した攻撃を完全に中和していたのだ。

「エーフィ、でんこうせっか=I!」

 攻撃が打ち消された事を見ると、即座に次の手を打つ。
 超スピードを発揮する技でんこうせっか≠発動し、瞬時にグランブルの背後に移動する。
 その状態で、額の宝石の部分から紫色の光線を発射する。

「…!」

 シュイがエーフィの移動に気付いたのは、攻撃する直前。
 無論そのタイミングで気付いたところで何が出来る訳でもなく、無抵抗に攻撃を喰らう。
 その攻撃で身体のバランスが崩れ、両手で前のめりに倒れそうになる身体を両手で支えた。

「エーフィ、サイコキネシス=I!」

 アヤは、相手に休む暇を与えない。
 グランブルが立ち上がるのを待たずに、追撃を仕掛けた。
 エーフィが強烈な念動力を放ったタイミングでは、まだグランブルは身体を起こすとしているところだった。
 つまり、今のグランブルに抵抗手段は皆無。
 バシィッ!!

「何よ、まるで大した事無いじゃない」

「…え?」

「今の攻撃、大した威力を発揮してないのよ?なのに、こんな簡単に倒れちゃうなんて」

「な…!」

 シュイは、アヤの言葉が信じられなかった。
 今のバトルで繰り出したグランブルは、自身の手持ちの中ではエース級のポケモン。
 バトル開始早々、力の差を見せ付けられる形となったのだ。

「まだだ…!バクーダ、ふんか=I!」

 シュイは諦めずに次のポケモン、バクーダを繰り出す。
 そしていきなり炎系最強レベルの威力を持つ大技を繰り出してくる。
 背中から放たれた高熱の火砕流が、アヤ達目掛けて向かってきた。

「バクフーン、オーバーヒート=I!」

 手に取ったボールを投げる前に技名を指示して、ボールを投げるアヤ。
 そして前もって指示を出してからボールを放り投げた。
 その指示通り、ボールの中から現れたバクフーンが高熱の炎の塊を発射。
 バクーダの攻撃と真っ向勝負を挑む。

 だが、勝敗はあまりにも呆気なく決する。

「そん…、な…!?」

 彼女のポケモンに真っ向勝負を挑まれた時点で、既に勝敗は決していたのかもしれない。
 バクーダの攻撃などまるで意に介さず、バクフーンの攻撃を真正面からまともに浴びてしまったのだ。

「嘘でしょ…。シュイが、こんな一方的にやられるなんて…」

「…クッ!」

 咄嗟にシュイが駆け出す。
 だがその先はアヤの所ではなく…。

「…」

 アヤの背後に立っていた2人のうちの片方、ユキヤの所。
 手に取ったボールから現れた3匹目のポケモン、ゴウカザルが懇親の炎をユキヤ目掛けて放つ!

「ガブリアス」

 ユキヤもポケモンを繰り出す。
 ボールの中から現れたガブリアスは、飛び出すと同時に右手を振り下ろす。
 それだけで、ゴウカザルの発射した炎を掻き消してしまう。

「ドラゴンダイブ=v

 相手の攻撃を凌いだ後、反撃を仕掛ける。
 ガブリアスが橙色に発光するエネルギーで全身を覆うと、そのままゴウカザルに突進。
 バキィッ!!

「…!」

 此方も、呆気なく幕が下りる。
 結局何も出来ないまま、ゴウカザルを倒されてしまう。

「(この3人、強い…。 個人のレベルが、半端じゃなく高い…!特にあのマサシって言うチームリーダー…。あのコルカ君と互角に渡り合った数少ないトレーナー…)」

「やはり、そうか。貴様達、コルカを倒したのは単純な不意打ちだったらしいな」

 後ろでバトルの様子を見ていたマサシが、相手2人に言葉を投げかける。
 それを聞いた2人の背筋が硬直した。
 それだけで、マサシの推測が確信に変わる証拠となった。

「バトルが始まった時から、気になっていた。アヤはかなりの実力を持っているが、あのコルカを倒したって言うやつを圧倒していたという事にな」

「…クッ」

「とんだ小物だったな。不意打ちみたいな小汚い手段を好むとは…。さっき、ユキヤに向かっていったことでそれもよく理解できた」

「う…」

 マサシの淡々とした発言に、2人は徐々に後ずさりを始める。
 しかし、その前に…。

「そしてどうやら、形勢が悪くなるとそのスタイルが露骨に出てくるようだ」

 マサシはモンスターボールからフライゴンを出すと、思い切り拳を地面に打ち付ける。
 辺り一帯に、強烈な地震が発生した。
 それに乗じて、地面の下からカバルドンが姿を見せる。
 無論、地面の下でじしん≠喰らったのだからひとたまりも無い。

「ぁ、ぅ…」

 …勝てない。
 自分達の行動を悉く見破られ、その上で覆せ無い程の圧倒的な実力差。
 この状態で、彼ら3人を相手に勝てる要素など彼らにはある筈も無かった。

「世界最高峰の戦いを汚す輩…、貴様達は必ず潰す」

 いつものように冷静に振舞うマサシだが、その言葉からは底知れない怒りの感情が感じ取れる。
 そして先程繰り出したフライゴンに、ある指示を出した。

「グランドヒート=I」

 指示の後、フライゴンの右手に橙色の発光現象が起こる。
 それを確認した後飛翔すると、そのまま右手を空に向ける。
 そしてその光が徐々にグングンと長さを伸ばしていく。

 ある程度距離が伸びたのを確認すると、フライゴンは腕を振り下ろす!
 右腕にあったエネルギーが、そのまま地面に打ち付けられる形となった。
 フライゴンの攻撃した方角の直線状に、2人の姿。
 恐るべき速度で振り下ろされたその攻撃を、2人が回避するだけの余裕は無い。

「うわあああああああっ!!!!」

 シュイのその叫び声を最後に、2人の居る地点を中心に巨大な砂塵が立ち込める。
 その寸前、相応の規模の地響きも発生したとか。
 いずれにせよ、フライゴンの大技が2人を捉えた事に変わりは無かった。

「マサシ…」

 今迄見た事の無い、あれほど激昂したマサシに同様を隠せないアヤ。
 だが、振り向いたマサシの様子はいつもの彼の姿だった。

「行こうか」

 口調もいつもと同じだし、先ほどのように怒りを露にしているような感じもない。
 それでアヤはようやくホッと胸を撫で下ろすのだった。

「奴らのトップは、今回の大会に出場している180人のうちの誰かだ。そしてその中にさっきの連中みたいに、出場者に成りすましている奴だってまだ居る筈」

「だけど、連中の目的は何なの?出場者を攻撃する理由は?」

「連中のリーダーが、この大会で優勝する率を上昇させる事。出場者をどんどん戦闘不能にさせていき、予戦終了の時点で残ったのが奴らだけなら、自動的にそいつの優勝という事になるからな」

「…気に喰わん連中だ」

 ユキヤも表情には出さないが、言葉から奴らに対する不快感を持っていることは伺えた。
 マサシ達3人は、未だに正体不明の『敵』に対して静かな、そして激しい怒りの感情を募らせていった。






 To Be Continued






後書き
何ていうか、この話を書き始めた当初より大幅に内容が変わってしまいました。
本当ならもっとスラスラ話が進んでいた筈なんですけど…。
まあ、上手く話をつなげられたので良しとします(ぇ)。

それにしても、中々展開が進まないなぁ…(汗)。

 

[一言感想]

 あれだけ驚異的な力を揮っていたコルカでしたが、意外とあっさりやられてしまいましたね。
 もっとも、奇襲であろうと負けは負けだと捉えています。
 それは、後からマサシ達に敗れてしまった、パイナやシュイも同じかも……。
 マサシ達も、相変わらず気の抜けない戦いが続きそうです。

 

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