ヨハロ地方 マスターリーグ予戦。
今、この大会に不穏な影が落ち始めている事を知る者は少ない。
陰に潜んでいた存在が今、その牙を剥こうとしていた。
たった1人のトレーナーの為だけに………。
#ヨハロ地方某所
この場所で、バトルが行われていた。
だが、見ただけで目を覆いたくなるような凄惨な光景。
あまりにも惨く、残酷な光景。
一切の容赦なく加えられた攻撃の跡、そしてトレーナーの無残な姿。
その倒れているトレーナーには、見覚えがあった。
綺麗な青色のロングヘアーの女性、リコナ。
予戦開始直後に、マサシチームが最初に対決したチームだった。
そのチームが、今や壊滅状態。
果たして、そこで何が起こったのか。
大会に紛れ込んだ『闇』が、徐々にその全貌を明らかにし始めていた………。
COM マスターリーグ編
第9話
災禍週間(1)
Phase.29 深雪の町
ザンッ!!
サンドパンの振るう爪が、その有り余る攻撃力で突風を巻き起こす。
そしてそれは、彼らに向かってくる敵を次々となぎ倒していく。
結果、その場に立っていたのはサンドパンのみ。
…否、サンドパンのトレーナーと、その両脇に立つトレーナー3人だけであった。
「あの2人と戦ってからもう3日か…。あれ以降俺達が戦う相手は、殆どランクが下のチームか、例の出場者を潰そうとする敵だな…」
3人のうちの1人、マサシが疲れたような表情で言葉を漏らした。
残りの2人も、流石に今のマサシと同意見だと言わんばかりの表情だった。
「けど、成果もあった。この3日間で俺達のランクが28位から22位まで上昇したし、いい話も聞けた」
「証を持つ4人のトレーナーの情報…。別に、バトルに交換条件を出す事はルールに入ってなかったから…」
「ああ。お陰で今、俺達はこの町に居る…」
―――ヨハロ地方北部 見渡す限り銀色の地平線が広がる世界。
―――深雪の町 リーラシティ………。
雪が積もっているという事もあり、マサシ達は雪国でよく普及しているような衣服を身に纏っていた。
尤も、今はこの格好をしていてもまだ少し寒いくらい。
陽は差し込んでいるのにも関わらず…。
「この町の近くに2人目のトレーナーが居るっていう情報、間違いは無いのよね?」
「…ああ、まず間違いない。この町の近くで俺達は4〜5回大会参加チームとバトルをしたが、揃って似たような事を言ってた」
「盲点だったわね。最初のトレーナーが町の中にいたから、残りのメンバーも街中に居ると思い込んでた…」
「…」
詳しい事はまだ解らないが、今までに集めた情報を整理すると、この辺りに居る可能性が高いという事。
なので3人はしばらくの間、このリーラシティに留まる事になった。
リーラシティは、東西が山に挟まれた小さな町。
つまり最悪の場合、目的のトレーナーはその山のとてつもなく到達が困難な場所に留まっている可能性も棄てきれない。
その点を踏まえて、3人はまず西の山を集中的に探索する事にした。
幸いにも、この山はあまり傾斜が険しくない上、人の手による舗装も施されている為、探索には困らなかった。
「だけどマサシ、流石にこんな厳しい場所に居るなんて事は無いんじゃない?仮にいたとしても、こんなに寒い上にこの天候の悪条件。まともに戦えるような環境じゃないわよ」
「楽観視は出来ない。このマスターリーグに出場してるトレーナー及び、証を持ってるトレーナーの力は想像を絶する物だ。今までの常識の枠で考えない方がいい。今迄俺達が戦ってきた連中が弱かったんだという考えを持っても良い位だ」
「……。そうね、確かにマサシの言う通りかもしれないわ。この前戦ったコルカだって、マサシの『究極段階<エクストラレベル>』と互角に渡り合った程。正直、凄く驚いたわ」
「俺もまさか、奴等<エクストレーム>以外で『究極段階<エクストラレベル>』と互角に渡り合えるトレーナーが出てくるなんて、考えが甘かったという事を痛感させられた」
「確かにそうだ。今回のマスターリーグは、例年より出場者のレベルが異様に高い」
ユキヤでさえも、今回の大会のレベルの高さを肯定した。
マサシ達が知る中でトップクラスの実力者であるユキヤがそう言うのだから、自然と言葉を失う。
が、ここが寒い雪山だという事を思い出し、本来の目的を達成する為に行動を再開する。
「兎に角、まずはリーラシティの近くに居る証を持ったトレーナーを探し出す事だ。いい加減寒くて仕方ない」
3人は会話を中断して、再び足を進める。
こうして探索をすること、およそ3時間。
一通りこの山の探索は終えたが、それらしき人影は発見できなかった。
疲労に満ちた表情で、3人がリーラシティに戻ってきた。
「結局、空振りだった……」
声を出すのもやっとのような感じで、マサシが喋る。
だが、残りの2人は疲れがピークに達したのか、ポケモンセンター到達と同時に倒れこんでしまう。
「俺も、流石に限界だな…」
残った体力全てを振り絞り、マサシ2人をそれぞれの部屋に運んだ。
その後マサシも部屋に戻ると、そのままベッドの上でうつ伏せに倒れこみ、そのまま眠りに落ちていった。
翌日、マスターリーグ予戦14日目。
大会に参加したトレーナー達は、今日から起こる出来事に不運にも巻き込まれていく事になる。
そして、事態は動き出した。
Phase.30 災厄の始まり
マサシ達は知らなかった。
今、この大会に潜り込んでいる敵の大きさを。
そしてその敵が携えている、強大なる力の存在を。
大会が進むのに比例するかのごとく、その力も徐々に解き放たれていく。
…その前兆は、既に起こり始めていた。
マスターリーグ開催の宣言が出た町、アロナシティ。
この地方唯一の玄関口といわれるだけあり、それなりの賑わいを見せていた。
だが、何故かここ数日海が荒れていて、碌に船も出ていなかった。
ただの自然現象かと思っていたが、何日経過しても天候が回復しない。
否、それどころか日を重ねるごとにどんどん状況が悪化してきている。
流石に様子がおかしいと、調査を始める人も出始めたのだが…。
何故か、調査に出発した人々が戻ってこなかった。
しかし異常現象は、何も海だけで起きているわけでもなかった。
大地でも、それは起こっていた。
ヨハロ地方全域に及ぶ、非常に大規模な地震。
それに触発され、次第に平静さを欠いていく野生ポケモン達。
そしてついに、悪意は芽吹いた。
ヨハロ地方 クシアタウン。
今現在マサシ達の居るリーラシティから、然程距離の離れていない場所に点在する小さな町。
この町でとてつもなく巨大な…、怪獣と見紛う程の桁外れのサイズのポケモンが一瞬姿を見せた。
そして、熱を持った光がその町を一瞬覆った。
「ふ…。今ので、大会の出場者のある程度は始末できたね」
太陽からの逆光で姿は確認できないが、声から察してその人物は男性。
しかも、まだ成人より少し幼い程度の年齢と思われる声。
そして手に取るモンスターボールに一瞬目を配ると…。
「次は、あっちに行ってみようか」
彼は進行方向を決めると、ごく平然と歩き出す。
今まで彼がいた町は、全てが蒸発した顔かのような状態。
町の何処にも水が存在せず、草木も全てが枯れ果てているという光景。
ある程度クシアタウンから離れた所で、『彼』は邪悪な笑みを口元に浮かべた。
リーラシティで、マサシ達は次の旅への準備を進めていた。
と言っても、この町の周辺を散策する程度の簡単な荷物まとめだが。
「今日は、証を持つトレーナーを見付けられるといいが…」
「あんまり時間をかけられないわよ。まだ予戦14日目だけど、私達はまだヨハロ地方のほんの一部を回ったに過ぎないんだから」
「言われるまでもない。こんな所で、そこまで時間を割く事は出来ない事など解っている」
3人で言葉を交わしながら、3人は町を出た。
しかし、町を出てしばらくして、突如足を止めた。
「……、ユキヤ」
「解っている。貴様も感じたか」
足を止めたばかりでなく、マサシとユキヤは鋭い視線を放っている。
アヤもそれとなく気付いているのか、無意識のうちにボールを構えていた。
「この殺気は、明らかにこっちに向けられてるな」
「この近くに敵が潜んでいたか。碌な休息も取れないな」
マサシとユキヤも、臨戦態勢に入る。
彼らの視線の先から漂ってくるのは、底知れぬ恐怖に満ちた殺気。
今、彼らはとてつもなく巨大な『何か』と直面しようとしていた。
そしてすぐに悟る。
これより自分達が戦う相手が、如何に桁の違う存在であるのか。
どのような存在が、この大会に紛れ込んでいるのかを。
―――ふんか=c。
突如として、周囲の地面のいたる所が隆起し始める。
そして、その隆起した場所から巨大な火柱が天高く伸びていく。
「これは………?」
「ふんか=cだわ」
唯一この技の正体に気付いたアヤが、言葉を漏らす。
しかし…。
「だけど、地面の下から火柱を発生させるようなふんか≠ネんて、聞いた事がないわ…!」
確かに一般的なポケモンが使うふんか≠ニは、規模も威力も圧倒的に違う。
例えば、彼女の相棒であるバクフーンにしても、背中の燃え盛る炎から火砕流のようなものを発生させるような攻撃。
他の一般的な炎ポケモンにしても、今挙げた例と大差ない規模の攻撃しか出来ない筈。
…ならば、この攻撃を繰り出した存在とは何者なのか?
「…! まずいっ!!」
今の攻撃で天高く伸びた火柱の勢いが衰え、細かく分離して地面に降下し始めていた。
この場に居ては危険だと判断して、マサシがオーダイルを繰り出す。
「オーダイル、ハイドロストリーム=I!」
咄嗟に、巨大サイズの渦を巻いた水流を天目掛けて発射。
無数に振り注ぐ火の粉全てを飲み込んでいく。
だが…。
「待って、マサシ!今の技に使った水、どんどん蒸発してる…!」
アヤの言う通り、ハイドロストリーム≠フ水が徐々に水蒸気と化してそのサイズを縮小している。
だが、少なくとも退避するだけの時間は稼ぐ事ができた。
マサシはオーダイルを呼び戻すと、攻撃範囲の外まで全力で走り出す。
「はぁはぁ…。危なかった…」
辛うじて攻撃を回避しきった3人。
だが、大した運動はしていないのに、彼らから尋常じゃない量の汗が滴り落ちていた。
「おい、何か暑くないか? ここはリーラシティからそんなに離れてないんだぞ?なのにこの暑さはおかしすぎないか?」
「(! 暑さ…)」
―――そう言えば、さっきの攻撃…。
―――地面から火柱を発生させて攻撃してた…。
―――『地面』、そして『炎』…。
―――それに、この暑さ……。
「………ッ!!」
突然、アヤが何かに気付いたかのように息を呑む。
「アヤ?」
「…マサシ、ユキヤ。私の予測が当たってるんだとしたら…」
「どうした?」
「今、私達の前に居る筈の敵は、とてつもない大物だわ…」
「大物…!?」
「ホウエンを旅してた時、聞いた事があるの。『大地の化身』ともよばれる、光と熱気で水を蒸発させて、大地を作り出したと伝えられる伝説のポケモンの事を…」
アヤの声が、震えている。
それも、いつもの強気な性格の彼女からは想像も出来ないほどに。
彼女の話を聞いた二人も、納得するしかなかった。
確かに、途方も無い話だ。
大地を作り出すほどの力を持ったポケモンなど…。
一体どれ程の力を持っているのかなど、彼らの常識の範囲で計りきれるはずもなかった。
「……アヤ。そのポケモンの、名前は…?」
グラードン
先程、3人が視線を向けていた先から声が響き渡る。
声から察するに、先刻クシアタウンに居たのと同じ人物。
熱気で景色がゆらゆらしているが、その向こうにはっきりと人間の姿を捉える事ができた。
紺色の髪の毛に、ゴーグルを額に装備している男。
そしてその背後に、体長4メートル近くにも及ぶ、巨大なポケモンの姿。
その姿を見た瞬間、アヤの足腰から力が抜けていった。
「間違い、無い……。本物の、グラードン…」
最早、彼女の出す声は、泣き声にも近い。
完全に動揺しきっている。
だが、それも仕方の無い事。
あのポケモンの力を、彼女は知っているのだから………。
Phase.31 グラードン
「こいつがグラードン…!」
マサシはいつも通り冷静に振舞うが、身体の震えが止まらない。
目の前に聳え立つかつて無い強敵を前に、身体が自然と恐怖を感じ取っているのだ。
「貴様は、大会出場者を潰している一味か?」
ユキヤも内心動揺していたが、それでも何とか平静を装う事はできた。
そして、雰囲気的にグラードンのトレーナーと思われる男に質問をぶつけた。
「ああ、そうだよ。大会出場者の始末する具合があまりにも悪いもんだから、とうとう僕達まで繰り出されるハメになったのさ」
「まるで、今までこの大会に紛れ込んだ奴とは格が違うとでも言いたげだな」
「その通りだ。そして僕達には、共通している事が一つだけある」
「…?」
「トップスは、1人1人が伝説級のポケモンを所持している事だよ。僕がこうして、グラードンを従えているようにね」
その言葉を発した瞬間、空気が重くなる。
流石にここまでの言葉を聞かされると、2人の間にも絶望感が漂い始める。
これまでの彼らの旅の中で、伝説級のポケモンとの遭遇は0。
つまり、奴の言うトップスとやらの実力が未知数である事を表していたのだ。
「さてと。そろそろ君たちも、グラードン<こいつ>の餌食になれ。ソーラービーム=I」
「誰が、黙ってやられるか!」
あくまで抵抗の意思を見せるマサシ。
自分の相棒であるオーダイルに、ハイドロカノン≠発射させるのだが…。
ズドォォォォンッ!!
グラードンが発射した白色の光線に、オーダイルの攻撃は難なく掻き消される。
そしてそのまま、攻撃がオーダイルに襲い掛かる…!
「ガブリアス!」
流石のユキヤでも、焦りの表情をみせながらガブリアスを繰り出す。
ガブリアスの懇親の一撃で、辛うじて攻撃の軌道を逸らす事に成功した。
「何てパワーだ…!ハイドロカノン≠ェ、こんな簡単に…!」
「しかも、ハイドロカノン≠打ち破った後であるにもかかわらず、あの破壊力…」
「やっぱり、生半可な攻撃じゃ全く通用しない…!!」
マサシがそう喋った瞬間。
オーダイルから、凄まじいまでの天属性の力があふれ出す。
同時に、マサシ薄いヴェールのような天属性の力を放出し始めた。
「能力回帰:『究極段階<エクストラレベル>』!!」
全力を発揮したオーダイルが、改めて敵を睨みつける。
が、相手は全く微動だにしない。
それならばと、一瞬姿を喪失するほどの超スピードを発揮。
グラードンの眼前に飛び出す。
「! (速い…!)」
相手トレーナーも、オーダイルのこのスピードは想定外だったらしく、驚きの表情を見せる。
そして至近距離から、ハイドロカノン≠グラードンに直撃させた。
「どうだ…!」
オーダイルがマサシの許に戻り、グラードンの様子を伺う。
だが、今の攻撃さえも、グラードンには効いている様子が無い。
「至近距離からのハイドロカノン≠ナも、全く通用しないのか…!」
「マサシ…、水系のポケモンじゃ不利よ…」
アヤも、ようやく立ち直り、マサシにアドバイスをする。
「どういう事だ?」
「聞いた話じゃ、グラードンの特性は『ひでり』。バトルに出したらにほんばれ≠フ効果が半永久的に続く特性よ」
「それだけじゃない。このグラードンには、ウェザーロック≠ニいう特殊能力付きでね。天候を変化させる技、特性を無効にするのさ」」
その言葉を聞いた途端、ユキヤはとあるボールを握ったまま舌打ちをした。
「その様子を見ると、天候変化させられるポケモンを出すつもりだったみたいだけど…。残念だったね」
「余所見をするな!!」
相手が言葉を飛ばしている間に、再びグラードンの目の前にオーダイルが飛び出す。
「1発で効果が無いんだったら……!」
マサシはそこで言葉を止めて、深呼吸する。
そして…。
「連続で、休む暇も無い程の攻撃をするだけだ!!」
マサシのその叫び声を合図に、オーダイルが攻撃を仕掛ける。
それは、今までに見た事の無い程の量のハイドロカノン=B
とても数え切る事など不可能な、凄まじい手数の超連続攻撃だった。
「グラードン、ソーラービーム≠セ」
そんな凄まじい攻撃を見せ付けられながらも、奴は落ち着いたまま。
そして最初と同じ、白色の光線を発射した。
グラードンの攻撃は、相変わらず凄まじいパワーだった。
だが、今回はオーダイルが手数で互角に渡り合っている。
しかし、マサシの攻撃はこれだけに留まらなかった。
「マニューラ、黒翔閃=I フライゴン、グランドヒート=I!」
マニューラとフライゴンが、それぞれ持てる限りの力を発揮した。
それぞれの最大級の技を繰り出し、オーダイルに加勢する。
しかし、それでもまだグラードンの攻撃を押し返せない。
「(くそ、パワーが違いすぎる…!)」
「バクフーン、ブラストバーン=I!」
背後から、アヤの声が聞こえた。
その口調は、先ほどまでとは違い、いつもの彼女のものだった。
そんな彼女の相棒であるバクフーンが、巨大な炎を発射する。
この日照りの影響も手伝って、通常より更にパワーの上がった攻撃が繰り出された。
「この天気は、私にとっても有利に働くわ!」
バクフーンの放った炎も、グラードンの攻撃を押し留めている箇所に激突。
たかが1匹のポケモンが攻撃を新たに加えただけなのに、それだけでどんどん攻撃を押し返し始めた。
「……!」
マサシ達の攻撃は、完全にグラードンの攻撃を打ち破った。
そして、マサシ達のポケモンの総攻撃がグラードンに襲い掛かっていった。
その途方も無い勢いに押されて、遂にグラードンが転倒。
一矢報いる事に成功したのだった。
Phase.32 マサシ大爆発
マサシ達は、目の前に立ち塞がる巨大な敵との戦闘を続けていた。
その名は、グラードン。
大陸を生み出す力を持つと言われる、伝説のポケモン。
その圧倒的な力に、全ての力を一つにして対抗するマサシ達。
…だが、それでも少しずつではあるが、徐々に劣勢になり始めていた。
「くそ…」
マサシ達3人は、全身汗だくだった。
グラードンの特性:『ひでり』の所為で、途轍もなく気温が上がっている。
そんな環境で激しく動き回っているため、当たり前なのだが…。
それに加えて、向こうには天候変化を無効にする力まで備わっている。
それがより一層、マサシ達を追い詰めていた。
「フローゼル、至近距離からハイドロインパクト≠セ!!」
逃げ回っていても勝つことは出来ない。
隙を見て、マサシはフローゼルを思い切ってグラードンに突撃させるのだが…。
ズシンッ!!
全く意に介さず。
まるで蚊を叩くが如く、軽く腕を振り下ろすだけでフローゼルを押し潰してしまった。
「フローゼル!」
しかし、それで終わったわけではなかった。
フローゼルが全身の力を振り絞り、グラードンの腕を持ち上げ始めていた。
「究極段階<エクストラレベル>を舐めるな…。こんな単純な攻撃で、やられるか!!」
フローゼルはやがて、完全にグラードンの腕を押しのける。
その隙にこの場を即座に離れ、安全を確保した。
「何処を見ている」
そんな声が聞こえたのは、丁度その時だった。
聴こえてきた方角は、グラードンの背後。
気が付けば、いつの間にかユキヤがサンドパンと共に背後に回りこんでいた。
そしてサンドパンの『破壊爪<デストラクションエッジ>』が、グラードンに炸裂する。
ドゴンッ!!!
だが、この攻撃を喰らってもグラードンは微動だにしなかった。
それならばと、ユキヤは先程のオーダイル同様に数え切れないほどの勢いで怒涛の連続攻撃を繰り出す。
それも、サンドパン得意の超スピードを発揮しながらグラードンの全身に打撃を与えていく。
この連続攻撃に、流石のグラードンも若干姿勢がグラついた。
「…!バクフーン、ブラストバーン=I!!」
グラードンの様子を見逃さなかったアヤが、すかさず攻める。
若干バランスを崩したグラードン目掛けて、先ほどと同等の炎を放つ。
バランスを崩したところで攻撃を浴びせられた為、流石のグラードンでもノーダメージと言うわけにはいかなかった。
「やったか…!」
グラードンは確かにダメージを受けた素振りを見せた。
それでも、気は抜けない。
相手は伝説のポケモン、決して油断は許されない相手だから。
「フライゴン、りゅうせいぐん=I!!」
まだ完全に姿勢を持ち直していないグラードンに、ドラゴンタイプ最強レベルの技が炸裂!
流石のグラードンも、この連続攻撃に呻き声をあげた。
「一つ、聞いておきたい事がある」
グラードンが爆煙の中に包まれたところで、マサシが相手の男に言葉をぶつける。
「何かな?」
「お前達の目的は、お前達のリーダー以外の大会参加者を殲滅する事…だったな」
「ああ、そうだよ。今更それがどうしt」
「だったら何故、さっきのリーラシティの時みたいに、無関係な人達まで巻き込むような真似をした…!」
「何だ、そんな事か」
「そんな事とは何だ…!さっきだって、お前達の所為でどれだけの被害が出たか知っているのか!!!」
「知らないよ、そんな事。僕達の目的は、あくまで大会参加者の殲滅。それ以外のことなんて、どうなっても構わないのさ」
「…ッ!そんな下らない事のために、どれだけの人々が傷つこうが、何とも思わないのか!!」
「知らないね」
「ッ!!!」
マサシの中で、『何か』が弾けとんだ。
「オーダイル!!!!」
未だかつて無いほどに、激情を声に出すマサシ。
そしてオーダイルも、究極段階<エクストラレベル>の力を貯め始める。
それも、今まで見た事も無い程の桁外れの圧倒的な力。
まるで、マサシの感情に反応するかのようにオーダイルの力がどんどん強くなっている。
「貴様のような奴が、この大会を汚す。俺は、貴様を倒すためなら出し惜しみは一切無しだ!!!」
やがて、オーダイルから溢れ出る天属性の力は、その姿をも覆い隠すほどになる。
そしてマサシは、先程の荒い口調のまま指示を出す。
「これは、貴様に対する俺の純粋な怒りの感情だ。如何に伝説のポケモンと言えど、この攻撃には耐え切れない…!!!」
「何をしようとも、グラードンとの力の差は痛感してる筈だ。そら、倒すんだったらやってみるんだな。ソーラービーム=I!」
グラードンが再び、太陽光エネルギーを集めた光線を発射。
オーダイルは避ける素振りを全く見せず、真正面から攻撃を喰らった。
しかし…。
「それが…、どうした」
「なっ!?」
無傷だった。
あの凄まじいパワーをまともに喰らったのに、全くダメージを受けていない。
「今度は…、こっちの番だ!!!!」
マサシがそう喋った瞬間、オーダイルの姿がその場から消えた。
「(また消え…)」
ドゴォッ!!!
ほんの一瞬の間を挟んで、オーダイルの凄まじく強烈な打撃が、グラードンの胴体にめり込んだ。
そしてあろう事か、グラードンのあの巨大な身体が宙を舞った。
「なぁっ!!?」
開いた口が塞がらなかった。
とても信じがたい光景だったのだから無理も無い。
グラードンのあの巨体、体重が1t近くにも及ぶその身体が吹き飛んだのだから。
その直後、上空からオーダイルがグラードンを地上目掛けて殴り落とした。
ズドォォォンッ!!
たった2度の攻撃を喰らっただけなのに、グラードンは瀕死寸前。
凄まじいまでの戦闘能力を、オーダイルは発揮していた。
間髪入れず、怒涛の攻撃を次々と繰り出していく。
その最後の締めとして、スペイザーを繰り出す姿勢を見せた。
唯一つ今までと異なっているのは、能力回帰のエネルギーが収束したにも関わらず、オーダイルから凄まじい量の光が発せられていると言う事。
それこそ、『究極段階<エクストラレベル>』状態と比べて何ら変化が無いと思わせるほどのものだった。
オーダイルの桁外れの力の解放に順応し、大地が揺れ始める。
そんな姿に、敵は恐怖を感じ始める。
「なっ、ぁ…!?」
「これで、終わりだ」
マサシはバトルの終幕を促す発言を、マサシは前進しながら言い放つ。
そしてオーダイルの横に並んだところで足を止めると、腕を伸ばし、掌を相手に向ける。
「究極段階<エクストラレベル>:ハイドロスペイザー=B消えろ」
改めてマサシの指示が出たところで、オーダイルがその膨大なまでのエネルギーを一気に開放した。
解き放たれたそれは、未だかつて見た事が無い程の巨大な光線となった。
そしてそれは、とてもグラードン程度に抑えきれるような攻撃ではなかった。
光線はグラードンを飲み込み、一瞬辺り一帯を覆うほどの閃光を発した後、大爆発。
その爆発の衝撃は凄まじく大地を揺らし、強烈な突風が360度全方位に吹き荒れた。
そしてその攻撃の後には、何一つ残っていなかった。
相手の男も、そしてグラードンも…。
To Be Continued
後書き
まさかの伝説級ポケモンの登場。
本当は、出来るだけ伝説系のポケモンの登場は控えたかったんですが…。
流石にそろそろ敵が『強い』という印象が薄らいできていたと感じ、やむなく…。
それにしても、このマスターリーグ編は僕の構想をどんどん覆してしまいます。
正直、どれだけ長くなるのか自分でも解らなくなってきました。−−;
とまあ、作者の愚痴はこの辺りにしておきます。
では、次回をお楽しみに。
[一言感想]
どんどん強い力のあるキャラクターが登場してきました。
マサシも急激に戦力増大中?
なんだかんだで、マサシの戦績が持ち直ってきちゃったかも(ぇ)。