いまだかつて無い脅威が、マスターリーグ内部に出現した。
伝説級のポケモンを難なく操る集団。
その存在を前に、あらゆるマスターリーグ出場者が畏怖し、避けた。
だが、彼らの『牙』は逃すと言う言葉を知らない。
確実に、奴等の脅威は広まり始めていた。
COM マスターリーグ編
第10話
災禍週間(2)
Phase.33 広がる被害
伝説のポケモンを持った刺客は、何もマサシ達が今戦ったトレーナーだけに限った事ではなかった。
今、奴の仲間であるトレーナー達がヨハロ地方の全域で暗躍していた。
周りの被害など気にも留めず、大会出場者を潰す事を名目に町を破壊し、森林を焼き、大地を割る。
奴等の残虐非道さが、徐々に表面に現れ始めていた。
警報が、鳴り響く。
その場所は、今開催されているマスターリーグの全てのトレーナー達の状態を確認する事のできる、大会本部。
そこで、異常事態を知らせる警報が鳴り響いていたのだ。
「一体どうしたんだ?」
そこの責任者と思われるスーツ姿の男性が、声を出す。
「大会出場者が、次々と謎の集団に倒されています!それに…」
モニターと向かい合っていた人物の1人が、彼の問いに答えた。
更に言葉を繋げる。
「その倒されたチームが、大会出場者名簿からどんどん削除されています!」
「何だと…!? 未だかつて、この大会でそんな事が起こった事例など…」
その男性は、窓から遠方を眺めた。
「(一体、何が起こっているんだ…)」
#ヨハロ地方南東部 水の町ヒダシティ
街中を透き通った水が流れている、見るからに豊かな町。
だが、今この町も大変な事態に陥っていた。
町中を流れている水流が、突如として溢れ出し、ヒダシティ全域に大洪水を巻き起こしていた。
ヒダシティの海側に、1人の女性。
不気味なほどの高笑いをしながら、壊れゆくヒダシティの光景を眺めていた。
そしてこの事態に慌てふためく人々を見て、更に興奮してきていた。
「あーーっはっはっはっは! チマチマ大会参加者だけを始末するのも面倒臭いね。だったらこうやって一気に潰した方が効率がいいね!」
「やめろ!!」
そんな女性の許に、数人の男女トレーナーが駆け寄ってきた。
「何よ、今楽しい所なんだから邪魔しないでよ」
「どうして、こんな事をするんだ!!」
「それ、あんた達に言う必要あるの?私、面倒な事嫌いなのよね」
そう語る彼女の眼は、まるで天から地上を見下すかのごとく。
まるで目の前を五月蝿く飛び回る、羽虫を見るかのような視線だった。
「だから、あんた達も海の藻屑にしてあげる。私の、この…」
言葉を続けながら、彼女は右手を持ち上げる。
すると、海の中から途轍もなく巨大なポケモンが姿を現す。
「カイオーガの力でね!!」
それから、然程時間は掛からなかった。
海の方から押し寄せた巨大な津波に飲み込まれて、ヒダシティは海の藻屑となっていった。
被害が出ているのは、ヒダシティやリーラシティ周辺だけではなかった。
今や、ヨハロ地方全域で奴等の悪意が芽吹いていた。
ある場所ではエンテイの力により町一つが丸々焼かれた。
またそれとは別の町では、カントーに伝わる伝説の三鳥により無残な廃墟と化していた。
最早、奴等の暴走は止まる事を知らなかった。
そして、また…。
最早、大会は一時中断せざるを得ない状態になってしまった。
大会本部は急遽、マスターリーグの一時中断の旨を書き込んだメールを、出場チームが持つ端末に向けて送信していた。
Phase.34 届けられた報せ
グラードンが倒れた事で、周囲の気温は少しずつ下がり始めていた。
丁度そんなタイミングで、マサシの持つ端末から音が鳴り響いた。
「…?」
マサシは気になって、その端末の画面を調べる。
すると、画面にメール着信を意味するマークが表示されていた。
しかもそのメールの送信先が大会本部と表記されていたため、ただ事では無いと思い、即座に内容を確認した。
そのメールには、このように書かれていた。
『今現在、この大会にて異常事態が発生している。
原因を突き止め、事態が収集するまでの間、一時予戦を中断する』
「異常事態…。やっぱり、さっきの奴の仲間がこのヨハロ地方各地で暗躍しているみたいだな」
「うん。どうやら、事態はどんどん進んでいるみたいね。これからどうするの?」
「多分向こうは、まだどういう状態なのか把握出来てないと思う。だからまずは、この辺りにいるっていう、証を持つトレーナーと話をするべきだと思う」
「…ああ。俺は、特に異論は無い」
「決まりだな。じゃあ、とりあえず一端リーラシティに戻ろう。大会側からさっきの通達が伝わっている以上、町に足を運んでいてもおかしくない」
とりあえずマサシの提案で、一度町に戻ることにした。
その町に、証を持ったトレーナーが戻っていることを願って…。
#リーラシティ
この町は先程、襲撃によりボロボロとなった。
それでも辛うじて、そしてポケモンセンターは無事だった。
なので3人は、先にポケモン達を回復させるべくポケモンセンターに足を運んだ。
「…ん?」
気が付けば、センター受付の女性と誰かが会話をしている。
藍色のロングヘアーの女性。
雰囲気から察すると、余程重要な話をしている風だったので、それまでしばらくの間待つことにした。
数分後、その藍色の髪の女性は話を終えて出入り口に向けて歩き出した。
その途中で、マサシの持つ端末に目が止まる。
「そこの貴方、ちょっといいかしら?」
「…俺か?」
その女性は、マサシに視線を向けていた。
なので自然と、受け答えをしていた。
「その端末を持っていると言う事は、貴方はマスターリーグの出場者の方ですね? 私はナリサ。予戦通過の証を持つトレーナーの1人です」
「! こうも簡単に見付かるとは…」
それは、実に呆気なかった。
これから探しに行こうとしていた矢先、その人物が目の前に現れたのだ。
「今、このヨハロ地方はどんな状態なんだ?」
「それは、まだ詳しい事は解っていないけど…。正体不明の集団に、大会出場者が無差別に襲われると言う事件が多発しているのです。マスターリーグの歴史上、このような事は一度もありませんでした。なので緊急に大会の一時中断を決定し、事件の収束を優先する事になったのです」
「…一つ、俺が知っている事を話します」
「!」
思いがけない、情報提供を促すマサシの発言に、ナリサと名乗った女性の表情が変わる。
そして真剣な眼差しで、マサシを見つめる。
「これは3年前に得た情報なんだが…。その集団の黒幕は、今回のマスターリーグ参加者180人の中の『誰か』だという事です」
「どうして…。貴方はそんな事を知っているのかしら?」
「3年前、俺がジョウトを旅していた時に、今この大会を荒らしている連中の仲間に襲撃されました。その時退けた連中の1人から聞きました」
「………。解ったわ、貴方の話を信じます」
「どうして、マサシの事を疑わないの?」
横から会話に割り込んできたのは、アヤ。
確かにこれだけの情報をマサシが握っているのは、彼女からして見れば不自然。
マサシが全ての黒幕だと疑われても、仕方が無い筈。
「あら、私はこれでも人を見る目には自信があります。貴方のその表情<かお>、とても嘘をついているように見えません」
「信用してくれて助かりました。下手に喋って疑われたりしないかどうか、一種の賭けだったんですが…」
「まあ、相手が私だったのが幸運でしたね。私以外の3人、特にジグサだったら真っ先に貴方を疑っていましたね」
「はは…。そんなに疑り深い人がいるのか…(汗)」
この時、マサシは心から思った。
この話をしたのが、この人で本当によかった……と(ぁ)。
「…それで、貴女はこれからどうするつもりですか?」
「そうね…。君の言う事を信じるとして、まずは現在残っているトレーナーをもう一度調べ直す事かしら。本当に黒幕が大会参加者180人の中にいるのなら、それである程度絞り込める筈」
「…そうですか」
「それで、貴方達のランクは22位だったかしら。少し、協力して欲しい事があるのだけれど」
「俺達に?」
「正確に言えば、貴方達を含む現在生き残っているマスターリーグ参加者全員に…ね」
「…?」
「今現在でも、どんどん被害は拡大しているわ。寧ろ『マスターリーグ参加者の排除』を口実に、性質の悪い無差別な破壊行為に走っているのが殆どらしいのです」
「成る程な。黒幕を突き止めるまでの間、これ以上の被害拡大を抑える役目を俺達に押し付けるつもりか」
相手の考えを逸早く読み取ったユキヤが、それを口に出す。
それを聞いたナリサは、少し顔を俯ける。
何も発言をしないことから、ユキヤの言葉が正しい事を証明しているようだった。
「言い方は悪いけど、そうなるかしら…。無論、私達4人も出来るだけ被害の拡大を食い止めるように努力はします。が、この広大なヨハロ地方をたったの4人では限界がありますので…」
「だろうな。この地方は、普通に全域巡るだけでもどれだけの時間が掛かるのかも知れない。ましてや、たったの4人でこの地方全域で起こっている大会参加者への襲撃事件は、手に余ると言うわけだ」
「今現在無事に残っている大会出場者の方々にも、同じ通達が届けられている筈です。一刻も早く事態を収拾させて、大会を再開しなければなりませんので」
「…そうだな。このマスターリーグは、世界中が注目している数年に一度の大祭典。それが、突然中止になったなんて公にする訳にもいかない」
3人は、一度互いに顔を見合わせる。
そして3人揃って首を縦に振った。
「それなら、俺達も早速行動を始めるべきか。それに今は大会が中断しているなら、俺達全員バラバラに行動した方が効率がいい」
「…そうね。確かにその方が、効率が良くなるかもしれませんね」
ナリサの賛成もあり、マサシチーム3人は一旦それぞれ別行動を取る事になった。
3人は相談の結果、1週間後に再びこの町に集合するという事で話が纏まった。
「ここから先は、それぞれの単独行動になる。2人とも、無事で」
「マサシ、そこから先は言わなくてもいいわ。私達だって、あんな連中に負けるつもりなんてないからね」
「同感だ。奴等程度に遅れを取るほど、俺の力は弱くない」
「そうだな。じゃあ皆、1週間後に!」
マサシの声を合図に、3人は別々の方角に駆け出していく。
マスターリーグの中断という未曾有の事態を収束させるべく、それぞれが壮絶な戦いの渦中へと飛び込んでいく…。
Phase.35 動き出した者達
彼ら3人は、この場所での再会を誓い合い、それぞれ別の方角に別れていった。
しかし動き出していた参加チームは、マサシ達だけではなかった。
ランクだけで言えば、マサシチームよりずっと上のチーム。
予戦内ランキング第10位、マサシ達の一番最初の戦いを遠方から観戦していた、あのクニヤチームだった。
……つか、この3人の事覚えてる人いるかな?(汗)
最初のマサシ達のバトルを観戦し、『レベルの低い戦い』とまで言うほどの3人。
彼らの実力の高さは、現在の状況からもすぐに把握する事ができた。
と言うのも、彼ら3人を中心にして数えるのも呆れ果てる数のポケモン、そしてトレーナーが倒れていた。
無論その中には、伝説に名を馳せるポケモンの存在も数える程度ではあるが存在した。
それ程の激闘を繰り広げた直後であろう現状、彼らから息切れはおろかダメージ一つ受けている様子さえ伺えなかった。
「これで一段落かな?」
3人の中心に立つのは、紺色のある程度整えられた髪の毛をした少年。
若干トーンの高い声で周囲を見渡してから呟いた。
「そうだね。とりあえず、もう我々に向かってくる『無謀な輩』はあらかた片付いたみたいですね」
「また、そんな風に自信過剰になるんだから」
周囲に倒れている連中を『無謀な輩』と見下す赤紫の髪の男性に対し、赤のロングヘアーの女性が戒める。
その言葉を聞いて、小さい声で『うっ』と囁く。
「ダイシ、あんた何度かやられそうになったじゃない。それに、ここに倒れてる連中は殆どクニヤ君1人で片付けたようなものじゃない」
「それは失礼。それにしても、例の大会参加者を手当たり次第に潰していると言う輩、どうも相手の力量が解らない連中ばかりのようですね」
「ダイシ、リミカ。こいつらは多分、ただの下っ端だよ。持ってたポケモンのレベルも、大してレベルが高くないのばっかりだったし」
「だけど、驚いたわ。まさか、伝説のポケモンまで手懐けてるトレーナーが混ざってるなんて…」
「そこだよ。戦ってて気付いたけど、伝説系のポケモンを持ってたトレーナーは、それ以外のポケモンのレベルも他の人達と比べて桁外れに高かった。多分、ここにいたトレーナー達を纏める役目を持ってたんだと思う」
大混戦の中でも、それだけの事を見極められたクニヤの洞察力に、2人は驚いていた。
「2人とも、気を抜くにはまだ早いみたいだよ」
「「!」」
クニヤの言葉で、2人は咄嗟にボールを取り出し、構える。
倒れているポケモン達の群れの中から、更に数十匹単位のポケモンの群れが複数飛び出してきた。
ボールを放ろうとする2人だが、それをクニヤが手を横に出して静止させる。
「クニヤ君…?」
「心配要らないよ。もう終わってる」
「え…」
クニヤがそう語った直後の事だった。
彼らの周囲に一瞬、縦横無尽に真っ白い閃光が迸る。
その瞬間、向かってきたポケモン全てが力尽きていた。
「ご苦労様。ハッサム」
労いの言葉と共に、彼の横にハッサムの姿が現れた。
「にしても、相変わらず凄いわね。あんたの急所直撃能力」
「ああ…。それぞれのポケモンの持つ弱所、つまり急所を一瞬で見抜くクニヤの洞察力とそこを的確・即座に攻撃するポケモン達の技量。この二つの要素があってこそ、初めて成り立つクニヤ君の必殺攻撃」
「それに、ハッサムのあの速さ。一瞬にしてこれだけの集団を倒せたのも、そのハッサムの活躍が大きいわね」
「2人とも、とりあえず何処か近くの町に行こうよ。流石に、僕達のポケモンの体力も結構危ないからね」
クニヤの言葉に、2人は反論はしなかった。
確かに彼の言う通り、あれだけの数の敵を倒した後では、体力の消耗も凄まじかった。
3人はクニヤを先頭として歩き出し、近くの町を探した。
「…!」
彼らは運よく、少し歩いたところで町を発見する事ができた。
だが…。
「これは…」
そこは町中が水浸しになっており、街中の建物の殆どが崩壊していた。
明らかに、何らかの被害を受けた後だった。
「酷い有様ね。一体何が起こったら、こんな事になるのかしら…」
目の前の惨状に、リミカは言葉を失った。
彼女だけではなく、クニヤとダイシも言葉が出ずにいた。
「答えを教えてあげようかしら?」
突如、女性の声が何処からかクニヤ達に向けて発せられた。
3人は咄嗟に、周囲を警戒する。
その声の主は、すぐ近くにある倒壊した建物の頂に立っていた。
「お前は…!」
クニヤは、その女性の姿を視認した途端身構える。
雰囲気だけではっきりと感じ取る事が出来る。
あの女性の雰囲気と、表情。
この惨状を引き起こした、張本人だと…。
「折角町一つをこうやって壊したのに、大会参加者が1人も居なかったなんて最悪だわ」
「あんたが……、あんたがこの町をこんなになるまで壊したの!?」
リミカが、怒りの感情を露にしてその女性に問いかける。
問い掛けに対し、その女性は平然と答える。
「そうよ。一応私達の仕事は大会参加者を始末する事だけど、私は面倒臭い事は嫌いなの」
「胸糞悪くなる話ですね。町に居る『かもしれない』大会参加者をまとめて倒す為に、一つの町をこれ程までに破壊するとは…」
ダイシも、普段どおりの口調で話すが、その拳は強く握り締められていた。
自分の爆発しそうな感情を、必死に抑え込んでいる証だった。
「僕達大会参加者のために、この町がここまでの被害を…」
うつむいて歩きながら、クニヤは言葉を漏らす。
そして顔を持ち上げ、その女性を睨みつける。
普通の人間ならその視線に臆してしまうほどの鋭い視線。
「だけど、私も幸運だったわ。偶然とはいえ、大会参加者を見付けられたんだから。私を阻止しようと、この町の連中が挑んできたんだけど…」
彼女は、少し前のことを思い出す。
この町、ヒダシティの海岸線に姿を見せた彼女を、この町のトレーナー達が戦いを挑んだ。
が、彼らはほんの数刻で全滅してしまう。
と言うのも、彼女の手の中にあるたった1匹のポケモンによってこの町が壊滅状態に陥ってしまったのだから。
「あんた達も、この町の連中と同じ末路を辿らせてあげる」
そういうと、その女は器用に建物の上を飛び移っていく。
向かう先は海岸線。
明らかに、この3人を誘っていた。
「…」
彼らは敢えて何も喋らず、無言で彼女を追いかけた。
やがて、雲行きの怪しかった空から、雨粒が降り注ぎ始めた。
「雨…」
空を見上げつつ、一直線に先程の女が向かった方角へ進む3人。
そして。
「逃さない…」
クニヤ達3人は、敵の姿を視界に入れると、ボールを手に取る。
先程の大混戦で体力はかなり消耗しているが、この敵をこのまま見逃す事はできない。
「それじゃあ、さっきも言ったとおりこの町の連中と同じ末路を辿らせてあげる。そう…」
彼女はそこで一旦言葉を止め、右手を上に伸ばす。
そう、これは先程この町で起こったことの再現。
即ち彼女の背後に広がる広大な大海原から現れるのは…。
「この私、チルナと、カイオーガの力でね!」
彼女のすぐ背後の海面が盛り上ったかと思うと、その中からカイオーガがその巨大な姿を現していた。
Phase.36 VSカイオーガ
カイオーガが海中から飛び出し、巨大な津波が町に向けて押し寄せてくる。
3人は町の高台に上ってそれを凌ぐが、改めて相手の強大さを痛感させられる。
カイオーガ。
ホウエン地方の伝説にある、グラードンと対を成す海を作り出したという伝説のあるポケモン。
その伝説にある力が今、クニヤ達の目の前で発揮されようとしている。
カイオーガの出現によって、崩れ模様だった天候が更に悪化。
突風も吹き荒れ、カイオーガが嵐を呼び寄せたようだった。
そんなカイオーガの特性は『あめふらし』。
水タイプを持つカイオーガが、自身を有利な状態に持ち込むことの出来る特性だった。
「まずい!」
押し寄せる津波から逃れようとするが、既に遅かった。
その巨大な壁と見紛う程の津波が、町を飲み込んでいく。
飲み込まれた津波の中で、3人の口から気泡が溢れ出す。
そして次第に3人の体に残る酸素の量がどんどん減っていく。
「…ッ!」
咄嗟にリミカが一つのボールを手に取り、放った。
しかし水中にいるため勢いは全く出ず、ふわふわ浮いたような状態になる。
それでもボールの開閉機能は問題なく作動し、中からポケモンが現れる。
お腹に渦の模様があり、全体的にがっちりした体格のポケモン・ニョロボン。
ハンドシグナルで指示を出すと、ニョロボンはその意図を理解し、行動を開始する。
ニョロボンは未だにもがいている他の2人を抱えて、水面目掛けて泳ぎ始める。
リミカは単独で水面に辿り着いていた。
「ぶはっ!げほ、ごほっ…」
だいぶ水を飲んでしまったのか、陸に上がってすぐにクニヤが咳を繰り返す。
そしてそれはダイシも同じだった。
「凄すぎる…。向こうはまだ海上に出てきただけなのに、これだけの攻撃…。流石は、伝説のポケモンだね」
「今度ばかりは正直、勝てる気があまりしませんね…。彼女の手持ちが、あのカイオーガだけと言うのも考えにくい」
「持久戦しかないわね…。私のニョロボンの特性は『ちょすい』だから、カイオーガの特性を逆に利用できるわね」
しかし、それでも然程長くは持たない事を3人は理解していた。
ニョロボンの特性『ちょすい』は、雨が降っているとき少しずつ体力を回復する。
が、あの伝説のカイオーガが相手の場合一回の攻撃を喰らっただけで力尽きかねない。
「ふふ、カイオーガの特性を逆手に取ると言う着眼点は良いわね。だけど、その程度じゃこの私は倒せない」
チルナと名乗った、カイオーガを従えている女トレーナー。
彼女もまた、新たにボールからポケモンを繰り出す。
「キングドラ…?」
「行きなさい、キングドラ。ハイドロポンプ=I」
天気の影響で、威力が大幅に上がった水の砲弾が発射される。
3人は即座に散開して攻撃をかわすと、それぞれ照準をキングドラに定める。
「あなた達の攻撃は、キングドラには当たらないわよ」
先行して仕掛けたのが、リミカのニョロボン。
キングドラの真横から得意の格闘技で攻撃を仕掛けるのだが…。
シュッ!
「!?」
一瞬姿を見失った。
そして気が付けば、キングドラはそこからかなりの距離のある地点に移動していた。
「キングドラの特性『すいすい』だよ!それに加えて、こうそくいどう≠燻gって尋常じゃないスピードを発揮してる…。ここは」
クニヤがボールを放った。
出てきたのは彼の主力ポケモン、ハッサム。
飛び出して早々、でんこうせっか≠発動してキングドラに接近するのだが…。
「遅いわよ」
接近しようとした矢先、キングドラの姿がハッサムの目の前にあった。
そして至近距離からハイドロポンプ≠ェ発射され、それに飲み込まれていく。
「カイオーガ、しおふき=v
チルナの指示で、カイオーガが上空に勢いよく水を噴き上げる。
そしてそれがとてつもない広範囲に渡って降り注ぐ。
「ぐっ…!!」
まるで数え切れ無い程の石を投げつけられたかのような痛みが、3人を襲った。
カイオーガだけでも手が付けられない状態なのに加えて、この天候を最大限に利用できる相手のポケモン。
どっちにしても分が悪く、今のままでは勝ち目が殆ど無い事は明白だった。
「2人とも、ここは一旦退こう。僕達のポケモンはダメージが結構残ってるし、この環境じゃ勝ち目が無い」
「…悔しいけど、確かにその通りね。クニヤ君の言う通りにするわよ」
「…」
言葉には出さないが、ダイシも頷く。
そして一瞬チラッとチルナの方を振り向いた後、クニヤ達の後を追ってこの町を離れていった。
「逃さないわよ。カイオーガの攻撃範囲、甘く見ないことね」
独り言のように呟くと、チルナはカイオーガに指示を出す。
それを聞き入れると、カイオーガが動き出す。
カイオーガの取った行動は、直接クニヤ達に攻撃するのではなく、再び海中に潜るというもの。
その際またしても巨大な津波が発生し、半壊状態だったヒダシティを容赦なく打ち砕いていく。
無論、まだ町から脱出できていなかった3人にも容赦なく襲い掛かる。
「…!!」
言葉を発する事さえ許されないまま、彼らの行方も解らなくなってしまうのだった。
To Be Continued
後書き
何か、今までで滅茶苦茶時間の掛かった話でした(汗)。
進行ペースがガタガタに落ちてます。本当、この後どうしたらいいものか…。
あんまりバトルシーンの連続も流石に飽きてくると思うので、これからは展開を早めたりする事でどうにか繋げるしかないですね(汗)。
僕としても早いところ、このマスターリーグ予戦編を終わらせたいと思っているので(ぁ)。
という訳で、グダグダになりそうな予感がしますが今後もよろしくお願いします。
[一言感想]
いろんな者達が動き出してきました。
そしてカイオーガ……やっぱり凄まじい力の持ち主だったようで。
確かにバトルが連続し過ぎると展開にメリハリがなくなってしまうので、日常シーンなども織り交ぜていくと良いと思いました。