「さて、それじゃあ行くか」
雪の積もった町のポケモンセンター前で、マサシが2人に呼びかける。
彼らは今、徹底的な防寒対策をした衣服を身に纏っていた。
「OKよ。いよいよ今日から、マスターリーグが再開だもんね」
「…ああ」
チームメイト、アヤとユキヤも頷く。
彼らが向かうのは、この町・リーラシティの東西を挟むように聳える山の東側。
そこに、予戦突破に必要な証を持つトレーナーの1人・ナリサが居る。
決意を固めて、マサシ達はその山に挑むのだった。
COM マスターリーグ編
第15話
予戦再開
Phase.53 リーラ雪山
リーラシティの東西に山が聳えるのは、前述の通り。
だが、その山の大きさはあまりにもかけ離れていた。
西に聳えるのは、標高がが100m前後と、比較的低い方。
その大きさも、それ程ではない。
以前最初にこの町を訪れた時、マサシ達が最初に西の山の調査に向かったのもこれが原因だった。
「さて、今回はこっちの探索になるわけだが…。長丁場は、覚悟した方がいいな」
マサシはそう呟きつつ、上空を見上げる。
リーラシティ東に聳える山は、山頂付近が分厚い雲の影響なのか視認する事ができない。
今も尚、深々と雪は降り続けている。
その山の表面を真っ白な雪が覆い、幻想的な雰囲気を漂わせていた。
「…行くぞ」
その山は、彼ら3人だけで探索するにはあまりにも大きい。
そんな山の中から、たった一人のトレーナーを探し出す。
果たして、どれ程の時間を費やす事になるのだろうか……。
登山道入り口に差し掛かって、最初にマサシ達の目の前に広がったのは、人の手が殆ど及んでいない森林地帯。
少なくとも、人が通る為の道程度はきちんと舗装されているのだが、それ以外は殆ど自然のまま。
積もった雪の重さに耐え切れず、木の枝が地面の方に曲がっている光景も目に入る。
「だけどこの山、相当に大きいわよ?今日中に探し出せるのかしら」
「あの人は、具体的に何処に居るのかまでは言わなかった。それでは意味が無いんだろうな」
「それが予戦突破の為の試練…と言う事か」
「最初に俺達が証を獲得したトウクさん。あの人は比較的解りやすい町中に居た。ある意味、あそこが一番難易度が低かったのかもしれない」
「ああ。あの時の俺達は運が良かった、それだけの事だ。ここから先、あんな簡単に証を手に入れることは不可能だ」
「気を引き締める必要がある…って事ね」
3人で会話をしながら歩いていると、突如道脇の草むらで音がした。
咄嗟に身構えるのだが、その草むらから飛び出してきたのは野生のユキカブリ。
此方に全く警戒心と敵意を持っていないため、3人は身構えるのを止めた。
「懐かしいわね…。こんな風に雪の積もった山を登るなんて、シンオウ地方を旅した時以来だわ」
「テンガン山だろ?昔シンオウ地方へ旅行に行った時、あの山の近くに行った事がある」
「そうそう。そのテンガン山でも今みたいに、野生のユキカブリとかが普通に出てきたから…。何だか親近感を感じるわ」
「…そうか」
「足が止まっているぞ」
会話に集中するあまり、いつの間にか足が止まっていた。
ユキヤの発言でそれを自覚し、慌てて足を前に進めだす二人。
「でも、これだけ大きな山だと…。山の内部を繋いでる洞窟が無数に入り組んでてもおかしくないわね」
「…余計な事言わないでくれ(汗)。余計にこの山を探索する気力が無くなる…」
今のアヤの発言で、マサシはガックリと首を落としていた。
「ご、ごめん。そうと決まったわけじゃないんだし…。とりあえず詳しく探索してみようよ」
「同感だな。何も解らない状況で、色々な憶測を立てたところで意味は無い」
雪が静かに降る中、山中の森林を当ても無く散策する3人。
とりあえず舗装されている道を頼りに、この山の中を進んでいた。
今進んでいる道も緩やかな上り坂になっていて、徐々に標高が高くなってきている。
「…なあ、何か聞こえないか?」
ある程度道を進んだところで、ふとマサシが足を止める。
不意に、マサシの耳に何かの音が入り込んだようだ。
「…? そう言えば確かに、何か『ゴゴゴゴ』っていう音が微かに…」
「不味いぞ。雪崩だ」
山頂付近を見上げていたユキヤが、音の正体に気付いた。
確かに彼の言う通り、山頂付近から物凄い勢いで雪が麓方面に流れてきていた。
と言うよりは、マサシ達に狙いを澄ましたかのような軌道だった。
「ここにいたら、あの雪崩の直撃を喰らうぞ!! 早く避難を」
「駄目! あの膨大な量の雪…。今から動いても避けきれない!」
「かと言って、ここで無闇に大技であの雪崩を吹き飛ばすわけにもいかないな。そんな事をすれば、今度は足元が崩れかねない」
「じゃあどうするのよ、ユキヤ!」
「一旦山から離れるように、空へ退避するしかない。最もこんな気温と標高だ。冷気に弱い俺達の飛行要因のポケモンで、どれだけ持つかが唯一の問題点だが…」
「考えるのは後だ!ここであの雪崩に巻き込まれるよりは、マシだ!」
「そうね。今は、逃げないと!!」
考えるのは後にして、3人はそれぞれ自分の飛行要因となっているポケモンを出し、空へ退避する。
上空にいる3人の遥か下で、山頂から流れてきた膨大な量の雪が麓へ突き進んでいった。
「…ふう、間一髪だった」
雪崩が収まった事を確認して、地上に降りた3人。
しかし先ほどの雪崩のせいなのか、3人の身体が膝辺りまで雪に埋もれてしまっていた。
「うわっ、結構進みにくいぞこれ」
「…ちょっと待って!この積もった雪のせいで、さっきまでの舗装された道が解らなくなっちゃったわ!」
「道標が消えたか…。何の手掛かりもないこの状況で、こんな巨大な山を散策する事になるとは…」
「くそ、運が悪い!何だってこんな時に雪崩なんて起こるんだ」
「…でも、ちょっと待って。雪崩が起こったって事は、山頂付近で何かがあったって事じゃない? 例えば、あそこに誰かがいるとか」
「! まさか、今の雪崩はナリサさんが起こしたって言うのか?」
「考えられるな。自分のところへ到達する為の試練と称して、様々な妨害をしてきても何ら不思議はない」
「…じゃあ、とりあえず山頂に行ってみるか?少なくとも、可能性はあるんだろ?当ても無く無闇に探索するよりはマシだと思うが」
「賛成」
「…いいだろう」
二人の意見も合致したので、3人は山頂方面に視線を向ける。
そして、そこを目指して足を進め始めた。
「まずはお手並み拝見ですね。貴方達の実力、見せてもらいましょう」
とある場所からマサシ達の様子を観察していたナリサ。
独り言のように、その言葉を呟き、何処かへと歩き去っていった……。
Phase.54 山頂を目指して
一言に山頂を目指すとは言っても、そこまでの傾斜はとても険しい。
ポケモンの力を借りようにも、この環境ではそれも期待できない。
そうなると、先ほどアヤが喋った山の内部を繋ぐ洞窟を探すほうが懸命だった。
そんな訳でマサシ達は、山の周囲を回るように歩いていた。
「だけど、そんな簡単に見付かるものじゃないな…。雪が積もっているのなら、尚更だ」
山の中腹辺りをぐるりと周回してみたのだが、それらしき入り口は見当たらない。
少し山を下った辺りで、もう一度周回して見ることにした。
「マサシ。下の方もさっきの雪崩で結構雪が高く積もっちゃってるわ。尚更見付けにくいと思うんだけど…」
「仕方が無いな…。地道に、積もった雪を少しずつ溶かしていくしかないな。洞窟の入り口があって、それが雪で埋もれて居ると仮定したとして…。それが一番安全な方法だ」
「そうね。それじゃあブーバーン、お願いね」
「バクフーンも、頼むぞ」
アヤとマサシが、それぞれ炎ポケモンを繰り出す。
そして2匹は可能な限り火力を抑え、足元に降り積もる雪を溶かしていく。
以降は、ずっと同じ作業。
しっかりと茶色い地面が確認できるようになると、すぐ別の場所に移動する。
が、一向に洞窟と思しき入り口を見付ける事は出来なかった。
「ふぅ…。かれこれ、もう1時間近く続けているのに、全然見当たらないな…」
「そうね。足元も確保できたし、山の傾斜のところも大分調べたのに…。これだけ探して手掛かり一つ無いなんて…」
「…やっぱり、この傾斜を直接登っていくしかないのか……?」
愚痴をぼやきながら、マサシが改めて山頂方面を見上げる。
この山の傾斜は、殆ど垂直に近い。
所々に岩肌の突起があるにしても、普通の人間がとても登山できるような地形ではなかった。
「……? どうやら、お前達のあの行動も、無意味ではなかったようだ」
地面を調査していたユキヤが、ある事に気付いた。
「これを見ろ。この辺りの地面だけ、舗装されている感触がある」
「! それって、この辺りが最初に俺達が通ってた登山道の続きだってのか!?」
「この山は、ヨハロ地方の観光旅行の名所の一つとしても有名な場所だ。特に山頂からの眺めは絶景…という事だ。つまり」
「観光客でも安全に山頂に向かえるルートがある…。それが、この舗装された登山道のルートと言う事か…!」
「じゃあ、この地面の雪を溶かしつつ、舗装された登山道のルートを辿れば…」
「少なくとも、山頂に辿り着く可能性は高くなる。と言う事だ」
「よし、それじゃあアヤ。活路も見えてきたことだし、もう一頑張りするぞ」
「OK。ブーバーンも、こっからが正念場よ!」
「行くぞ!」
微かながらも活路が見えたことで、俄然やる気が出てきた二人。
その気持ちがポケモン達にも伝わり、徐々に登山道のルートを暴きだしていく。
それと同時に、3人は眼下に視線を向ける。
そこには、リーラシティがあった。
しかも見える景色から推察するに、もう随分と高いところまで登ってきていたようだ。
「さっきから少しずつ寒くなってきてたのも、気のせいじゃなかったらしいな…。いつの間にか、こんなに高いところにまで登ってきていたらしい」
『ここまで、よく来ましたね。挑戦者マサシチーム』
突如として、この山の中腹一帯に声が響く。
そして3人の目の前に人影が突如として姿を見せる。
その姿に、3人は見覚えがあった。
「ナリサさん…。まさか、こんなに早く登場するとは思わなかったな」
視界に捉えた瞬間、マサシはボールに手をかけていた。
だがそれを、ユキヤが片腕で静止する。
「あれは本物じゃない…。何処かから映し出された映像だ」
「映像…?」
『彼の言う通りよ、マサシ君。私は、こことは違う別の場所に居ます』
「…そうか」
『さっき私が与えた2重の試練は、見事の突破したみたいですね』
「2重の試練…。雪崩を起こし、それを凌ぐ事とそれによって隠蔽された正規ルートを探し出す事…か。面倒な事をやってくれたものだ」
『だけど、この位の障害は乗り越えてもらいますよ。まだまだ、私の居る場所への道は遠い』
「…すぐに辿り着いてみせるさ。貴女の居る場所まで」
『それは楽しみですね。ですがその前に、今度はあなた達の実力を試させてもらいますよ。ここを少し進んだ先に、洞窟の入り口があります。その洞窟は、私の居る山頂への近道。しかしそこには、私のポケモンを何匹か配備してあります。それを斃し、山頂へ辿り着いてみせなさい』
「…洞窟を通らないと言う選択肢も、あるのか?」
『残念ですが、その選択は選べません。本来は登山道を辿っても山頂に到達する事は可能ですが、今回に限ってそのルートを封鎖させていただきました。貴方達に、道は一つしか残されていませんよ』
「そういう事なら、さっさと突破するだけだな。多分そこに配備した貴方のポケモンと言っても、手持ちには加えてない控えのメンバーなのでしょう?こっちを徹底的に消耗させるのが狙いですか?」
『心配は要りません。私のところには、ポケモンセンターと同じ回復設備が備わっています。なので、後のことを気にする必要は全くありません』
その発言に、今まで黙っていたアヤも、マサシの横に並ぶ。
「随分親切なのね。辿り着くまでに私たちを徹底的に消耗させて、そこを叩けば効率はいい筈なのに」
『別に貴方達を斃す事だけが目的ではありませんよ。あくまでもこの雪山は、挑戦者の力量を測るための場所。私の目的は、挑戦者を排除する事ではないのですよ』
「そういう事…。なら、文句は無いわ」
「そろそろ行くぞ。こんな所で時間を喰っては、後々に響く」
「ああ、じゃあ行くか」
ユキヤに促され、二人も先を急ぐ。
雪の積もった山道を、駆け足で先へ進んでいく。
3人の姿が見えなくなったところで、ナリサの立体映像も消えた。
山頂到達最大の難関が、彼らの前に立ちはだかる…。
暫く進んだところで、ぽっかりと口を開いた洞窟の入り口があった。
3人は横並びに、洞窟の中の様子を伺っていた。
「ここだな。さっき、ナリサさんの言っていた洞窟は」
「洞窟の向こうからも、風は吹いている。複雑な構造ではないな」
中の様子を伺っていたユキヤが、ふとそんな言葉を口にした。
「でも、だからこそ私達が山頂を目指す上で絶対避けられない場所。ナリサさん、この山の地理を完全に把握してるわね」
「ああ。だけど俺達は、進むしかない。ナリサさんの元まで辿り着く為には」
3人は、洞窟の中へと歩み始める。
その中で、3人の進路を阻む気配が漂い始めていた…。
Phase.55 立ち塞がる障害
ユキヤが推察したとおり、中は然程複雑な構造はしていなかった。
寧ろ、ほぼ一本道と言ってもいいほどだった。
「そろそろ準備した方が良さそうだな」
各自、いつでもポケモンを繰り出せるように、ボールを手に取った。
そして一層警戒を強めつつ、周囲を見渡しながら足を進めていく。
「…居たぞ」
行き先を警戒していたユキヤが、言葉を発した。
彼らの進路の先に、ユキヤの言う通り3匹のポケモンが立ち塞がっていた。
「ハピナス、ツボツボ、トゲキッス…か。全体的に、防御能力が高い奴を揃えてきたか…」
「俺が様子を見る。お前達はここで待て」
マサシ達をその場に待機させ、ユキヤが前に出る。
「メタグロス、コメットパンチ=v
鋼のエネルギーが凝縮された拳を振るうメタグロス。
その相手は、トゲキッス!
バキィッ!!
メタグロスは、全力でトゲキッスを殴り飛ばす。
飛ばされたトゲキッスは岩壁にぶつかり、地面に転げ落ちる。
しかし数秒の間を挟み、何事も無かったかのように身体を起こす。
「一撃では斃せんか…」
そんなユキヤの背後で、ツボツボが動きを見せる。
ツボツボから放出された2色の光が上に向かって飛んでいく。
そしてその光の位置関係が逆転し、再びツボツボに戻っていった。
その瞬間、ツボツボの表情が一変した。
「…! ユキヤっ!!」
マサシの叫び声で、ツボツボに視線を向けるユキヤ。
その瞬間、ツボツボは無数の岩の弾丸をユキヤ目掛けて発射していた。
「(ストーンエッジ=c。だが)メタグロス」
ツボツボの元の攻撃力は低い。
その事を知っていたユキヤだから、メタグロスに防御させた。
だが、その後の展開はユキヤの予測とは全く違っていた。
「何…!?」
ドガガガガガッ!!
ツボツボの発射した岩の弾丸全てが、メタグロスに大きな傷を残していく。
どう考えても、メタグロスの防御を貫く威力を持っていることは明白だった。
「馬鹿な…、何だこのパワーは…!」
「…! そうか、さっきの光。あれは、パワートリック≠ゥ!」
「パワートリック≠チて…。確か、使ったポケモンの攻撃能力と防御能力を入れ替える技よね? ! それって」
「ああ…。今のあのツボツボは、防ぐ事が出来ないほどの超攻撃力を手に入れたということだ…。その代わり、防御力はほとんど無いに等しくなった。ユキヤ! 集中攻撃で、ツボツボを真っ先に斃すぞ!」
「ああ」
マサシ達もそれぞれフローゼル、エーフィを繰り出す。
そして3人がかりで、ツボツボ目掛けて攻撃を放つ。
だが、3人の技の直撃を喰らったのはツボツボではなかった。
「トゲキッス…だと!?何で、俺達の攻撃がトゲキッスに…!」
「このゆびとまれ≠セ…。あれで俺達の攻撃をトゲキッスに誘導したんだ」
「それに、幾らダメージを与えたとしても、向こうにはハピナスが居る」
「ハピナス…?それがどうしたの?」
「たまごうみ=Bあれで味方の体力を幾らでも補充できる。あの3匹、殆ど隙の無い連携を組んでくる…」
「…マサシ、どう戦う」
こういう状況において、最適な戦術を考えるのはマサシの得意分野。
2人もその事を把握しているから、マサシを頼ることが出来るのだ。
「どう考えても、相手の攻撃の要はツボツボ。だけどそのツボツボに攻撃するには、トゲキッスを何とかする必要がある。だったら、ツボツボの攻撃を食い止める役とトゲキッスに集中攻撃する役。二手に分断するべきだな」
「トゲキッスに集中的に攻撃して、ハピナスの回復が来る前に斃すのね?だったら、それは私がやる!私の攻撃力だったら、そんなに時間は掛からない!」
「頼むぞ、アヤ」
3匹はある程度互いに間を開いて並んでいた。
なので自然とアヤが、2人から離れる形となった。
「ユキヤ、率直な話。あのツボツボの攻撃、どれ位持ち堪えられる」
「厳しいな。奴の攻撃力は、壮絶なものだ。幾ら俺でも、そう何度も耐えることは出来ん」
「だがその代わり、さっきも言ったように防御力は殆ど無いにも等しい。何とかしてツボツボにダメージを与えられるようにすれば、もう一度パワートリック≠使うはず。そうなれば、後は何とかなる」
「その為には、アヤが一刻も早くトゲキッスを斃す事が必須。今は、奴の攻撃を耐えることだけに集中しろ、マサシ」
「解ってる!」
マサシも、ボールから新たにフライゴンを繰り出す。
そして更に…。
「能力回帰:第4段階<フォースレベル>#ュ動」
マサシが一言、呟いた。
周囲から、銀色の光の粒子がフライゴンに集い始める。
ある程度光が集まったところで、輝きが一気に膨張した。
それと共に、爆発的な烈風が吹き荒れた。
「地面タイプなら、さっきの岩技にもある程度は耐えられるはず。行くぞ!」
「エーフィ、サイコキネシス=I!」
エーフィの額の水晶が輝き、エスパーの衝撃波が発生。
それがトゲキッスを吹き飛ばす。
だが、然程効いている様子も無く、トゲキッスはすぐに飛び上がる。
「結構タフね。それなら、今度はフルパワーで!」
今と同じ攻撃を再び繰り出すエーフィ。
アヤの言う通り、確かに威力は初撃より遥かに上がっていた。
だがトゲキッスは、それを回避。
更に高く飛翔すると、翼から真空の刃を放ってきた。
「アブソル、つじぎり=I!」
ザシュゥッ!!
アヤのボールから新たに現れたポケモンが、その真空の刃を切り裂く。
それとほぼ同時に次の動きを始めており、一瞬姿を見失うほどのスピードを発揮。
ほんの一瞬の間の出来事で、アブソルはトゲキッスに漆黒の一閃を浴びせていた。
「今よっ! エーフィ、サイコキネシス=I!」
アブソルが攻撃をしている間に、エーフィはめいそう≠ナ己の力を高めていた。
それにより、元々高いエーフィのエスパー技の威力が、更に増した。
そして先刻のアブソルの攻撃と立て続けに喰らった事で、相当なダメージを受けていた。
「…ふぅ」
だが、まだトゲキッスを斃すには至らなかった。
このままではダメだと思ったのか、トゲキッスは新たな技を繰り出す。
左右の翼を互いに向かい合わせる。
その狭間に、青い光を放つエネルギー球体を作り出す。
「! あれは」
見た瞬間、あれが何の技なのか、アヤはすぐに理解した。
あの技ははどうだん=B
トゲキッスの視線は、エーフィの横に並ぶアブソルに向けられていた。
そして、トゲキッスははどうだん≠発射。
一寸の狂いも無く、それはアブソル目掛けて飛来する。
「エーフィ!!」
弾速は、かなりのものだった。
トゲキッスが発射したのと、アヤがエーフィに指示を出した瞬間には、1秒も間は無かった。
でも、間に合わなかった。
アブソルはトゲキッスの放った攻撃をまともに喰らい、ダウンした。
「サイコキネシス=I!!」
今は、アブソルに気を回している余裕が無かった。
エーフィに指示を飛ばし、最大限のパワーで攻撃を繰り出す。
その壮絶という名の一言に尽きる威力の攻撃は、一気にこの戦いを決着に導く。
トゲキッスの必死の抵抗を意に介さず、あっという間にダウンさせたのだ。
「何とか勝てたけど、アブソルをやられちゃったのが痛いわね…。私の手持ちで、あのハピナスに通じそうな技を持ってるの、ムクホークとアブソルだけだし…」
アヤは、次の標的に視線を向けていた。
その先に立つポケモンは、ハピナス。
彼ら3人の前に立ち塞がった3匹のうちの、最後の1匹。
「マサシ達も頑張ってる、急がなきゃ!」
駆け足で、アヤはハピナスに突っ込んでいった。
Phase.56 突破
ドガガガガガガッ!!
洞窟の中に、固い物同士がぶつかり合うような音が連続で鳴り響く。
ツボツボの繰り出してくる無数の岩の弾丸を、マサシ達のポケモンが必死に叩き落して凌いでいた。
「…っ!!」
マサシのフライゴンは、爪・翼・尾の全てを駆使して対処する。
ユキヤのポケモン、ボスゴドラはその強靭な身体を活かした耐久勝負で、真正面からツボツボの攻撃を持ち堪える。
だが、何時までもそんな状態が続くわけも無く、その2匹はアヤがトゲキッスを撃破する頃には既に戦闘不能となっていた。
「マサシ、ユキヤ! こっち、終わったわ!!」
アヤの合図を聞いて、二人の顔色が変わる。
マサシ達はそれぞれ、新たにモンスターボールを手に取り、放る。
「行け、フローゼル!」
「グライオン」
ボールから飛び出すと同時に、即座にツボツボに向かって突進する。
フローゼルはハイドロインパクト=Aグライオンはシザークロス≠ツボツボに叩き込む。
だがその直前、ツボツボは再びパワートリック≠発動、2匹の攻撃を完全に受け止めた。
「オーダイル!!」
敵が防御に回ったのなら、これ以上の好機は無い。
マサシは相棒のオーダイルを繰り出すと、即座にハイドロポンプ≠発射させた。
攻撃をしてこない分、今度は此方が攻撃に集中できる。
今までとは全く逆の光景、マサシ達の攻撃を必死に防御するツボツボの姿があった。
「今だ!」
ここ一番のタイミングで、止めを刺そうと指示を出す。
繰り出された技は、水タイプ最強の技ハイドロカノン=B
強大な力を内包した水の弾丸がツボツボに命中し、その力が一気に解き放たれた。
ズドォォォォンッ!!
水の弾丸は炸裂し、小さな津波とも呼べるような水が洞窟内に浸透していった。
「…どうだ」
先の2人掛かりでの怒涛の攻撃、そして水系最強技による連携。
マサシは、確たる手ごたえを感じていた。
だがその直前、ツボツボに白く輝く光が降り注いでいった事に、2人は気付かなかった。
その光は、ツボツボにとって救済の輝き。
ハピナスによる、体力回復の支援だった。
「…斃れてない!?」
「マサシ、ごめん!今、ハピナスにツボツボの体力を回復されたわ!」
奥でハピナスと戦闘中のアヤが、マサシ達に叫びかけてきた。
アヤも必死にハピナスの回復を阻止しようと戦っているのだが、あまり成果が出ずに居た。
そして、会話している隙を衝いてツボツボが再びストーンエッジ≠発動。
マサシ達に、無数の岩の弾丸を発射してきた。
「ぐぅっ!」
まだパワートリック≠ヘ発動していなかった為、然程威力は出なかった。
それでも放たれた弾丸のいくつかが、マサシ達に命中していた。
「(アヤの手持ちは、特殊攻撃がメインのポケモンばかりの筈…。だとすると、あいつ1人でハピナスの相手は辛いか…。それなら)」
何かを思い立ったのか、マサシはフローゼルに指示を出した。
それを聞いたフローゼルは力強く頷くと、ハイドロインパクト≠発動。
敵陣に向かって、突っ込んでいった。
だが、その向かう先はツボツボではなく…。
「…え!?」
ドゴォォォォォンッ!!
突然の不意打ちに、ハピナスは体制を崩し、転倒する。
フローゼルが攻撃対象にしたのは、このハピナスだった。
「マサシ!?」
「アヤ! フローゼルを手伝わせる! 俺の指示は回せないが、独断で戦うように指示を出しておいた」
「…有難う、マサシ。この借り、いつか返すわね」
「別に、借りとか気にする必要は無いんだが…。まあいいか」
今は細かいことは抜きにして、戦いに集中する3人。
フローゼルの助けも影響しているのか、先ほどまでよりハピナスとの戦いが大分楽に感じ始めたアヤ。
その強烈な打撃力が、ハピナスにどんどんダメージを与えていた。
「瞬間連射:5 ハイドロカノン=I」
一方で、此方も戦いは続いている。
マサシが指示を出してほんの一瞬の間を挟み、ほぼ同時に5発のハイドロカノンがツボツボに命中していた。
水タイプ最強レベルの技を同時に5回も喰らっては、流石のツボツボでもダメージが大きすぎた。
「ブラストバーン=I!」
そんな時、奥からアヤの叫ぶ声が聞こえてきた。
バクフーンの大技の一つ、ブラストバーン≠ェ炸裂する音が聞こえてきた。
それと同時に、ハピナスがマサシ達の方角に吹き飛ばされてきた。
既に、戦闘不能となった状態だった。
「今だ!オーダイル、ハイドロスペイザー=I!」
マサシ達に訪れた、勝利のチャンス。
疲弊したツボツボに、オーダイル最強の技が炸裂!
爆発が発生し、ツボツボの意識を奪い去っていった…。
「結構、てこずった…」
バトルに勝利し、一旦その場に腰を落とした3人。
今のバトルで、3人は少なからず疲弊していた。
こんな状態でナリサの元に辿り着いたとしても、満足に戦うことが出来ないのは明白。
なので、数分の間ここで体力の回復を図る3人なのであった。
To Be Continued
後書き
今回は、第2の証を持つナリサの元へ到達するまでの話となりました。
単純にトレーナーの所に辿り着き、バトルになるのでは流石に退屈だと思い、今回の話を思い立ちました。
まあ、そのせいで時間が掛かってしまったんですけどね…。−−;
次回はいよいよ、ナリサとのバトルになります。
具体的にどんな傾向のポケモンを持たせるかとか、大体決まってはいるんですけど、1話の中に納めきれるかどうかが最後の課題(ぇ)。
結構長くなりそうなバトルなので、1話の長さが平均より長くなる事を覚悟で無理矢理収めきる感じでやる事になるかも…。
という訳で、そろそろ後書き終わり。
では、次回もお楽しみに。
[アットの一言感想]
今回のテーマは、マサシvs山(なんか違う)。
最初に決めた内容を1話に収めるのって、確かに難しいんですよね。
僕はよく、最初に決めたファイルサイズをオーバーさせてます←