リーラシティが微かに視界に入る程度の距離が離れた雪原。
 今ここで、壮絶な戦いが続いていた。

 戦っているのは、マスターリーグ出場チームの一組、マサシチーム。
 彼ら3人に対するのは、予戦突破に必要な証を持つトレーナー、ナリサ。
 現在、ナリサは手持ちポケモンの半数を失った状態。

 だが、マサシチームもかなりの被害が出始めている。
 前半彼女が繰り出していたポケモンと違い、今度のドータクンはかなりの攻撃力を持っていた。
 3VS1という一見圧倒的有利に見えたバトルではあったのだが…。

 少しずつ、マサシ達は劣勢になり始めていた…。






COM マスターリーグ編
第17話
鉄壁の布陣(後編)






 Phase.60 鋼鉄の壁





「ドータクン、ラスターカノン=I」

「だいもんじ=I!」

 ドータクンが発射した、鋼属性のエネルギーを凝縮した球体。
 それをマサシのバクフーンが懇親の炎で相殺し、爆発を巻き起こす。
 爆発の煙に紛れて、ユキヤのガブリアスが右サイドから攻撃を浴びせようとするのだが…。
 ガキンッ!!


「…!」

 ドータクンの鋼の身体に、全く傷を負わせることが出来なかった。
 ユキヤのほうに注意が向いている隙を狙い、今度はアヤがバクフーン・ブーバーンの2匹の炎ポケモンで攻撃する。
 炎は的確にドータクンに炸裂したのだが、やはり効いていない素振りでラスターカノン≠発射して反撃してくる。

「くっ…!」

 その凄まじいパワーと衝撃に、避けるのが精一杯。
 だがマサシ達は、連携してナリサに立ち向かう。

「バクフーン、ブラストバーン≠セ!」

 再びマサシのバクフーンが攻めに転じる。
 炎タイプ最強の技を指示し、ドータクンの背後から直撃させる。
 究極段階<エクストラレベル>での攻撃だけあって、爆発の威力と規模も相当なものだった。

「…チッ。あのドータクンの特性、どうやら『耐熱』だったらしい」

 爆発のあった場所で、疲労している様子を見せるドータクン。
 その身体に火傷の跡が見られるのだが、然程気になってない様子だった。

「究極段階<エクストラレベル>の炎技の直撃を喰らって、斃れないのか…。本当に頑丈な奴だ」

「だが、充分だ。マサシ」

 ドータクンが身体を起こす前に、ユキヤが追撃する。
 サンドパンが破壊爪<デストラクションエッジ>≠発動し、強引にドータクンの身体を地面に叩き付けた。
 ドゴォォォンッッ!!

「だいちのちから=I!」

 そこを更に、マサシが追撃する。
 フライゴンが、先程も繰り出した技を発動。
 地面に亀裂を生じさせ、そこからあふれ出したエネルギーでドータクンを攻撃。
 そのパワーは、一撃目の比ではなかった。

 エネルギーがあふれ出しただけで、周囲に巨大な振動を巻き起こした。

「…っ! 凄いパワー…。一撃の破壊力なら私の方が上とか言っておきながら、マサシだって全然負けてないじゃない…」

 先ほどのマサシの発言、アヤの方が攻撃力は上だと言っていた。
 なのに、今目の前で繰り出された技の破壊力は、アヤのポケモンと殆ど差が無かった。

「全力でやったのにな…。まさか、ここまでタフだとは思わなかった」

「…え?」

 今のフライゴンの攻撃は、確実にドータクンに直撃していた。
 かなりのダメージと傷跡があるものの、それでもまだ斃すには至っていなかった。

 それを見て、意を決したアヤが先頭に出る。

「私がやるわ。あそこまで消耗したなら、私の技で一気に決められる!」

「お前の技って、バースト・ストライク≠ゥ!? あれ、もう一発使っちゃっただろ!」

「今なら、あれを何回か撃てるくらいのレベルにはなってるわ。バクフーンの体力だって、まだまだ有り余ってる」

 アヤの言葉を証明するかのように、彼女のバクフーンも背中の炎を大きくして見せる。
 それを見たマサシは、小さく頷いた。

「だが、相手のドータクンの耐久力は半端なく高いうえに、『耐熱』の特性も持っている。いくらお前の攻撃でも、どこまでダメージを与えられるか…」

「要らない心配はしなくていいわ。どっちにしろ、次の攻撃であのドータクンは斃れるんだから」

「随分と自信があるようですね。ですが、それをさせるほど私は甘くありません。ドータクン、ラスターカノン=I」

 アヤの攻撃を阻止するべく、ナリサが先手を打ってきた。
 相変わらずの鋼属性のエネルギーを発射してくるのだが、以前よりもパワーが桁外れだった。
 どうやら、今まで威力を抑えて発射していたらしい。

「究極段階<エクストラレベル>:アークスペイザー=I!」

 それに対して、アヤへの攻撃を食い止めるべくマサシが動く。
 フライゴンをアヤとドータクンの攻撃の中間に配置し、天属性のエネルギー光線を発射させた。
 互いの技が激突し、一瞬視界が塞がるほどの光が発生する。
 だがその直後、ドータクンの攻撃を凄まじい勢いで押し返す光景が目に入る。

 完全にドータクンの技は打ち消され、逆にフライゴンの放ったエネルギー波を真正面から浴びる事になってしまう。

「…!」

「マサシ、援護有難う。今の数秒間で、準備できたわ」

 アヤが背後から、マサシに語りかけた。
 今の援護に礼を述べ、準備が完了した旨を伝えた。
 それを聞いて、マサシはアヤに道を譲る。

 ここから先は、彼女の仕事だ…と。

「行くわよ…。 バーストストライク・ツインブラスト=I!」

「ツインブラスト…!?」

 いつもの技名の最後に、聞きなれない言葉があったため、一瞬戸惑いを見せたマサシ。
 だが、発動直後の状態を見る限りじゃ、今までのと全く変わりはなかった。

 全身に強烈なまでのエネルギーを身に纏い、その上で周囲に炎を発生させたバクフーン。
 その状態で猛スピードを発揮して、一気にドータクンとの距離を詰めていく。

「ドータクン!!」

 咄嗟に反撃の指示を出そうとしたのだが、ドータクンは限界が近付いていた。
 先程のマサシの攻撃で、既に体力が付きかけていたのだ。

「これなら行ける…!」

 相手が何も動きを見せない事で、アヤは勝利を確信した。
 後は、自分のタイミングの勝負。



 先日のレクトとの戦いでは、タイミングが微かにずれた事で不発に終わってしまった。
 その事を教訓に、アヤはこの技を完成させることに精を出していた。
 今となってはその誤差も殆ど修正され、不発に終わる確率も大分落とす事が出来るようになった。


 それでもまだ完全に仕上がった技とは言いがたい為、アヤの心には一抹の不安が残っていた。

「……そこおおぉぉぉぉ!!!」

 突進していたバクフーンが、ドータクンに激突する寸前で、アヤが叫び声を上げた。
 その声を聞き、ブラストバーン≠フ為の力を貯め始めるバクフーン。

 準備はほんの数秒で完了し、バクフーンがドータクンに激突すると同時にその炎を解き放つ。
 ズドォォォォンッ…! ドゴォォォォォッ!!!!


 大きな爆発が2回連続で、ドータクンの側で発生。
 如何に『耐熱』の特性を持つドータクンと言えど、そのダメージは計り知れなかった。

「…お疲れ様です。戻ってください」

 ドータクンの様子を見たナリサは、迷わずボールに戻す。
 一目見ただけで、戦闘不能だと言う事は明らかだった。

「これで、後2匹か…」

 ドータクンが斃れた事で、ナリサの残りポケモンは2匹。
 いよいよ、決着の時が近付いてきていた。







 Phase.61 最後の砦





 ナリサの5匹目として繰り出したポケモンは、ビークインだった。
 マサシ達は相性で有利な炎系のポケモンを中心にバトルを展開。
 今までの苦戦が嘘であるかのように、このビークインは実に呆気なく撃破することが出来た。

「ふう…。やはりこのビークインでは、最早あなた達の相手にもなりませんでしたね」

「どういう事だ?」

「耐久力で言うなら、実を言うと先程のドータクンの方が強かったのですよ。その代わり、このビークインは攻撃能力が若干秀でていました。が、貴方達程の実力者が相手では無理がありました…」

「あんたの手持ちポケモンは、これで残り1匹…か。そろそろ決着をつけよう」

「良いでしょう。それなら、私の最後のポケモン。トリデプス!!」

 ナリサが6匹目のポケモン、トリデプスを繰り出す。
 その姿を視界に入れた途端マサシの視線が鋭くなった。

「最後の最後で、耐久型としては相当厄介なのを出してきたな…」

「ブーバーン、オーバーヒート≠諱I!」

「…! 待て、アヤっ!!」

 アヤの攻撃を止めようと叫ぶマサシだったが、既に遅かった。
 ブーバーンは、腕の先から巨大な炎を光線のように発射していた。

「トリデプス、メタルバースト=I」

 ブーバーンの炎は、トリデプスの全身を覆った。
 だがその直後、その炎がトリデプスの周囲に渦巻くグレー色のエネルギーに取り込まれていく。
 そしてそのエネルギーが、ブーバーン目掛けて発射された。

「…! エーフィ、サイコキネシス=I!!」

 アヤは咄嗟にエーフィを自分の前に出し、エスパーの防壁を張る。
 だが相手の技の威力は相当高く、エーフィはじりじりと後ろに押され始めていた。
 やがてエスパーの防壁にも亀裂が入り、ガラスのように粉々に砕け散ってしまう。

「…。…っ!」

 その瞬間、アヤは全ての出来事が物凄くスローに感じた。
 実際の時の流れでは、この一瞬はほんの数秒に過ぎなかったであろう。

 エーフィが吹き飛ばされ、咄嗟に腕で顔を覆ったアヤ。
 だがその直後に、マサシが彼女の肩を持って脱出。
 その最中グレイシアをエーフィの前に繰り出させ、懇親の冷気を発射させた。
 ビュオオオォォォォォッ…!!



 グレイシアの懇親の攻撃だったにも関わらず、食い止められたのはほんの一瞬。
 メタルバースト≠ェ地面に命中した際の爆発で、吹き飛んだ。

「マサシ…! 今、何がどうなって…」

「メタルバースト≠チて言う技だ。発動前に受けたダメージを威力に変換し、そのパワーを増幅させて相手に攻撃する技だ」

「つまり、カウンター≠ニかと似たタイプの技って事?」

「そういう事になるな」



―――それにしても、一番最初のランク決めのバトルの時に、同じポケモンのバトルが見られたことが幸いした。

―――あの時のバトルを見ていなかったら、恐らく相手の出方を先読みする事は出来なかった。

―――メタルバースト=@随分と厄介な技だ…。



「だが、納得いかない点が一つあるな」

「ユキヤ…?」

 横でバトルの様子を伺っていたユキヤが、疑問を口に出す。

「メタルバースト≠ニ言う技は、今貴様が言ったように、『受けたダメージを威力に変換する』技だ。だが、相手の手持ちポケモンの傾向を考えると、あのトリデプスの耐久能力は今までの中で最強といってもいい筈だ」

「…! そうか、いくらパワーに秀でたアヤのポケモンとは言え、ただのオーバーヒート≠一発喰らっただけであそこまでの威力が出る筈が…」

「相手の技の威力をそのまま威力にする、特別な技か…」

「もしそうなら、迂闊に大技をぶっ放せないな。だが、生半可な技じゃあの装甲にダメージを与える事は難しい」

「そうだな…。現に、さっきのアヤの攻撃でも、大したダメージを与えられていない」

 炎が消え、中から姿を見せたトリデプスを眺めながら、マサシが呟いた。
 確かにトリデプスの身体から煙が立っているのだが、ダメージは殆ど与えられていなかった。

「…くそ、さっきのアヤの技より更に破壊力のある攻撃なんて、俺の手の内には無いぞ?」

「俺が行く。お前達はそこで待て」

 手詰まりで立ち尽くしていた折、突如ユキヤが動く。
 ユキヤはサンドパンを繰り出すと、トリデプスに真正面から突っ込ませる。

「トリデプス、アイアンヘッド=I」

 大してトリデプスは、その硬い身体を活かし、頭から突っ込んできた。
 互いに真正面から激突する寸前のタイミングで、サンドパンの姿が消える。

「な…!」


 ズドォォォォンッ!!!
 突如として、トリデプスの背中に強烈な衝撃が迸る。
 サンドパンがトリデプスの頭上から、破壊爪<デストラクションエッジ>を振り下ろしていたのだ。
 その威力は強烈で、トリデプスを間に挟んで尚、広範囲の地面に亀裂を入れた。


「やはりな。トリデプスは顔自体が巨大な盾のようなポケモン。だが、逆に言えば真正面以外からの攻撃に関しては、多少はダメージが通りやすいようだな」

「…」

 ユキヤの攻撃を喰らい、ナリサは言葉を発するのを止めた。
 だがすぐに表情を元に戻し、指示を出す。

「メタルバースト=v

 最初にアヤに仕掛けたのと同じ技。
 ユキヤの技の破壊力をそのまま威力に上乗せした、鋼属性のエネルギーが発射された。

「ハイドロインパクト=I!」

 しかしその攻撃を、マサシが食い止めに掛かる。
 先ほど一旦ボールに戻したフローゼルを、真正面から突っ込ませる。
 あれ程の破壊力を持った技に対抗できるのは、最早フローゼルしか居なかった。

 今発揮できる力の全てを注ぎ込み、周囲に膨大な量の水を纏わせつつ突進する。
 真正面から、相手のメタルバースト≠迎え撃った。
 ハイドロインパクト≠ニメタルバースト≠ェ激突し、一瞬の閃光が発生した直後に強烈な烈風と爆発が襲い掛かった。

「ぐぅっ…!」

 咄嗟に3人は、突風を凌ぐべく腕で顔を覆った。
 だがその直後の事だった。

「な…!」

 フローゼルが食い止めに向かった筈のメタルバースト≠ェ、3人の眼前に迫っていた。
 当のフローゼルは、相手のパワーの前に木の葉の如く吹き飛ばされ、ダウンしていた。

「チィ…ッ!!」

 最終的に、その攻撃が3人を纏めて吹き飛ばす。
 大爆発の直後には、3人は無造作に地面に倒れ伏す姿が在った。







 Phase.62 敗北 そして…





「…っ、まだだ…」

 ボロボロになりながらも、マサシは辛うじて立ち上がる。
 だが、残りの2人は上半身を起こすので精一杯の様子。
 とても、他のポケモンを繰り出し、指示を飛ばすような余力など残っていなかった。

「俺はまだ、最大の一撃を使っていない…!! グレイシア、頼むぞ」

 先ほどアヤを庇い、ダメージを受けたグレイシア。
 大きなダメージを受けているものの、まだある程度の体力は残っていた。

「グレイシアの究極段階<エクストラレベル>≠フ全力…。そしてこの辺り一帯の、冷え切った大気。逆転の為の要素は、充分すぎる」

 静かに、そして確かな自信を持った口調でマサシが喋る。
 ナリサも息を呑み、額から冷や汗を流しつつグレイシアを見つめる。

 グレイシアから発せられる光とエネルギーは、かつてないほど強烈なもの。
 寧ろ、その光だけでグレイシアの姿を覆い隠そうかと言うほど。

「これが、最後の勝負だ…!究極段階<エクストラレベル>:アブソリュートスペイザー=I!」

 グレイシアが放つ強大な天属性のエネルギーが前面に収束し、グレイシアの放った冷気と共に、それが襲い掛かる。
 その威圧感は、今までナリサが経験した中でも圧倒的なものだった。
 だが、その雰囲気に飲み込まれず、ナリサは指示を出す。

「メタルバースト=c! 完全に、防ぎきって見せます…!!!」

 グレイシアの光線と、トリデプスの周囲を渦巻く鋼属性のエネルギー。
 それぞれの光が混ざり合い、世界を白一色に染めるかのような眩いフラッシュが発生。
 その発光に続くかのように、今の光と同規模の大爆発が発生。
 凄まじい轟音と地響きが、この付近一帯に襲い掛かった。

「はぁ…、はぁ…」

 爆発のあった場所では、巨大なクレーターが出来上がっていた。
 その淵で、膝を抱えながら立つマサシの姿。
 中心部では未だに煙が立ち上っており、グレイシア達の姿はその中。
 決着がついたのだろうか…?

「…! くそっ…」

 煙の中の様子を見ていたマサシが、一瞬眼を大きく見開いた。
 そして次の瞬間には、何かを悔やむかのような言葉を漏らしていた。

「まだ、届かなかったか…」

「…え?」

 マサシの言葉に促されて、アヤが煙の立ち上る場所に視線を向ける。
 そこには、斃れ伏すグレイシアと、未だに立ち続けるトリデプスの姿があった。

「そんな…!これって…」

「今の攻撃は、今の俺達3人の中で事実上最強の攻撃だった…。それで斃す事が出来なかった以上、もう俺達に勝ち目は……、無い」

 その言葉を言い終えると同時にマサシは悔しそうに眼を閉じ、首を落とす。

「私達の…、敗け?」

「…」

 アヤの問いかけに、マサシは何も返事をしなかった。
 それを見て、アヤは両手で顔を覆った。
 ユキヤも残念そうな表情を見せ、顔を背けた。

「今回は、私の勝ちですが…。予戦期間中であれば、何度でもバトルは受け付けます。日を改めて、また挑戦しに来て下さいね」

 いつの間にか3人の横に立っていたナリサが、その言葉を発した。
 比較的ダメージの軽かったマサシに、2人は肩を借りる形で立ち上がる。
 そしてマサシは軽く一礼して、この場を後にする。

 だが、マサシの瞳からは嫌というほどの悔しい表情が浮かんでいた。
 そして、その瞳から雫が溢れ出していた。
 しかしその雫は、白銀の風景に紛れ、すぐ近くの2人以外は眼にする事は出来なかった。

 マスターリーグ予戦突破の証を持つトレーナー・ナリサとのバトルは、マサシチームの敗北で幕を閉じた。
 この先、彼らはどんな道のりを歩んでいくのか…。







「正直、あそこまで強い相手だとは思わなかった…。私達3人の総力よりも、更に上を行く実力だったわね…」

 あの後、3人はリーラシティのポケモンセンターに戻ってきていた。
 ポケモン達の回復と、彼ら自身のダメージを回復させる意味も含まれていた。

 そんな中で、アヤが今の言葉を口にした。

「俺も、初めてだ…。フルパワーの『究極段階<エクストラレベル>』のスペイザーを耐え切られたのは…」

「俺達個々の実力が、絶対的に不足していた。 たったそれだけの事だが…」

 普段はポーカーフェイスなユキヤでも、今回ばかりはその表情も崩れていた。
 拳を握り締め、悔しがっているのがはっきりと感じられる。

「まだ…。ナリサさんに挑むには、俺達は未熟すぎたのかもしれない。この大会の中で今よりも更に上の実力を身に付けて、またここに戻ってこよう」

「…うん」

 マサシの発言に、2人が視線をマサシに向ける。
 そして3人揃って、首を縦に振った。

「俺達は、必ずもう一度ここに戻ってきて、ナリサさんに勝つ。そのためにも、俺達は更に強くならなければならない」

「そのためには、ランクを上げる事ね。私達より強いチームと戦えば、意識せずとも自然に実力は身についていくからね」

「同感だ。今は証を集める事よりも、自分自身の実力の向上を図るべきだ」

「とりあえず今は、傷を治すことだ。ここを発つのは、2〜3日後だな」

「ええ。今回は私達の負けだけど…、次は必ず!」

「ああ。今度戦う時は必ず…」



 ―――……必ず、勝ってみせる!!







 To Be Continued






 Phase.EX 特別編



 ※これより先の話は、作者である僕が気紛れで製作した物です。
  第3部本編の進行に関しては、殆ど関係は無いのでスルーしてもらっても構いません。
  それでも構わないと言う方はゆっくりご覧下さい。







 ―――あの戦いで、僕は己の未熟さを痛感させられた。

 ―――あいつを斃すために必死で修行をしたけど、それでもまだ駄目だった。

 ―――因縁に決着はまだついてない。今度戦う時には、あの時の雪辱を晴らす。

 ―――そう、心に誓ったんだ…。





 人里離れた山岳地帯に存在する小さな町、カンナギタウン。
 シンオウ地方を分断する巨大なテンガン山の傍らに位置する。
 そのカンナギタウンに住む少年、シュン。
 3年前、ジョウト地方で『終焉の道標<エクストレーム>』の幹部、ルハドと戦ったトレーナーの1人。

 当初彼は、彼の兄と相打ちになりながらも復活したルハドを斃すべくジョウトに上陸した。
 その過程でマサシと知り合い、共に戦った。
 結果的にマサシがルハドを斃した事で、戦いの幕は下りた。

 しかしその後、彼はマサシの家で生存していた兄・スバルと再会。
 兄と共に、来るべき次なる戦いへ向けて修行の日々を送っていた。

 そして時は、現在に至る。



 マスターリーグで激闘を繰り広げるマサシ達とは別の、小さな物語。





「うわっ!!」

 地面に尻餅を付くシュン。
 彼の見据える先には、兄のスバルがいる。
 あれから毎日のようにスバルとバトルを繰り広げ、少しずつではあるが徐々に実力を高め始めていた。

 今のバトルの手応えを感じて、スバルは若干戸惑いの表情を見せた。

「シュン。少し、強くなったか?」

「まだまだ全然だよ。『終焉の道標<エクストレーム>』と戦う為には、兄さんを余裕で斃せる位にならなくちゃ!!」

 時は、マスターリーグが開催されている時期とほぼ同時期。
 成長し、背丈が伸びたシュンの姿がそこにはあった。

「俺を余裕で…か」

 今のシュンの発言を受け、スバルは何かを考え込むのだった。




 #翌日




 今日は、修行が休みの日。
 シュンはシンオウ地方の中でも指折りの大都市、ヨスガシティにまで足を伸ばしていた。
 というのも、単純に遊びに来たわけではなく、食材の買出し。

 シュンの家庭において、それらの家事全般はすべて彼の仕事。
 姉のミキは家事は万能にこなせるが、料理だけはてんで駄目。
 どれだけ食材を揃えても、それらは全て目も当てられない失敗作に成り下がってしまう。
 だからなのか、シュンは年齢の割に料理の力量は高いのだった。

「さて、と。こんな物かな」

 あちこちの食料品店を回り、ある程度買い揃えたシュン。
 町の広場でピジョットを出し、カンナギタウンに戻ろうとした。

「…ん?何だろう」

 広場から少し離れた所にある大きな建物。
 そこから、ものすごい歓声が聞こえてくる。

「あそこって確か、シンオウのポケモンコンテスト会場…。そうか、もうそんな時期なんだ」

 このシンオウ地方でも、よその地方と同じようにポケモンコンテストは開催される。
 だが、会場がこのヨスガシティにしか存在しない為、1年の中で数える程度しか開催される事はない。
 だが、それだけに規模は大きく、毎回大勢の観客を動員している。

「ヤッホ〜、シュン!」

「マユミ…? マユミなの!?」

 ふと、シュンに話しかける女の声。
 シュンがその方角に視線を向けると、そこには茶色のロングヘアーの少女。
 彼が今口に出した、マユミと言う少女だった。

「こんな所で会うなんて偶然だね♪ 今日はどうしたの?」

「単なる食料の買出しだよ。マユミは、やっぱりコンテスト?」

「勿論だよ♪ 滅多に開催されないシンオウのコンテストだし、レベルだってかなり高いから遣り甲斐だってあるし♪」

 実を言うとこの2人、本編に登場するよりも以前に、このシンオウ地方を旅してた経歴がある。
 まあ、よくあるご都合主義って奴?
 …手抜きとか言われても仕方ないよね、これ。−−;

「…ところでシュン、さっき買出しに来たっていったよね? 料理できるんだ♪」

「まあ、僕の家じゃまともに料理作れるのが居なかったから…。僕が頑張ってるうちに、自然と上達しちゃったって訳」

「凄いなぁ、シュンって…」

「そんな事無いよ。僕は、まだ…」

 マユミの言葉を受けて、何処か口調が弱々しくなるシュン。
 彼の脳裏に浮かぶのは3年前の屈辱、そして目標としている兄・スバルの存在。
 彼自身、まだまだ未熟であると言う事を痛感していた。

「…ねえ、シュン。何を思い詰めてるのか解らないけど、気分転換でもしないと疲れちゃうよ♪」

「うん、ありがとう。マユミ」

「という訳で、気分転換に私のコンテストでの晴れ姿でも見て行ってよ♪」

「…って、ええ!? 僕、買った物を家まで運ばないといけないのに…」

「その後でもいいから♪ まだ、開始までには時間が空いてるから」

「ふぅ…」



 ―――でもまあ、偶にはこんなのもいいかな。

 ―――少しぐらいのんびりしたって、損は無いよね。

 ―――ここ最近ずっと張り詰めてたから、丁度いいかもしれない…。



「解ったよ。急いで行ってくる」

「うん、待ってるね♪」

 ここから、シュンのもう一つの小さい物語が始まる。



 続く………のだろうか?(ぇ)






後書き
今回、案外早く本編を切り上げてしまったので、急遽番外編的な話を作ってみました。
最初の注意書きにも書いたとおり、番外編は第3部本編の進行とは何ら関わりを持ちません。
単なる容量稼ぎと捉えるか、大会とは関係ないもう一つの物語として楽しむか、それは皆様の自由です。
基本的にこの番外編は不定期掲載になるので、あんまり期待はしないで下さい(オイ)。

とりあえず次回から、また新展開。
本当、どれだけ続くのか解らなくなってきた…(ェ)。
という訳で、次回をお楽しみに。

 

[アットの一言感想]

 マサシの究極段階<エクストラレベル>ブラストバーンと、アヤのバーストストライク・ツインブラスト。
 威力的にどっちが強かったのかな?
 アヤの一撃が決まるまでには、相手の体力も相当減らされてたようですからね。
 とはいえ、今回は惜しく(?)も敗北……全く敵わないという程でもなかったけど、ナリサ相当強いようです。

 個人的には、今回から始まった番外編にも期待です。

 

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