爆発が生じて、突風が360度全方位に吹き荒れる。
 そんな爆発の中を、一匹のフライゴンが突っ切っていた。
 その視線の先に捉えるのは、今戦っている相手のポケモン。

 そのトレーナー、チズサがフライゴンの動きに気付いたのは数秒遅れてからだった。

「…! もう、次の行動を!?」

 タイミング的に言えば、それはフライゴンのドラゴンクロー≠ェチルタリスにヒットする寸前。
 そんな状態からでは、反撃は間に合う筈も無かった。

 ザンッ!!






COM マスターリーグ編
第19話
アロナシティを目指して







 Phase.68 真(ほんとう)の黒幕…?





 フライゴンの攻撃で、チルタリスは墜落した。
 そのチルタリスを回収すると、チズサは戦う姿勢を解く。

「…?」

 不思議そうに思いながらも、マサシもフライゴンをボールに戻した。

「今日はありがとう。まだ、マサシ君には届かないけれど、少しだけでもバトルが出来て良かった」

「決着はつけないのか?」

「それは、また別の機会にしようと思うの。出来れば、最終トーナメントで」

「…そうか」

 チズサがバトルを中断したのを確認すると、他の2人もバトルを途中で切り上げ、集結した。

「今回のは、チズサの我侭に付き合っただけさ。僕達は後4つの証を集め、予戦終了まで生き延びれば良いだけだからね」

「…そうか」

「だけど、マサシ達も中々の実力だね。ランクはまだ17位みたいだけど、その実力はトップ10のランカーにも匹敵するよ」

「第6位のチームのリーダーからそんな言葉を聞けるなんてな」

「また会おう。チズサが必死になって追いかけるトレーナーと、今度はちゃんとした舞台で戦ってみたいからね」

「その為には最終トーナメントまで勝ちあがれ…、ってことか?フジヤ」

「そういうことだね。実際のところ、最初は40位台だった君達がここまで上位に上り詰めた事で、少なからず君達3人は注目を集めている。これからは、狙う側ではなく狙われる側にもなってくると思うから。用心するに越した事はないよ」

「それは要らない心配よ。私達3人、そこまで弱くは無いわ」

「そういう事だ」

 フジヤの言葉に、アヤとユキヤの2人がマサシの横に並んで受け答えした。
 それをみて、数秒目を瞑るフジヤ。
 そして…。

「その様子なら、心配は無さそうだね。それじゃあ、失礼するよ」

「マサシ君、今日はありがとう」

 立ち去りながら、振り返ってマサシに手を振るチズサ。
 マサシも若干表情を和らげ、手を振るのだった。







 マサシ達とバトルをした地点から、数キロほど離れた地点。
 フジヤチームの3人が、今その場所を横断していた。

「やっぱり、マサシ君は凄かったよ。トーホクの大会で優勝した実力は、伊達じゃなかった」

「彼のチームの他の2人も、かなりの実力を備えてた。それぞれの長所こそ異なるものの、総合的な能力ではあの3人は完全に拮抗している」

「…でも、少し残念だわ。私、マサシ君のことは本心から憧れていたのに…」

「!」

 チズサの言葉に釣られて、他の2人も空を見上げる。
 彼らの前に、1人の男が着地する。
 その正体は先日の騒動で、アヤが対峙した男・レクトだったのだ。

「レクト。しっかりと動き回ったね?」

 彼に話しかけるのは、フジヤ。
 口調こそ先ほどまでのマサシチームとのバトル時と変わらないが…。
 何処か、彼の言葉から冷たい雰囲気が感じ取れた。

「フジヤさん、一体俺は何時までこうしちればいいんです?あれから、もう2週間近く経ちますよ?」

「本丸がこのヨハロ地方に到着するまでの辛抱だよ。今度ここに辿り着く奴らは、この前の時とは訳が違う。今度こそ、大会出場者を殲滅する」

「それがいつ頃なのかはっきりしていれば、俺も動きやすいんだけどね」

「およそ1週間だね。時期が来れば、君は当初の計画通りに動けばいい」

「それにしても、フジヤさんの考える事はえげつない。いくら自分に疑いを掛けられるのを避けるためとはいえ、『事前に何の通達も無しに自分の配下を容赦無しに切り捨てる』んだからね」

「レクト、黒幕を演じる君のために、いい物を渡すよ」

「いい物…?」

 フジヤは、自分の手を差し出す。
 その掌の上には、何やら妖しく輝く黒い結晶。

「これは?」

「それを使い、君はより一層動きを大きくするんだ。それがあれば、マスターリーグ出場者などとは比較にならない力を得られる」

「……」

「ただし、一つだけ注意する事があるよ。このマスターリーグに出場している、とあるトレーナーには気をつける事」

「何でだ?」

「その力を打ち払う事が出来るからだ。そうなれば、君はあっという間に無力化される」

「心配は無いよ。それをされる前に、終わらせればいいんだ」

 レクトは迷わず、フジヤの差し出した黒き結晶を手に取った。
 その瞬間、結晶から黒い霧のような物が溢れ出し、レクトの全身を覆っていく。

「な…!? うおああああああああ・・・・・・!」

 突然の出来事に驚き、叫び声を上げるレクト。
 その様子を、フジヤは静かに眺めていた。

「実験は成功みたいだね、レクトさん」

 背後から、チズサが語りかけた。
 全てを把握していると言う口調で。

「ああ。ごく一般的なトレーナーでも、これだけの力を発揮しえる事が解ったんだからね」

「それを後からこの地方に到着する皆に与えれば、今度こそ…」

 黒い霧に覆われていくレクトを眺めながら、レクトは笑みを浮かべていた。
 目元に影を落とすような、不穏な表情だった…。







 Phase.69 新たなる悲劇の予兆





「…!」

 突然、マサシが足を止めた。
 一瞬ではあったが、周囲の背景がモノクロに見え、それと同時に不気味な力の流動を感じたからだ。
 そして、その感覚にマサシは覚えがあった。

「(今のは…、微弱ではあるが間違いない。魔の属性…。何故だ、何でマスターリーグ開催中のヨハロ地方で…)」

 周囲を警戒するように見回すが、ナギサが語りかけてきた事でそれを中断する。

「マサシ君、どうしたの?」

「否、何でもない…」



―――気のせいだといいんだが…。

―――レクトさんの背後に、まだ何か居る気がしてならない。

―――それに、さっきの魔属性の感覚…。

―――『終焉の道標<エクストレーム>』…。また、何かを企んでいるのか…?




 一抹の不安を抱えつつ、マサシ達一行は旅を続ける。
 目的地、アロナシティを目指して。



 そんな道中、彼らの前に聳えるのが巨大な渓谷。
 道の両脇が険しい崖で挟まれていて、尚且つ複雑に入り組んだ迷路状態。
 普段なら、迷路というだけでそこまで気にする事はないのだが…。
 今だけはこの状況が、最大の問題となっていた。

「…で、例によってナギサがいつの間にか居なくなってる訳なんだが」

 渓谷を途中まで進んだところで、初めてナギサが居ない事に気付いたマサシ達。
 入り口から今居るところまで、枝分かれしていた道は一度も無かった。

「だけどあいつの場合、一本道でも当たり前のように方向音痴を発揮するからな…」

「どうする?やっぱり探すの?」

「当然だ。とりあえず、空からこの渓谷全体を見渡してくる」

 マサシは一歩下がると、フライゴンで空へ飛び上がる。


 地上に居るアヤとユキヤが小さく見えるほどの高度。
 マサシは周囲を見渡す。

 その表情は、どこか青ざめていた。

「これ、見ないほうが逆に良かったかもしれないな…」

 マサシの視線の先に広がった光景、それは…。
 視線の届く限り、地平線の先までずっと続く入り組んだ大迷路だった。

「…」

 いつまでもこうしているわけにも行かず、マサシは地上に戻る。

「どうだ」

「参った。この渓谷迷路、地平線の先までずっと続いてる。ナギサを探し出して、尚且つこの迷路を抜けるとなると、日が沈むまでに達成するのは不可能だ」

「また野宿…」

 言葉を弱々しくするアヤ。
 だが、マサシはそんな事実にもめげず歩み始める。

「凹んでいる場合じゃないだろ。ナギサを放っておいたら何処へ行くか見当もつかないんだから」

「…そうね」

「とりあえず俺は、崖の上から探してみる。アヤとユキヤは、別々に崖下を頼む」

「ああ」

 マサシは軽く頷くと、もう一度フライゴンに頼んで崖の上に移動した。
 それとほぼ同時に、アヤ達も動き始めていた。

「行くわよ!」

 かくして、3人がかりでのナギサの捜索が始まるのだった。



 そして、当のナギサ本人はと言うと。

「…あれ?マサシ君達何処に行っちゃったんだろ?」

 案の定、迷った事に気付いていなかった(爆)。
 マサシ達が歩いていたのと同じ景色の続く渓谷を、1人で歩いていた。
 周りに人の気配は無く、視線の先はずっと同じような光景が続いている。

「とりあえず、動かなきゃ駄目だよね。マサシ君達を探さなきゃ」

 ナギサは歩き出す。
 この広大な渓谷迷路を彷徨いながら、マサシ達と合流するべく。





 同時刻 マサシ達がいる渓谷迷路内、別の場所。
 そこには、また別の大会出場チームの1組が足を踏み入れていた。
 その3人の先頭を歩く男は、如何にも気だるそうな態度で足を進めている。

「あー、面倒臭ぇ…。何だってこんな面倒なところ抜けなきゃならないんだ…」

「もう。仮にもこのチームのリーダーなんだし、もう少ししっかりしてほしいよ」

 気だるそうな男に呆れているのが、向かって左側を歩く短髪の少年。
 そんな少年を諭すように、もう1人の男が語りかける。

「今更そんな事言っても仕方ないって。エンスのこの態度は、出会ったときからずっとだからね」

 エンス。
 それが、彼ら3人の先頭を行く男の名前らしい。

「何だかなぁ…。こう、パッと行く方法無ぇもんかなぁ…。例えば、テレポートみたいな力を使える奴が俺達の前に来て誤作動起こして目的地に飛ばされるとか」

「何でそんな具体的なこと言うのさ(汗)」

 後頭部に汗を流しながら、向かって左の少年が呆れたように呟く。

「なあ、テンロ ヨコウ。何か楽な方法無ぇのかぁ?」

「そんな方法があったら、とっくエンスに教えてるって」

 テンロと呼ばれた少年が、先程と同じ表情で受け答えした。
 同じく、ヨコウと呼ばれた男も同じような返事をした。

「エンス、偶には自分から何か行動を起こそうって言う気にはならないの?」

「面倒臭ぇからパス。この大会に参加してる連中とのバトルだってそうだ。面倒で面倒で仕方無ぇよ…」

 そこで一旦言葉を区切り、一呼吸置いて更に一言。

「伝説のマスターリーグまで来たってのに、今までの連中とまるっきり変わらねぇんだもんな…」

 態度や口調は今までと変わらない。
 だが、何故か今の一言だけ、ずっしりとした重みが感じられた。



 そんな折、彼らは人の気配を感じ取る。

「…」

 その気配の主は、レクトだった。
 生気の無い表情で、ふらふらした足取りで彼らの前に姿を現した。

「エンス…。こいつ、先日のあの騒動の黒幕だよ!!」

「あ〜、あの事件のか」

「エンスさん、呑気にしてる場合じゃないよ!早くこいつ捕まえなきゃ!」

「お前らに任せる。あんまり動きたくねえし」

「…はぁ」

「まあ、エンスさんらしいや。ヨコウさん、僕らだけで」

「仕方ないか」

 溜息を漏らしつつ、2人はボールを取り出し構える。
 レクトもボールを取り出し、中に入っているポケモンの名を呟きつつボールを投げる。

「メガにウむ…」

 口調は何処か違和感があるが、しっかりと指示は出しているレクト。
 相変わらずの強烈な威力を有するリーフストームを放ってくるのだが、テンロのカイリューがそれを阻む。

「カイリュー、たつまき=I!」

 カイリューが大きな翼を羽ばたかせ、発生させた風の渦でメガニウムのリーフストームを容易に掻き消す。
 それだけに留まらず、間髪居れずにドラゴンダイブ≠ナ突撃。
 逆にメガニウムの身体を吹っ飛ばした。

「よし、僕達ならいけるよ。早くこいつを…」

「ボーまんダ…!!」

 次にレクトは、ボーマンダを繰り出す。
 即座に攻撃を仕掛けようとしたテンロだったが、相手の異変に手を止める。

「…え!?」

 ボーマンダから、真っ黒な霧のようなものが放出され始めたのだ。
 それに呼応してレクトの身体を、ボーマンダから出ているのと同じ黒い霧が渦巻いている。

「あ…が…ぁ……。がああああああああああああああああ#$$#$%@%$!!!!!」

 最早、言葉にすらなってない叫び声をあげるレクト。
 そして黒い霧のエネルギーが一気に膨張し、はじけ飛ぶ。
 ズドォォォォォォッ!!!!







 Phase.70 魔は再び胎動を始める





「! あれは…」

 フライゴンに乗り、上空からナギサの探索を続けているマサシ。
 だがその途中、遠くで巨大な漆黒の柱が天高く伸びる光景を目の当たりにした。
 そして、その柱から漂ってくるとてつもなく邪悪な力の波動。

「魔属性…! やっぱりさっきの感覚は気のせいなんかじゃなかったか。ナギサの安否も心配だが…、あっちも放っておけないか」

 マサシは躊躇わず、漆黒の柱の立ち上る方角に向かうマサシ。
 飛行しながら、フライゴンの体から銀色の光のエネルギーがあふれ出す。

「『能力回帰:究極段階<エクストラレベル>』!」

 空中で光が球体状に膨張し、風船が破裂するかのような爆発に似た衝撃が発生。
 その衝撃で、渓谷全体に軽い地響きが発生した。

 その光の中を突き抜けてきたフライゴンとマサシは、全身に先ほどと同じ色の輝きを纏っていた。
 一刻も早く、あの場所へ…!





 先ほど漆黒の柱が立ち上った場所、即ちレクトが戦っている地点。
 対するは、大会出場チームの中の1組 エンスチーム。
 とは言っても、実際闘っているのはチームメイトのヨコウとテンロのみ。
 チームリーダーのエンスは、相変わらずのダラダラ状態。

 だが、レクトが魔属性を解き放った事で戦局は一気に傾いた。
 ドサッ! ドサッ!!

「うぐっ…。な、何だこの力…!」

「僕達の、常識を遥かに超えている………」

 渓谷の中で、その場所だけが開けていた。
 まるで隕石でも落下したかのように、辺りの崖が全て吹き飛んでいたのだ。
 そしてその場で蹲るテンロとヨコウ。

 レクトは最早言葉すら発する事は無く、まるで獣の如き視線で彼らを睨んでいる。

「こいつは…」

 エンスから、だらけていた雰囲気が消えた。
 急に真面目そうな雰囲気になり、2人の前に立つ。

「…強いな」

 無言でボールを取り出し、構えるエンス。
 だが突如、彼の目の前に一人の男が姿を見せる。
 彼はエンスに背を向け、レクトを睨みつけていた。

「…!」

「レクトさん…。貴方だったか」

 姿を現したトレーナーは、茶色い髪の毛をしていた。
 全身から神々しい銀色の輝きを放つ青年だった。

「お前は…、マサシか?大会出場者の」

「ああ。お前達も、大会出場者みたいだな」

 エンスに呼びかけられて、後ろに視線を向ける。
 彼らの身なりで、彼らもまた大会出場者である事を一瞬で察する。

「マサシ、悪いが手を出さないでくれるか。こいつは、初めて俺の退屈を紛わせてくれそうな相手なんだよ」

「残念だが、それは無理な相談だ。奴の持っている力は特殊な物で、現状俺でしか対処は出来ない」

「――――――――!!!!!!」

 雄叫びをあげながら、ボーマンダでマサシ達を攻撃するレクト。
 だがマサシは、視線を戻すことなくフライゴンで攻撃を受け止める。

「(レクトさんは、あの力で正気を失っているだけなのか…?だったら、あの魔属性を祓う事が出来れば…!)」

 フライゴンが、右の腕を後ろに伸ばし、爪による攻撃姿勢を見せる。
 そしてフライゴンの爪に、天属性の輝きが灯る。
 その瞬間、フライゴンから眩いほどの光があふれ出した。

「喰らえ!!!」

 レクトの方に向き直り、叫ぶ。
 フライゴンの輝きの爪がボーマンダを切り裂く。

 しかし、ボーマンダはお構い無しに口から炎を発射。
 至近距離から攻撃を喰らい、爆発の衝撃でフライゴンは吹き飛んだ。


 吹き飛んだ先で、フライゴンは壁にめり込んでいた。
 ダメージも相当大きく、ぐったりとしていた。

「ち、流石にそう簡単にはいかないか…。元々の強さだけでも半端なレベルじゃないのに、今はあの魔属性の力で更に強さが増している…!」

 ボーマンダが上空へ飛翔し、強大な力を持った隕石の如きエネルギー弾を地上目掛けて発射。
 ドラゴンタイプ最強の威力を持つ技、りゅうせいぐん=B
 一発だけでも辺り一帯を更地にするだけの力を持っている攻撃を、無数に。
 それを見たマサシの表情が、引きつった。
 ズドォォォォンッ!!!


 爆発があったその場で、マサシは片膝を地面についていた。
 先程の凄まじい衝撃で、かなりのダメージを負ったようだ。

「…!」

 今の攻撃は、相当な威力だった。
 にも関わらず、マサシの身体はそこまで強いダメージを受けた感覚は無かった。

「あんた…!」

 マサシの前に、エンスが立ち塞がっていた。
 一匹のニドキングと共に。

「あー、悪ぃ。さっきはお前に任せちまったけどよ、やっぱり無理だったわ。こんだけ俺を興奮させるような強い奴を相手に、黙って見ている事なんてな」

 マサシは思わず息を呑んだ。
 戦い始める前の彼からは感じなかった、凄まじいまでの気迫をひしひしと感じていたからだ。

「(こいつ…)」

「ダメージを与えるのはお前、その為の隙を俺が作る。それでいいだろ?」

「俺も、大分見る目が曇ったかな。あんたがここまでの実力を持っているのを見抜けなかったなんて」

「今は、そんなのどうでもいいだろぅ。今は、奴をどうにかしないとな」

「…同感だ」

 その言葉を発すると同時に、マサシは立ち上がる。
 そしてエンスと肩を並べる。

「奴の強さは俺自身よく知っているが…。何でだろうな、お前と共闘するなら負ける気がしない」

「行くぜぇ」

「その前に、俺はまだそっちの名前を聞いて無い。お前は、俺の事を知ってたみたいだがな」

「エンスだ」

 エンスの方を向き、一瞬笑みを浮かべると…。
 彼と一緒に、レクトに向かっていった。







 Phase.71 死闘





 数分前


 先程のボーマンダのりゅうせいぐん≠ノよって、大爆発が発生した頃。
 ナギサを探索して渓谷を散策していたアヤ達が、それに気付いた。

「…ッ!! 何、今の凄まじい爆発音!?」

 丁度そんな時、彼女の携帯電話が着信音を鳴らす。
 アヤが携帯に出ると、電話の向こうから聞こえてきたのはユキヤの声。

『今の爆発、気付いたか?』

「ユキヤ! あの爆発、何なの!?」

『さっき、ここから東の方で黒い光の柱が立ち上るのを見た。あれは間違いなく、魔属性のエネルギーだ。あの爆発も、その方角で起こった物だ』

「魔属性…!? そんな、この大会に『終焉の道標<エクストレーム>』まで紛れ込んでるって言うの!?」

『解らん。だが、魔属性を放置する事は出来ん。マサシは当然気付いてそっちへ向かっただろうな』

「ナギサも、魔属性の危険性は知ってる…。対抗できる力が無いにしても、黙って見過ごす事なんてしない筈…」

『ああ。俺達も、向かうぞ』

「ええ!」

 携帯での通話を終えると、ムクホークをボールから出す。
 その背に乗り、上空に飛び上がる。
 先程の爆発のあった方角を目指すのだった。






「「はああああああああああああ!!!」」

 マサシとエンスが、それぞれのポケモンと共にレクトに立ち向かう。
 エンスはニドキング、マサシはマニューラを繰り出し、レクトのボーマンダに挑む。
 それに対して、ボーマンダは雄叫びをあげる。
 その雄叫びに反応して、2匹のポケモンが怯んだ。

「ボーマンダの特性:『威嚇』か?いや、違うな。あれは、戦闘に出た瞬間に発動する能力だ。じゃあ、今のは何だ?」

「『超威嚇』だ…。レクトさんのボーマンダが持つ特殊能力。通常の威嚇を更に強化させて、攻撃力だけでなく、相手の手持ち全ての全能力を低下させる能力だ」

 マサシの言葉を聞いてハッとした態度を見せた後、ボールを確認するエンス。
 エンスのボールの中にいるポケモン達も、あのボーマンダに対して若干怯えたような態度を示していた。

「気にするな! 闘っていくうちに、その怯えを克服するしかない! マニューラ、ふぶき=I!!」

 マサシが先手を取り、初っ端から氷タイプ最強レベルの技を指示。
 マニューラが爪を振るい、猛烈な勢いを持った寒波を発生させる。
 それは非常に広範囲に吹き荒れ、ボーマンダの身体を軽々と吹き飛ばす。

 更には天属性の力の作用もあり、ボーマンダを覆う魔属性が微かに弱まった。

「…!」

 氷タイプ最大レベルの技を直に喰らったにも関わらず、ボーマンダは起き上がる。
 そして口元に漆黒のエネルギーを集め、それを極太の光線状にして発射した。

「(はかいこうせん≠フ魔属性版みたいな攻撃か…!あれを防ぐには…)」

 マニューラの爪に、冷気の風が渦を巻く。
 それに呼応して、その爪が天属性の眩い輝きを発し始める。
 その力の波動は、スペイザーとまったく同質の物だった。

「アブソリュートスペイザーの、物理版といった所か。まだ、技名は無いがな!!」

 そしてマニューラ得意の超スピードの勢いも利用して、漆黒の光線に真正面からぶつかる。
 ドォォォォォンッ!!!


 激突した事で凄まじい衝撃と、黒と白・2色の光の放電現象が起こる。
 だが、先程の『超威嚇』の影響なのか、じりじりとマニューラが押されていた。

「…ッ! いくら『究極段階<エクストラレベル>』とはいえ、これ程の攻撃は…っ」

 相手の攻撃を次第に防ぎきれなくなり、弾き飛ばされそうになった刹那。
 マニューラの背後から強力な後押しが掛かり、何とかボーマンダの攻撃を押し戻し始める。

「エンス!」

 その手助けをしたのは、エンスのニドキング。
 マニューラの攻撃している腕に己の腕を重ね合わせて、食い止めていた。

「お前の力があれば、奴のあの力に対抗できる。今だけ、その力を少し借りるぞ!」

「…ああ! 助かる!!」

 マニューラとニドキングは、攻撃している方の腕を力ませる。
 そしてついに、ボーマンダの光線を弾き返した。
 ドゴォォォォォォンッ!!


「はぁ、はぁ…。マニューラ」

 マニューラに呼びかけ、手元に呼び寄せるマサシ。
 マサシの許に来たタイミングで、マニューラの発していた銀色の輝きが消失した。

「マニューラは少し休んでてくれ。フローゼル、次頼むぞ!」

 全力の一撃で疲労しきったマニューラを一旦ボールに戻し、フローゼルを新たに繰り出す。
 そして戦いは再開される。

「フローゼル、あまごい=I」

 まずは、フローゼルが空目掛けて水属性のエネルギーを放出した。
 それに呼応し、さっきまでの晴天から一転・暗雲の立ち込める天候に変化する。
 やがて、雨が降り始めた。

「よし、これなら! フローゼル、でんこうせっか=I!」

 それに続いて、得意技を発動。
 素のスピードだけでも相当なレベルなのに、今は雨が降っている。
 フローゼルの特性:『すいすい』の効果も加わり、通常の倍近くの速さを発揮していた。

 それだけの素早さでボーマンダの周囲を飛び交うのだから、ボーマンダは戸惑うばかりだった。

「れいとうパンチ=I!」

 散々スピードでボーマンダをかく乱し、最終的には顔面目掛けて冷気を持った拳を放つ。
 だが、ボーマンダはギリギリのところでフローゼルの動きを捉え、カウンター狙いの雷爪を振りかざしてきた。

「動きを読まれた…!? このタイミングだと、まともに喰らう…!!」

「ニドキング、メガホーン=I」

 だが、ボーマンダの横からエンスのニドキングが突撃する。
 光り輝く額の角でボーマンダに攻撃し、ボーマンダの姿勢を崩す。
 エンスの手助けによって作られた隙を衝き、全力の一撃を見舞わせた。
 バキィッ!!

 拳を喰らった顔面から、少しずつボーマンダの体が氷に覆われ始める。
 だがフローゼルはそれを待つまでも無く、続けてアクアテール≠ナボーマンダを打っ飛ばす。
 ボーマンダは岩壁を何層も粉砕するほどの勢いで吹き飛び、その先でダウンしていた。

「行ける…。この調子なら、勝てるかもしれない」

 自身のイメージの中では、遥か格上の相手だと思っていたレクト。
 それが、エンスというトレーナーと共闘する事で徐々に勝てそうな予感がし始めていた。
 静かに拳を握り締め、レクトを睨みつけていた。

「――――――!!!!!!」

 レクトは暴走しながらも、新たなボールを取り出す。
 そのボールも魔属性の霧状エネルギーが覆われ、開かれる。
 その中より現れたポケモンは、ドクロッグ。
 姿を視界に入れ、攻撃に移ろうとした瞬間だった。
 ガキィンッ!!


 予測していなかった。
 ドクロッグの繰り出した技は、フローゼルが吹き飛んだ後で判断できた。
 ………バレットパンチ=B
 鋼のような硬さの拳で超速攻撃を繰り出す技。

 しかも、雨が降っている状況下でのフローゼルを上回る程のスピード。
 それだけで、マサシ達に根強い印象を植え付けるには充分だった。


 崖に激突した衝撃で岩石が落下し、フローゼルはその中に埋もれてしまう。
 だが、少し時間を挟んで即座に大きくジャンプして復活する。
 しかしフローゼルの着地を待つまでも無く、空中に居るフローゼルの目の前に移動するドクロッグ。
 その位置からフローゼルを、マサシのすぐ側まで殴り飛ばす。
 バキィッ!!  ズドォォォォンッ…!!

「フローゼル!!」

 地面に激突した弾みで土煙が立ち上る。
 風が流れてすぐに煙は晴れたものの、フローゼルは既にボロボロだった。
 片手片膝を地面に着いて、辛うじて身体を起こしていた。


 とどめを刺すべく、ドクロッグがフローゼルに最後の攻撃を仕掛ける。
 だが拳がフローゼルに到達する寸前、またしても邪魔が入る。

 エンスのニドキングがフローゼルを庇うように立ち塞がり、ドクロッグの身体を強引に地面に捻じ込んだ。

「俺なんか眼中に無いってか? それを後悔させてやる」

 マサシの一歩前に出て、ニドキングでレクトのドクロッグに挑むエンス。
 死闘は、まだまだ続こうとしている…。


 マサシの仲間達、アヤ・ユキヤ・ナギサ。
 3人もまた、この場を目指してそれぞれ渓谷を疾走していた。
 合流は、間に合うのか…?







 To Be Continued





後書き
そろそろフラグ回収を済ませようと思った結果、随分と急展開になってしまった感が否めないです(汗)。
にしても、今回またバトルばっかりの話になってしまいました。悪い癖が…(滅)。
とりあえず今後の展開は大雑把に決めてあるので、今までよりはスムーズに進むと思います。

…そして何気に、話数で言えば次でジョウト編が終わったんだよなぁ。何だろ、第3部の展開の遅さは…。OTL

 

[アットの一言感想]

 ナギサ消滅……これで何回目?(汗)
 よりによってとんでもない所ではぐれてしまったとも思いましたが、彼女の場合、どこで姿を消しても同じかも知れない←
 フジヤチームが、真の黒幕らしき振る舞いを見せ始めました。
 その結果、明らかに正気ではなくなったレクトと対決する事に。
 エンスは凄く強そうなものの、他2名は単なるやられ役だったのか!?(ぇ)

 

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