消耗したマサシの前に立つ、エンス。
 今までのマサシの戦いを脳裏で再生しながら、一言呟いた。

「やっぱり、似ているな。あいつの…、リュウイチの戦い方に」

「…え?」

「さて、魔属性と戦うのは6年ぶりになるか…。ここ最近、退屈だったが…。今年の大会は、それを紛わせてくれそうだな」

 エンスはニドキングに視線で合図を送る。
 頷くと地面を蹴り、ドクロッグに真正面から向かっていった。






COM マスターリーグ編
第20話
リュウイチの仲間







 Phase.72 エンスの本気





「(この場を任せたのはいいが、あのドクロッグのスピードは相当な物だ。あのニドキングで、対抗する術はあるのか…?)」

 背後で戦いを見守っているマサシは、相手とのスピード差を心配していた。
 下手をすれば、一方的にやられる事も有り得るからだった。

「ニドキング、こごえるかぜ=I」

 エンスの指示で、ニドキングが若干前屈みに構える。
 すると、ニドキングの額の角が青白く輝き、そこから冷風がドクロッグ目掛けて発射された。
 大きなダメージを与えられるような威力は持っていなかったものの、その寒風がドクロッグの動きを鈍らせる。

「(成る程…。あれでドクロッグの素早さを落とすか。ダメージを与えつつ、相手の能力を弱めていく…。いい手だ)」

 そんなニドキングの攻撃に怯む事も無く、ドクロッグは再びバレットパンチ≠ナ仕掛けてくる。
 だが先ほどまでのスピードは無く、軽々とその拳を受け止める。

 ドクロッグは反対の拳でも攻撃を仕掛けるが、それも受け止められる。
 そして、腕力勝負という構図が完成した。

「アルティメットゾーン=v

 ドクロッグと組み合っている最中で、ニドキングが複数の光を上空に放つ。
 その光は2匹を中心に、地上に特殊な円形の陣を出現させた。

「ニドキング!10まんボルト=I!」

 ニドキングは突然ドクロッグとの距離をとる。
 そして遠距離から電撃を発射する。
 だが、ドクロッグはその電撃を片手で弾いてしまう。

「喰らえ。パニッシュメント=I!」

 いつの間にか、陣の縁に10個ほどの電気の塊が出来上がっていた。
 そしてエンスが技の名前を口にした瞬間、全ての電気の塊が一斉に輝きだす。
 直後、ドクロッグの真上から複数の落雷が束になったかのように降り注ぐ。
 ドゴォォォォォンッ!!!


 更にその落雷によって、陣の縁に出来ていた電気の塊からも電撃が放たれる。
 電撃が、10個全てを結び付けるかのような形で放電していた。
 見ただけでは解らないが、陣の内部では想像を絶するような電圧が発生していた。
 それ程の攻撃を直に喰らった為、ドクロッグは一溜りも無かった。

「(強い…! あのドクロッグを、たったの一撃で…)」

 マサシは思わず息を呑む。
 エンスの凄まじいまでの実力に、呆然としていた。

 レクトはバクオングを繰り出す。
 そしていきなり得意の大声を出すことによる音波で攻撃する。
 ハイパーボイス≠セ。

「…ッ!」

 その凄まじい音波は、周囲の地形を無差別に破壊していく。
 ニドキングも、咄嗟に防御姿勢を取った。

「流石にやるな。まさか、ここまでの威力を『引き出させる』なんてな…」

「引き出させる…?」

 エンスの発言に疑問を抱いたマサシが、それに対して問いかけた。

「アルティメットゾーン≠ヘ、陣の中に居る限り、そのポケモンの持つ特殊攻撃の威力を限界まで引き出させる技だ」

「つまり、常に攻撃力が最大の状態…という事か」

「それは少し違う。威力を限界まで引き出させると言っても、正確には『そのポケモンの潜在能力を攻撃の瞬間だけ全開にする』という事だ」

「…。 ! と言う事は…」

「ポケモンの状態を見る目の良さはリュウイチ譲りか…。そうだ、つまりはああいう事だ」

 エンスは、レクトのバクオングに視線を戻す。
 そこには何故か、苦しそうに地面に這い蹲るバクオングの姿が在った。

「ポケモンの潜在能力を引き出す…。つまり、上手くそのポケモンの育成をするのは俺達トレーナーの仕事。だが、もしそれが中途半端だと…」

「急激に引き出された自身の全力の攻撃に身体が追いつかず、逆に自滅する…という事か」

「正解だ」

 その言葉を口にした時、既にニドキングがバクオングを全力で殴り飛ばしていた。
 軽く数mは吹っ飛ばされ、バクオングはその先でダウンしていた。

「(レクトさんを相手に、ここまで圧倒的に…。エンス、今までこの予戦で出会ってきたトレーナーの中で、間違いなく一番強いトレーナーだ)」

 自分の前に立つトレーナーを心強いと思う反面、背筋が震えていた。
 このマスターリーグで優勝を狙う以上、この男との戦いは避けて通れないと言う事を思えば当然の事だった。

「マサシ!!」

 丁度そんなタイミングだった。
 マサシにとって、聞き慣れた声が彼の耳に飛び込んできた。

「アヤ、ユキヤ!」

 マサシのチームメイトが、この場に到着した。
 これにより、更に状況が好転した。



 …かに思えた。

「――――――!!!!!!!!!」

 レクトは、今までとは異なるデザインのモンスターボールを手に取る。
 紫と白でカラーリングされたボール。
 そして、小さくMと刻まれたモンスターボール…。

「あれは…、まさかマスターボール!?」

 マサシが驚きの表情を見せた。
 それも仕方が無い、噂程度でしか聞いたことの無い伝説のモンスターボールが、目の前に存在しているのだから。

「一体…、どんなポケモンが出てくるんだ…!」

 一同に緊迫が走る。
 そんな雰囲気の中、レクトがマスターボールを投げる。
 その中から姿を現したポケモンとは………!







 Phase.73 願い事ポケモン<ジラーチ>





 あのマスターボールから出てくるポケモンは、おおよその目処は立つ。
 今までの敵のパターンから考えると、出てくるポケモンはまず間違いなく伝説種。
 それが何なのかは解らないが、今までに無い程の強敵であることに変わりは無いはずだった。



 今…、レクトのマスターボールが開き、中からポケモンが飛び出してくる。
 その正体は………。

「何だ…、あのポケモンは?」

 出てきたポケモンは、大きさでいえば非常に小柄。
 そして星を連想させるような頭の形。
 そして、3つに分かれたそれぞれの先端に、短冊のような物が一つずつ。

 そんなポケモンが、宙に浮かびながらこっちを見つめていた。

「あれは…、ジラーチだ」

 エンスが、静かに目の前のポケモンの名前を口にした。

「1000年に一度、7日の間だけ目を覚ますと言われているポケモンだ」

「そんなポケモンが…?」

「どっちにしろ、油断は出来ん」

 ゆっくりと前に足を進めながら、ユキヤが呟く。
 そして、マサシと横に並んだところで歩みを止めた。

「伝説種の中でも、珍しさは群を抜いているポケモンだ。一体どんな能力を持っている」

「様子を伺ってても仕方が無い、ここは…!」

 マサシが手に取ったボールから現れたのは、バクフーン。
 彼の目の前で四つん這いに身構え、背中から炎を噴出し攻撃の姿勢を見せる。

「よし。かえんほうしゃ=I」

 相手がどれだけの力を持っているのか解らない以上、下手な大技は使えない。
 なので、それほど威力は無いが技の出が早い攻撃を仕掛ける。


 ジラーチの3つの短冊が青く輝く。
 すると、ジラーチは前方にエスパーの衝撃波を解き放つ。
 バァンッ!!

 バクフーンの発射した炎は、見えない壁に阻まれるかのごとく消え去ってしまう。
 否、その炎を押し戻してきたのだ。

「バンギラス」

 彼ら全員の一番前に、ユキヤが繰り出したバンギラスが立ちはだかる。
 バンギラスはジラーチのサイコキネシス≠、平然と無力化した。

「グラウンドバーン=v

 バンギラスに指示を出すユキヤ。
 地面に拳を振り下ろし、大きな亀裂を作った。

「………。っ!」

 数秒の間を挟み、大地に振動が起こる。
 そしてそれは徐々に大きくなり、まともに立っていられないほどになる。

 そんな時だった。
 ズドォォォォォンッ!!!


 ジラーチの真下の地面から、極太のオレンジ色のエネルギーが柱のように立ち上った。
 それは容易にジラーチの姿を飲み込み、周囲にも凄まじい爆風を撒き散らした。

「この威力…!!」

 バンギラスのパワーを見て、エンスは表情を変えた。
 一度地面を見渡して、最終的にバンギラスに視線を戻す。

「(『そこ』は、アルティメットゾーン≠フ外だぞ…。なのに、そこまでの破壊力を引き出すか)」

 やがて、エネルギーの柱は消滅した。
 だが、ジラーチには然程ダメージを受けている様子は無かった。

「あれだけの威力で、殆どダメージを受けてない!?」

「魔属性のせいで、殆ど無力化されているか。だったら!」

 マサシはバクフーンを一旦戻すと、オーダイルを繰り出す。
 そしてボールから出た瞬間、ジラーチはオーダイルの姿を見失う。

 オーダイルはジラーチの背後に一瞬で移動すると、自身の尾を叩き付けた。
 ドゴォッ!!


 衝撃と共に吹き飛んだジラーチは、そのまま岩壁に激突。
 崩れてきた岩石の山に埋もれてしまう。

 だが、サイコキネシス≠ナ瓦礫を吹き飛ばしてすぐに復活。
 相変わらず、ダメージを受けている様子は無い。

「元々の能力も相当高かったんだろうな…。今は、それ+魔属性の力も加わって、尋常じゃない能力を持ち合わせている訳か」

 ジラーチから、突如黒い光が発せられる。
 その後、マサシ達は急激に身体が重くなる感覚に襲われた。

「…ッ! 何だ、これは…」

 今にも地面に押し付けられそうな重さの中、気力だけで身体を起こしつつマサシが言葉を発した。

「じゅうりょく≠ゥ…。だが、この威力は…」

 次に言葉を発したのがユキヤ。
 彼は一瞬で相手の技を見抜いたのだが、それでも常識のレベルを超える技の威力に戸惑っていた。

「普通のじゅうりょく≠チて、飛行能力を持ったポケモンを飛べなくさせる程度の力しか無いんでしょ!? だけどこれは、自分以外の全てを押し潰すような凄まじい威力だわ」

「この技をどうにかして破らないと、満足に戦えないぞ…っ!」

 満足に身動きの出来ない彼らを嘲笑うかのように、ジラーチが真っ黒な星型エネルギー弾を無数に発射。
 元々はスピードスター≠セったのだろうが、魔属性の影響で見た目がすっかり邪悪に染まっていた。

「オーダイル!!」

 スピードは落ちているものの、爪を振るう事には問題は無かった。
 マサシは自分の方に向かってきている分は、オーダイルの爪で叩き落す。
 他のメンバーも、それぞれのポケモンで攻撃に対処していた。

「ブーバーン、行くわよ!」

 アヤが繰り出したのはブーバーン。
 彼女の指示と同時に、腕の砲門に熱が集まり始める。

 見ただけではっきりと感じ取れる。
 彼女の真髄、圧倒的な攻撃力を引き出す大技。
 だが、それだけで果たしてあのジラーチに通用するのか…?

「おい! こっちだ!!」

 攻撃の準備を進めるアヤに呼びかけるエンス。
 エンスは何も言わず、アルティメットゾーン≠フ方を指差す。
 迷っている暇は無い と即決し、彼女はエンスの誘導に従った。

「この陣は何?」

 真っ先に疑問を口にしたアヤ。
 だがこんな状況、余り時間は無い。
 エンスは手短に説明を済ませた。

「この陣の内側にいる限り、ポケモンの特殊攻撃の威力が最大に引き出されるって訳ね。 この新技で、あのジラーチに一泡吹かせてやるわ!」

「(ブーバーン自身からも、かなりの力が感じられる…。一体、どれだけの大技を繰り出すつもりなんだ)」

「行くわよ、ブーバーン。マントルバズーカ=I!」

 ブーバーンの腕の砲門の中が橙色に染まり、炎が発射される。
 否、放たれたそれは炎とは言えなかった。
 見た感じ、それは溶岩と言っても然程間違いはなかった。

 まるで、火山の火口から溶岩が噴火するかのような勢いで放たれ、ジラーチを飲み込む。
 その瞬間、周囲は全身の水分が抜けるほどの猛烈な熱気に覆われる。

「な…!」

 爆発により生じた突風も、当然熱を帯びていた。
 腕で顔を覆いつつ、マサシは目の前の光景を凝視していた。

「(この威力、バクフーンのバースト・ストライク≠ニ同等の威力だ…。アヤの奴、いつの間にこんな大技…!)」

 だが、これ程の大技の直撃を喰らっても、ジラーチに与えられたダメージは僅かだった。
 そして、ジラーチは今まで沈黙していたかに見えたが、既に攻撃を仕掛けていた。

「…! おい、やばい!!」

 マサシが空を指差す。
 上空には、無数の鉛色のエネルギーが無数に此方に飛来してきていた。



 …ジラーチ専用の鋼タイプ最強レベルの技、はめつのねがい=B
 ジラーチの願った、全ての敵を滅ぼす力をもった攻撃が、マサシ達に襲い掛かる。
 ズドドドドドォォォォンッ!!!







 Phase.74 終焉の道標<エクストレーム>の影





 はめつのねがい≠ノより、マサシ達全員が壊滅的なダメージを受けた。
 4人全員、ボロボロの状態でうつ伏せで倒れていた。

「くっ…」

 マサシは腕に力を入れて、何とか立ち上がろうとする。
 だが、身体が思うように動かず、結局立ち上がれなかった。

「(前に、チルナと戦ったときに発揮したあの力…。あれをもう一度引き出せれば、まだ勝ち目はあるが…)」

 以前、チルナと戦ったときに発揮した力。
 カイオーガとの戦いで一度は完全敗北を喫したのだが、その後発動した未知なる力。
 それにより、逆にカイオーガを圧倒するほどの力を発揮した事。
 あの時の事を思い返し、もう一度あの力を発揮できないかと今まで考えてきた。

「(けど、駄目だった。どうすればあんな桁外れの力を発揮できたのか…。あの時、俺が意識を無くしていた間に何が…)」

 色々と考えていたのだが、途中で中断した。
 否、せざるを得なかった。
 今のこの状況を如何にして乗り切るか、それを最優先しなければいけなかった。

「フライゴンは…」

 レクトとの戦い序盤で、大きなダメージを受けたフライゴン。
 戦闘不能にこそなっていなかったが、一先ず下がらせていた。
 ボールの外から様子を見る限りでは、多少は体力が戻っている様子が伺える。

「バクフーン、行けるか」

 マサシはバクフーンを繰り出し、呼びかける。
 準備が整っているのを主張するかのように、背中から勢いよく炎を噴出した。
 それを見て、マサシは小さく頷く。
 そして。

「究極段階<エクストラレベル>:バーストスペイザー=I!」

 バクフーンが4足で身構えると、天属性エネルギーの収束が始まる。
 懇親の炎を発射し、天属性のエネルギーが銀色から橙色に変色した光線が放たれる。

 光線がジラーチを飲み込み、広範囲に地響きを起こすほどの巨大な爆発を引き起こす。
 ドゴォォォォォォンッ!!!!


 爆発に背を向けつつ、マサシが3人を近くに呼び集めた。

「今のうちに、ここから離れるぞ!」

「私達全員ボロボロなのに、そんな余裕あるの…?」

「フライゴンのあなをほる≠ナここから脱出する。今の爆発に紛れて、出来るだけ遠く…。西の方に向かう」

「ナギサはどうする気だ」

「大丈夫だ。あいつの事だから、この戦闘で発生してた爆発音を頼りにもうすぐ来る筈だ」

 マサシがその台詞を言った直後の事だった。
 すぐ近くの崖の上から、ナギサの呼び掛ける声がしたのだ。

「マサシ君! 皆!!」

「ナギサ!すぐにこの場から脱出する!」

「解ったわ!」

「フライゴン、あなをほる=I!」

 ボールから飛び出したフライゴンが、疲労の顔色を見せつつ地面に潜り、地下の通り道を作る。
 その後に続くかのように、マサシ達はエンスのチームメイトを担ぎ、次々と穴の中に飛び込んでいく。
 最後にその場に残されたのは、ナギサ。

 彼女は、レクトとジラーチの居る方に振り向くと…。

「ニョロトノ…。ほろびのうた=I!」

 かつてない真剣な表情で、ナギサが指示を出す。
 彼女の指示で、ニョロトノが不気味な歌を唄いだす。
 唄い終わったところで彼女は急いでニョロトノを回収、穴に飛び込んだ。

 それからしばらく経ち、突如ジラーチが苦しみだす。
 ふらふらと地面に落下していき、最終的には気を失った。
 先程のニョロトノの歌の効果が今になって発動、戦闘不能にしたのだった。





 レクトとの戦いの場となった場所から、西へだいぶ進んだ場所。
 渓谷迷路の出口 マサシ達は、全員その場にいた。

「ナギサ…。追いつくのが遅かったが、大丈夫だったのか?」

「うん、大丈夫。あのポケモンは、私が倒しておいたから」

「「「!?」」」

 ナギサの発言に、マサシ達3人に戦慄が走った。

「倒したって…。あの短時間でどうやって!?」

「ニョロトノのお陰よ。それに、マサシ君がスペイザーで攻撃した後だったのも影響してるかな」

「………成る程。ほろびのうた≠ゥ」

「! 流石マサシ君ね。その通りよ」

 自分の指示した技が、即座に見抜かれたことに動揺したナギサ。
 だが、マサシならそれも当たり前だと言う事を思い出し、すぐに落ち着いた。

「確かにその技なら、時間経過で相手を強制的に戦闘不能に出来る。が、魔属性の補正がある状態では、効果が出るのに時間が掛かると言うわけか」

「うん。もし元の状態のまま使ってたとしても、効果が発動する前に追いつかれて、全滅する可能性もあったから…」

「そうか…。あのジラーチの魔属性だけでも浄化できないかと思ってたんだが、それが別な形で功を為すとはな」

「…あれが、今の『終焉の道標<エクストレーム>』か」

 地面に座り込んでいるエンスが、ボソッと呟く。
 『終焉の道標<エクストレーム>』という単語に反応したアヤが、彼に問い詰める。

「あんた…、何者なの!? どうして『終焉の道標<エクストレーム>』の事を知ってるの!?」

「落ち着け、アヤ。そいつは恐らく、6年前の戦いでの兄貴の仲間の一人だ」

 マサシの一声で冷静さを取り戻し、改めてマサシに問いかける。

「リュウイチさんの仲間…?本当なの?」

「レクトさんと戦ってたとき、そいつは兄貴の名を口にした。そして、魔属性の存在も知っている口振りだった。それだけで目処はつく」

「そういう勘の鋭さはある意味、リュウイチ以上だな。いい弟を持ってるな、あいつは」

「リュウイチさんの仲間って事は、相当な実力を持ってるのよね?」

「まあ、6年前はリュウイチと互角だった。が、今のあいつはマスターリーグを制覇した身だ。実力は、今の俺よりも上だろう」

「その兄貴でも4年前、幹部のヒマザに敗北している。奴ら、昔よりも格段に強くなっているらしい」

 今のマサシの発言を聞いて、エンスの表情が一変した。

「リュウイチがやられた…? しかも、あのヒマザに…」

 それだけ喋ると、エンスは再び黙り込む。

「連中の狙いが何なのかは解らないが、このマスターリーグの中に目的があることだけは確かだ。それも、大会出場者を全滅させてまで為し得たい程の目的が」

「ああ。今後も、奴らには警戒する必要があるな。 だが、今は予戦期間中だ。そっちに気を向けるとするか」

 そう言うと、エンスはマサシ達3人のほうに向き直る。

「ところでエンス、気になることがある。兄貴は、7年前の戦いで生き残ったのは三人だけだと言っていた。兄貴と、スバルと、ラオルだけだと。ならお前は、何故生きている」

「あ〜、その事か。リュウイチの言葉が一つ足りなかったようだな。正確に言えば、その『生き残った』というのは最終決戦に赴いた者の中で生き残った≠フがその3人だけだったという話だ。それ以前に戦った仲間なら、今でもかなりの数生き残っている」

「…そうか。なら、納得した」

 疑問が解けたところで、エンスが次なる話を持ちかける。
 その内容とは…。

「こんな時に何だが、俺はお前達とバトルをしたい。予戦の順位とかそんなの関係無しにな」

 その言葉を聞き、マサシ達全員に戦慄が走る。

 そう語るエンスから、凄まじいまでの気迫が感じられる。
 マサシ達全員、静電気が発生した時のような、肌がぴりぴりする感覚に襲われていた。

「…エンス、念のために訊く。予戦内ランキングは現在何位だ?」

「トップだよ」

 その言葉を聞いて、マサシ達3人は顔が引きつる。
 それと同時に、重苦しい雰囲気がこの場を漂い始める。

「マサシ…」

 アヤが、震えるような声でマサシに呼び掛ける。
 無理も無い、現在この予戦内ランクで頂点に立つチームから挑戦状を叩きつけられたのだから。

「もしこのバトルで奴を倒せば、この予戦 俺達は一気に有利になる。マサシ、如何する心算だ」

「どっちにしろ、この大会で優勝する為には超えなければならない壁だ。避けて通る事はできない。いいだろう、その挑戦受けてやるよ」

 予戦内ランキングの頂点に立つチームからの挑戦状。
 直に見た、底知れぬ実力を持つ強敵・エンス。

 平静を装うマサシだが、身体の震えを完全に誤魔化す事だけは出来なかった。







 Phase.EX2 特別編2







 例によって、この先は気分転換の番外編です。
 本編とは何らかかわりが無いので、続きが気になるという方はこの話をパートをスルーしてもらって構いません。
 それでも構わない という方のみ続きをどうぞ。


 このパートは、第17話に書いたPhase.EXの続きの話になります。
 先に其方からご覧下さい。






「ふぅ、間に合った…。ピジョットも、お疲れ様」

 全速力でカンナギタウンとヨスガシティを往復してきたシュン。
 直線距離ではそれほど離れていなかったものの、ピジョットはだいぶ疲れの顔色を見せていた。
 そんなピジョットを労いつつボールに戻し、マユミとの待ち合わせ場所に急いだ。

「うわぁ、すごい混雑してるなぁ」

 マユミとの待ち合わせ場所、ヨスガシティポケモンコンテスト会場。
 まだ始まるまでに時間が空いているのだが、入り口には既に観客が結構な数押しかけていた。

「シュンー! こっちこっち!!」

 そんな人混みの中から、自分を呼ぶ声を聞いたシュン。
 人混みを抜けて、観客席への通路付近にやってきた。

「マユミ、お待たせ」

「来てくれてありがとう」

「そりゃ、君の誘いだから断るわけにはいかないよ」

「それでも、やっぱり嬉しいな♪」

 満面の笑顔を浮かべるマユミを見て、シュンの表情も若干緩む。
 とりあえず2人はロビーにある椅子に腰掛けた。

「…シュン君も、色々と思い詰めてる事があったんだね」

「うん。今の僕の実力じゃルハドは勿論、『終焉の道標<エクストレーム>』の幹部にだって太刀打ちできない。本当は、こんなにのんびりしてる余裕なんて無いんだけど…」

「…私もね、今のシュン君みたいに躓いたりしちゃう事はあるよ」

「え?」

 いつもの無邪気で明るい口調から一転、真面目な口調でマユミが語り始める。

「そういう時はね、何か別のことをやり込んでいるの。私だったら、本来は専門じゃないポケモンバトルの方とかにね。気晴らしは勿論の事だけど、何か新しい切欠とかを掴めるかもしれないから」

「別の事……か」

「まあ、難しい話はここまで♪ 要は、私のコンテストでも見て気分転換してね っていうだけだよ♪」

「うん、有難う」

 会話をしているうちに、コンテスト開始の時間になった。
 マユミは出場者用通路へ歩いていき、シュンは観客席にやってきた。
 その最前列で空いている席を見つけ、そこに腰を下ろした。

「(マユミ…)」

 コンテストが始まる時間になり、出場者達が舞台に姿を見せる。
 その人数は、ざっと見て20人前後。
 その中にはちゃんとマユミの姿もある。

 そして、舞台上に見合うだけの衣装に着替えての登場だった。

「…」

 ポケモンコンテストは、大まかに言えば如何にポケモンの魅力を最大限に引き出すのかを競う。
 その為には、普段からのポケモンのケアや魅力を引き出す工夫など、トレーナーの技量が求められるのだ。

 その点に関して言えば、マユミはとても優秀だった。
 自分の手持ち6匹全てのケアを怠った事は無かったし、それぞれの魅力を引き出す工夫も熟知していた。
 それもこれも、先ほど彼女の話した『挫折した時の気晴らし』を何度も繰り返してきた結果なのだろう。

 結果は言うまでも無く、マユミの圧勝。
 彼女以外の出場者もかなりの実力者揃いだったが、やはりマユミには及ばなかったようだ。






「シュン、どうだった?私の演技」

 コンテスト終了後、ヨスガシティの公園に2人は居た。

「凄かったよ。マユミとポケモン達、本当に自然な形で演技してたし…。あれなら、優勝できるのも頷けるよ」

「もう、そうじゃないよ。私は闇雲に練習してたんじゃなくて、『どうすればそのポケモンが一番輝けるのか』を考えてたのよ」

「どうすれば、一番輝けるか…」

「ポケモンバトルの方はあんまり専門じゃないけど、同じようなものじゃない?闇雲に鍛えるんじゃなくて、そのポケモンの持つ長所を伸ばした方が、より強くなれるかもしれないよ」

「そのポケモンの長所を伸ばす………か」



 ―――今まで、そんな風に考えた事は無かったな…。

 ―――ただ、自分の実力を伸ばす事に必死になりすぎてて、気が回らなかった。

 ―――単に兄さんとのバトルを繰り返すばかりじゃなくて、もっと別の…。



「…ところでマユミ。これからどうするの?」

 考えを一時中断し、マユミに今後の事について問い掛けた。
 コンテストも終了した以上、この先どうするのかが気になったようだ。

「うん。もうちょっと、シンオウでのんびりするつもりだよ♪ だから、シュン君の所にしばらく泊まり込もうかな♪」

「………。……え゛?」

 何の突拍子も無く、爆弾発言をするマユミ。
 シュンは数分の間、開いた口が塞がらない状態が続くのだった。







 To Be Continued




後書き
最近、メインキャラの中である意味ナギサが一番強いんじゃかと感じ始めてきました。
まあそれはともかく、これで第20話終了です。
本編の話の流れ的に考えると、次はエンスチームとのバトルになるわけですが、それはもうちょっと先延ばしにさせていただきます。
断続的にバトルの連続は流石に疲れます(汗)。

その間にまたちょくちょく小話とかを挟んだり、別な事をやろうと思っています。
尤も、まだほとんど決まって無い所為でまた完成後れそうですが…。

 

[アットの一言感想]

 もしナギサが来なかったら、どうなってたんだろう……。
 だって彼女の事だから、いつ地球の裏側に行っててもおかしくないし←
 確かに最近のナギサは強いですね。
 お気に入りキャラなので、活躍(?)があるのはうれしいです。

 

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