魔属性の力を持ったレクトから、辛くも逃れたマサシ達。
彼らは現在、あの渓谷から少し離れた場所にある小さな町に場所を移していた。
その場に、エンスチームの姿は見当たらない。
「1週間後…。その日が、エンスと約束した対決の日時…」
マサシ達の脳裏に浮かぶ、その時の記憶…。
#1時間ほど前
「お前達は、アロナシティを目指しているんだったな」
「ああ」
「さっきの戦いで、お互いにボロボロだ。流石にこの後すぐバトルだ とか、野暮な事は言わねぇ。だから日時を決めて、アロナシティで勝負だ」
「俺は別に構わない。2人は?」
「私も、別に問題ないわ」
「俺もだ」
アヤとユキヤも、エンスの提案に乗る意思を見せた。
「ならば、日時は今から1週間後。アロナシティの港前広場で待ち合わせだ」
「解った」
対決の日時を告げると、エンスは未だに意識の戻らない二人を担いで去っていくのだった。
COM マスターリーグ編
第21話
決戦へ向けて
Phase.75 不安
時刻は現在に戻る。
ポケモン達の回復が終わり、マサシ達は建物の外へ出た。
「ここからアロナシティまで、どんなに急いでも1週間は掛かる。アロナシティを目指すにしても、時間的に問題は無い。だが…」
「…マサシ。不安なの?」
彼の心中を察したアヤが、語りかける。
マサシは表情を暗くして顔を背ける。
「不安だらけさ。俺でも梃子摺ったレクトさんを、一時的とは言え完全に圧倒するほどの実力を持っているんだ。俺のポケモン達の全力を尽くし、持ちうる全ての技を駆使しなければ太刀打ちできないかもしれない」
「俺達は、直接奴の戦いを見た訳ではないが…。あの男と向き合っただけで強さをはっきりと感じ取れた。正直、俺達とはレベルが違う」
腕組みをしながら、ユキヤが意見を述べた。
ユキヤにそこまで言わせるとなると、想像以上の強敵であるということを、皆は自然と理解してしまう。
「作戦としては、まずエンス以外のチームメイト2人を先に潰し、最後にエンスを集中攻撃する という形で行こうと思う。3人が別々の奴を相手にする今までのやり方より、多少は勝率が上がる筈だ」
「うん。今回ばっかりは、相手リーダーの相手をマサシ一人に任せられる相手じゃないもんね…」
3人で真剣にエンスチームの対策を考えている中、ナギサ一人だけが置いてきぼり状態になっていた。
「(3人とも、こんな真剣になるところなんて初めて見る…。それだけ、あのエンスさんが強いんだ…)」
「…なあ、ナギサ」
マサシが突如ナギサに声を掛ける。
突然の呼びかけに、ナギサは思い切り驚いた。
「わっ!! ど、どうしたのマサシ君?」
「お前の意見も聞きたい。お前のスタイルは俺達と違って、補助技を駆使して相手を掻き乱すタイプだ。何か参考になるかもしれない」
「…うん。私は、皆のポケモンにもうちょっと相手の能力を下げたり出来るような補助技が欲しいと思う」
「ああ。エンスのポケモンの攻撃力を落としたりする技が使えれば、それだけでも大分楽になる筈だ」
「アヤちゃんの炎ポケモンとマサシ君のバクフーンには、おにび&モりがあるといいと思う」
「おにび≠ゥ。確かに火傷状態に出来れば、相手の打撃力を大幅に落とせるからそれも有りか…」
「他にも、色々と聞かせてくれ。もしかしたら、エンス相手に勝てるかもしれない」
「う、うん」
いつまでもセンターの前で立ち話を続けるのもあれだったので、移動しながら作戦を練る事にした。
その道中何度か大会出場チームと出くわし、バトルになることもあった。
が、その全てがマサシ達の現在のランク・第17位よりも下のチームだった。
先日フジヤの言ってた通り、これからは狙う側よりも狙われる側になるという言葉の表れだった。
「全く、何で今日に限ってこんなに大会出場チームと出くわす訳!? これでもう5チーム目よ? 流石に疲れてきたわ…」
そんな愚痴を零すアヤ。
これまでの連戦で、流石に疲労が蓄積されているらしい。
「だが、損な戦いばっかりでもなかった。今までのチームの中に、この付近に居る証を持ったトレーナーと戦った連中が居たからな。お陰で、居場所の特定が出来た」
「ここから西へ数日の距離にある町…。マクヌタウンだな」
端末で地図を確認しながら、マサシが呟く。
「結構時間掛かりそうだね。でも、今のペースで進んでも2日位で辿り着けそうね」
空を見上げながら、ナギサが語る。
太陽は今、真上からやや西に移動している時間帯だ。
「まあ、その位の時間は覚悟しないとな。マクヌタウンからアロナシティまでは、約4日の距離だ。時間的には結構厳しいが…」
「…。マサシ…」
「それ以上言うな、アヤ」
やや不安げな口調でアヤが話そうとしたのを、マサシが強引に止めさせた。
彼女も、解っていた。
この先に居るであろう、証を持ったトレーナーの実力が桁外れだということ。
そして先日、ナリサを相手に敗北した痛い思い出。
それらが、自然とアヤの心中を不安にさせた。
「俺達だって、あれから何も変化が無いわけじゃない。少しずつ…、少しずつだが俺達は力を身に付けてきている。もう、あんな負け方はしない」
拳を強く握り締めつつ、強い口調でマサシが言う。
彼自身が一番あの敗北で悔しい思いをしているのを、アヤ達は理解していた。
「もうあんな思いはしない。今度の戦いは、必ず俺達の手で勝利を掴む」
その言葉を聞いて、アヤは力強く頷き、ユキヤは口元に笑みを浮かべた。
「そうだよ! 今のマサシ君だったら、きっと大丈夫だよ!」
「ありがとう、ナギサ。 さて、行くか!」
決意を新たに、マサシ達は歩き始めるのだった。
Phase.76 悪夢、上陸
時刻は、マサシ達がレクトの前から撤退した頃。
ヨハロ地方の玄関口である、アロナシティ。
今、この町に一艘の船が寄港した。
そして港には、フジヤの姿。
船から下りてきた人物の集団を確認すると、そこに向けて歩みだす。
「待ってたよ。随分遅かったね、ペキル」
船から下りてきた集団の一番先頭、顔面全てを隠す仮面をつけた男に話しかける。
身の丈で言えば、エンスの倍近くはある大男だった。
「そう言わないでくれよ、フジヤ。こっちは、世界中に点在する伝説のポケモンを捕獲してきてるんだ。召集に掛かる時間だって計り知れないんだ。その辺の事も、もうちょっと考慮して欲しいよ」
身の丈にあわない、子供のような口調で話すペキルと呼ばれた男。
その言葉を聞いて、フジヤは軽く溜息をつくと…。
「その召集に掛かる時間を考慮しても、遅すぎるって言ってるんだ。幾ら今回集めたメンバーが、前回の連中が雑魚に見えるほどの実力者揃いだとしてもだ」
「ひっ…」
ややイラついた口調で話すフジヤに、背筋が凍るような間隔を覚えたペキル。
ワンテンポ間を挟んで、フジヤは深呼吸をする。
どうやら、落ち着いたようだ。
「前回の襲撃で、大会出場チームの大半は始末できた。けど、まだ上位ランクのチームがかなり残ってる。それに、俺達を潰す為に出場チーム同士で手を組まれても厄介だ。だからこっちも、3人でチームを組んで行動する事だ」
「うん、解ったよ」
「前回の戦いを生き延びた連中は、最早戦力にならない。が、大会出場チームの現在地を伝える役目を与えてある。今現在、何の通達は来ていないから隈なくこのヨハロを散策する事になる」
「まあ、大丈夫だよ。フジヤは今まで通り大会出場者に成りすましててよ」
「任せるぞ」
一通り会話を終えると、フジヤはその場を後にする。
フジヤが歩んでいく先に、彼のチームメイトの姿。
「フジヤ君…」
彼に呼びかけるのは、赤と黒を混ぜ合わせた色をした髪の毛の少女、チズサ。
「本当に、やるんだね。この大会に出場してるトレーナーを、今度こそ本当に殲滅する計画…」
「今更戸惑ってるのかい? 君もその胸の中に秘めた思いがあったからこそ、俺の計画に賛同し、チームを組んだんじゃないのか?」
「…解ってる。もう、後には引けない」
「…」
そんなチズサの様子を横目で伺うラエナ。
暫く目を瞑った後、視線をフジヤの方に向ける。
「それで、今後どうするつもりなのかしら?」
「今回呼び寄せたあいつらで、他のチームを殲滅できればそれで良し。だが、万が一生き残るチームが居た時のために証は全部集めておく」
「…うん」
「心配は要らない、チズサ。俺達と行動していれば、君の望みも叶う」
「そう…だね」
―――解ってる、もう手段なんて選んでいられない。
―――これは私1人の望みじゃない。
―――故郷の…、トーホク地方の望みでもあるから…。
―――そのためなら、私は…。
「行くよ。チズサ、ラエナ。俺達の持つ証は今現在3つ。ここからがラストスパートだ」
「ええ、頑張りましょう」
「行こう、フジヤ君、ラエナさん!」
フジヤチームの3人は、残る最後の証を求めて動き出した。
幸いにもその進路は北に向かっている。
『黒幕』としてマサシ達との邂逅は、先のことになるのだった。
Phase.77 砂漠の町 マクヌタウン
「………暑い」
「マサシ、それ言わないでよ…。こっちまで暑くなってくるわ」
現在、マサシ達4人はマクヌタウンを目指してヨハロ地方南東エリアを横断中。
彼らの現在地は、見渡す限り砂の大地が続く場所。
太陽の発する熱が、彼らの体力を奪っていた。
「前の町を出発して、今日で3日目…。時間で言えば、今日にはマクヌタウンに着けるのよね?」
「ここまでに特に時間をロスするような事は無かったし…。いい加減、マクヌタウンが見えてきてもおかしくないんだが」
「…」
「ユキヤ…?」
この道中、一言も喋らなかったユキヤ。
普段からあまり口数は多くないのだが、流石に違和感を感じたマサシが呼びかけた。
「おい、ユキ…」
ドサッ…。
ユキヤは、突如倒れこんでしまった。
「ユキヤ!?」
「この暑さでやられたのかしら!?」
「いや…、そうじゃ無さそうだ。原因は別にありそうだ」
倒れたユキヤの様子を伺っていたマサシが、それを否定した。
ユキヤの顔色がそれ程悪くない為、熱中症では無いらしい。
「とりあえず、こんな所でゆっくりしてるわけにもいかないな。一刻も早く、マクヌタウンに辿り着かないと」
「そうね。急ごう!」
一先ずユキヤはマサシが背負っていく事にして、一行はマクヌタウンへ急ぐのだった。
―――マクヌタウン…。まさか、こんな早く訪れる事になるとは…。
―――…砂漠の町。俺の…、生まれ育った町…。
―――この大会を優勝した時に戻ってくるつもりだったんだが…。
気を失う直前、ユキヤはそんな事を考えていた。
本来なら、こんなに早く訪れる筈のなかった生まれ故郷。
その事を思い返してた途端、突如目の前が真っ暗になっていた。
「ユキヤ、起きたか」
気が付けば、ユキヤは何処かの建物の中にいた。
だが、視界に入る光景に自然と懐かしさを覚えた。
それだけで、今自分が何処に居るのかを理解できたようだ。
「ここは…、マクヌタウン…。俺の、部屋か」
身体を起こして目に入ったのは、よく知る自分の使っていた部屋。
部屋の中には誰もいなかったため、とりあえず部屋を出る。
廊下を歩き階段を下りて、リビングに足を運ぶ。
そこにはマサシ達3人と、一人の男性の姿。
「久し振りだね、ユキヤ。まだマスターリーグ期間中なのに、この町へ来るなんて思わなかったよ」
「! お前は、まさか…」
ユキヤはその男性の姿を見た途端、表情を変えた。
彼は、ユキヤの古い記憶の中に居る人物だった。
最後に会ったのが11年も前のことであるにも関わらず、一目見ただけですぐに見抜くことが出来た。
「…ジグサ!?」
ユキヤは、その人物の名を口にした。
「彼らがこの町へ来てすぐにこの家に運んだのさ。俺は見てすぐ解ったよ、彼…。マサシが背負っていたのがあのユキヤだったって事がさ。どんだけ成長しても、昔なじみの俺にはね」
「一気に喋りすぎだ、ジグサ…。その辺も、昔と相変わらずだな」
呆れるように頭に手を置きつつ、ユキヤは喋る。
が、昔と何ら変わらない姿に、一種の安堵感も覚えていた。
「ユキヤ、俺も驚いた。お前がこのジグサさんと知り合いだったって事がな。 マスターリーグ予戦突破に必要な証を持ったトレーナーと…な」
「!」
マサシの発言に、ユキヤの表情が変わる。
「お前が…。大会側のトレーナーだと」
「君達がここへ来た目的も解ってるよ。大会出場者である以上、ここへ来た目的はただ一つ。俺の持つ証を奪い取る事だろう。だけど、そう簡単に勝てるとは思わない方がいい。俺は、そこらにいる連中とはレベルが違うからね」
「だからお前は、もうちょっと落ち着いて話すということが出来ないのか…」
溜息をつくユキヤ。
そんなユキヤの様子を見て苦笑いしつつ、ジグサが再び語り始める。
「君達はまだ持ってる証は一つだけのようだけど、手加減はしない。全力で、君達の相手をしよう」
「待った。まだユキヤも起きたばっかりで、体調も万全じゃない筈だ。それじゃ、とても貴方に勝てるような状態とは言えない。明日、改めて挑戦しに行くつもりです」
「うん、君は物事を冷静に見られる良いチームリーダーだね。ユキヤも、いい友人と巡り合えて良かったよ」
「…」
それだけ話すと、ジグサは席を立つ。
「それじゃあ明日、この町の広場にバトルフィールドで。俺は、そこで君達を待つよ」
「はい、それじゃまた明日」
マサシはジグサを見送った。
そして、マサシ達4人がこの場に残る。
「それにしても、この町がユキヤの故郷で、そしてここにいる証を持ったトレーナーがユキヤの知り合いとは…」
「関係無い、この予戦を勝ち抜くのに倒さなければいけない相手なら、全力でやる。それだけだ」
「まあ、お前ならそう言うと思ってたよ」
マサシが表情を和らげながら、喋る。
それでこそ、いつものユキヤだと。
「ところでユキヤ、あんたは今夜どうするの?私達はポケモンセンターに行くけど…」
「久々の実家だ。ゆっくりしたい」
「解った。じゃあ明日、指定の場所で待ち合わせだ」
「皆、明日は頑張ってね」
「任せておきなさい! ナギサ、絶対明日は勝つからね!」
ナギサの応援を背に、マサシ達は明日への決意を固めた。
明日の対決を控え、一同はセンターへ足を進める。
既に、日は西の空に沈みかける時間帯となっていた。
夜。
ユキヤは一人、玄関先に佇んでいた。
「…」
「らしくないな、お前がそんな顔をするなんて」
ふと、物陰から声がした。
そこには、ジグサの姿があった。
「俺と戦うことに、躊躇いでもあるのか?」
「違うな。ただ、珍しく興奮してきているだけだ。ジグサ、お前と明日戦うことになると思うとな」
「本当に珍しいな。久々に故郷に来た所為で、浮き足立ってるんじゃないか?」
「かもしれんな。この調子だと、明日の戦いで足手纏いになりかねないな」
夜空を見上げながら、呟くユキヤ。
そんなユキヤに背を向けつつ、ジグサは一言だけ告げる。
「明日の試合は、俺も久し振りに全力を出す。お前が相手なんだ、手加減なんて出来る筈がない」
それだけ告げると、ジグサは去っていった。
「…」
一度深呼吸した後、ユキヤも家の中に戻るのだった。
Phase.78 神速のジグサ
翌朝、マサシ達4人はそれぞれ準備を整え、町に繰り出した。
砂漠地帯の中に位置する町であるため、朝の時間帯でも結構な気温が高かった。
「流石にこの町に住んでる人、この暑さには馴れてるみたいだね…」
活発な町の光景を眺めながら、ナギサが喋る。
彼女の言う通り、この暑さにもめげずに町の人々が行きかっていた。
「2人とも、今日のバトル…。大丈夫だよね?」
「問題ないさ、ナギサ。俺達はこのところ負け続けだからな、逆に気が引き締まっていい感じだ」
「そうね。私達はもうこれ以上、負けられないし…ね」
2人とも、静かに拳を握り締めていた。
傍から見ても、充分気が引き締まっている様子が伺えた。
「…あ、ユキヤ君!」
視線を前に戻したナギサが、駆け足で先に進んでいく。
その先には、ユキヤが既に待ち構えていた。
彼も、充分気を引き締めている様子だった。
「今日は早いな、ユキヤ」
「遅すぎだ。奴は既に、何時間も前から待っていたぞ」
「え…」
ユキヤがとある方角に視線を向ける。
その先には、準備を万端に整えたジグサの姿。
「待ってたよ。それじゃあ、始めようか。マサシチーム」
「ユキヤ。あの人の手持ちポケモンとかスタイルは?」
「さあな。俺が最後に奴のバトルを見たのは10年も前の話だ。手持ちのポケモンも戦い方も、俺の記憶の中にある奴は参考にすらならん筈だ」
「まあ、いつも通り冷静に相手の戦い方を見極める事から…か」
表情を曇らせつつ、マサシはマニューラを繰り出す。
それに連なって、ユキヤがガブリアス アヤがムクホークを繰り出した。
「手っ取り早くバトルを終わらせたいからな。俺はこうやらせて貰うぜ。サンダース、プテラ!」
「! 2匹同時!? しかも…」
マサシが言い終わる前に、ジグサが攻撃を仕掛けてきた。
「プテラ、すてみタックル=@サンダース、でんこうせっか=I!」
ジグサのポケモン2匹が、同時にマサシのマニューラに襲い掛かる。
「どっちも素早さが極端に高いポケモン…! その上、このパワー……!」
辛うじて攻撃を受け止めているマニューラだが、ジリジリと押されていく。
「破壊爪<デストラクションエッジ>=I」
「ブレイブバード=I!!」
このタイミングで、漸くジグサの攻撃に反応したユキヤとアヤ。
左右から挟みこむ形で、同時に攻撃を仕掛ける。
「サンダース、ほうでん=I」
サンダースへの指示を出した途端、プテラが動きを変えた。
マニューラへ攻撃を続けていたのを、急遽標的をガブリアスに変更した。
一旦大きく飛翔した後、莫大な赤いエネルギーを全身に纏って突撃する。
そしてプテラが上空へ飛翔したのを見計らい、広範囲に強烈な電撃を撒き散らす。
バチバチバチッ!!
「…っ!!」
至近距離からの電撃に、ムクホークは一撃で戦闘不能。
マニューラも、その強烈な威力に戦闘不能に追い込まれてしまう。
そしてそのすぐ側で、凄まじい衝撃音が鳴り響く。
ドゴォォォォォンッ!!
「! ユキヤ!!」
音のした方を振り向くと、地面に倒れこむユキヤとガブリアスの姿。
咄嗟に攻撃対象をプテラに変更したため、上手く威力を引き出せなかったらしい。
「まだバトルが始まって数秒だって言うのに、向こうは無傷でこっちが一方的な大ダメージを…」
「私達がもう少し早く反応出来ていれば…」
「いや…、今のスピードに反応できない方が普通だ。奴のポケモンのスピード、常識を遥かに超えている…!」
「そうか…。マサシは前に、あのコルカの超速攻撃を相手に戦えてたわよね。だから、マサシは…」
「いや、コルカ以上だ。集中力をほんの微かでも緩めたら、それだけでやられかねないほどだ…!」
「マサシ、どうするの?」
「相手がスピードに物を言わせて戦うスタイルだとすると、真正面からやりあって勝ち目は無い」
「…」
「ここは、俺が奴のポケモンの動きを封じる役目を買う。後は、2人でそれぞれのポケモンを攻撃してくれ。出来れば、一撃で」
『一撃で』。
その言葉に、アヤとユキヤの表情が変わる。
「任せなさい。あの2匹は、耐久力はそんなに高くない。ナリサさんのポケモンじゃないんだし、一撃でぶっ飛ばすわよ!」
「アヤの言う通りだな。あの程度の耐久力のポケモン、一撃で充分だ」
身体を起こし、マサシの近くに歩み寄りながらユキヤも喋る。
だが、その時の視線はジグサ達に向いたままだった。
「2匹とも、行け!!」
作戦を立てている途中で、ジグサが攻撃を仕掛けてくる。
それに気付いて、3人は一旦散らばった。
「バクフーン、バーニングストーム=I!」
マサシはマニューラを一旦ボールに戻し、バクフーンを繰り出す。
そしてかえんぐるま≠発動させ、その場で横向きの超回転運動を始めた。
それによって、熱気を含んだ巨大な竜巻が発生、2匹の動きを鈍らせた。
「サンダース、チャージビーム=I」
ジグサは慌てず、サンダースに指示を出す。
全身に電気のエネルギーを集めさせ、一転集中で電撃を発射する技。
広範囲に及ぶ技は、一点集中型の技に弱いという性質がある。
今回マサシが繰り出したそれも、例外ではなかった。
サンダースの電撃が熱気の旋風を突き抜け、バクフーンを貫いた。
それにより、2匹の身体が自由になる。
「破られた!?」
「まださ」
相手の技を喰らったバクフーンの背後から、オーダイルが空中に飛び出す。
そして巨大な渦を巻いた水流を生み出す。
「広範囲攻撃はバクフーンとオーダイルの2段構えさ。ハイドロストリーム=I!」
「何っ…!」
まさかの2段構えとは予測していなかったのか、ジグサのポケモン2匹は無防備な体勢のままだった。
オーダイルの技に飲み込まれ、動きが止まる。
「今だ!!!」
そしてマサシが大声で、2人に合図を送る。
「アブソル!!」
「ガブリアス!」
無防備な状態のサンダース、プテラにそれぞれ懇親の一撃を叩き込む。
その凄まじい破壊力で、2匹は思い切り吹き飛ぶ。
ドゴォォォォォッ!!!
2匹はそのままジグサの前まで投げ出され、そのままダウンした。
「よし、上手くいったな…」
初手にかなりのダメージを被ったものの、此方も相手のポケモン2匹を撃破した。
戦況は今のところ、互角といった状態だった。
「中々いい連携だ。ユキヤ、本当にいい仲間を持ったな」
「ふ…。こいつらとなら、俺は優勝を狙える。不思議とそんな気がするのさ」
「それじゃあ、お前が認めた仲間との連携、どれ程のレベルなのか見せて貰おうか。さて、次はこいつらだ。クロバット、オオスバメ!!」
「傾向は読めている以上、ある程度残りの手持ちも予測出来る。その2匹も、その範囲内だ」
ジグサの繰り出した2匹を見ても、マサシは余裕を崩さなかった。
どんなポケモンでも、相手の戦い方を見極め、的確に対処していく自信があったからだった。
「なら、まずはお手並み拝見だな。オオスバメ」
ジグサはオオスバメのほうを向き、呼びかけた。
その直後、突如オオスバメの身体が燃え上がる。
「え…!? 何、どうしたの!?」
突然の出来事に、アヤは動揺しきっていた。
マサシも一瞬驚きはしたが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「さっきオオスバメの首元で何か光っているのが見えたが…。あれは火炎球≠セったか」
「火炎球…? それって、ポケモンを火傷状態にさせる道具でしょ? 何でわざわざ自分から不利になるようなこと…」
「アヤ!!!」
「え…」
マサシが呼びかけた時は、既に遅かった。
燃え上がった状態のオオスバメが、アブソルの眼前に迫っていたのだ。
「アブソル!!」
咄嗟に迎撃しようとするのだが、それよりも早くオオスバメの身体がアブソルに激突する。
ズドォォォォォンッ!!!
激突の直後、巨大な爆発と熱風と共に、足元の砂が空中に巻き上がった。
「ぐぅっ…!」
爆発で吹き飛んだアヤが、近くの建物の中に突っ込んだ。
それでも何とか身体を起こして、バトルフィールドへ復帰する。
「今の、何っ…? スピードだけじゃない、破壊力もバクフーンと同格レベルよ…!?」
「オオスバメの特性、『こんじょう』を活かすために火炎球≠持たせたのか。ただのでんこうせっか≠ナ、あそこまでの破壊力になるとは…」
「奴の戦い方は素のスピードが高い奴を揃え、尚且つそのポケモンが最大限力を発揮できるよう工夫した戦い方。昔と変わらないな、ジグサ」
ジグサとのバトルは、凄まじい速さで戦局が流れていく。
決着までに然程時間は掛からないであろうことは、誰もが把握していた。
To Be Continued
後書き
最近、バトルを1話内で決着させる事が無くなって来てるけど…。
話の中盤頃から始まる事が多いから、仕方ないよね?ね?
このバトルも、もう次回の中盤位に決着させる予定なので、容量的にはそんなに長引きません。
しかし、最近後書きで語ることも段々少なくなってきてるな…。
さて、今年(2009年)が終わるまでに何処まで進められるかな。
[アットの一言感想]
今回は割とユキヤが中心に物語が進みましたね。
ただ、黒幕との遭遇もそれはそれで楽しみと言うか、早く見たいというのもある←
僕が書く時は、バトルは長いのと短いのを、適度に混ぜながら進め……たい意向です。
希望的観測として(オイ)。