「バンギラス」

 ユキヤが新たにポケモンを繰り出したのは、バンギラス。
 その特性により、この付近一帯に砂嵐が吹き荒れ始める。

「オオスバメは最大パワーを発揮する為に火傷状態に陥っている。つまり、長期戦には向いていない。これで一気に始末する」

 それだけ言うと、バンギラスに技を指示する。

「ストーンエッジ=v

 ユキヤの指示で、バンギラスの周囲から無数の棘状に研ぎ澄まされた岩の弾丸が発射される。
 手数に物を言わせ、オオスバメだけでなく、クロバットにまで狙いを定めていた。

「クロバット、ねっぷう=I」

 だが、そう簡単に攻撃は通らない。
 クロバットが翼を羽ばたかせて発生させた、熱気を持った突風で全ての岩を吹き飛ばした。

「オオスバメ、からげんき=I!」

 クロバットに続くように、オオスバメがバンギラスに突撃する。
 後先考えない、まさに闇雲とも取れるような攻撃だったが、バンギラスが一撃で戦闘不能になるほどの威力を発揮する。

「フライゴン! りゅうのはどう=I!」

 そんな折、2匹の背後からマサシの指示する声が聴こえた。
 新たに繰り出したフライゴンが、青白いエネルギーを発射する。
 だがそんなもの、2匹のポケモンは持ち前のスピードで回避。

 そしてその直後にクロスポイズン≠ニブレイブバード≠フライゴンに叩き込む。
 その衝撃で一気に地面に叩きつけられる。

「っ…! フライゴン!!」

 マサシがフライゴンに呼びかけるのだが、反応が無い。
 あっという間に、戦闘不能にさせられていた。

「…マサシ、ユキヤ」

 ふと、アヤが二人に呼びかける。
 表情からして、何かしら光明を見出した様子だったので、彼女の元に集まった。

「もしかしたら、私のエーフィがいれば勝てるかもしれない」

「! どういう事だ」

 思いがけない発言に、マサシでさえも驚きの声を出す。

「ずっと前のことで忘れてたんだけど…。私、エーフィに『ある技』を教えてたのよ」

「それが、奴を倒す切り札なのか?」

「うん。だけど、一回しか使えないと思う。ジグサさんほどの人が相手になると、2回も同じ技を使わせてはくれないと思う」

「解った。その後は、一気に短期決戦で決着をつける!」

「ああ」

 ユキヤも頷く。
 最後に3人で向かい合い、もう一度頷く。

「じゃあ、行くわよ。エーフィ、トリックルーム=I!」





COM マスターリーグ編
第22話
そして、決戦へ







 Phase.79 ジグサの弱点





「これは…!」

 エーフィの身体から、虹色の光が生じた。
 その直後、周囲の景色が歪み始めた。

 その光景に、ジグサの表情も変わる。

「! そうか、その技ならあいつのスピードを…」

「そう。この技の効果が発動している間は、素早いポケモンほど動きが鈍くなる。その間なら、いつも通りの戦い方で倒せるわ!」

「よし、行くぞユキヤ!」

「ああ」

 マサシはオーダイルを呼び戻し、ユキヤはサンドパンを繰り出す。
 そしてサンドパンは、破壊爪<デストラクションエッジ>≠発動した。
 だが、マサシはそのままの状態でジグサに挑む。

「マサシ、どうして能力回帰を使わないの?」

「こっちの方が素早く動けるからだ。能力回帰は、使えば全能力が上昇する。つまりトリックルーム≠ェ発動している状態だと、逆にスピードが落ちる」

「そっか…」

「アヤ、エーフィを庇いながら戦えるか?」

「大丈夫。戦えるわ!」

「よし!」

 マサシはボールの外に出ていたポケモンのうち、オーダイルを下がらせた。
 トリックルーム≠フ影響下にある以上、攻撃力を優先する判断をしたのだ。

「バクフーン、だいもんじ=I」

 初手から、いきなり炎タイプの大技を繰り出す。
 バクフーンの放った炎が大の字の形になり、クロバットとオオスバメに襲い掛かる。

「クロバット!」

 いかにジグサのポケモンでも、今の状況では思い通りには戦えない。
 咄嗟に指示を出すものの、タイミングが遅すぎて技の直撃を喰らう。

「ちぃ…!」

 トレーナーであるジグサ本人も、まだこの状況に適応しきれていないようだった。

「ブーバーン、かえんほうsy」

「生憎だけど、そう簡単には喰らわない。オオスバメ、ブレイブバード=I」

 アヤが指示を出し終えるまでに、先にジグサが指示を出す。
 燃え上がった状態のオオスバメが、全身に赤く発光するエネルギーを纏いながら突進する。

「!」

 ドゴォォォォォンッ!!
 今のはアヤの指示が遅かったわけではなく、ジグサの指示が早かったのだ。
 彼はこの短期間で、早くもこのトリックルーム♂e響下の環境に適応し始めてきていた。

「やっぱり長期戦は無理があるか」

「クロバット、ヘドロばくだん=I!」

 ジグサの指示でクロバットが高度を上げる。
 そして遥か上空から、まるで爆撃機のように紫色のエネルギー球体を地上目掛けて放ち始める。

「くっ…!」

 技の名前にもあるとおり、その球体は地上に着弾した途端爆発する。
 その攻撃を、3人は紙一重でかわしていく。

「グライオン、クロス・ダークネス=v

 だが、その合間にユキヤはグライオンをクロバット目掛けて繰り出していた。
 およそ数秒でクロバットの元に辿り着き、漆黒に輝くX状の斬撃を叩き込んだ。

 その衝撃でクロバットはバランスを崩し、高度が落ちる。
 そこを、マサシは見逃さない。

「8連瞬間連射:かえんほうしゃ=I!」

 狙い澄まし、クロバットを攻撃する。
 ほんの一瞬で発射された8発分のバクフーンの炎が、全てクロバットの同じ箇所に命中する。

「エーフィ、癒しの音色=I!」

 マサシがクロバットを撃破した直後、アヤが新たな動きを見せた。
 エーフィに指示して、心地よい音色を町全体に響き渡らせる。

「これはいやしのすず≠ゥ? いや、違う!」

「いやしのすず≠フ強化技。この技は敵味方関係なく、全てのポケモンの状態異常を治す技よ」

「だが、いくら状態異常を治したとしても、オオスバメが『火炎球』を持っている限り意味は無いんじゃ…」

「だから、その前にあのオオスバメを倒すのよ! ライチュウ、かみなり=I!」

 エーフィが癒しの音色≠使ったのとほぼ同じタイミングで、アヤは別のボールを上空に投げていた。
 そのボールから飛び出したポケモン、ライチュウが遥か眼下にいるオオスバメ目掛けて雷を落とす。
 その鋭い雷撃はオオスバメを貫き、全身から煙を上げつつ墜落する。

 丁度そんな時、アヤから少し離れた所で砂煙が空中に巻き上がる。
 その場所で、ジグサのクロバットが蹲っていた。
 どうやらマサシ達がクロバットを撃破したようだ。

「参ったな…。ここまでか」

 この2匹が撃破された時点で、ジグサは戦いを続ける姿勢を解いた。
 今の時点で、彼は既に勝敗が解っていたのかもしれない。

 トリックルーム≠使われた時点で、既に自分は負けていたのだと言わんばかりに。

 事実、この後ジグサのポケモンはいつも通りの戦い方が出来ず、マサシ達の前に敗北した。
 今までのマサシ達の感覚からすれば、あまりに呆気ない決着となるのだった。







 Phase.80 決戦へ向けて





 バトルに勝利して、マサシ達はポケモンセンターへ戻ってきた。
 彼らの手には、ジグサから受け取った証が煌いていた。

「特に実感は無かったんだけど…。私達、確実に強くなってるわね。ジグサさん、総合的な実力じゃナリサさんと大差無い筈だと思うけど」

「単に相性の問題だな。俺達にはナリサさんのポケモンに決定打を与えられる攻撃力が無かった。だが今回は、ジグサさんに対抗できる技があったから勝てた。それだけだ」

「うわぁ…。ユキヤは相変わらず言う事がきついわね」

「確かにユキヤの言う事は正しいな。今回はトリックルーム≠ェあったから勝てたようなものだ。だが、アヤの言う事もあながち間違ってるとも言えないな」

「どういう事?」

「少なくとも、今までは防御特化じゃない奴が相手でも、能力回帰も使ってない状態でここまでダメージを与えられたことは無かった」

「基礎能力が、少しずつ上がってきているって事?」

 マサシは無言で首を縦に振った。
 事実、さっきのバトルを経て確かな手応えを感じていたのだ。

「(これは…、エンスに勝てる可能性が微かに出てきたか)」

 壁に凭れ掛かり、腕組みをしながらマサシは考えに耽っていた。

「皆、ポケモン達の回復が済んだらすぐにこの町を発つ。アロナシティ到着まで、もう殆ど時間が無い」

「確か、約束の日まで後4日くらいだったか」

「ああ。距離的に考えて、ここからアロナまで4日くらいは掛かる事は前も言ったよな。時間的にギリギリ、ギリギリなんだ」

「マサシ、焦る必要は無い。この町には、アロナシティ方面まで延びている電車の駅がある」

「電車…?」

「それを使えば、アロナシティ到着までの時間を大幅に短縮できる」

「よし、それを使っていこう。問題は、電車内で待ち伏せの可能性だな」

「それは無いんじゃない?幾らなんでも、他の乗客の迷惑になるような場所で…」

「大会出場者が相手なら、その心配は無いんだがな。問題は、もう一つの敵だ」

「! レクトさん…」

「そうだ。俺達大会出場者を殲滅しようとしている奴らは、形振り構わず仕掛けてくるからな…。正直言って、かなり危険な選択になる」

 その言葉で、全員暫く黙り込む。
 だがその沈黙を一番最初に破ったのは、ユキヤだった。

「いや、その危険性<リスク>はかなり低い。この間の事件以降、ジグサを始めとする大会側の警戒も強まっている。公共の交通手段などでは特に警戒を強めている」

「そう…。なら、安心かもしれないね」

 安心したような口調で、ナギサが話す。
 マサシも、どこか表情が和らいでいた。

「なら、行くか」

 全員一緒に返事をすると同時に、ポケモンの回復が終わった。
 荷物を纏め、4人はポケモンセンターを後にする。

 そしてそのまま、マクヌタウンの駅にやってきた。

「電車…か。トーホクを旅してた頃に一度乗ったことがあったっけな」

 駅を眺めながら、マサシは昔の事を思い出していた。

「マサシ君、皆先に行ってるよ?」

「ん?ああ、悪い。すぐ行く」

 思い出に耽っている間に、他の2人は先に電車に乗り込んだらしい。
 ナギサの呼び掛けで我に返り、後を追うように電車に乗り込むのだった。



「風が気持ち良い〜♪」

 電車が出発してある程度時間が経った後、ナギサが窓を開放する。
 外から入り込んでくる風が、実に涼しくて心地よい。

「確かに、この涼しさはいいな。砂漠地帯だから、尚更かもしれないが」

 マサシも窓の縁に肘を置いて、外を眺めていた。
 景色は相変わらず砂漠が続くだけだが、とても開放的な気分になれる。

「…。マサシ…」

 ふと、向かい合わせで席に座っていたアヤが声を掛けてくる。
 声のトーンは普段より低く、若干震えたような声をしていた。

「やっぱり、不安か?」

「そりゃあ、不安にならない方がおかしいわよ…。相手は予戦内ランクの頂点に立つチームで、その実力はマサシでさえも凌駕するほどなんでしょ? 正直、勝てる見込みが…」

「アヤ、前にも言ったよな。俺達は、少しずつだがこの戦いの中で力を伸ばしていると。俺も正直、エンスに勝てるかどうかは不安が残る。だけど、さっきのバトルである種の確信を持った。俺達は、自分達で思っているほど弱くは無い…ってな」

「マサシ…」

 幼馴染だからなのだろうか、表情を見ただけで解る。
 決して、アヤを励まそうとしたり強がったりしているわけではない。
 マサシは確証を持って、その言葉を口にしているのだと。

「それでも、俺の持てる力全てを出し切るほどの死闘になる事は間違いない。それは勿論、2人も同じになる筈だ」

「…うん」

「…」

 アヤは若干の安堵感を表情に見せて、返事をした。
 それに対してユキヤは、マサシの隣で腕組みをして目を瞑ったまま反応しなかった。

「本当に…、私に出来る事は何もないんだね…」

「悪いな、ナギサ。これは、俺達3人のマスターリーグを勝ち抜く為の戦いなんだ」

「解ってる。ここにいる以上、私はマサシ君達の助けにはなれないって…」

「…」

 それっきり、ナギサは黙り込んでしまう。
 会話もそれ以降途切れたまま、ただ時間だけが流れていくのだった。







 Phase.81 決戦前日





 電車は、およそ3日程でアロナシティに到着した。
 マサシ達は町中に入ると、今までの記憶を思い返し始める。

「ここから始まったんだよな…。俺達のマスターリーグ」

「うん。私は結構早くにこのヨハロに到着したから、大会が始まるまでの数日間、ずっと緊張しっぱなしだったわね」

「ああ」

 記憶に耽っていたのだが、ふとマサシが我に戻る。

「電車を使ったお陰で、1日時間に余裕が出来た。明日まで、それぞれ自由時間にしないか?」

「いいわね。私達もそれぞれ、気持ちを整理しておきたいし」

「俺もだ。色々と考えたい事がある」

「じゃあ、私も…」

「ナギサ、お前はずっとセンターにいろ。お前を一人にしたらまたどこに行くか検討も付かない」

「う…、ごめんね」

「別にそんな言い方しなくてもいいんじゃない? ナギサだって、この町を色々回ってみたいでしょ?」

「うん、ヨハロに来て初めての大きな町だから…」

「解った。それじゃあ、全員自由行動って事で」

「集合は、ポケモンセンターでいいわね?」

「ああ」

 待ち合わせ場所を決めたところで、マサシ達は別々に行動を始めた。
 それぞれ、この広い町中に繰り出していくのだった。


 アロナシティは、ヨハロ地方唯一の港町。
 故に、その賑わいはヨハロ地方随一といっても過言ではない。

「何か、結構人の行き交いが激しいわね…」

 町の大通りを歩くアヤは、その人の多さに驚いていた。
 以前…、マスターリーグ開催前に来たときもそれなりだったが、今はそれ以上だった。

「(そう言えば、そろそろマスターリーグ予戦が始まってから2ヶ月になるのよね…。最終トーナメントまでの期限もあと少しだし、その影響かな?)」

 活気に溢れた町中を散策しつつ、アヤは今までの事を思い返していた。

「何でだろう。少し前までは明日のバトルに勝てるかどうか不安だったのに…。今は、勝てる気がする。マサシと、ユキヤが一緒なら」

 どうやら今までの事を思い出したことで、改めて仲間2人の頼もしさを実感したらしい。
 自分が知る限りじゃ、これ以上無いというほど信頼できる頼もしい仲間。
 そんな彼らと戦えるからこそ、彼女も自然と自信が沸いてきたようだ。

「よーし! 明日のバトル、勝つわよーーーー!!」

 こうして、アヤは改めて気合を入れなおすのだった。
 そして即座に、明日のバトルへ向けて特訓に向かうのだった。





 ユキヤは、海岸線に佇んでいた。
 目を瞑り、思い出すのはマクヌタウンでの出来事。
 否、ジグサとのやり取りだった。

 出発前、ユキヤは一度ジグサと会話をしていたのだ。

「もう行くのか? 随分急な話だな。もう少しゆっくりしていけばいいのに」

「お前の口から、ゆっくりなんて言葉が聞けるとは思わなかったな。お前は昔から早とちりしがちで、話し方にも落ち着きがなかった。それがバトルスタイルにまで出ているからな」

「あははは…。お前は本当に言い方がきついな」

 ユキヤの鋭い発言に、思わずジグサは苦笑いをする。

「…お前の噂は、4年位前から色々ここにも届いていた。あんまりいい噂が届いた事はないが…」

 だが、突然真剣な表情で話し始める。
 その話題に切り替わった事で、ユキヤの表情も変わる。

「ユキヤ…。お前、どこで『あの事』を知った。お前の噂は、それに関連する事ばかりだ」

「…」

「お前、まさかとは思うが『奴』と…」

 奴。
 その言葉がジグサの口から出た途端、ユキヤはモンスターボールを開く。
 中から飛び出したサンドパンが、ジグサの喉元に爪を突きつける。

「奴の話はするな。胸糞悪くなる」

「おっと、悪い悪い」

 その言葉を聞いて、サンドパンはユキヤの元に戻った。

「お前…。やっぱり、まだどうするのか迷っているのか?」

「…とっくに決めている。俺は最後まで、この運命に抗う」

 そう喋りながら、ユキヤは胸の前で握り拳を作る。

「だけど、あの3人の事はどうする心算だ?マスターリーグをこのまま戦っていけば、何れは…」

「あいつは…。マサシは、このまま旅を一緒に続ける続けないに関わらず、必ず俺の今後に関係してくる。奴らと、色々因縁がある男だからな」

「そうか…」

「他の2人に関しても、恐らく一緒に来るといって聞かないだろう」

「なら、お前にして見れば問題はないんじゃないか? 実際戦ってみたから解るが、お前の仲間は相当な実力者だ」

「この大会がどんな結末を迎えようとも、今回で全てが終わる。この、運命の連鎖がな」

「俺はもう何も言わないさ。後はもう、お前が望むままにやればいい」

「最初からそのつもりだ。 ここに帰ってくるのは、全てを終わらせてからだ」

 そういい残すと、ユキヤは駅の方へと歩き去っていくのだった。
 残されたジグサは、ユキヤとは逆の方に振り向く。

「ユキヤ…。絶対に無茶だけはするな。お前は…、1人じゃないんだからな」

 独り言のように、意味深な言葉を囁くのだった。






 回想が終わり、ユキヤはゆっくりと目を開く。

「今は、明日の戦いに集中するべきか。あのリュウイチの仲間だったという男、奴を倒せるほどになれば…」

 それだけ呟くと、再び考えに耽っていくのであった。





 夜になり、4人はポケモンセンターに集結した。
 いよいよ決戦が迫ってきているだけあって、全員表情が引き締まっている。

「エンスの指定した対決は、明日だ。このバトルは、勝敗云々関係なしに、俺達にとって大いなる経験になる筈だ」

「だけど、私達はもう負けない。ナリサさんに負けてから、そう誓ったわよね」

「ああ。大会出場チームとして戦う以上、俺達は勝ちに行く」

「2人とも、気は引き締まってるみたいだな。これなら、明日も大丈夫そうだ」

「皆、明日は頑張ってね。皆の強さは4年前の頃からよく知ってる。ううん、あの頃よりずっと強くなってる。だから、絶対勝てるよ!」

「ありがとう、ナギサ。気持ちだけでも心強いよ」

「気持ちだけじゃないよ! 本当に、勝てるって信じてるんだよ!」

「…そうだな。戦う前から勝てないかもしれない、っていう心構えじゃ全力は出し切れないかもしれない」

「だからこそ、自分の力を信じて戦うんでしょ?マサシ」

 マサシは小さく頷く。
 そしてすぐ立ち上がり、一言だけ。

「今日は、早めに休むか。明日に響いたら問題があるしな」

「そうだな。今日は早めに休み、明日に備えるか」

「ええ」

 マサシに続いて、他の仲間達も休息を取る。
 全ては、明日の戦いのために…。







 #翌朝




 身なりを整え、4人はポケモンセンターを出る。
 朝日が彼らを照らし、その真剣な表情を映し出す。
 近くにいれば、その雰囲気だけで息が詰まりそうなほど、彼らは集中していた。

 彼らは、アロナシティにある噴水広場へ足を運んだ。
 そこで4人は足を止め、視線をとある方角へ向ける。
 その先に立っているのは、彼らがこれから戦う相手。

 マスターリーグ予戦ランキングの頂点に君臨する、エンスチーム。
 こうして対峙して改めて感じる、相手の底知れぬ強さ。
 全身が、ピリピリする…。

「よく来てくれたな。こっちからの一方的な要望に応えてくれて、感謝するぜ」

 横並びの3人の中で、真ん中に立つ男が一歩前に出て語りかける。
 その男こそ、チームリーダーのエンス。

「こっちとしても、予戦ランクの頂点に立つチームと戦えるのは都合がいいからな。 色々な意味で」

「そうか。大方、勝敗云々関係無しで自身の成長に繋がるとか、そういう考えでも持ってたんだろうな」

「…!」

 自身の考えを的中させられて、一瞬マサシの表情がこわばる。

「別に悪い話じゃねぇ。トレーナーである以上、成長のために色々手を尽くすのは当たり前の事だ」

「…」

「まあ、それはそうと…だ」

 そこで、エンスは一旦言葉を止める。
 その瞬間、この町に留まっていた野生の鳥ポケモンたちが一斉に飛び立っていった。
 否、まるでこの場から慌てて逃げ出したかの様子だった。

 それ程、唐突だった。
 空気がこれほど、痛々しく感じるようになったのは。

「久し振りにこんなに興奮してきたんだ。さっさと始めようぜ…!!」

 凄まじい気迫で笑みを浮かべるエンス。
 それだけで、マサシ達は身体が飛ばされそうになるほどの感覚を味わう。

「来るぞ!! アヤ、ユキヤ!!!」

 全身に冷や汗を流しつつ、2人に合図を出すマサシ。
 いよいよ、想像を絶する強敵との決戦が始まる。
 そしてこの戦いが、今だ嘗て無い死闘になるであろう事は、誰もが理解しているのだった。







 To Be Continued






 Phase.EX3 特別編(3)





 ひょんな事から、とんでもない状況になってしまったシュン。
 マユミが、唐突にしばらくの間シュンの家に居候すると言い出したのだ。

 後は勢いに流されるまま、シュンの家で勝手にマユミは居候生活を始める始末。
 シュンもミキも、何もいえないままこの状況に落ち着いてしまうのだった。

 そのまま、1週間ほどが過ぎた。





 マユミが来たからとはいえ、普段の生活に何ら変化は無かった。
 シュンは日課であるスバルとの特訓、ミキは料理以外の家事全般を担っていた。
 マユミは、修行に明け暮れるシュンの姿をただ眺めていた。

「シュン、戦い方が少し変わったな」

 今までずっと修行の相手をしてきただけあり、スバルはシュンの微妙な戦い方の変化に気付いていた。

「マユミに教えてもらった事をやろうとしてるんだ。今までみたいに闇雲に能力を伸ばすんじゃなくて、そのポケモンに見合った戦い方を見つけて、それを最大限に生かせるようにしよう…ってね」

「成る程な。道理で、今までよりだいぶ強く感じたわけだ」

「でも、やっぱりまだまだだよ。兄さんに全然届かないんだから…」

「今日はこれで終わりにするか。お前は、彼女と何処か散歩にでも言ってきたらどうだ?」

「彼女って…! マユミとはそんな関係じゃ…」

 口ではそういうものの、此方へ駆け寄ってくるマユミの姿を見て、自然と表情が緩くなる。

「マユミ! 何処か出かけようか?」

「いいの?」

「うん。丁度手が空いたところだし」

「シュン君が決めていいよ♪ 私、どこでも一緒に行くから」

「そう?それじゃあ…」







 2人はシンオウの何処か、自然豊かな緑が生い茂る場所にいた。

「ハクタイの森?」

 マユミが、今自分たちのいる場所を口にした。
 ハクタイシティのすぐ近くに存在する樹海で、コトブキシティからハクタイシティへ行く為に通る必要がある場所でもある。

「ここはよく来るんだ。シンオウ地方の中じゃ、ここが一番落ち着ける場所だからね」

「よく来るって…。カンナギタウンからここまで、結構遠くない?」

「まあ、今回は歩きだからね…。いつもは、空から来てるんだよ」

「そうなんだぁ…。それにしてもここ、シュン君の言う通りいい場所ね♪ 静かだし、気分も癒される感じがするし♪」

 身体を伸ばしつつ、存分にこの自然を堪能するマユミ。
 シュンもそんな彼女の側に立ちつつ、時を過ごしていた。



 その後、2人は適当に森の中を歩いて回っていた。
 充分に森林浴を堪能したところで、2人は空を見上げた。
 いつの間にか、空が橙色に染まりかけていた。

「もう夕方だね。マユミ、そろそろ帰ろうか?」

「そうだね♪ って、きゃあああああ!!」

 突然マユミが悲鳴をあげたので、シュンは咄嗟に後ろを向いた。
 そこには、何と大量のゴーストタイプのポケモンの姿。
 マユミが驚いた様子を楽しんで笑っている感じだった。

「な、何でこんな所にゴーストポケモンがいるのよ!?」

「このポケモン達、きっと森の奥の廃墟を住処にしてるんだよ。…って、マユミ(汗)」

 突然の事で驚いて、マユミはシュンの腕にひっついていた(ぇ)。

「森の奥の、廃墟?」

「うん。いつからあるのか解らないくらい古い建物なんだけど、いつしかゴーストタイプのポケモンの住処になったんだよ」

「そ、そうなんだ…」

「さ、行こうか」

 ゴーストポケモン達も、一回驚かせたことで満足したのか、森の奥へ帰っていく。
 しかし森を抜けるまでの間、ずっとマユミがシュンにくっついていたのは別の話である。







今回から、後書きの掲載は不定期にさせていただきます。
特に語ることもないのに長文を並べるのもどうかと思いますので。

では、次回をお楽しみに。

 

[アットの一言感想]

 強敵との連戦が絶えませんが、気合いを入れる事も、日々成長を心がける事も必要ですね。
 今度もまた、更なる大きな戦いとなりそうです。

 

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