このバトルを傍で観戦しているナギサ。
 今の状況を見て、彼女もまた全身から力が抜け切っていた。
 呆然としている、と言った方が正しいだろうか。

 マサシ達が、現状全く歯が立たない。
 それ程のトレーナーが存在したということより、あのマサシ達がここまで追い込まれているという事実が、強いショックを与えていた。

「皆…」

 今の彼女に出来るのは、彼らの無事を祈る事。
 そして、勝利を信じて待つことだけだった…。






COM マスターリーグ編
第24話
VSエンスチーム−U







 Phase.86 マサシの異変…?





 それぞれかなりのダメージを受けてきたので、3人は再び一箇所に集合していた。
 やはりあの2人を倒すためには、3人の連携で戦うしか無いと悟ったからだった。

 3人はお互いに言葉はかわさず、ただ相手を見据えるのみ。
 この敵を相手に、下手に組み立てた作戦などは一切通用しない。
 ならば、予め作戦などは一切立てず、その場その場に合わせたコンビネーションで戦うのが効率的だと思ったからだ。

 現在、マサシとアヤの手持ちが残り4匹、ユキヤが3匹。
 それに対して敵チームは、ヨコウのゴウカザルを失ったのみ。
 残り手持ちポケモンの数で、マサシ達は既に不利な状況に立たされていた。

「バクフーン、かえんほうしゃ=I!」

 マサシがまず先陣を切って、攻撃を仕掛ける。
 バクフーンに指示して、自身の何倍もの大きさの炎を発射。
 相手2人は咄嗟にバックステップで距離を取るのだが、キノガッサだけ動きが遅れた。
 そのせいでバクフーンの炎を真正面から喰らう事になり、ダウン。

 どうやら、最初にマサシが放ったおにび≠ノよるダメージがずっと蓄積していたらしい。

「済まない、キノガッサ。後は任せてくれ」

 キノガッサに労いの言葉をかけつつ、ボールに戻すテンロ。
 そして別のモンスターボールを手に取り、投げる。

「ドラピオン、クロスポイズン=I」

 次に繰り出したドラピオンが、即座に攻撃に転じる。
 バクフーン目掛け、紫色の輝くX状の斬撃を放つ。

「バクフーン、えんまく=I!」

 それに対して、バクフーンは背中で発生させている炎から黒煙を噴出させて応戦。
 突然視界を閉ざされたドラピオンの攻撃は、空振りに終わる。
 その瞬間を狙い、再びバクフーンが紫の炎を発射。

「バシャーモ、止めろ!!」

 しかし煙の外にいるテンロから、その攻撃は丸見えだった。
 その炎からドラピオンを守らせるかのように、バシャーモを繰り出す。
 炎タイプであるバシャーモに、おにび≠ヘ何も効果が無かった。

「チッ…」

「ムクホーク!!」

 そんな時、アヤの指示がマサシの耳に入る。
 たった今攻撃を防御したバシャーモ目掛けて、アヤのムクホークが突撃。
 突撃の途中、嘴の先端から発生した青白い輝きが全身を覆う。

「ブレイブバード=I!!」

「ドラピオン、ムクホークを!!」

 ムクホークは、かなりのスピードでバシャーモに向かってきていた。
 だがそれさえも、ドラピオンのクロスポイズン≠ノ阻止される。
 ダメージの衝撃で墜落するが、すぐにまた飛び上がる。

「…! フライゴン、ドラゴンクロー=I!」

 その直後、アヤの背後からヨコウのリザードンが迫ってきているのに気付いたマサシ。
 最初にりゅうせいぐん≠ナの攻撃以後休ませていたフライゴンを、再び参戦させる。
 そのまま、2匹による空中戦が始まった。

「ヨコウがこっちに…。ユキヤは!」

「無事だ。アヤがお前の援護に向かった瞬間、俺との戦いを放り出して後を追っていった」

 そのヨコウの背後から、ユキヤが姿を見せる。
 そんな様子を見て、マサシの表情も若干和らいだ。

「破壊爪<デストラクションエッジ>=w刹那』」

 その直後、テンロのドラピオンとバシャーモが同時に吹き飛ぶ。
 いつの間にか、ユキヤのサンドパンが攻撃を仕掛けていたらしい。

「うわ…! 相変わらず凄いな、その技」

「攻撃のチャージを殆ど無しで繰り出せる超威力の打撃技。だから攻撃速度も半端じゃない、破壊爪<デストラクションエッジ>≠フ昇華技の一つ…」

「それだけじゃない…。今、『2匹のポケモンが同時に』吹き飛んでた。ユキヤ、お前…」

 ユキヤのサンドパンに視線を向けるマサシ。
 そのサンドパンは今までと違い、左右両方の爪にエネルギーを灯していたのだ。

「破壊爪<デストラクションエッジ>≠フ、二刀流…」

「…。バンギラス!」

 サンドパンに加勢するかのように、バンギラスをバトルに参加させる。
 その2匹で、テンロのポケモンに挑む。

「ユキヤ! あんまり無茶は…」

「心配ないだろ。あの状態のユキヤのポケモンの攻撃力は、俺達の中じゃ群を抜いている。あいつのポケモンにも引けは取らない筈だ」

「…だと、いいんだけど…」

 どこか不安げな表情で、ユキヤのほうに視線を向けるアヤ。
 そんな時、突然フライゴンがマサシの横に墜落してきた。

「フライゴン!?」

 その後、相手のリザードンがゆっくり地上に降下する。
 フライゴンは上半身を起こしてリザードンを睨むのだが、見ただけでもダメージが大きいのは明らかだった。

「……。ユキヤ、技を借りる」

「何?」

 背後でマサシがそんな言葉を呟いたので、気になって後ろを向いたユキヤ。
 フライゴンと共に前に歩み、マサシは指示を出す。

「フライゴン、グラウンドバーン=I!」

 マサシが指示を出したことで、フライゴンが雄叫びをあげる。
 それに呼応してフライゴンを橙色の輝きが覆い始め、地面も振動を始める。

「…! リザードン!」

 ヨコウの指示で、リザードンが技を発動。
 自身の炎を翼全体に灯し、それをフライゴン目掛けて叩き込む。

「オーダイル、アクアテール=I!」

 しかしそれを妨害するべく、オーダイルが動く。
 水のエネルギーを纏った尾を、リザードンの翼に叩き込む。
 それによって翼が弾かれ、技は失敗する。

「今だ、フライゴン!!」

 これで妨害は食い止めたので、技が発動する。
 否、発動すると思った。
 突然フライゴンの目の前の地面に亀裂が走り、その下からガブリアスが飛び出した。

「……! ………なっ!?」

 突然の事に驚き、目を大きく見開いたマサシ。
 完全な不意を衝かれ、フライゴンは一気に戦闘不能に追い込まれる。

「マサシ…?」

 彼の戦う様子を背後から見ていたアヤが、何故か首を傾げていた。







 Phase.87 成長の兆し





 アヤは、マサシのバトルを見てある違和感を感じていた。
 そしてそれは、外からバトルを見守っていたナギサもそうだった。

「アヤちゃん!」

 気になり、アヤに声を掛けるナギサ。
 呼び掛けに気付き、彼女の所へ一旦移動した。

「ナギサ…。あんたも気付いたんだ…」

「うん。アヤちゃんだったら絶対気付いてると思ったから…」

「このバトルが始まった時から気になってたんだけど…。マサシ、今までと違って悉く相手に裏をかかれてるわよね」

「今までのマサシ君だったら、『あの位の事を読めない筈が無い』のに…」

「そう。相手の戦略が上なんじゃなくて、『マサシの相手の動きの読み方』が今までよりも鈍ってるのよ」

「どうして…? 何が原因で、そんな…」

「私達もそうだけど、相手が遥かに格上って事で相当なプレッシャーを感じてる。それが原因かも…」

「プレッシャーでいつも通りの戦い方が出来てない…って事?」

「いつも通りの戦い方が出来て、あの2人とは漸く互角って所かしら。でも、相手チームのリーダーはそれよりも更に上のレベル。早いうちに何とかしなきゃ、どんどん勝ち目が無くなっていくわ」

「アヤちゃん、どうするの?」

「大丈夫、ここは私に任せておいて」

 不安げなナギサに笑顔を見せると、アヤは再び戦いの場に戻っていく。
 根拠なんて無い筈なのに、あの笑顔と言葉を聞くと、何故か安心するナギサなのだった。





「ブラストバーン=I!」

「リザードン、そっくりそのまま返してやれ!!」

 マサシとヨコウの激闘は続いている。
 先程フライゴンを倒されたショックを残したまま、バクフーンを繰り出して戦いに臨んでいた。
 お互いに炎系最強の技を発射して勝負しているのだが、パワーは向こうが圧倒的に上だった。
 バクフーンの炎はどんどん押し戻され、リザードンの炎を真正面から喰らって爆発を引き起こす。

「くそ…!」

「マサシ!!」

 そんな折、背後からアヤの呼ぶ声が聞こえてきた。
 呼び掛けに気付いて、後ろを振り向こうとした矢先…。
 バチンッ!!


「――――――いってええええええええええええ!!!!!」

 アヤが思いっきり、マサシの背中に平手打ちをかますのだった。

「痛ぇ…。アヤ!! お前いきなり何するんだよ!!」

 思いっきり目を吊り上げて、アヤに怒鳴りかかるマサシ。
 だがアヤは冷静に言葉を返す。

「マサシ、私が気付いて無いとでも思った? あんた、肩に力を入れ過ぎよ」

「…!?」

「何よ、ここに来る道中で散々私を励ましてくれたくせに、いざとなると自分が一番縮こまるなんて…。馬鹿みたい」

「おい…、お前は俺を馬鹿にしに来たのか?」

 アヤの淡々とした言葉に、マサシは段々怒りを募らせ始める。
 だが、決して彼女はそんなことをするつもりではない事を次の会話で認識する。

「…でも、内心そんなにプレッシャーを感じてる中であれだけ励ましてくれたんだもんね。有難う、マサシ」

「…」

「マサシ。少し、肩の力を抜いた方がいいわ。相手が強すぎて焦って、それでどんどん冷静さを失っていったら、それこそ勝ち目0なんだから」

「ああ…、そうだな」

「で、今ので少しは肩の力も抜けたでしょ?」

「…! ああ。有難う、アヤ」

 彼女の気遣いで、マサシはようやくいつもの『らしさ』を取り戻した。
 瞳にも鋭さが戻り、改めてヨコウを睨む。

「…!」

 ヨコウも、マサシの変化に感付いていた。
 今までとは違う……と。

「瞬間連射7連:ハイドロポンプ=I」

 まずは手始めに、オーダイルで攻撃を仕掛ける。
 瞬時に7発の巨大な水の弾丸を発射。
 狙いは…、ガブリアス!

「! 速い!!」

 ズドドドドドドドッ!!!
 ガブリアスが反応を起こす前に、全ての水弾が命中していた。
 しかも7発全てがほぼ一瞬の間に命中したのだから、ダメージも半端なものではなかった。

「攻撃の速度と威力が…!?」

「れいとうパンチ=I!」

 そして気が付けば、拳に冷気を纏わせたオーダイルがガブリアスの目の前にいた。
 既にその拳を振り抜く構えに入っていた。

「ガブリアス!」

「遅い!!」

 ヨコウが指示を出すよりも遥かに早く、オーダイルの拳がガブリアスを捉える。
 ガブリアスはあっという間に全身が凍りつき、ダウンした。

「こいつ…! 今までよりも数段強い…!!」

「アヤ。これまでの旅の中で、お前からも色々と技は学ばせてもらった。まずは、これだ。フレアストライク=v

「!」

 自分の使っている技を指示した事で、アヤは驚きの顔を見せる。
 何しろ今まで一度も使ったことの無い技を指示し、難なく繰り出している光景が目に入ったのだから。

「フレアストライク=c。一体いつの間に習得したのかしら…」

「この旅の間に色々学ばせてもらったって言っただろ。実際この技を使うのは、これが初めてだ」

「相変わらず凄いわ…。で?もっと上の技は習得できるの?」

「いや、これが限界だな。バースト・ストライク°奄フ技を繰り出すには、俺のバクフーンじゃ火力が足りない。お前のポケモンだからこそ使える技だな」

「…そう」

 戦闘中のため、アヤに背中を向けたまま会話を続けていた。
 本来の調子を取り戻し…、否、プレッシャーを克服した事で数段強さを増したマサシに、ヨコウは防戦一方となっていた。

「オーダイル、アクアテール=I!」

 先ほどのフレアストライク≠真正面から喰らったリザードンが、漸く起き上がる。
 その瞬間を見計らって、オーダイルが水のエネルギーを纏った己の尾を振り下ろす。
 それをリザードンは、上空へ飛翔する事で回避。

 そこから、地上のオーダイル目掛けて攻撃の姿勢を取る。
 だが、マサシは新たに技の指示を出していた。

「メテオドライブ=I」

 突然、上空のリザードンより遥か高度から炎の塊が落下してきた。
 それはリザードンを一気に地上に叩き付けた。
 ドゴォォォォンッ!!

「な…、バクフーン!?」

 その炎の塊の正体は、バクフーンだった。
 どうやら、かえんぐるま#ュ動時の身体の周囲に炎を纏った状態で上空から突撃する技のようだ。

「フレアストライク≠フ応用だな。今までは平面で突撃していたわけだが、今度は上空から落下する勢いも上乗せした訳だ」

「マサシ、私も戦う! 今なら、こいつだけでも倒せる気がする!」

「ああ。ここから俺達の反撃開始だな、アヤ」

 戦いの中で、急激に強さを増していくマサシ。
 それこそ、彼らの反撃の狼煙となるのだった。







 Phase.88 反撃開始





「バクフーン! ブラストバーン≠セ!!」

「カイリュー、たつまき=I」

 バクフーンの発射した強大な力を宿した炎を、カイリューは巨大な風の渦を発生させて迎撃する。
 2つの技が激突するのだが、バクフーンのパワーを前にその形がどんどん歪んでいき、弾け飛んだ。

「アヤ、今だ!!」

「ライチュウ、ボルテッカー=I!!!」

 アヤの指示で、ボールから飛び出したライチュウが走り出す。
 走りながら、自身の身体の何倍もの膨大な量の電撃を発生させる。

「ダイノーズ!」

 それを防御しようと、ヨコウが新たにダイノーズをバトルに参戦させる。
 ライチュウの直線上に立ち、完全に真っ向勝負をする姿勢を見せていた。
 その堅牢な防御力で、ライチュウの突撃を受け止めるつもりのようだ。

「オーダイル、ハイドロカノン=I!」

 それをサポートするのがマサシ。
 ダイノーズの横から、オーダイルの最強の水の弾丸を発射させる。
 一瞬早く気付いて、先にそっちを捌こうと防御姿勢を見せる。
 ドバアァァァァァッ!!


 ダイノーズに命中すると同時に水弾は破裂し、周囲に水飛沫を撒き散らす。
 ダメージこそ受けているものの、微動だにしないダイノーズ。
 だが、それこそがマサシ達の狙いだった。

「…! メタグロスっ!!」

 今の攻撃で、ダイノーズは水浸しの状態。
 そんな状態で、あのライチュウの大技を喰らったらどうなるか。
 瞬時に狙いを見抜いたヨコウが、慌ててメタグロスを援護に回す。
 だが、その動きすらもマサシは読みこしていた。

「「ブラストバーン=I!」」

 マサシとアヤ、2人で同時に同じ技を指示。
 2匹のバクフーンが高密度の炎エネルギーを発射。
 ダイノーズを援護する事に気が回っていたメタグロスは、突然の攻撃に反応できず、直撃を喰らう。
 ズドォォォォォォンッ!!


 流石に今のマサシ達の同時攻撃を受けては、耐え切れる筈もなかった。
 あっという間に、ヨコウを敗北寸前にまで追い込んでいた。

「テンロ!! こっち援護してくれ!!!」

 マサシ達の後方でユキヤと戦いを繰り広げていたテンロに助けを求めるヨコウ。
 その呼び掛けに気付き、ユキヤをスルーしてマサシ達の攻撃に向かう。

「貴様の相手は俺だ」

 だが、ユキヤがそれを許さない。
 テンロとマサシ達の間に割って入り、テンロの援護を妨害する。

「結局、君を先に片付けなければ、僕はヨコウの援護には行けないわけか」

「…」

「それにしても君達は不思議だな。そこのチームリーダーのマサシ君が強くなるのと共鳴するかのように、2人も急激に強さを増してきている。どうやら君達、互いに深く見知った間柄で、互いが互いを意識しあうライバルって関係なのかもね」

「まあ、お前の言ってる事は当たってるさ」

 テンロの推測を肯定しつつ、マサシがテンロのほうにゆっくり歩み寄る。

「俺とアヤは幼馴染でありライバル。そしてユキヤとは、4年前のトーホク大会での戦い以来互いを意識しあうライバル。アヤとユキヤも、トーホク大会での戦い以来のライバルだ」

「ははっ、道理で急激に強さを増していくわけだよ。この大会じゃ、君達みたいなチームが一番強いのかもしれないな」

「この大会に出場しているチームは、その大半が即席で組み上げられたチーム。まあ、大会開始前にこの町で急に3人1組のチームを作れなんていわれたから、当然なんだけどね…」

「寧ろ、マサシ達みたいにお互いが知り合った人物同士でチームを組むことなんて、凄く稀だと思う」

 マサシの背後から、ヨコウも会話に加わる。
 若干の笑みを零しながら、マサシは会話を続ける。

「俺達3人は、4年前のトーホク大会が終わった後、必ずこのマスターリーグで決着をつけようって誓い合ったからな。その誓いがあるからこそ、この2人が来ない筈が無いと確信してたからな」

「当たり前じゃない。昔から言ってたでしょ?このマスターリーグで、マサシと決着をつけるって!ユキヤも同じ事を言ったんでしょ?」

「懐かしい話だ」

 そんな3人の会話を聞いて、ヨコウ達もどこか肩の力を抜いた感じになる。

「4年来の誓い…か。それが今の君達の強さの源なんだね」

「まあ…ね。ずっとこの大会で決着をつけることを目指して今まで旅を続けてきたんだし」

「成る程…ね」

 改めてマサシ達の強さを実感したテンロは、そこで会話を区切る。

「結構長話しちゃったかな。ヨコウは、もう手持ちが残り少ないから僕の援護に回って」

「…解った。ここはテンロに任せるよ」

「ドラピオン、ルカリオ、チャーレム!」

 テンロは一気に3匹のポケモンを繰り出し、それぞれマサシ達と対峙させる。

「バクフーン、ルカリオを!」

「ムクホーク!!」

「ガブリアス!」

 マサシはルカリオ、アヤはチャーレム、ユキヤはドラピオンとそれぞれ戦闘開始。
 エンスチームとの激闘は、ようやく中盤戦へと差し掛かっていく。

「メテオドライブ=I!」

 マサシが一番最初に動く。
 つい先程完成させたばかりの技を、再び発動。
 否、先ほどとは違って、更に進化していた。

 今回は対象の真上から垂直に落下する事で、まるで天空より火柱が降下してくるかのような光景を見せた。
 その火柱の範囲も相当広く、気付いてから回避しても間に合わない。

「メタルブラスト=I」

 だからこの技への対処法は、バクフーンよりも上の攻撃力で真正面から打ち勝つ事。
 それを理解したテンロが、ルカリオの持つ最強の技を指示した。

 ルカリオの両方の拳に鉛色の鋼属性エネルギーを集中させ、力を貯める。
 そして限界まで力を引き出し、両方のエネルギーを一点に集中させ、上空目掛けて発射。
 技の大きさだけで言えば、バクフーンの技と全くの互角。

 両者の全力の一撃が激突し、アロナシティの上空で大爆発を引き起こすのだった。







 Phase.89 前哨戦決着





 マサシは、メテオドライブ≠ナ仕掛ければ、必ず迎撃してくると読んでいた。
 今現在、能力回帰は第2段階<セカンドレベル>≠フ状態。
 これでは、良くて相打ちというレベルという目算だった。

 …今までのマサシだったら。

「バクフーン、ぶち破れ!!」

 先ほどの少時間のバトルで、テンロのポケモンはパワーに秀でている事は痛感していた。
 だが、今のマサシはさっきまでとは違い、どんどんその実力を伸ばしてきている。
 敢えてテンロの攻撃に真正面から挑む事で、さっきまでとは違う ということをアピールしようという心算だった。

 両者の技が激突してアロナシティ上空で爆発が発生、テンロはマサシの次の動きを待つつもりでいた。
 だがテンロの予測に反して、マサシはルカリオの攻撃に真正面から打ち勝った。
 当然反応は遅れ、天空から降下してくる火柱と化したバクフーンの業火に飲み込まれた。

「な…、ルカリオ!? …っ、チャーレム!」

 テンロがルカリオの戦いに気を向けている間も、チャーレムとドラピオンは単独で戦い続けていた。
 トレーナーの指示が無かった所為なのか、現状戦いは互角。
 だが、テンロの意識がアヤ達のほうに向いたため、ここからバトルは更に激化する。

「チャーレム、かみなりパンチ=v

「ムクホーク飛んで!!」

 相手が格闘タイプなら、恐らく使ってくる技は直接攻撃系のみ。
 そう読んだアヤは、相手の攻撃が届かない遥か上空までムクホークを飛翔させた。

「エアカッター=I!」

 そしてその高度から、翼を羽ばたかせて発生させた真空の刃を、地上目掛けて飛ばす。
 手の届かない位置からの一方的な攻撃に、チャーレムはただダメージが溜まっていく。
 だが、次の瞬間。
 バチィッ!!

「え…!?」

 一瞬何が起こったのか解らなかった。
 ただ言えるのは、一方的に攻撃していた筈のムクホークが、全身に電撃が纏わりついていたこと。
 それによって空を飛んでいられなくなり、地上に墜落した事。

「驚いたかい?」

 チラッと、横目でムクホークに視線を向けるアヤ。
 そのダメージの大きさから限界だと判断、ボールに戻した。

「ムクホークのダメージの大きさ…。特性『ヨガパワー』込みの物理攻撃を喰らったと見て間違い無いわ…。でも、どうやって…」

「拳を振り抜いた際…、拳に纏われていた電撃が、飛んでいた」

 少し離れた位置からバトルを見ていたマサシだけが、チャーレムの攻撃の正体に気付いた。

「纏っていた電撃が、飛んだ!? そんな事って…」

「恐らく、かみなりパンチ≠ニしんくうは≠フ合成技だ。それで元の物理攻撃力を維持したまま、遠距離への攻撃を可能にしたんだろう」

「…、僕が何年も掛かって編み出した技なのに、こうも簡単に見抜かれるとはね…。やっぱり君は洞察力は並のレベルじゃないみたいだ」

「そりゃどうも。ところで、向こうはお前の指示なしで大丈夫なのか?」

 マサシは、ユキヤの戦っている方角を指差す。
 その先で、ドラピオンと戦い続けている光景があった。

「ドラピオンは、僕の指示なしで戦うことに馴れている。あっちは問題ないさ」

 テンロの言う通り、確かにドラピオンの動きに『切れ』がある。
 それこそ、トレーナーが指示を出して戦っている時と何ら変わりないほどに。
 ドラピオンは持ち前の硬い装甲で相手の攻撃を受け止め、その後を狙う返し技の要領で戦っている。
 ユキヤのポケモンも、その防御力の前に次第に劣勢になり始めていた。

 だが、マサシのこの一言で一気に戦局は傾く。

「ユキヤ! その程度の装甲、一撃で砕けないようじゃナリサさんには勝てないぞ!!」

 その言葉を聞いて、ユキヤの目が一瞬鋭くなる。
 直後、ユキヤの周囲に漂う雰囲気が変わる。

「破壊爪<デストラクションエッジ>=c」

 そこまで言葉を口に出した時点で、ドラピオンの前に立っていたサンドパンの姿が視界から消える。
 否、消えたと思った直後、既にサンドパンはドラピオンの背後にいた。

「……『交差<クロス>』」

 余りにサンドパンのスピードが速すぎて、テンロには何が起こったのか解らなかった。
 実際のところ、単純にサンドパンが二刀流の破壊爪<デストラクションエッジ>≠ナ、交差する打撃をドラピオンに叩き込んだだけ。
 同時に同じ箇所を攻撃に喰らい、尚且つ超絶的なスピードは、ドラピオンを一気に撃破するほどのダメージを与えた。

「そうだったな。冷静になってみれば、ナリサの手持ちほどの防御特化したポケモンはそういない。さっきまでの貴様がそうだったように、俺も相手の雰囲気に呑まれていたらしい」

「流石に強いね、君達3人は」

 戦いの最中、テンロが再び話を始める。

「途中からの君達の反撃は凄まじいよ。気付いたら、僕もヨコウも手持ちポケモンが半分以上やられてる」

「…!」

 戦いに集中しすぎていた所為なのか、言われてから初めて気付いたマサシ。
 確かにテンロのポケモンは残り3匹、ヨコウに至っては残り2匹にまで追い込まれているのだ。

「正直、もう今の僕達の余力じゃ君達3人を倒すことなんて不可能だろうね。だけどせめて…」

「ああ、お前達3人の戦闘可能なポケモン1匹くらいは倒させてもらう!!」

 だがここに来て、ヨコウとテンロが凄まじい気迫で巻き返し始める。
 その勢いは、ここにきて完全に拮抗するほどだった。
 マサシ達も全力で2人の猛攻を迎え撃った。






 それから、およそ10分ほど経過した頃…。


 ヨコウとテンロは、二人揃って仰向けに倒れていた。

「参ったな…。俺達で本当に1匹ずつ戦闘不能にする程度の余力しか残っていなかったとは…」

「うん。でも、マサシ君のバクフーン、アヤちゃんのライチュウ、ユキヤ君のバンギラスを倒せただけでも良いにしておこうよ。後は、エンスに任せよう」




 身体の至る箇所に傷を残しながらも、3人は横並びで同一の場所に視線を向けている。
 その視線の先にいるのは、相手チームのリーダーであるエンス。
 だが、そのエンスは何故か石畳の上で寝そべっていた。
 まるでマサシ達に会う前の時のような、だらけた態度だった。

「…エンス、何してるんだ」

「あ〜〜〜…、もう来ちまったのか…。思ったより早く終わったな」

「エンス、まさかとは思うが…。さっき俺達のバトルに手を出さないって言った理由は、そうやってだらけたかったからか?」

「あぁ、そうだ。ここ最近慌しかったし、それにこれから久々に本気で戦うんだ。リラックスもしておきたかったってのもある」

「…」

 そこまで喋ったところで、ゆっくりとエンスが立ち上がる。
 先ほどのマサシとバトルをした時凍りついたドサイドンも、今では完全に復活していた。

「さぁて、始めるか」

 口調こそのんびりペースだが、エンスは完全な戦闘態勢に入っていた。
 途端に空気がより一層重くなり、3人の表情も険しくなっていた。





 今までのバトルは、言うなれば単なる前哨戦に過ぎない。
 満身創痍の3人はこの後、更なる壮絶な死闘へと突入していく…。







 To Be Continued

 

[アットの一言感想]

 ここまできて、まだエンスは落ち付いた様子。
 まだまだ厳しい戦いが続きそうですね。

 

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