戦いの舞台は、アロナシティ中央広場から町外れの平野に移された。
激闘の最中、アヤが新たな力を発揮してエンスの手持ちを1匹撃破した現在。
だが…。
「さて、と。お前らが充分に力をつけてきたことだし、俺もそろそろ本気でやらせてもらうぜ」
エンスがその言葉を口に出したことで、マサシ達の全身に力を入れる。
否、警戒してそうならざるを得なかった、と言うべきだろうか。
いずれにせよ、ここから先はエンスも本気で襲い掛かってくる。
今までの彼を相手にするのでさえ精一杯だった彼らに、逆転の糸口は残されているのだろうか。
…今、更なる死闘の幕が上がる。
COM マスターリーグ編
第26話
VSエンスチーム−W
Phase.93 解き放たれた天属性
エンスの全力。
それが何なのか、マサシだけは何となく検討がついていた。
彼はかつてのリュウイチの仲間だった人物。
それだけで、推測するには充分だった。
「行くぜ、エルレイド」
エンスの2匹目のポケモンは、エルレイド。
だが戦い始める前に、エルレイドから銀色の輝きが発せられた。
それを見て、マサシが舌打ちをすると同時に、表情が険しくなる。
「チッ、やっぱりそうか」
マサシの言葉に反応して、2人の視線が彼に向く。
「マサシ、どういう事!?」
「2人とも、忘れてないだろ。あのエンスは、7年前の戦いの時、兄貴の仲間だった。つまり、奴も俺と同じ力を持っていても何ら不思議は無かったんだ…! 何で…、何で今の今まで気付かなかったっ…!!」
「! それじゃあ…」
「覚悟してくれ、2人とも。ここから先、半端な戦いにはならない。恐らく、今までに体験した事もないような凄まじい戦いになる!」
「…ッ、うん。解った!」
「そうだな」
そこで会話を区切り、アヤはポケモンをバクフーンからブーバーンにチェンジした。
現状、『バーストブレイク』という奥の手があるバクフーンが唯一、今の彼女の手持ちでエンスと渡り合う可能性を持っていた。
そのバクフーンを、今失うわけにはいかなかった。
「あのエルレイド、最初に戦った時も相当なスピードと格闘センスを備えていた。スピードもパワーも、あの時とは桁外れ…」
マサシがそこまで喋ったタイミングで、ブーバーンがアヤの隣から姿を消す。
一瞬何が起こったのか解らなかったのだが、遥か後方で轟音が鳴り響いた事で状況を把握できた。
単にエルレイドがブーバーンを殴り飛ばしただけだったのだが、余りにも速過ぎて認識できなかっただけの事。
突然の出来事に、マサシ達3人は呆然としていた。
だが一瞬の間を挟んで、マサシが我に返る。
「ユキヤああああああああ!! そっちだあああああ!!!」
マサシが叫んだ。
それによって初めてユキヤも気付いて、ガブリアスを繰り出す。
ブーバーンを吹き飛ばし、今度はユキヤの方に向かって移動していた。
「破壊爪<デストラクションエッジ>=@『交差<クロス>』!」
エルレイドの攻撃を、ガブリアスの二振りの破壊の力を持った爪を交差させて迎え撃つ。
両者の攻撃が正面からぶつかり合い、膨大な量のエネルギーがスパークとなり、それと合わせて突風も周囲に拡散する。
「…っ! 馬鹿…な!?」
突然の襲撃だったとは言え、今の反撃は間違いなく全力で繰り出した物だった。
なのにいとも容易く、エルレイドはガブリアスを打ち倒す。
先ほどのブーバーンと合わせて、この2匹は既に戦闘不能だった。
「あっという間に、ブーバーンとガブリアスが…」
別に、ドサイドンを倒せたことで浮き足立っていたわけでもない。
マサシ達はエルレイドが天属性の力を解放した時点で、最悪の事態は予測していた。
あのエルレイド1匹に、自分達は全く歯が立たないかもしれない…と。
だが、いくら予測していたところで現実に起こってショックを受けない筈は無い。
これ程の圧倒的な力を見せ付けられ、マサシ達は心が折れる寸前まで追い詰められていた。
ここまで追い詰められて、出し惜しみなどしている余裕は無い。
マサシは、決断した。
「能力回帰…」
「!」
その言葉に反応したユキヤが、マサシの方に視線を向けた。
「究極段階<エクスト…」
全ての力を解き放とうとした瞬間、ユキヤがマサシの目の前に自身の腕を伸ばして静止させた。
「ユキヤ…?」
「それを使うのはまだ早い。ここは先に、俺がやる」
「無茶だ…。あのエルレイドの戦闘能力は見ただろ!? 究極段階<エクストラレベル>を使わなければ、とても太刀打ちできるレベルじゃ…」
「今までだったらな」
「…え?」
「進化しているのはアヤだけではない。俺もここまでの旅の間、ずっと考えていた。飛躍的に強さを増す新たな戦い方をな」
「…」
「アヤに先を越されはしたが、この戦いの間で俺は既に新たな力を身に付けた」
「お前も…?」
「今までの戦い方では、何れ限界はやってくる事は感じていたからな」
「…」
「兎に角、今は少しでも力を温存しろ。現状、手持ちが2匹残っているお前が一番の戦力だ」
「(しかし、あのエルレイドの戦闘能力にどうやって太刀打ちするつもりだ。生半可な能力では相手にすらならないぞ)」
「…」
サンドパンとユキヤは、共に静かに目を瞑って意識を集中させる。
数秒の空白を挟んで、ユキヤは静かに目を開く。
「破壊爪<デストラクションエッジ> 究極昇華」
静かに、囁いた。
その瞬間、両手の爪から発している輝きが、サンドパンの全身を覆っていった。
Phase.94 ブレイクヴェール
今まで、破壊爪<デストラクションエッジ>のエネルギーは、爪にだけ宿らせていた。
だがそれでは、充分な力は発揮出来ない。
…ならば、どうする。
一切の隙を無くし、攻守両面において最強となるには。
簡単な話だ。
最初は片方の爪にしか宿す事のできなかったエネルギーを、今は両方の爪に。
ならば、更に昇華させれば全身に張り巡らせる事も可能な筈だ。
それが、今の俺の出来うる最大最強の力。
「破壊爪<デストラクションエッジ>°極昇華 『ブレイクヴェール』」
「あれは……!」
サンドパンの変化に、マサシがまず反応を示す。
破壊爪<デストラクションエッジ>のエネルギーがサンドパンの身体を覆い、桁外れの力を撒き散らしている。
まだ何もしていないのに、そのエネルギーだけで大地に亀裂を入れるほどだ。
「ほぉ…。アヤだけでなく、お前まで新たな力を習得したか。本当に大した連中だ」
「無駄話をしている余裕はあるのか」
ユキヤが目を瞑り、それだけ呟く。
その直後、エルレイドは吹き飛んでいた。
否、サンドパンが殴り飛ばしたのだ。
今の今までユキヤの傍に居た筈が、いつの間にかエルレイドに攻撃していた。
そのスピードと破壊力は、明らかに今までのサンドパンより遥かに上だった。
「ほぉ」
サンドパンに吹き飛ばされたエルレイドだが、すぐに着地して姿勢を立て直す。
そして今のサンドパンに負けず劣らずのスピードで急接近する。
両者は再び、真正面から打撃を繰り出す。
膨大な力を身に纏った両者の激突は、両者を中心に巨大なドーム状の光を発生させる。
「うわっ!!」
光のドームが誕生すると同時に、そこから凄まじい衝撃波も発生。
マサシとアヤの2人は、軽々と吹き飛ばされる。
「ちょ、ちょっと…!何なのあの戦い!? レベルが違うなんて話じゃ…」
「だから最初に言っただろ…! 今までに体験した事もないようなレベルの戦いになると!」
マサシも、必死に震える身体を抑えながらの発言だった。
彼の声を聞きなれてるアヤだからこそ気付いたのだが、マサシの声から底知れぬ動揺が伝わってきていた。
「どっちにしろ、あのエルレイドはユキヤに任せるしかない。今の俺達が下手に手を出そうとしても、足手纏いにしかならない」
「…っ」
仲間が戦っているのに、手助けする事も出来ない。
マサシはここに来て、己の無力さを噛み締めていた…。
サンドパンVSエルレイドは、凄まじいレベルの戦いとなっていた。
まず先ほどの真っ向勝負は、お互いが弾き飛ばされる。
地面に着地すると同時にサンドパンはすぐに次の攻撃を繰り出す。
エルレイドも姿勢を戻すと同時にサイコカッター≠発動。
しかし普通にそれで斬り掛かるのではなく、それを次々と精製し、撃ちだして来る。
だがそれを、サンドパンは一つ残らず叩き落す。
叩き落すと同時にスピードを上げ、エルレイドの頭上から爪を振り下ろす。
この攻撃は避けられてしまうのだが、サンドパンの爪が地面にぶつかった瞬間爆発のような轟音と共に大地が砕かれた。
しかも今までの一連の攻防は、ほんの数秒の間に行われていた。
そのため、マサシ達からすれば何がどうなったのか把握するのも困難だった。
「やるな、エルレイドを相手にここまで戦えるとはな。お前も、随分と強大な底力を秘めてるようだな」
「…。破壊爪<デストラクションエッジ>=@『刹那』!」
ここでユキヤはブレイクヴェール発動後、初めて『技』の指示を出す。
予備動作を殆ど必要とせず、尚且つ超スピードで相手を攻撃する『刹那』。
今までこの技を防ぐのはおろか、反応出来た相手すら存在しなかった。
「エルレイド!」
だが、このエンスに通用しない事は薄々感じていたユキヤ。
その直感は当たり、エンスは初めて『刹那』を破ったトレーナーとなった。
「『二連』」
だがそれは、昔のままだったらの話。
今のユキヤは、『刹那』を2連続で繰り出すことが出来る。
一撃目を防いだ事で気を緩めていたエルレイドに、容赦なく2撃目が襲い掛かる。
ドゴンッ!!
サンドパンの一撃が炸裂した事で、エルレイドを覆っていた天属性のエネルギーが砕け散った。
「マサシ!」
攻撃を叩き込んだ時点で、ユキヤはマサシに合図を出していた。
ユキヤの破壊爪<デストラクションエッジ>は、相性の優劣に関係なくダメージを与えられる。
エルレイドに大打撃を与えれば、天属性を打ち破れる事を先程ユキヤから聞かされていたのだ。
「究極段階<エクストラレベル>フルパワー、瞬間連射10連:ハイドロカノン=I!!」
全ては、この一瞬の時のために。
今の今まで蓄えていた力を、一気に解き放つ。
フルパワーで繰り出された10発のハイドロカノン≠ェ、エルレイドを襲う。
タイミングで言えば、『刹那』を喰らった直後。
エルレイドに、マサシの攻撃を凌ぐ余裕など残されてはいなかった。
全ての水弾が直撃し、連続で大爆発が発生。
それにより大洪水が巻き起こり、彼らの足元は水浸しとなった。
「成る程な。ユキヤに隙を作らせて、現状一番力を残しているマサシに止めを刺させる戦略か」
「俺だって、フルパワーで攻撃すればかなりの威力は発揮出来る。さっきまでは町中で戦っていたから、これだけの威力を出せなかったからな」
「それにしても、ちょっと疲れたな」
突然の発言と共に、エンスが身体を大きく伸ばす。
「お前らも疲れただろ。ヨコウ達とのバトルと合わせて、ずっと戦い続けてるんだからな」
「何言ってるの?私達はまだ…」
「無理するな。これだけ長時間戦ってて、少しの休憩も挟まないんじゃ身体を壊すぞ。偶にはそういうのも大切だ」
「…アヤ、エンスの言う事は正しい。確かに俺達は連戦でかなり疲労が溜まってる。少しくらいの休息は必要だ」
「…うん」
若干渋りつつ、アヤも一旦休息を取る事に同意するのだった。
Phase.95 休息
とりあえず両チームのメンバーは、少し移動した高台に腰を下ろす。
先ほどの場所はマサシのハイドロカノン≠フせいで水浸しになってしまったからだ。
「ふぅー…」
腰を下ろして、マサシは大きく溜息をついた。
緊張が途切れた事で、一気に気が抜けたらしい。
「マサシ君…」
そんなマサシの向かい側で、不安そうな表情をするナギサ。
これまでの戦いを間近で見ていただけに、心配になってくるのも無理は無かった。
「大丈夫だ。少し休憩を挟めば、また万全の状態で戦える。オーダイルとグレイシアも、頼むぞ」
マサシの語り掛けに対し、力強く頷いた2匹。
まだまだ闘志は消えていない。
「それにしてもエンスさん、流石の強さね。予選内ランクのトップだってのも納得できるわ」
一方でアヤは、エンスの強さに関する感想を述べていた。
「最初は雲の上の存在だと思っていたが…。あいつの言う通り、この戦いの中で俺達はどんどん力をつけてきている。もう少し…、もう少しであの人と並ぶほどの強さに辿り着けると思うんだ」
自分の握り拳を眺めながら、何かを感じ取ったような発言をするマサシ。
その心中で、何を思っているのか。
「よっ、具合はどうだ?」
「うわあっ!!」
唐突にエンスがマサシの目の前に顔を出した事で、驚いて仰向けに倒れてしまう。
「ど、どうって…。何がだよ!? つか、こんな気軽に俺達と会話する雰囲気か!?」
「雰囲気とか関係無いだろ?俺は普通に休憩を取りたかったし、お前らともゆっくり話をしたかったんだから」
「おいおい…」
「まあ仕方ないよ。エンスのこの性格は、僕達がチームを組んだ時からずっと変わらなかったんだから」
マサシのツッコミに対する返答は、彼のチームメイトであるテンロが行った。
約一ヵ月半の短期間とは言え、エンスのこの性格と態度には馴れてしまったようだ。
「あー、そう…」
はぁ…、と溜息をつくマサシ。
だがそれで本来の調子を取り戻す。
「それで、俺達と話をしたいって言ってたが…」
「ああ、まず気になったのは…。ユキヤ、お前だ」
「…!」
視線をユキヤに向けながら、エンスが話し始める。
「さっきの戦いで、俺のエルレイドの天属性のエネルギーを振り払ったよな。お前のその技に似た力を、俺は見た事がある」
「…ッ」
「ユキヤの技を見た事があるって…。破壊爪<デストラクションエッジ>程の技の使い手が、他にも居るのか!?」
「いや、実際はまったく別なんだが…。何処か似た感じがするんだ。奴の…、『終焉の道標<エクストレーム>』幹部の一角、『深闇』ルドアにな」
「…!」
ルドアという言葉を聞いた瞬間、ユキヤは息が詰まったかのような反応を見せる。
それと同時に、一気に彼の表情が悪くなる。
「おいユキヤ、どうしたんだ! 顔色が悪いぞ!!」
「何でも…、無い。昔の事を、思い出しただけだ」
「それだけでそんなに顔色悪くなるわけ無いだろ! お前、まさか何か隠している事が」
「………。確かに、俺はそのルドアという男を知っている」
意を決したのか、一呼吸した後ユキヤが語り始める。
「確かに俺の破壊爪<デストラクションエッジ>の力は奴と、ルドアと同質のものだ」
「やはりそうか…。ルドアは、万が一幹部が全滅した時の為の保険を掛けていると言っていた。それがお前だったようだな、ユキヤ」
「…」
「え、ちょっと待って!? って事は実質、ユキヤって昔は『終焉の道標<エクストレーム>』に居たって事になるんじゃないの?」
今の話の流れで、全員が同じ答えを導き出していた。
それを一番最初に口に出したのが、アヤだった。
「そういう事にもなるか…」
「でも、どうして?」
「…?」
唐突疑問を抱いたような口調になったアヤに、ユキヤは首を傾げる。
「仮にも、『終焉の道標<エクストレーム>』ってあんたにとっては古巣でしょ?じゃあ、何であんたは戦ってるの?」
「奴らの掲げていた理想が、俺の中のイメージとは食い違いすぎていた…、とだけ言っておくか」
「どういう事?」
「俺の前に奴が…。ルドアが現れたのは、ジグサがマクヌタウンを旅立ってから数ヶ月経った後だった」
「それって…、何年前の話だ」
話を聞くうちに、真剣な表情になったマサシがユキヤに問い詰める。
ユキヤはいつもと変わらない口調で、平然と回答した。
「……10年前だ」
「10…、年? じゃあそのときお前は」
「6歳だった。ルドアは、当時子供だった俺を含めて、一般の人間の中で素質のある奴を勧誘していた」
『今のヨハロ地方に、変革をもたらさないか?』
「とだけ、言い残してな」
「ヨハロ地方に変革…?どういう意味だ」
「俺は薄々その言葉の真意に感付いていた。何故ヨハロ出身の人間は、ポケモントレーナーとなる為によその地方に追い出すような形を取っているのか。下手をすれば、一生家族に会えなくなるかもしれないというのにだ」
「…」
「そこに奴らの掲げる理想が関係していると悟った俺は、迷わずルドアの勧誘を受けた。それによって、ジグサとまた会えるようになるかもしれないと、俺は思っていた」
「それで?」
「だがさっきも言ったように、俺の思い描いていた理想とは大きく食い違っていた。故に組織はお前の兄、リュウイチ達によって壊滅状態にまで追い込まれた」
「…」
「それによって、『終焉の道標<エクストレーム>』のやっている事が間違いだと思い知り、俺は組織を抜けた。そのまま、今現在に繋がるというわけだ」
「そうだったか。色々と話を聞けてよかったよ、ユキヤ」
話が終わったところで、エンスは立ち上がる。
「ちょいと話し込んじまったが、マサシとも色々話したかったんだよな。リュウイチのやつは元気にしているか? とかな」
「兄貴か…。兄貴はまあ、いつも通りだ。それに、スバルさんも生存していた事を知って、俄然力を入れている感じだった」
「スバル…、あいつ生きていたのか!」
「ああ、ルハドの奴と同様、単に仮死状態だったそうだ。それで3年前、俺の家に足を運んできたんだ」
「そうか…。スバルの奴は俺達からすれば、欠かすことの出来ない存在だったからな。無事で、何よりだ」
何処か穏やかな雰囲気を漂わせながら、エンスはスバルの無事を心の中で喜んでいた。
「マサシ、そのスバルとかルハドって誰?」
そんな折、彼の横からアヤが会話に入り込んできた。
確かにアヤには全く繋がりの無い話だったので、気になるのも無理は無かった。
「ああ、悪い悪い。スバルって言うのは、エンスと同じ兄貴の仲間だ。ルハドってのは、そのスバルが7年前相打ちに持ち込んだ『終焉の道標<エクストレーム>』幹部の一人だ」
「でもマサシ、さっきそのルハドって奴は仮死状態だって…。何でマサシがそいつの事を知ってるの?」
「まあ、色々とあってな。丁度いい頃合だし、その辺の事を話すか」
バトルをそっちのけで、各々の過去話にもつれ込むのであった(ぇ)。
Phase.96 休息(2) 総集編的な何か
休息を取っていたマサシ達なのだが、何故か過去話へと話の流れが向いていた。
しかし誰もがその事を気に留めずマサシが話し始めた。
「話の始まりは、3年前…。俺がジョウトへ旅立つ事になった切欠からだな」
「ジョウトへ旅立った切欠?」
「ああ。アヤ達も知っていると思うが、4年前の『終焉の道標<エクストレーム>』のアロナシティ襲撃の時、俺は不完全な天属性の力を発動し、一度全てを失った」
「…うん。それは今でもよく覚えてる」
「だがある時、兄貴が俺に話してくれたんだ。俺の失った力を復活させる可能性がジョウト地方にある と」
「だが、何故その旅立ちの切欠がルハドと繋がる」
いつの間にか話を聞いていたユキヤが疑問をぶつけた。
溜息を吐きながら、マサシは話を続ける。
「話は最後まで聞いてから質問してくれ。兄貴は何処かから、ジョウトでルハドを復活させる計画を企てている事を知った。そして魔属性の力を持った強敵、まああの時はルハドだったが…。 そいつと戦う事で天属性の力が目覚めるのではないかと思っていたそうだ」
「何処かからって…。一体何処よ?」
「そこは聞いていないんだが、恐らく7年前の仲間の誰かだと思う。『終焉の道標<エクストレーム>』の復活は4年前のあの時に判明したばかりだが、既に情報収集に動いていた奴がいてもおかしくない」
「確かにな。俺も奴らが再び動き出したのを知ったのが4年位前の話だから、マサシの話と一致する」
「話を戻すぞ。色々とゴタゴタはあったものの、俺はジョウト地方でスバルさんの弟であるシュン、そしてナギサの3人でルハドを倒したんだ」
「そーいえば、ナギサはマサシとジョウトに帰るってトーホクの大会が終わった後話してたわね。そのままルハドの戦いに巻き込まれたって所かしら?」
「うん、大体そんな感じだよ。昔の私は弱くて、皆の足を引っ張ってばっかりだった。だから自分一人でジョウト地方を旅して、頑張って強くなったんだよ」
「確かに、再会した時のお前の強さは別人のようだったな。俺が加勢するまで、ルハドを相手に一人で奮闘してたんだからな」
「でも結局、最後はマサシ君に頼ることになっちゃって…」
「あの時は相手が相手だったんだ、仕方が無い。ルハドの奴が魔属性の力を持っていなければ、ナギサでも倒せていたかもしれないけどな」
「…うん」
3年前の戦いを振り返るうちに、段々また未熟さを感じ始めていたナギサに、慰めの言葉を掛けたマサシ。
更にもう一つの思い出話を始めた。
「そんなに落ち込むこと無いだろ?ナギサ。 ルハドとの戦いが終わった後のこと、お前は忘れたのか?」
「戦いが終わった後…。 そうだった! 私、マサシ君と」
「バトルしたんだよな。俺の全力と戦ってみたいって、最初にお前が言い出したんだよな」
「へぇ、マサシとナギサでバトルやった事あったんだ。で、どっちが勝ったの?」
「俺が負けた。ナギサの補助技を駆使した戦い方に、リズムが狂わされっぱなしだった」
「でもマサシ君だって私を追い詰めてたじゃない…。そこはやっぱり流石だと思うよ」
「だけど結果的に俺は負けた。お前は俺から勝ち星を1個奪った事実は変わらないさ」
「うん」
「マサシに勝つって、ナギサも随分強さを増したみたいね。今度私ともバトルしてよ」
「いいよ、アヤちゃん。マスターリーグが終わった後でもよければ」
話を聞いているうちに、ナギサともポケモンバトルをしてみたいという衝動が沸いてきたアヤ。
いずれバトルをしようという約束を、この場で交わすのだった。
「ところで、肝心のスバルの弟に関する話題が殆ど出ていないんだが?」
話が弾む中、ふとユキヤが口を挟む。
本題の筈のスバルの弟に関する話題が出てないことに、異論を唱えた。
「おっと、また話が逸れたな。俺がシュンと出会ったのは、ジョウト地方に入ってすぐ…。否、ワカバタウンでナギサと別れた直後だったな」
「え、そんなすぐだったの!?」
てっきり、出会いはもっと後の事だと思っていただけに、ナギサが一番驚いた反応を示していた。
「あの時あいつは、俺が天紋『ファルマ』を持っていたことで『終焉の道標<エクストレーム>』だと誤解して襲ってきたんだよな」
「はっはは、スバルから弟は早とちりし易いって聞いてたが…。まさに聞いたままの性格だな」
笑みを浮かべながら、当時のマサシの話を聞くエンス。
そのままマサシは話を続ける。
「まああの時は、シュンの姉のミキが、俺がリュウイチの弟だって事を思い出したお陰で丸く収まったんだよな」
「決着は付かなかったんだ」
「あの時、もしもあのまま戦い続けてたら俺が負けていた思う。それだけシュンは強い」
「私もシュン君のバトルを直で見たことは無いんだけど…。ミキさんから、『終焉の道標<エクストレーム>』の下っ端級相手ならほぼ負ける事は無いって言ってたよ」
「へぇ…」
「今後の『終焉の道標<エクストレーム>』との戦いの中で、きっとあいつも俺達に合流してくる。あいつはあいつで、ルハドと因縁があるからな」
「けど、マサシが言うからには頼もしい仲間に違いないわね。一度会ってみたいわ」
とまあ、そんな感じで和やかムードで会話が弾むのだった。
そんな状態が続いて、約20分。
再び、マサシチーム3人とエンスは向かい合っていた。
「さて、充分休む事は出来た。そろそろバトル再開と行こうか」
「ああ」
ここで一歩前に出たのはマサシ。
グレイシアを繰り出し、一言。
「能力回帰:『究極段階<エクストラレベル>』発動」
休憩した直後だからなのか、落ち着いた口調だった。
グレイシアがマサシの合図で力を解き放ち、準備を終えた。
「んじゃ、頼むぜ。ヨノワール!」
対してエンスが繰り出したポケモンはヨノワール。
このポケモンもまた、ボールから外に出た瞬間天属性の輝きが宿った。
「行け、グレイシア!」
VSエンスチーム。
その死闘は、佳境へ差し掛かっていく。
To Be Continued
[アットの一言感想]
長い戦いも、ようやく終盤が近づいてきたでしょうか。
果たしてマサシ達は戦いに勝利できるのか?