マサシチームVSエンスチームの激闘は、いつの間にか大会参加者の大多数が観戦している状態になっていた。
 最初はアロナシティの広場で行われていただけに、注目度はかなり高かったらしい。

 否、それを抜きにしても予戦内ランキングの頂点に立つチームがバトルをするとなれば、自然と野次馬は集まってくる。
 現に、遠くからでも彼らの戦いを眺められる場所に、観戦目的の出場チームが陣取っている。
 だが彼らはそんな事はお構い無しにバトルを繰り広げる。

 休憩を終えて、バトルを再開するところだった。

「能力回帰:『究極段階<エクストラレベル>』発動」

 マサシがグレイシアを戦いに出し、この指示を出した事で戦いは再び動き出した。







COM マスターリーグ編
第27話
VSエンスチーム−X







 Phase.97 中盤戦





「グレイシア、ふぶき=I!」

「ゴーストハンド=I!」

 マサシは最初から、フルパワーの氷の暴風を浴びせて攻撃を仕掛ける。
 それをエンスのヨノワールは、巨大化した半透明な掌で防いでしまう。

「…ビクともしない!?」

「確かに凄ぇパワーだ。けどな、このヨノワールは幾度と無く俺達を護ってきた最強の防御力を持つポケモンだ。そう簡単にはやられねぇよ」

「それに加えて、今は天属性の力も上乗せされている…か。フルパワーのふぶき≠ェ通用しないとなると…」

「『バーストブレイク』発動 ブラストバーン=I!!」

 そんな時、マサシの背後から轟音と熱風が吹き荒れた。
 アヤのバクフーンが再び『バーストブレイク』を発動し、青白い業火を発射したのだ。

「ヨノワール!」

 先程、この『バーストブレイク』の破壊力を身をもって味わったエンス。
 だがヨノワールに指示を出した時の彼の表情に、曇りは無かった。

 護り切る自信の表れなのだろうか。

「ぶち破る………!!」

 先ほどの休憩のお陰なのか、バクフーンのパワーもすっかり回復していた。
 その威力は、最初にドサイドンを撃破したときよりも更に上がっていた。
 ヨノワールも持てる力の全てを駆使し、アヤの攻撃を防ぐ。
 ズドォォォォォォンッ!!



 競り合いが続く中で、大爆発が発生。
 ヨノワールの掌に、火傷の跡が目立っていた。

「フロストウィンド=I!」

 だがマサシは、エンスチームとの戦いの中でどんどん力を付けてきている。
 それは今も同じで、今までのふぶき≠遥かに上回る冷気の暴風を放つ。

「ゲンガー!!」

 咄嗟にエンスはゲンガーを繰り出し、応戦する。

「シャドーミスト=v

 エンスの指示で、ゲンガーの姿が変化する。
 ゲンガーそのものが、黒紫色の霧に変化したのだ。

「!」

「元が『ガス状ポケモン』に分類されるゴースの最終進化系だ。この位のことは出来て当たり前だと思わなかったか?」

 エンスの言う通り、元々がガス状と分類されるゴース系列ならではの技と言える。

「だが、霧になったのなら風系には弱い筈! フロストウィンド≠ナ、一気に吹き飛ばす!!」

「それを俺のヨノワールが防ぐのさ。ゴーストハンド=I!」

 再び、半透明で巨大なヨノワールの掌が立ち塞がる。
 先ほどは自身の攻撃を防がれた技を前にして、マサシの口元には笑みが浮かんでいる。

「そう何度も、同じ技でやられるような事はない。俺とて、新たな戦い方は前々から考え付いていたからな」

 マサシの言う通り、グレイシアの技は容易にヨノワールの防御を打ち破る。
 そして、霧化したゲンガーもろとも、周囲を凍らせつつ吹き飛ばした。

「ちょっと待て、このパワーは何だ…! アヤの『バーストブレイク』程じゃないにしても、この破壊力は一体…」

 さっきまでのマサシとは明らかに違う、今の技の破壊力。
 流石のエンスも、それには戸惑いの反応を見せていた。

「前に2人には話したことがあったよな。『究極段階<エクストラレベル>』発動状態で、戦闘能力の加減が出来るようになったと」

「そういえば、コルカと戦った時にそんな事言ってたわね…」

 頷きながら、そのときの事を思い出したアヤ。
 だがそれと、今の攻撃力の急激な上昇の関連性に首を傾げる。

「最初のふぶき≠ヘフルパワーで撃ったんでしょ? なのに、こんな急に攻撃力を上げるなんてこと…」

「今のもそれの応用だ。『究極段階<エクストラレベル>』は、俺の手持ちの全能力を爆発的に上昇させる。だがそれだと、何かしらの能力に特化した奴が相手じゃ太刀打ちできないと考えていた」

「例えば、私みたいに攻撃に特化してる…とか?」

「ナリサさんの防御特化の手持ちにやられた時から考えていたんだ。どうすれば、今以上に強くなれるか…と。そして見つけた答えが、さっきのだ」

「何をしたのかサッパリ解らなかった…。一体何を?」

「『究極段階攻撃特化=ャGクストラレベル:ブレイクシフト>』。この状態のときだけは、フルパワーを更に上回る攻撃力を発揮出来る」

「成る程な、道理で受け切れなかったわけだ。にしても、本当にお前らは凄ぇよ。最初は全員一丸でも俺一人にすら及ばなかったのに、今じゃ3人がかりとは言え俺とこうして互角に渡り合ってるんだからな」

「エンス、褒めたって何も出ないぞ!!」

 一度ゴーストハンド≠ニいう技を破ったからと言って、次もそう上手くいくという確証は無かった。
 だから、技を出す隙を与えない至近距離から攻撃を仕掛けようと、ヨノワールに急接近する。

「おっと、ゲンガーを忘れるなよ」

 並のポケモンを遥かに上回るスピードで接近していた筈が、いつの間にか霧状のゲンガーに先回りされていた。
 この距離では、ゲンガーを吹き飛ばそうとしてもヨノワールの防御技によって防がれる。
 そう判断したマサシは、一旦グレイシアを呼び戻そうとした。

「間に合わねぇよ」

 攻撃を中止してグレイシアが下がるのとほぼ同時に、霧状ゲンガーがグレイシアを覆い込もうと動き出す。
 だがその途中でグレイシアのスピードが急激に上昇、ゲンガーが追い付けないほどの速さを発揮した。

「成る程な。攻撃特化<ブレイクシフト>ってのがあった時点で予測はしてたが…」

「そうだ。今のは速度特化<アクセルシフト>=B言わなくてもわかると思うが、スピード特化の状態になれる」

 そしてマサシの元に戻ったグレイシアが、いつの間にかその場から居なくなっている。
 いつの間にか、ヨノワールの背後上空に回りこんでいた。

「フロストウィンド=I!」

 完全に死角からの攻撃だった。
 マサシ自身も完全に不意を衝いたと確信を持った一撃だった。

「やっぱりな」

 だが、完全に不意を衝かれた筈のエンスは、何故か冷静さを保ったままだった。

「思ったとおり攻撃力が低いな。速度特化<アクセルシフト>や攻撃特化<ブレイクシフト>は一定の能力に限っては最強の力を発揮する。が、それ以外の能力は平均並の力しか発揮できないようだな」

「…っ。じゃあ今のは、それを確認する為に態と喰らったって言うのか」

「まあ、そういう事だ。正直な話、お前らの成長には目を見張るところがある。が、それじゃまだまだ俺を倒せるレベルじゃないな」

「…っ」

 エンスの発言と今の状況に、歯を食いしばるマサシ。
 それと同時に、彼は掌を強く握り締めていた。

 マサシチームVSエンスのバトルは、現状ほぼ互角。
 だが今後、徐々にマサシチームは追い詰められていく…。







 Phase.98 最後の一撃





「行け、ゲンガー!!」

「アヤ、ユキヤ! 2人はあのヨノワールを引き離してくれ。俺はゲンガーを!!」

「解ったわ!」

 ユキヤも、言葉こそ発しなかったものの、小さく頷く。
 バクフーンの火炎攻撃による爆発を合図に、マサシチームが動き出す。

 爆発によって、2匹は別々の方角に回避する。
 だがそれぞれの逃げた先に、マサシ達の姿。

「さて、こっちは遠慮なく行くわよ!!」

「これ以上梃子摺るわけにもいかないか」

 冷静に呟きながら、ユキヤはアヤとポケモン達に視線を向ける。
 先ほどの休憩で幾分か体力が戻ったと言えど、所詮焼け石に水。
 これだけの激闘が続いていれば、その回復効果もすぐに無くなってしまうのは解りきっていた。

 そして今現在の体力で、これ以上戦いを長引かせるわけにもいかなかった。

「『バーストブレイク』…! さっさと片付ける!!」

「同意だ」

 やはり言葉には出さなかったのだが、ユキヤのサンドパンも『ブレイクヴェール』を発動した。
 強化された2人のポケモンが、同時にエンスのヨノワールを攻撃する。

「悪いが、もうお前らの攻撃はそう簡単には通さねえよ。ヨノワール、ゴーストハンド=I!」

「その技はさっき、私のバクフーンが破ったわ!!」

 さっきと同じように、懇親のブラストバーン≠発射する。
 だが今回は、最大の一撃を喰らったにも関わらず、ヨノワールはビクともしなかった。

「そんな…! どうして!?」

「マサシのお陰だな。奴の新しい力を俺なりに応用して、天属性の力をゴーストハンド≠フ防御能力に上乗せさせてもらった。もう、お前らの攻撃は通じねえよ」

「破壊爪<デストラクションエッジ>=@『刹那二連』」

 ユキヤもまた、持てる限りの力を振り絞って最大レベルの技を繰り出す。
 重く鈍い音が連続で響き渡るものの、やはりヨノワールの防御を打ち破る事ができない。

「シャドーボール=I」

 疲弊したところで、ヨノワールが攻撃に転じる。
 漆黒に塗り潰されたエネルギー球体を発射して、アヤ達に攻撃する。

「バクフーン! かえんほうsy…」

 指示を出そうとした矢先、バクフーンが両手を地面につく。
 やはりこれだけの長期戦に加え、『バーストブレイク』という新たな力に馴染んでいなかったせいなのだろうか。
 限界が、近付いていた。

「バクフーン! まさか、限界なの!?」

 苦しそうな表情を見せるバクフーンの身を案じるアヤ。
 だが、それでもバクフーンは身体を起こす。
 その瞳から、まだ闘志は消えていなかった。

「無理はしないで! これだけ長い間戦ってるんだし、限界が来ない方がおかしいわよ!!」

 だがバクフーンは、アヤの意に介さず戦う姿勢を見せる。
 せめて、あのヨノワールだけでも倒す…と。
 バクフーンの方から、そんな決意をアヤは感じ取った。

「あんまり無理はさせられない。だからこの次の攻撃が、私達の最後の一撃になるわ!」

「俺も力を貸す」

「ユキヤ…?」

「お前のバクフーンと同じで、俺のサンドパンも体力の限界だ。もうこれ以上戦いを継続するだけの余力は無い」

「ユキ…、!!」

 バクフーンの方に意識が向いていて、完全に油断していた。
 先程ヨノワールの放ったシャドーボール≠ェ、アヤ達の眼前に迫っていた。

「破壊爪<デストラクションエッジ>°極形態 破光爪<ブライトコロッサス>!!!」

 ユキヤの指示した技を発動する前に、左手の爪でシャドーボール≠弾いた。
 そして改めて相手のヨノワールを見据えると、全身に張り巡らせたエネルギーが更に膨張し始めた。

「…!」

 それだけでもアヤが息を呑むほどの力だったのに、更に今度はそのエネルギーが右腕に集中し始める。
 技が完全に発動した時、サンドパンの右腕全体を覆う、巨大な光の槍のような形状になっていたのだ。

「凄い……!!」

「アヤ、遅れるな」

「…! 解ってる!」

 ユキヤの呼び掛けで我に返ったアヤ。
 アヤもまた、バクフーンに指示して全身に蒼炎を纏う。

「もうこれが最後の一撃になるから、出し惜しみもしない! 『バーストブレイク』状態からのバースト・ストライク=c。正真正銘、今の私に出来る最強の一撃!!」

 アヤとユキヤは、真正面からヨノワールにぶつかっていく。
 ヨノワールもゴーストハンド≠発動して、完全に防御する意向を見せている。

「流石に今までのゴーストハンド≠カゃ無理がありそうだな。ならば!」

 ここで更に、エンスが動きを見せる。
 ゴーストハンド#ュ動により出現した巨大な半透明の掌。
 それが形状を変え、天属性の白銀の輝きに変化した。

 単なる防御としてではなく、それ自体が膨大なエネルギーを持った技。
 迂闊に攻撃すれば、逆に身を滅ぼすことになりかねない。

「そう来る事は予測済みだ。 だから俺が先陣を切った」

 よく見ると、同時に飛び出したように見えて、実際ユキヤがアヤの前を行っていた。

「天属性の力を上乗せしたのが仇になったな。その防御、打ち破る!」

 先程発動した、ユキヤの持てる全ての力を駆使した最大の技。
 その技を以って、ヨノワールに真正面から激突する!





 両者の技の激突している箇所を中心に、光が収縮運動を見せた。
 その直後、圧縮されたエネルギーが一気に解き放たれて凄まじい大爆発を引き起こす。
 ドゴォォォォォォォォッ!!!!!



 その爆発を前に、まるで木の葉のように吹き飛ばされるユキヤとサンドパン。
 だが最後に、一言だけアヤに言葉を投げかけていた。

「後は、お前が…」

 そこまで言葉を発したところで、背中から地面に激突。
 ユキヤ自身ボロボロで、サンドパンは既に限界を迎えていた。
 そしてアヤは、ユキヤの頑張りを無駄にしないためにもこれで決める事を決意する。

 今の一撃で、ヨノワールの防御は打ち破られた。
 つまり現状ヨノワールは無防備な状態。
 決着をつけるならば、今この瞬間を置いて他に無かった。

「バースト………、ストライク=I!!!!」






 威力と規模だけで言えば、アヤの技のほうが上だったかもしれない。
 周囲には高熱の熱風が吹き荒れ、更地だったこの場が粉々になるほどの大爆発。
 今のこの光景が、アヤの最終攻撃の凄まじさを物語っていた。

「私達は………、ここまで…。マサシ、後は…」

 そこで事切れて、アヤはうつ伏せに倒れこむ。
 彼女から少し離れた所でバクフーン。
 そして、エンスのヨノワールも地面に倒れこんでいた。







 Phase.99 マサシ1人





「…! アヤ、ユキヤ!!!」

 先ほどの最大の攻撃によって、2人が倒れたのをマサシは視界に入れる。
 咄嗟に駆け寄ろうとするのだが、それもゲンガーによって阻まれる。

 霧状になったゲンガーは、予測のつかない完全に不規則な攻撃を仕掛けてきて、マサシを掻き乱していた。

「(さっきのあれだけの大技、恐らく全力を込めたものに違いない。そうなると、2人ともここでリタイアか…)」

 今のこの状況を認識すると、マサシの周囲に漂う雰囲気が変わった。
 目に宿る光が、鋭利な刃物のような鋭さを感じさせている。

「『攻撃特化<ブレイクシフト>』:フロストウィンド=I」

 霧状ゲンガーは、マサシとグレイシアの周囲を覆うように展開していた。
 そこでマサシは、フロストウィンド≠竜巻状に放つ応用技を繰り出す。
 攻撃特化<ブレイクシフト>に移行しているのだが、その威力は最初に発動した時よりも更に上。
 マサシの変化と共に、グレイシアの能力も増大しているような感じだった。

 その冷気の竜巻の規模もどんどん増大し、霧状のままでは満足な活動が出来ないほどになった。
 やむを得ず元の姿に戻るのだが、そこをマサシは見逃さなかった。

「ハイドロカノン=I!」

 オーダイルによる狙い撃ち。
 それは完璧なタイミングで放たれ、ゲンガーを撃ち抜いた。
 天属性の宿ったゲンガーを一撃で仕留めるほど、マサシ達の力が増大していた。

「マサシ…」

 肌で感じ取っていたマサシの変化に、顔色を若干悪くしたエンス。
 もしかしたら、何か良くない『スイッチ』を入れてしまったのではないか…と。
 そんな考えを持たせるほどだった。

「アヤ、ユキヤ…」

 いつの間にかマサシは、2人が倒れている場所へ移動していた。
 身を屈めて様子を伺うが、反応は無い。
 2人とも、意識を失っていた。

「…」

 それを確認すると、無言のままマサシは立ち上がる。
 否、立ち上がってから一言だけ囁いた。

「2人ともありがとう。後は、俺が決着を付けてくる」

 それだけ独り言のように囁くと、改めてエンスの方を振り向く。

「仲間が倒れたって言うのに、随分素っ気無い態度だな?」

「俺は今まで、周りの連中に頼りすぎていたのかもしれないな」

「…?」

 突然マサシが話を始めたので、エンスも思わず黙り込んでしまう。

「考えてみれば、俺はこのマスターリーグは皆に助けられてばかりだった…」

 そんなマサシの脳裏に一番最初に蘇ったのは、コルカチームとの戦いの時。
 『究極段階<エクストラレベル>』の発動に躊躇していた時、激を入れてくれた二人。

 ヒダシティでチルナを相手に戦った時、最後の最後でクニヤチームに助けられた時の事。

 そしてつい先日、暴走したレクトとの戦いの時、全く歯が立たなかったときにエンスに助けられた事など。
 思い起こせばこの旅の中、マサシは数多くの人々に助けられてきていたのだ。

「助けられる事を、別に悪いとは思わない。でも俺はいつの間にか、どんな時でも助けてくれる奴がいる…と思い込んでいたのかもしれない。だけど万が一、もし俺が1人になった時に何も出来ない」

「…」

「人間1人でやれる事に限界はある、だから仲間と苦難を共に乗り越える事は大切だ。だがその仲間が居なくなった時、1人でやれる事には限界がある と言う事を言い訳にして屈するのも駄目なんだ。助け合うばっかりだけじゃなくて、もっと頑張るべきだったんだ」

「それで、どうするんだ?」

「勿論、最後の最後まで戦い抜くさ。2人は最後に俺を信じて、後を託してくれた。だから俺が、ここでこの戦いを投げ出すわけにはいかないんだ」

「ほぅ」

「仲間と苦難を乗り越える事と、1人で巨大な困難に立ち向かっていく勇気。そのどちらもが大切だ。だが俺は今まで、遥か格上の相手と戦う時はいつも誰かが隣に居てくれてた。それが自然になっていた。だけど、そんなんじゃいつまで経っても俺は強くなれない、ポケモンマスターになんかなれる筈が無いんだ。ポケモンマスターになれるのは、たったの1人だけなんだからな」

「…」

「隣に立つ奴が誰もいなくなったとしても、俺は1人で…。否、俺と俺のポケモン達で最後まで戦う。それこそが、俺を信じてくれた二人の期待に応える事になる」

「いい表情<かお>だな。マサシ」

 それだけ喋っているうちに、マサシから凄まじい気迫を感じ取ったエンス。
 先程持った考えは、間違っていたと言う事をすぐに認識する。
 彼が押してしまったスイッチは、悪い方向への誘導などではなかった。

 マサシの覚悟を決めさせ、覚醒を促すものだったのだ。
 彼の活き活きとした表情から、エンスはそれを感じ取る事が出来た。

「オーダイル、グレイシア」

 マサシは一旦、今現在戦える2匹を手元に呼び寄せた。

「もう戦えるのは、俺達しかいない。だけどここまで来た以上、負けるわけにはいかない。アヤ達の分も、俺達が頑張らないとな」

 2匹も同時に頷く。
 皆、決意は同じのようだ。

「エンス、ここからが本当の勝負だ。俺は仲間達の分も戦い、そして必ずお前を倒す!」

 マサシはエンスに指を刺し、公言した。
 その最中、マサシは思い出していた。

 チルナと戦った時に発揮した、未知なる大いなる力が発動した時の事を…。



―――あの時は俺は、チルナを許すことは出来ず、何が何でも倒すと必死だった。

―――その気持ちはこいつらも、同じだった。

―――トレーナーとポケモンの、全く同じ思考。

―――つまりは同調。 それが架け橋となって、あの力を目覚めさせた。




 ………今なら、行ける。

「行くぞ、エンス!」

 その言葉を合図に、マサシから溢れ出た天属性のエネルギーが2匹に流れ込む。
 そしてそれが切欠となり、大いなる力が覚醒する。
 銀色の爆発と共にそれは今、解き放たれる。


 互いに死力を尽くす壮絶な戦い。
 次回、遂に決着の時が訪れる。







 To Be Continued






 Phase.EX5 番外編その5





 シュンとマユミは、ノモセシティにある大湿原のサファリゲームに挑んでいた。
 まずはゲートの設けられていた区画を中心に、2人は散策していた。

「よ〜し、行けー♪」

 マユミはまず、すぐ近くをうろついていたスボミーに狙いを定めた。
 此方に背を向けたタイミングを見計らってボールを投げ、あっさりと捕獲に成功する。

「幸先良いスタートだね、マユミ」

「うん♪ やっぱりこの大湿原、今まであんまり見たことの無いポケモンが沢山いる。さっきシュンの言ったとおりだったね♪」

「まあ、来てよかったでしょ?」

「そうだね♪ ただ、この湿った感じはどうにも好きになれないけど」

「まあそれは仕方ないよ。それより、もっと散策してみようよ」

「賛成♪」

 ボールの数には限りがあるので、あんまり同じエリアでうろついていては勿体無い。
 早速2人は大湿原の中を移動する電車に乗り込み、もっと奥の方へと向かった。



「ここ、ちょっと入り組んでるね…」

 二人がやってきたのは、ゲートからかなり離れたエリア。
 そこはあちこちに高台があったり池があったり、道がかなり入り組んでいる場所だった。

「でも、さっきの場所にはいなかったポケモンもいるよ。ほら」

 早速シュンは指差す。
 その先には、木の枝の上で呑気に眠っているホーホーの姿。

「ホーホーは夜行性のポケモンだから、今の時間帯は眠ってるんだよ」

「眠ってるなら結構捕まえやすいよね♪ それ!」

 という訳で、ホーホーも捕獲。
 今度は水辺のポケモンを散策しようと、池の周囲を歩いていた。

「あ! マリルだ♪」

 水辺を歩いていて、マリルを見つけたマユミが喜びの反応を見せた。
 今まで彼女が旅をしてきた中でも、野生のマリルは滅多に見られないほど珍しいポケモンだった。
 それが目の前に現れて、マユミは喜ばずにはいられなかった。

「それ!」

 こうして、マユミはサファリゲームで3匹目のポケモンを捕獲するのだった。





 だいぶ時間は流れ、夕暮れ時。
 サファリゲームを終えた2人は、ノモセシティのポケモンセンターに足を運んでいた。

「結構楽しかった♪ 沢山ポケモンを見られたし、来てよかった〜」

「マユミ、それじゃあそろそろ帰ろうか?」

「うん、結構遅くなっちゃったし」

 一息ついた後、2人はカンナギタウンへ戻るために歩き出す。
 だが、この先小さな波乱が巻き起こる事になる。

「…っ」

 急に頬が冷たく感じて、手を添えたシュン。
 その掌を見ると、若干濡れていた。

 それに反応して上を見上げると、空が分厚い黒雲に覆われていた。

「一雨来そうだね。何処か雨宿りできそうな場所を探した方がいいかもしれない」

「そうだね。流石に、土砂降りの中を歩きたくないよ」

 とは言うものの、今彼らが通っている場所は先ほどまで居た大湿原程ではないにしても、あちこちに泥沼が存在する。
 日常的に雨が降っている地域であるが故に、このような事になっているのだろう。

 更に運の悪い事に、今回シュンはポケモン達を連れてきていなかった。
 ゆっくりと楽しみたかったと言う理由でポケモンを置いてきた事が裏目に出てしまった。

「私もそんなに強いポケモンなんて持ってないし…。どうしよう」

「あそこから高台に上れそうだ。そこを通ってこの沼地を抜けよう」

「うん♪」

 とりあえず高台に上れそうな場所は見つけたものの、そこはかなり険しい場所だった。
 ゲーム的に言うなら、ロッククライム≠ナ登ったりする場所 とでも説明すればわかりやすいだろうか。
 崖の所々に突起している箇所があり、そこを上っていくしかなかった。

 まあ崖と言っても、その高さは精々5〜6m。
 頑張ればロッククライム*ウしでも上れない高さではない。

「う〜ん…。この崖、僕なら何とか上れそうだけど、マユミには無理がありそうだな…」

「なら、シュンが上から引き上げて。それなら問題ないでしょ?」

「そうするしかないか…」

 シュンは持ってきた荷物袋の中を確認する。
 その中にロープが入っているのを確認し、シュンが先に崖をよじ登る。

 実に軽快な動きで、シュンは1分ほどで崖を上りきった。

「マユミ! 今からロープを下ろすよ!」

 上から聞こえてきたシュンの声。
 それから程なくして、上からロープが伸びてくる。

「いいよ、お願い!」

 しっかりとロープを握り締めたところで、シュンに合図するマユミ。
 その声を聞いて、シュンは全身の力を振り絞ってロープを引き上げ始める。

 幸いマユミはそれ程おm(バキッ)。
 然程時間が掛からずに引き上げる事が出来た。

「ふぅ…」

 流石に少し疲れたのか、腰を下ろすシュン。
 だがそんなタイミングで…。

「あ、降って来た…」

 掌を仰向けにして、マユミが呟く。
 よりによってこんなタイミングで、雨が本格的に降り始めたのだ。

「何処か雨宿りできそうな場所を探した方がいいね。このままじゃ風邪をひいちゃう」

「うん」

 即座にシュンは立ち上がり、マユミと2人で降り頻る雨の中を駆け抜ける。
 もし先ほどの崖を上っていなければ、この雨の中で沼地を突破しなければならないと言う、最悪の状況に陥っていただろう。

 2人は現在、木々が生い茂る雑木林の中を突き進んでいた。
 お陰で頭上から降り注ぐ雨はかなり少量だった。

「あ、マユミ! この先で何か光ってる!」

 視線の先で、何かの明りが灯っているのを確認したシュン。
 急いでその先へ向かってみると、そこにあったのは一軒の小屋。
 有無を言わず、雨宿りをするために2人はその小屋の中に足を運ぶのだった。







 次回は、前編後編に分けてお送りいたします。

 

[アットの一言感想]

 ユキヤとアヤが共に倒れてしまい、いよいよマサシ1人で戦わざるを得なくなりました。
 戦いの決着は近そうですね。
 さて、番外編の方は、何かしら本編の方に関わってくるのでしょうか?

 

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