ミオンとの戦いの後、マサシ達はナギサと別行動を取る事になった。
そうすぐに動きがあるわけでもないので、当分はナギサからの連絡を待ちつつラジルシティを目指すことになる。
無論、予選内ランク第1位の座を狙って戦いを仕掛けてくるチームも後を絶たない。
いずれ訪れるであろう大きな戦いが巻き起こるまで、彼らの苦労は続いていく。
COM マスターリーグ編
第30話
激突 前兆編−T
Phase.111 束の間の日常
マサシ達は旅の途中、とある建物に足を運んでいた。
立ち寄った町中にある喫茶店だ。
休息も兼ねて、ここで3人は注文を取っていた。
……のだが。
「え、ユキヤってそっち派なの?」
「それがどうした?」
「いやー。ちょっと以外だって思って…」
現在3人は、喫茶店でコーヒーを注文したところ。
なのだが…。
ユキヤはコーヒーに、角砂糖を沢山入れていた。
平均的な量より、明らかに多いほどだ。
「どうにも、これ位入れないと飲めなくてな」
「まあいいよ。人それぞれだからさ」
「そういうマサシは殆ど入れてないじゃない」
「俺はそこまで甘いのは好みじゃないからさ。アヤは知ってるだろ?」
「う…、そう言えばそうだったわね。マサシって昔っから、甘いものはあんまり口にしなかったもんね」
マサシとユキヤは、まさに両極端といった感じだった。
残るアヤは、そんな2人の中間辺り。
何というか色々な意味でバランスが取れている気がする、このチーム(何)。
「それでマサシ。ナギサから何か連絡はあったの?」
「おま…。アヤ、それは流石に気が早いってもんじゃないぞ?ナギサと別れたのは昨日の話だぞ…」
「でも、やっぱり気になるから…」
「焦っても何にも良い事はない。今は、あいつを信じて連絡が来るのを待つしかない。俺達は俺達で、やるべき事をしっかりやらないと」
「…そうね。確かに、ちょっと焦ってたかもしれないわ」
「どっちにしろ、近いうちにまた大きな戦いがあるんだ。そうなれば、今みたいにのんびりする事も出来なくなるんだ。なるべく、今のうちに満喫しておかないとな」
「…そうね。 って、ユキヤ。まだ入れるの!?」
会話をしながら、ユキヤは更に角砂糖をとけこませている。
最早、コーヒーとは呼べないようなレベルかもしれない(爆)。
「何だかな…」
何だかんだ言いつつ、和やかな雰囲気になっていくのだった。
喫茶店を後にして、マサシ達は町中へ繰り出す。
然程広大な訳でもなく、そこまで発展している訳でもない。
ごく平凡な、どちらかといえば田舎町という雰囲気がある。
「それにしても、本当に今更だが…」
「? どうしたのマサシ?」
「いや…。このヨハロ地方って、暑いよな」
「…本当に今更だな」
ユキヤが呆れ果てたかのような口調でマサシに言葉を返す。
そんな言葉を発するマサシの全身から、汗がにじみ出ていた。
「だけど、マスターリーグ開催中とは言え…。表向きはこのヨハロ地方、平穏だよな」
マサシの言う通り、今彼らの滞在している町。
大通りを人々が行き交い、それぞれの家の敷地内で子供達が遊んでいる。
どうみても、何処にでもあるような日常的な光景だった。
「出場者同士の戦いが目の前で起こる可能性もあるっていうのに…。随分長閑だな」
「…長閑? マサシ、貴様にはそう見えるか」
「ユキヤ…?」
今のマサシの『長閑』という発言に対して、どこか苛立ちを見せたユキヤ。
それを見て、マサシはハッとしたように言葉を発する。
「そうか…。この町の住人達の中にも、身内がトレーナーとして旅に出さされた人が居るってことか」
「そうだ。無事に帰って来るのかどうか解らない中で、平穏に暮らす事など出来ると思うか」
「無理…だよな。悪かった、考え無しに喋ったりして」
「気にするな。俺個人が、今のヨハロ地方を良く思っていないだけだ」
「…」
「ねえ、ところでこれからどうするの? もうしばらくこの町に残る?」
「否、俺達にはもう時間がない。あんまりのんびりしすぎるのも問題だ」
「解ったわ。じゃあ、すぐ出発しよう」
2人の同意もあって、マサシ達はすぐにこの町を出るのだった。
先ほどの町を出て、3人は西へ向けて旅を続けている。
ラジルシティは、ヨハロ地方南西区域で最大の町。
その凡その位置は端末に備え付けのマップ機能で確認している。
そのため、3人の足取りは速かった。
ヨハロ地方の北西エリアが山岳地帯。
北東エリアが雪原地帯。
南東エリアが砂漠地帯といった感じだったように、南西エリアにも大きな特徴がある。
それは…。
「うわ〜、これは時間掛かりそうだな」
北西エリアの山岳地帯から流れてくる清流が、至るところに張り巡らされている。
それらが複雑に絡み合う川となり、3人の進行速度を遅くしていた。
「本当に川が入り組んでるわね。一直線で進むにしても、何回川を渡る羽目になるのかしら」
「それも問題だが、問題なのはバトルの方だ」
「俺とアヤは、この地形では満足に戦えない事か。手持ちの大半が、水系に弱い」
「だから2人とも、周囲を常に警戒しておけよ。この地形じゃ、満足に戦えるのは俺だけなんだから」
「とは言っても、常に気を張り詰めているわけにもいかないだろう。今のところ周囲に気配は無い」
「…まあ、確かに川の流れがする以外は静かなもんだよな」
「少し休憩しよう。そろそろ水筒の中身が空になる頃じゃないか?」
「う、確かに…」
マサシに言われて、2人も道具袋に入れてある水筒の中身を確認する。
案の定、彼の言う通り中身は殆ど残っていなかった。
「この川の水は透き通ってて綺麗だ。普通に飲んでも問題は無いだろう」
試しにマサシが、流れる清流から水を一口分掬い取って口にする。
「美味しい。これなら普通に大丈夫だ。水筒に汲んでいこう」
マサシに促されて、二人も水を汲んだ。
水分補給もすることが出来て、3人の足取りも心なしか軽くなっている雰囲気だった。
今は大きな狩猟者の影も無く、至って平穏な日常。
この時だけは、3人も思い切り羽を伸ばす旅をすることが出来るのだった。
Phase.112 狙われたクニヤチーム
川が複雑に張り巡らされ、ヨハロ地方南西エリアは緑が豊かだ。
マサシ達は、そんな自然豊かな中を横断している最中だった。
そして運がよいのか、この所全くと言っていいほど出場チームとは出くわさない。
「ねえ、マサシ…。ラジルシティはまだなの?」
「まだまだ掛かるな…。今俺達は、南西エリアの南側海岸線寄りの位置に居る。アロナシティからほぼ真西に進んでたから当然だけどな」
「で、そのラジルシティは方角的にどっちになる」
「やや北西の方角だな。南西エリアのほぼ中心にあるみたいだ」
「よーし、そうと決まったら早速北西に向かうわよ!」
「おいおい、あんまり先走るなよ?」
やや早足で北西へ向かうアヤを抑制させる言動をしながら、2人もその後を追っていく。
「しかし、本当に移動しづらいよな。この南西エリアは」
一口に北西へ向かうと言っても、前述の通り川が複雑に張り巡っている。
空を行くのならまだしも、地上を歩いて行くとなると、そのペースはどうしても遅くならざるを得ない。
「それにしても静かだ。川の流れと風以外、何も音がしない」
「そうだな。風に乗って流れてくるバトルの音とかも一切しない」
「この南西エリアに、そんなにトレーナーが集まっていないのかしら?」
「どうだろうな。ただこの静けさ、何か…」
普段ならこの静けさに身を任せたくもなるのだが、マサシはこの静けさに警戒を強めていた。
いくら広大なヨハロ地方とは言え、静かすぎると。
もしかしたら、『この辺りにもトレーナーは居た』のかもしれない。
仮にそのトレーナー達が、何者かの手によって全滅させられていたとしたら?
そんな思考を張り巡らせていた。
「マサシ、考えていても仕方が無い。先に進むぞ」
「ああ…」
マサシの推測は、当たっていた。
彼らがこの場に到達するほんの数分前、同じくこの地を旅していた出場チームが抹殺された。
既に狩猟者達はこのヨハロ地方に潜伏し、出場チームを狙う機会を伺っている。
そして、次なる標的は、以外にもマサシチームのすぐ近くに居た。
マサシ達の現在地から、北西に約2〜3kmの地点。
今そこを、予選内ランク第7位にまで上り詰めたクニヤチームが通り掛かっていた。
彼らの手には、この予選突破に必要な4つの証のうち、既に3つが揃っていた。
進行方向から考えて、丁度ラジルシティを出発したばかりのようだ。
「ふむ…、流石に予選終了まで1ヶ月を切っただけの事はあるみたいですね。勝ち残っているトレーナーのレベルも、かなり上がってきている感じだ」
3人は横並びで歩いている。
向かって右側を歩く、赤紫色の髪の毛の男・ダイシ。
彼がここ数日の戦いに於ける、率直な感想を述べていた。
「確かにここ最近戦うトレーナー達は手強いわよね。何と言うか、全員必死になって掛かってくるから…」
ダイシの発言に、頷くような反応を示すチームメイトのリミカ。
彼女は何故か、3人の中心を歩いている。
「ところで2人とも、気付いてるよね? ここ最近、このマスターリーグ内で不穏な空気が漂っている事」
「…!」
クニヤの指摘で、両者共に足を止める。
その瞬間、3人の間で張り詰めるような空気が漂い始める。
「それは勿論、気付いてますよ。ほんの数日前からですね、この怪しい空気が漂い始めたのは」
「この感じって、一ヶ月くらい前にあった、大会参加者を一掃しようって言う連中が暴れてた頃と同じよね?」
「うん。首謀者のレクトが未だに逃亡中っていう話だから、また行動に出ることは予測できたけど…」
「とうとう、本格的に動き出したって所ですかね?」
「そんなところだろうね。ここ一ヶ月身を潜めていたのは、力を蓄える為。前の騒動で失った戦力が補充されるのを待っていたって感じかな」
「しかし…、前の戦いの時でさえ、伝説のポケモンを従えるほどの強敵がいたのですよ?それ以上の敵など、流石に想像したくありませんね…」
若干青ざめた表情で、ダイシが呟く。
彼の言う通り、前の騒動の時、伝説のポケモンを従えた敵が大量に出没していた。
それを上回る力を持った敵の存在など、流石に考えたくなくなるのも当然だった。
ましてや、その力を一度直に見ているからこそ、尚更だった。
「大丈夫だよ。僕達だって、既に証を3つ集め終えてるんだ。前にカイオーガにやられた時と同じ状態ってことは無いよ」
「だと、いいんだけどね…」
すぐに返事をしたリミカの視線は泳いだまま。
2人とも、一ヶ月前のカイオーガ戦で、かなり堪えている様子だった。
「…2人とも」
クニヤが振り返って、2人に声を掛けようとした矢先の出来事だった。
彼の頬を『何か』が掠った。
それはとても鋭く切れる物らしく、その場所から多少の血液が滴り落ちていた。
「!!」
反射的にクニヤは、切れた場所を手で押さえる。
それと同時に、姿勢を低く屈める。
「クニヤ、その傷は…!」
「何処から攻撃されたのか解らなかった。一体…」
「ダイシ、頼むよ」
「解りました。こういうのは、俺の得意分野だ」
身を屈めたまま、ダイシはモンスターボールを手に取り、中に入っているポケモンを繰り出す。
紫色の身体と4枚の翼を持つ蝙蝠ポケモン、クロバット。
「探査型超音波<サーチウェーブ>=v
ダイシの手持ちポケモンは、索敵能力に優れた者が多い。
その能力で、広範囲に及んで隠れた敵の気配を探る事が出来る。
「………見付けました」
クロバットの超音波に反応があり、ダイシは口元に笑みを浮かべる。
「ここから東の方角、約200mくらいの距離ですね。そこに敵が居ます」
「リミカ、今度は君の出番だよ」
「任せなさい。ダイシが索敵能力に優れてるなら、私は…」
そう言ってリミカが繰り出したポケモンは、ジバコイル。
そして先程ダイシが口にした方角に、一寸の狂いも無く一直線の電撃を発射する。
「超長距離までも及ぶ、正確無比な遠距離攻撃」
とは言うものの、幾らなんでも普通に撃ってそこまでの距離の離れた相手にヒットさせるのは至難の業。
彼女は前もってジバコイルにロックオン≠フ指示を出しておき、ボールの中からダイシの指定した箇所に狙いを定めていたのだ。
「クラッシュボルト=I」
一度照準を合わせることが出来れば、威力重視の大技であろうと必中させられる。
ダイシとリミカ、この2人ならではの連携で相手を攻撃する。
本当に、予選開始直後の仲の悪さは何処へやらである。
「…っ!!」
そして、この超長距離砲撃が一寸の狂いも無く自分目掛けて飛んできたことは、敵にとっては想定の範囲外。
咄嗟に標的<ターゲット>となったポケモン、エアームドの身代わりとなるポケモンを1匹繰り出して何とか凌ぐ。
「この距離から、ここまで的確に攻撃を命中させてくるとは…。俺でさえ、この距離は相手の近くに撃ち込むのが限界だってのに…」
だが、男は一呼吸置いて策を練る。
長距離に於ける砲撃戦では、自分に勝ち目が無い事を察して、その場から後方に広がる樹海に移動する。
障害物の多い場所に身を潜めた事で、ダイシの索敵能力も上手く働かなくなる。
「…ん、向こうはどうやら遮蔽物の多い場所に隠れたみたいですね。位置を確認し辛い…」
「ここから東…。少し雑木林が広がってるね。その中に紛れてるんだとしたら」
フジヤは、敵の居た方角を凝視しながらハッサムを繰り出す。
そしてその方角にハッサムを向かわせる。
「行くよ。敵は出来るだけ減らしておこう」
クニヤに促され、二人も敵を倒すべく移動を開始した。
Phase.113 クニヤチーム 消滅…
「…ん?」
清流が張り巡らされる草原地帯を進む、マサシ達3人。
そんな中、ふとマサシが歩みを止める。
「マサシ、どうかしたの?」
「何か遠くのほうで、爆発音が聞こえたような気がしたんだが…」
「そう?私は何も聞こえなかったけど」
「気のせいだろう」
「……かもな。パッと見る限り、戦いが起こっている様子は無い。気にしすぎか…」
考えるのを止めて、マサシは再びラジルシティを目指して歩き出す。
だが、ここでマサシは足元の清流にバランスを崩して思い切り転倒してしまう。
「どわあああっ!!」
バシャアアアアア!!
思い切り派手な水飛沫が、辺りに飛び散った。
「何してるのよ、マサシ…」
「悪い…」
川から上がるものの、マサシの上着はすっかり水浸しになってしまっていた。
仕方なく荷物袋から代わりとなる衣服を取り出す。
今まで表記した事は無かったが、マサシは青を基調とする余り派手な模様の無いTシャツを身に纏っていた。
だが今度は、前着ていた服の色違いという感じの、黒い衣服に着替えていた。
「ラジルシティまではまだ距離があるけど、ここから西へ少し進んだ所に小さい集落がある。そこで一旦乾かそう」
3人は進路を西へと定め、歩みだすのだった。
その一方で、自分達を狙った敵の追跡をしていたクニヤチームの3人。
敵は雑木林に身を潜めたのだが、クニヤのハッサムが手当たり次第に探索を始めていた。
この調子なら、見付かるのも時間の問題だった。
「ちっ。何が取るに足らないレベルの連中だよ、フジヤの野郎…。普通に俺達にも匹敵する連中がゴロゴロいやがるじゃねぇか…」
実を言うとこの襲撃者、クニヤ達に攻撃をする以前にも、既に何度か別のチームを襲撃した事があった。
結論から言えば、この男の実力が低いわけではない。
少なくとも、前回の騒動で暴れまわった連中より高い能力を持っていることは事実。
だが何故か、この男が攻撃を仕掛けるチームに限って、予選内上位ランクのチームばかりだったのだ。
「はっ、運が無ぇ…。これで何度目だよ、こんな上位チームに喧嘩売っちまうのは」
ガックリと肩を落とし、愚痴のように独り言を呟く。
「だがまあ、俺は遠くからの狙撃しか芸が無いわけじゃない。地べたに這い蹲る事しかできないような連中に、俺が負けるはず無いんだからな」
そう言いながら、男は残るモンスターボール3個を手に取る。
今の彼の手持ちは、最初のエアームドを含めて4匹。
それらを総動員して、再びクニヤチームに攻撃を仕掛けようとするのだった。
「(天空を制する事こそが俺の本来の戦い方だ。その真髄を、見せてやるよ)」
心の中で呟き、男は雑木林から飛び出した。
「…! 2人とも、来たよ!」
一方で、男が潜む雑木林に向かって動いていたクニヤチームの3人。
チームリーダーであるクニヤが、敵が動きを見せた事に気付き、注意を促した。
遥か天空より、男の手持ちポケモンと思われるグライオン、トゲキッス、ピジョットが襲来。
敵は空に居るという利点を活かし、遠距離攻撃技で3人を甚振る魂胆らしい。
「ハッサム!」
それに対して、クニヤは一番信頼の置けるハッサムで挑む。
ボールから出現すると同時にこうどくいどう≠発動しつつ飛翔し、敵3匹と同じ高度にまで上り詰める。
「ピジョット、ねっぷう≠セ」
それと時を同じくして、雑木林の中から3匹のトレーナーである男が姿を見せる。
指示を貰い、その大きな翼を羽ばたかせ、熱気を持った暴風をハッサム目掛けて放つ。
その威力は並大抵の物ではなく、炎属性が最大の弱点であるハッサムは大きく吹き飛ばされる。
が、ギリギリのところで持ち堪えた。
「こらえる≠ゥ。だが、いつまで持ち堪えられるかな」
「ハッサム、ソニックスラスト=I」
クニヤの指示が出され、ハッサムが両手(?)の鋏を振るう。
すると、それによって空気が切り裂かれるような感じで3匹に襲い掛かる。
「中々やるが、だが俺には勝てないぜ。俺は空中戦の全てを知り尽くしているからな」
「どうかな」
「ただ単に技をぶつけあうだけの地上戦と空中戦は、全然訳が違うって言ってるんだよ。空中戦に於いては、様々な不安定要素が付き纏う。それらを肌で感じ取れなければ、空中戦とは言えないんだよ」
「…ハッサム、スピードスター=I!」
相手の言葉を耳に入れながらも冷静に、クニヤは指示を出す。
ハッサムが両手の鋏を開き、無数の星型の弾丸を発射する。
一発一発は大した威力ではないのだが、ハッサムの特性『テクニシャン』により、その威力は大きくアップしている。
「無闇に技を繰り出す辺り、まだまだ甘いな」
男が呟いた瞬間、突如この付近に突風が吹き荒れる。
その風の壁に阻まれ、スピードスターは勢いを失って墜落してしまう。
それだけではなく、その風の流れに乗ってグライオンが膨大なエネルギーを纏って突撃してくる。
「ギガインパクト=I!!」
ハッサムはそれを見て回避しようとした。
が、先ほどから吹き荒れる気流の所為で思うように動けない。
…そのまま、グライオンの突撃を真正面から食らうことになってしまう。
「ハッサム!!」
グライオンがハッサムに激突すると同時に、グライオンの纏っていたエネルギーが解放されて爆発を引き起こす。
最初のねっぷう≠ナ体力が限界に達していたハッサムはこれで墜落、戦闘不能になってしまう。
「クニヤ!」
「まずい…」
ハッサムが倒れたことで、一気に顔色が悪くなる。
今の攻防だけで、敵との力量差を感じ取ったのだ。
敵は、空中戦に特化した戦闘スタイルで、その実力は今の自分より遥かに上。
そんな相手に、空中戦を挑めない残りのポケモン達では、どう考えても勝負になる筈が無い。
「さよならだ、クニヤチーム。俺と出会ったことが、運の尽きだったな」
男がそう語りかけると同時に、残るチームメイト2人も動き出してたのだが、時既に遅し…。
その日、予選ランキング第10位 クニヤチームの名が、出場チーム一覧の中から消滅した…。
マスターリーグ予選終了まで、後26日。
To Be Continued
Phase.Ex6 番外編その6
ノモセシティからカンナギタウンに帰る道中、突如大雨に襲われたシュンとマユミ。
偶然近くにあった小屋で夜を明かし、快晴となった翌朝、再び出発していた。
「この道をこのまま進むとヨスガシティに出るから、そうすればカンナギタウンまでもう少しだよ」
「良かった♪ 早くシュン君の家でゆっくり過ごしたいし♪」
「はは、相変わらずマユミは元気だね」
昨日の大雨でこの辺り一帯の地面がぬかるんでいる為、足を取られて転ばないように注意しつつ、二人は進む。
「そういえばシュン君、何でそんなに強くなるのに必死なの? 別に、ポケモンマスターを目指しているって訳でもないんでしょ?」
ふとマユミが、今までシュンに対して抱いていた疑問をぶつける。
確かに彼女の言う通り、シュンにはマサシ達のようなマスターリーグ制覇、マユミのコンテスト言った制覇と言った明確な目標が無い。
そこがずっと引っ掛かっていたのだ。
「ある男を倒すためさ。マユミにはあんまり関係の無い話だから、聞き流してもらっても構わないけど…」
「関係なくないよ! だってシュンの事だもん」
「あのね、そういう意味じゃないんだけど…」
そんなマユミの返答に、思わず溜息を零して肩をガックリと落としたシュン。
でもそれが彼女らしさだと開き直って、話を始める。
「今から7年くらい前の話なんだけど…。兄さん達が、『とある敵』と戦った事があるんだ」
「…『達』?」
「そう。兄さんは沢山の仲間と一緒に、その敵と戦ったんだ。その戦いの中で、兄さんは敵の一人と相討ちになったんだ」
「相討ち…。でも、スバルさんは…」
「今から3年位前にね、偶然生きていたのが確認されたんだ。けどそれよりも前に、兄さんと相討ちになった敵も復活したんだ」
「つまり、シュン君はスバルさんの敵討ちをしたかったって事なのね? でも、スバルさんが生きてたのなら、その必要は…」
「敵討ちじゃないよ、今の目的は。 3年前、僕はそいつと戦って完全敗北した。だから、僕自身の借りを返す為にも強くなりたいと思ってるんだ」
「う〜ん、よく解らない話だけど…」
「だから最初に言ったじゃないか。マユミにはあんまり関係の無い話だって」
「でも、やっぱり私もシュン君を手伝いたいなぁ…。あんまり無茶な事して欲しくないし♪」
「えっ…。そ、それはこっちのセリフだよ。もしマユミが僕達の戦いに加わったとして、それこそ取り返しの付かないことになったら…」
ふとしたマユミの発言に、シュンは顔を赤くしてしまう。
「でも、その時はシュン君が護ってくれるでしょ?」
「…」
マユミからすれば、シュンを信頼しての発言だった。
その言葉を聞いた時、シュンの顔から赤みはすっかり消え去っていた。
「悪いけどマユミ、相手はそんな気楽な相手じゃないんだ。勝てるかどうかも解らない、生死が掛かった戦いなんだ。そんな危険な戦いに、僕は君を巻き込みたくないんだ」
「そんな…、私も!」
「マユミはどちらかと言えば、ポケモンコンテスト制覇のためにトレーナーになったんでしょ? 普通に考えたら、とても僕達の戦いに耐えられるとは思えない。どうしてもって言うなら、帰ってから僕とバトルだ。そこで判断するよ」
「シュン君……」
「済まない、君に解って欲しいんだ。これから僕達が挑む、敵の強大さとその危険さを…」
「…」
シュンの真剣な表情に気圧されたのか、マユミもすっかり黙り込む。
そんな事がありながら、2人はヨスガシティへと到着するのだった。
Ex.7に続く
[アットの一言感想]
珍しく今回のマサシ達にバトルは発生せず。
いつ敵が現れるかも分からないので、あまりのんびりはできないかも知れませんが……。
その一方で消滅するチームも存在し、まだまだ先行きは安心できなさそうです。