マスターリーグ予選終了まで残り27日に迫った今日、マサシ達はついにラジルシティに到着した。
 そこは、今まで旅してきたヨハロ地方の町の中でも桁違いの大きさだった。

「この広い町で、4人目の証を持ったトレーナーについての情報を集めよう。出来れば、6日以内には証を持ったトレーナーを倒し、リーラシティへ向けて出発したい」

「解ったわ。これだけ広い町なんだし、ポケモンセンターだって複数あるわよね」

「それぞれ散開して情報を集める。何か情報を見付けたらすぐに連絡しろ」

「オッケー。それじゃ、行動開始だ」

 かくして3人は、ラジルシティ市街地へ。
 そこで3人別々に行動し、情報を集める事にするのだった。







COM マスターリーグ編
第32話
激突 予兆編−V







 Phase.118 大都市の探索





 今、マサシ達が入ってきた場所は、位置的にラジルシティの南東方面。
 その入り口近くで、アヤは南西方面へ、ユキヤはそのまま北のほうへ歩いていく。
 残ったマサシはそのまま直進、即ち北西方面へ向けて歩き出した。

「しかし、結構な未来都市って感じだよな。コンベアーまであるとは…」

 ひとまず人の集まりそうな場所を探して町中を探索していたのだが、その町のハイテクさにまず驚かされた。
 町中に敷き詰められたコンベアーに、電光掲示板による案内板など。
 そのどれもが、最新鋭の技術を使っていると言う事が伺えた。

「(町の中を移動する手段に、モノレールまで使ってるのか…)」

 町から空を見上げて、たまたま視界に入ったモノレールの走る光景。
 そして先ほどの案内板を見た事からはっきりした、この町の面積。

 間違いなく、今までの旅で立ち寄ったどこよりも大きい町だった。

「これは、1週間でも足りるかどうか怪しくなってきたな…」

 町の大きさに驚愕しつつも、マサシは足を進める。
 一先ず、町の中心地を目指す。
 そこならば人も沢山集まるだろうし、他より規模の大きいポケモンセンターもあるのではという考えだった。

 地道に、情報を集める作業が始まるのだった。





「こっちは、何かハズレっぽいわね。全然人がいる雰囲気じゃないし…」

 一方、此方は最初に入ってきた町の出入り口から南西方面に向かったアヤ。
 だが今彼女がいるのは、一言で言うのなら工業地帯。
 ぐるりと付近を見回してみても、人の姿は疎らで、とても情報を集める事は期待出来そうに無い。

「この辺りにいても仕方ないし…。 せめて、この町の見取り図か何かあれば良いんだけど…」

 地図も無しにこの広い町を探索するのは無謀だと踏んで、アヤは一先ず近くの店に向かう。
 そこで、この町の地図を手に入れる。

「…うーん。やっぱりこの辺りはハズレみたいね。この辺りはラジルシティの居住区や商業区からかなり離れてるし…。近くにモノレールの発着場があるから、それに乗って市街地の方へ行ってみようかしら」

 丁度今アヤがいる場所から東へ少し歩いた所に、モノレールの発着場があった。
 その路線は北のほう、先ほどの地図と照らし合わせてみると商業区に続いていた。

「(そういえば、マサシはあの南東の入り口から北西へ向かったから、方角的にはマサシが向かったのと同じ場所になるのかしら)」

 そんな事を考えながら、アヤはモノレールに乗車して工業区を後にする。
 高い位置からラジルシティを眺めつつ、色々と考えに耽るのだった。





 そしてユキヤはラジルシティの東部、商業区東端の辺りで話を聞いていた。
 東端とはいえ、そこそこの賑わいを見せていて、人もそれなりに行き交っていた為話を聞く分には困らなかった。
 …しかし。

「情報無しか…」

 この付近で聞く限りでは、何の情報も得る事は出来なかった。
 商業区で話を聞いてもどうする事も出来ないと判断し、ユキヤは色々な人が集まりそうな場所を模索する。

「やはりポケモンセンターか。あそこならば、いろいろな所から来た連中とも話せるだろうが…」

 ユキヤはその考えに対して、別の警戒心も抱いていた。
 それは、センター内で別の出場チームや『狩猟者』と出くわす可能性。

「多少は危険を冒さなければ、有力な情報も手に入らんか。この状況では…」

 危険性も考慮に入れつつ、ユキヤは近くのポケモンセンターに足を運ぶ事にする。
 今後の捜索の拠点となる場所だった。

「………」

 だがその前に、ユキヤはもう一つ尋ねなければならない事があるのを思い出す。
 ポケモンセンターの場所が解らなければ、向かうに向かえなかったからだ(爆)。





 数分後、町の人から一番近くのポケモンセンターの場所を聞き、そこに足を運んだ。
 その位置は、商業区のほぼど真ん中。
 ラジルシティ中央広場から程離れた場所に位置する、この町で最大規模のポケモンセンターだった。

「…さて、ここなら」

「あれ、ユキヤ」

「!」

 そこで、偶然にもマサシと再会したユキヤ。
 思い返せばマサシは、最初からこっち方面に向かって進んでいた。
 こうした再会も、何ら不思議では無かった。

「お互い、何にも進展は無さそうだな」

「…ああ。どうやら、そう簡単に事は運ばないようだ」

「とりあえず俺はこれから、港区の方も聞いて回ろうかと思ってる。あそこも、ここと同じくらい人が集まりそうだからな」

「なら俺は、居住区でも回ってみるか。お互い有益な情報が得られればいいが…」

「そうなる事を祈ろう。じゃあ、少し休憩したら俺はまた行くよ、ユキヤ」

「ああ」

 こうして2人は再び別々に行動し、情報収集を開始する。
 だがマサシは、アヤの事を気にかけていた。

「あいつも、何か情報を手に入れてくれていれば良いんだが…」

 空を見上げて、そんな事を思いつつマサシは駆け出していくのだった。







 Phase.119 暴かれる潜伏者達







「ぐっ…」

 目を覚ました時、彼は建物の中にいた。
 雰囲気から察するに、ここはポケモンセンター。

 身体を起こし、部屋を出るとそこには自分のチームメイト、カズヒコがいた。

「起きたか、ミノル」

「カズヒコ…。あれからどうなった」

「あの場にいたトウクも含めて全滅しそうになったが、全く見知らない1人の少女が二人と戦い始めたそうだ」

「あ? 何者だよその女」

「トウクの話だと、その少女はレクトと顔見知りであるかのような口調だったらしい。敵対している事から考えて、奴らの仲間と言う線はないだろう」

「…くそ、気にくわねえ!!」

 愚痴を零しながら、ミノルは壁を殴りつける。

「あんなに弱々しい態度をしてたフルカの野郎があんな事企んでたとはよ…。この俺すら欺きやがって…」

「だが、あの場で俺達が全滅しなかったのは不幸中の幸いだったな」

「あ?」

「もしもあの場で俺達が倒れていたら、出場者の中に奴らの仲間がいたという証言も得られなかっただろう。今、トウク達証を持ったトレーナー達も躍起になって出場者達を1人1人洗いなおしている所だ」

「証を持っている…? 成る程、あの男が最後の1人だったと言うわけか」

「ミノル、余計な考えは捨てろ。今は、奴らとの来るべき戦いの事を第1に…」

「関係ねえよ。俺はマスターリーグを制覇するためにここまで来たんだ。俺を潰そうとしてくれるなら返り討ちにするし、他の連中を潰そうとしてくれるなら都合がいいからな」

「…そう言うとは思っていたが、果たして本当に全ての敵を返り討ちに出来るのか?」

「あ? どういう意味だ」

「さっきのレクトとの戦いを思い出せと言ってるんだ。あれだけの強さを持った敵が、他にどれだけ居ると思っている。奴1人すら倒せなくて、どうやってこの状況を生き残る」

「……」

 カズヒコの言葉で、すっかり意欲を失ったミノル。
 そのまましばらくの間、その場に立ち尽くすのだった。





「…はい。そういうわけなので、レクトの仲間達が大会出場者として紛れ込んでいる事も判明しました」

 その一方でトウクは、ポケモンセンターにある電話で、大会本部に事の次第を報告していた。

「…解りました。すぐに調査を始めてください」

 電話の相手との会話が終わり、トウクは電話を切った。
 その後一呼吸して、ポケモンセンターの外へ出て行くのだった。





 その一方で、ナギサはフルカとレクトの2人を相手に戦っていた。
 とは言っても、現状戦っているのはフルカ1人だけ。
 レクトは何故か、ボーっと突っ立ったままだった。

「この…! ギガイアス、ストーンエッジ=I!」

「ニョロトノ、ハイドロポンプ=I!」

 相手のフルカが戦わせているのは、見た目が黒い岩肌で、体のいたるところに赤い突起があるポケモン、ギガイアス。
 初めて見るポケモンで、相手のタイプも解らなかったのだが、先ほどから岩タイプの技ばかり繰り出してきている事から、試しに水タイプの技を繰り出したのだ。

「チィッ…!」

 その攻撃を避けきれず、ギガイアスは直撃を食らう。
 それを見て、フルカも思わず舌打ちをした。

「やっぱりそのポケモン、岩タイプだったのね」

「…そうだよ。このギガイアスは、主にイッシュ地方でしかあまり確認された事のないポケモンだからね」

「イッシュ地方…? 知らない地名だわ」

「ところで、これで勝った気になっているわけじゃないよね?」

「え…」

 突如巨大な岩の砲弾がニョロトノを襲う。
 不意打ちに近い形でその攻撃を受けてしまい、ニョロトノはダウンする。

「そんな…! そのポケモンは、さっきのニョロトノの一撃で倒したはず…」

「甘いよ。このギガイアスの特性は『がんじょう』。どれだけ強い技を食らっても、一撃じゃ倒れないんだよ」

「…」

「ギガイアス、すなあらし=v

 そしてここで、周囲に砂塵を撒き散らす天候技、すなあらし≠発動。
 ここが山脈地帯である事も併せ、その効果は通常よりも大きく働いていた。

「…っ、これじゃ何も見えない…!」

「行け、モグリュー!」

「(また聞いたことの無いポケモン…!? どんな手で来るのか解らない…)」

「あなをほる=I」

 フルカの声で、モグリューと呼ばれたポケモンが地面に潜る音は聞こえた。
 だがその音からほんの数秒後の事、突如ナギサの足元から長い爪のような手を持ったポケモンが飛び出す。
 突然の攻撃に、ナギサはバランスを崩して転倒した。

「技を指示したのはつい今の事なのに…。一体どういう事…?」

「僕のモグリューの特性は『すなかき』って言ってね。砂嵐の中だと、いつもより早く動けるんだよ」

「…っ、ユキメノコ!!」

 ナギサは身体を起こして、新たにユキメノコを繰り出す。

「あられ=I!」

 ナギサは咄嗟に、天候を変化させる技を発動させる。
 ユキメノコの身体が青白く発光するのに呼応して、周囲に霰が吹き始める。

「れいとうビーム=I!」

 そして特性の『ゆきがくれ』を利用して、完全に不意を衝いた攻撃でモグリューを凍結させた。

「戻れモグリュー!」

 攻撃を受けたモグリューを戻し、フルカに残されたポケモンは、先ほどのギガイアスのみとなった。
 否、ギガイアスも既にこの霰の影響下によるダメージでダウンしていた。

「く、僕のポケモンが…」

「ニョロトノ、大丈夫?すぐ回復するから」

 手持ちが全滅した事でその場に立ち尽くすフルカを気に留めず、ナギサは回復道具で先程倒れたニョロトノを回復させた。

「悪いけどもうちょっと頑張って。あと1人、倒さなきゃいけない人がいるから…」

 体力もある程度回復し、自力で立ち上がったニョロトノ。
 そしてナギサの視線の先に立つのは、レクトとジラーチ。

 ナギサVSレクトの、戦いが幕を開けようとしていた。







 Phase.120 エンスチーム 黒幕との邂逅





 マサシ達がラジルシティに辿り着き、ナギサが激闘を繰り広げているのと同時期。
 ヨハロ地方北部を横断するエンスチームは、まるで何者かを探すような素振りを見せていた。

「エンスさん、マサシ達との戦いから変わったよね」

「うん、前みたいなだらけた感じが無くなったって言うか…」

 彼の後ろを歩くチームメイト2人が、彼の変化に薄々気付いていた。
 数日前のマサシとの死力を尽くした戦いが、彼に大きな変化をもたらしていた。

「エンスさん。もう僕達は証を全て集め終え、予選内ランクの第2位に落ち着いているけど、何で終了まで身を潜めたりしないの?」

「ちょっと気になる奴がいてな。そいつを探している」

「それって、前にアロナシティでマサシ君達と話していた事と関係が?」

「…まあな。今まで集めた情報が正しければこの先で…」

「この先って、ずっと進めばリーラシティだよね?そんな所に、一体誰が…」

 エンスの思惑が解らないまま、テンロとヨコウは彼の後をついていく。






 数時間後、雪が降り積もる中、エンスチームの3人はリーラシティに到着した。
 先の騒動でかなり破壊されていたが、今ではそこそこ復興してきていた。

「リーラシティ…。予選が始まって、一番最初に飛ばされたのがここだったよね」

 テンロが懐かしそうに呟く。
 彼らにとって、この町こそが予選開幕の地なのだから。

「とりあえず、ナリサに話を聞きにいく。出場者である以上、かならず彼女に会いに行く筈だからな」

 エンスは二人を引き連れて、ポケモンセンターへと急ぐ。
 かつてマサシ達がナリサと戦った時、彼女が住まっていた場所は粉々になってしまった為、それ以降はセンターで挑戦者を待つ事にしていた。

「ナリサさん、久し振りだ」

「エンスさん、2ヶ月ぶりですね。どうして再びこの町に?」

「今日は聞きたい事があってここに来た。予選内ランク第6位、フジヤチームがここ数日以内にここへ来なかったか?」

「…フジヤ君のチームですか? 確かに、彼らはこの町に滞在していますけど…」

「済まない。この後、ちょっとした騒動になるかもしれないから、その旨を町の住人に伝えておいてくれ」

「え?」

 ナリサにそれだけ告げると、エンスはポケモンセンターの客室の並ぶ廊下に足を運んだ。
 ご丁寧に客室の扉に宿泊客の名前が記されている為、部屋を探し当てるのに然程苦労は無かった。

「…ここか」

 ポケモンセンター2階の、廊下の一番奥の左手側。
 そこが、フジヤチームの宿泊している部屋だった。

「…」

 とりえずは、ごく自然に部屋をノックする。
 コンコン…。




 数秒して、部屋の内側から扉が開かれた。
 その扉を開けたのは、フジヤのチームメイトであるチズサだった。

「…!?」

 一目見ただけでエンスの実力を察したのか、息を詰まらせたチズサ。
 だがそんな雰囲気とは裏腹に、エンスは穏やかな口調で語りかける。

「済まない、君のチームのリーダーであるフジヤはいるかな?」

「あ、はい。フジヤさん! お客さんが」

 チズサはフジヤを呼びに部屋に戻る。
 少しして、フジヤが玄関先に姿を見せた。

「予選内ランク第2位のエンス…。どうしたんですか?俺達は第6位のチーム、特に用事があるとは思えないんだけど」

「出場者としての用事じゃない。俺がここに来たのは、別の理由だ」

「別の理由…?」

「そうだ」

 それだけ言うと、エンスは強引にフジヤの道具袋を漁り始める。

「な、いきなり何を!?」

 突然の出来事に、当たり前のように抵抗をするフジヤ。
 だがエンスは、その道具袋の中から目的の物を探し当てると、漁るのをピタリとやめた。

「これを何処で手に入れた」

 エンスの掌の上にあるのは、妖しく輝く漆黒の結晶。
 すると、フジヤは一転して態度を変える。

「そうか、思い出したよ。お前はあの時の…」

「…?」

「ブーバーン」

「!」

 ズドォォォォォンッ!!!
 フジヤがブーバーンを繰り出すと同時に、部屋で爆発が発生。
 ポケモンセンターの一部が吹き飛ぶほどの惨事となった。

「ブーバーンだと!? それにこのパワー、どこかで…」

 爆発の瞬間、部屋から咄嗟に離れたことで、爆発に巻き込まれるのを免れたエンス。
 その音を聞いて、ナリサがこの場に駆けつけてきた。

「エンスさん!? 今の爆発は一体」

「ナリサさん、町の人達は?」

「今の爆発で、避難を始めました。しかし、一体何を…」

「やれ、ブーバーン」

 そして爆発で生じた炎の中から、フジヤの声。
 炎の中から、ブーバーンが放ったと思われる炎が飛来する。

「ヨノワール!」

 エンスはヨノワールを繰り出し、その炎を両手で抑え込んだ。
 ヨノワールにダメージは殆ど無い。

「今の攻撃、本気で潰すつもりで繰り出されていた…。一体何が?」

「奴も、連中の仲間だったって事だ。その噂を聞いて、今日ここへ確かめに来たんだが…。当たりだったようだ」

『俺の炎を受けてその程度で済ますのか…。流石エンスだな』

「…何だ?」

 今のフジヤの発音に、エンスは若干の違和感を感じた。
 フジヤともう1人、別の誰かが同時に喋っているような感覚…。

「…! この火力にさっきの声…。まさか、奴は!」

「エンスさん?」

「ドサイドン!」

 エンスはドサイドンに指示して、炎の中に突撃させる。
 そのままブーバーンとフジヤをセンターの外へと吹き飛ばした。
 ドゴンッ!!


「テンロ! ヨコウ!!」

 フジヤを吹き飛ばした後で、エンスは二人を呼び寄せる。

「残りの2人が後を追ってこないようここで足止めを頼む」

 それだけ言い残して、たった今吹っ飛ばしたフジヤの後を追っていった。

「えっと、何が起こったのか解らないけど…」

「どうやらあの男、私達のことに感付いていた感じだったね」

「…! そんな、このタイミングで!?」

「フジヤをここで失うわけにはいかない。今までの苦労が、全部水の泡になってしまう」

「フジヤ君ならそう簡単に負けるとは思えないけど、この2人まで加勢したらそれこそ…」

「この2人は、何としてもここで止めないといけない。ここまで来て、邪魔はさせない」

 リーラシティにて、エンスとフジヤのチームメイト2人が相対する。
 そしてそれぞれのチームリーダーもまた、別の場所で対峙する。







 Phase.121 フジヤの謎





 リーラシティから程離れた距離の雪原。
 その雪原で、嫌でも目に止まる巨大なクレーター。
 かつてマサシチームがナリサと激闘を繰り広げた時、マサシが最大の一撃を放った跡がこれだった。
 そのクレーターのすぐ傍で、エンスとフジヤは対峙する。

「勘違いでなければいいんだが…。ポケモンセンターに居た時にお前の声と同時に聞こえてきた声、そしてさっきのブーバーン…」

「『今』は、マスターリーグ出場者の1人、フジヤだよ。それ以外の何者でもない」

「…っ、やはり貴様は…!!」

「だけど、俺の正体が『俺』なら、あれを持っていたって不思議は無いだろう」

「…」

「そして、俺がこの一連の騒動の首謀者だと気付き、ここまで辿り着いた事は褒めてあげるよ。けど、それがお前の命取りだ」

「…否、俺は別に戦うためにここへ来たわけじゃない。真偽を確かめに来ただけだ」

「真偽?何のだ?」

「お前がこの騒動の黒幕であるのかどうか。そして、お前が本当に『終焉の道標<エクストレーム>』と繋がっているのかどうかを確かめたかった」

「…成る程。その両方の用件を達成した今、今の時点で俺に用事は無いと言う訳か?」

「仮にもお前はこれだけの事態を裏で操っていたほどの男だ。俺1人でどうにかできる相手とも思えん。時期を待って、お前を倒す機会を伺う」

「そんなつれない事言わないで、少しは俺と遊んでいこうよ」

 そう言い放ち、フジヤはブーバーンを前に出す。
 このままおとなしく帰してくれそうな雰囲気でもなかったので、エンスもドサイドンで迎え撃つのだった。





 その一方で、テンロ&ヨコウとチズサ&ラエナのバトルはリーラシティの中央広場で始まっていた。
 だが、やはりエンスチームの2人が圧倒的に有利な状況。
 予選内ランキング2位の貫禄を見せ付けていた。

「うっ…」

 そして、この激闘に身体が耐え切れず、膝をつくチズサ。
 それに気付いたラエナも、2人から視線を逸らしてしまう。

 ここぞとばかりに、2人は決着をつけるべく大技を繰り出す体制に入る。
 反射的に後退する二人だったが、そのタイミングでフジヤを追っていった筈のエンスから制止の声が飛ぶ。

「そこまでだ、2人とも」

「エンスさん!?」

 余りにも早いチームリーダーの帰還に、チズサ達は絶望の顔色を見せる。
 だがエンスは、2人にフジヤは無事で、ここでの用件は終わったとだけ告げるのだった。

「エンスさん、フジヤが無事で用件が終わったって、どういうことですか!?」

「フジヤが黒幕かどうかを確認したかった。どっちにしろ、あれだけの戦力を従えているフジヤを、俺達だけで倒す事は不可能だ」

「確かに…、以前レクト1人相手にした時でさえあれだけ力の差があった。それが、大勢集まってきたら…」

「とりあえず、今はこの町を離れる。流石にこれだけの騒ぎが起きたんだ、居ちゃまずいだろう」

「そうだね」

 その言葉を最後に、3人はリーラシティを飛び出していくのだった。







 色々あったこの日の夕方。
 ラジルシティ居住区のポケモンセンターに、マサシは居た。
 建物のロビーにある椅子の背もたれに身体を預けていた。

「今日一日この町で情報を集めた結果、得られたのはこの近くに証を持ったトレーナーが居るという程度だった。明日は、この町に居る出場者達からも話を聞いてみた方が良さそうだ」


―――相応の危険を、覚悟しないといけないが…。


 心の中で呟きつつ、マサシは無意識のうちにモンスターボールを手に取っていた。
 そんな時だった。
 マサシの携帯電話に、着信が入る。

「…! この番号は…」

 画面に映し出された番号を確認し、すぐに通話ボタンを押す。

「もしもし」

『マサシ、俺だ』

「エンス…!?」

 マサシに電話を掛けてきたのは、何とエンスだった。

『前にあったアロナシティでの目撃情報の通り、やっぱりフジヤチームが黒幕だった。しかも、『終焉の道標<エクストレーム>』と繋がっている事も確認出来た』

「確認したって、奴らはどうしたんだ!」

『一度撤退した。連中が魔属性の力を持っている以上、流石に俺でも荷が重過ぎる』

「…フジヤチームは何処に居るんだ。できる事なら、早めにケリを付けておきたい所なんだが」

『リーラシティだ』

「…っ、今俺がいるラジルシティとはほぼ正反対の位置…!1週間以内にこの近くに居る証を持ったトレーナーを倒してそっちに向かう予定だったんだが…。明日中に決着をつけないと、連中の尻尾を掴む機会を失うことになる…!!」

『そうか、お前達はラジルシティか。なら、いち早くリーラシティへ向かってもらう為に証を持ったトレーナー、『ウェイガ』の居場所を教えておく』

「! エンスお前、既にこっちの証を持ったトレーナーを倒していたのか」

『こっちは既に、証は全て集め終えているからな。いいか、証を持ったトレーナーの位置は、ラジルシティの港から出る船で行く事のできる、小さな島だ』

「町中には居ないのか…!」

『ああ。だが気をつけろよ、奴のバトルスタイルは独特のリズムを保ったまま相手のペースを掻き乱していくタイプだ。一直線に立ち向かうだけじゃ、勝ち目は無いぞ』

「それなら心配は無い。似たようなスタイルのトレーナーと、昔戦った事があるからな」

 そういうマサシの脳裏に浮かんだのは、ナギサの姿だった。

『なら、手っ取り早く決着をつけてリーラシティへ来い。その近くで合流し、連中を一気に片付けよう』

「解った、また今度」

 エンスとの話を終え、マサシは電話を切る。
 と同時に、たった今聞いた話をユキヤ達に伝えるべく、再び通話ボタンを押そうとした時だった。

 再び、マサシの携帯電話に着信が入った。

「もしもし!」

『マサシ君、私!」

「ナギサ!?」

 今度の電話の相手は、ナギサだった。
 彼女が連絡をくれたということは…。

『マサシ君、レクトさんを見付けたけど…』

「けど?」

『ごめん、逃げられちゃった…。他にも敵が居て、そいつと戦って結構やられちゃって…』

「どこでレクトさんと戦ったんだ?」

『えっと、グレマタウンって言う町から南東へ少し進んだ所にある小さな山岳地帯よ』

「! おい、そこって俺達が最初にこの予選で戦いを繰り広げた場所! しかも、このラジルシティからそんなに遠くない位置だ!」

『そうなの!?』

「ところでナギサ。お前は今、グレマタウンに居るのか?」

『うん。今、トウクさんって言う人とミノルさんって言う人のチームがいるよ』

「! トウクさん!? 証を持ったトレーナーが居て、それで尚レクトさんを逃したって言うのか!?」

『うん…。 レクトさん、前にマサシ君達と戦った時より、更に強さが増してた。アロナシティで戦った、本気を出したエンスさんに匹敵するくらいに…』

「そんなにか…。解った、俺達は明日中にこっちでの用件を終わらせて、グレマタウンに向かう事にする。だから、早くても明後日辺りには合流しよう」


『解ったわ、気をつけてね』

「ああ、お互いにな」


 様々な場所で、事態は動き始めている。

 そのうねりは徐々に大きくなり、やがてマサシ達も巻き込まれていく事になる。

 決戦の時は、刻一刻と近付いていた…。







 マスターリーグ予選終了まで、後25日。






 To Be Continued

 

[アットの一言感想]

 マサシとは別の所で動きがありましたが、電話で情報はマサシの元へと伝わったようです。
 しかし、黒幕というだけあり、フジヤチームは一筋縄ではいかない様子ですね。

 

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