翌日。
ラジルシティ商業区の西にある港で、3人は合流した。
「昨日マサシから連絡を貰った時は本当にビックリしたわ。まさか、あのエンスが情報を提供してくれるなんて」
「向こうは昨日フジヤと接触して、倒すためにはあいつのチームだけでは戦力的に無理だと判断したそうだ。まだどれだけの数がこのヨハロ地方に潜伏しているか解らないからな」
「今の俺達がすべき事は、一刻も早く3つ目の証を手に入れ、リーラシティへ向かう事だ」
「途中でナギサとも合流しないといけないから、ちょっと時間掛かるかもしれないな。どっちにしろ、今は目の前の事に集中しよう」
マサシのその言葉を最後に、3人は港に停泊している小さな船に乗る。
その船の運転士は事情を把握しているらしく、自分達がマスターリーグ出場者だと説明すると、すぐに船を出発させた。
その先にあるのは、木々が生い茂る小さな島。
そこで、3つ目の証を掛けた戦いが待ち構えていた…。
COM マスターリーグ編
第33話
3つ目の証(前編)
Phase.122 幻惑の小島
マサシ達3人を乗せた船は、島の小さな海岸線に停泊した。
島に上陸した3人は、目の前に待ち構える自然を眺める。
「ここに4人目の証を持ったトレーナーが居るのね」
「エンスの話じゃ、ここのトレーナーは補助技を駆使して相手を掻き乱すタイプらしい。今までみたいな戦い方じゃ通用しない、とも」
「そこはマサシ、お前の戦略次第だ。似たようなタイプのトレーナー、ナギサと戦ったお前の経験は必ずこの戦いで有利になる」
「解ってる。2人とも、今回のバトルは戦略面の全てを俺に任せ、信じてくれるか?」
「勿論!」
「ああ」
意を決して、3人は島の中へと足を進める。
それ程大きな島ではないから、恐らく目的のトレーナーを探し出すのは然程苦労しないだろう。
そう、島に踏み入れた当初はそう思っていた………。
「この温暖な気候のヨハロ地方で、人の手が及んでない自然の島って感じね。緑が豊かだわ」
「そうだな。でも、ゆっくりと観賞してるわけにもいかないぞ」
「解ってるわ。今は、先に進まなくちゃ」
背の丈ほどもある雑草を掻き分けて、3人は島の中を進む。
それほど大木が多く存在しているわけでもなかったので、足を進める分には困らなかった。
ある程度歩いていくうちに、視界が開けてくる。
「森を抜けたようだな」
光が多く差し込んでくる方へ目指して、3人はペースを上げて進み始めた。
だが……。
「え………?」
「どういう事だ、これは…」
3人が森を抜けて辿り着いたのは、先程出発した筈の船の停泊する海岸だった。
一直線に進んでいたはずが、いつの間にか元の場所に戻ってきてしまっていたのだ。
「まっすぐ進んでいたはずが、これか」
「何かあるのね。この島…」
「ナリサさんの時と同じだな。トレーナーの所へ辿り着く前に、何かしらの障害を乗り越えなければならないって事か」
「でもこれ、どうしてもとの場所に戻ってきたのか解らない事には…」
「そういう時は、これを使うのがセオリーだ」
そういって、マサシは道具袋を漁り始める。
その中から取り出したのは、一本の長いロープ。
「こういう迷いやすい場所は、歩いた場所を示す道標を残すのが基本だ。これを海岸線近くの木に括り付けて、もう一度同じルートを探索してみよう。もし途中で来た道を逆戻りしてるのなら、これで解る筈だ」
「流石!準備がいいわね」
アヤが感心しているのをよそに、マサシはロープを一本の木に括り付け、それを片手に携える。
「よし、行こう」
準備を整え、3人は再び島の内部へと足を踏み入れる。
先ほどの記憶を頼りに、ほぼ同じ道を進んでいく。
「今のところ…、一直線に進めているみたいだな」
周囲の様子を探りながら喋るユキヤ。
確かに今のところ、自分達の持つロープが張っているところは見掛けない。
「このまままっすぐ行ったら、さっきは元の場所に戻ったのよね。だとしたら、そろそろ…」
「ああ。俺の持ってるロープによる道跡があってもおかしくないんだが…」
だが、森の開けたほうへ進めども、それらしい物は見当たらない。
「このロープを持ったまま先へ進めば解る筈だ。行こう」
意を決して、3人は同時に森の開けた場所へと進んでいく。
そして…。
「やっぱり、同じ場所…だな」
「………ねえ、マサシ。持ってたロープは?」
「…え?」
ロープは、何があっても手放さないようにしっかり握ってた筈だった。
にも関わらず、それだけが忽然と消失していたのだ。
「どういう事だ。ただ歩いていただけで、どうして特定の物だけが無くなる」
「おまけに、さっき括り付けてたロープも無くなってる。もしかしてここ、この島に全く同じ場所が幾つもあるって事じゃない?」
「否…、ここは間違いなく俺達がさっきロープを括り付けた場所だ」
周囲の様子を探っていたマサシが、アヤの発言を否定する。
「これを見ろ。さっき俺がロープを括り付けた木なんだが、確かにそれっぽい跡が残ってる」
「どういう事…?それじゃああの一瞬で、私達に感付かれずにロープだけを奪った『何か』がこの島にいるって事!?」
「解らない…。しかしこの島、そう簡単に奥へ入らせてくれる気は無さそうだ」
この島での不可解な、未知の現象に動揺するマサシ達。
その打開策は、あるのだろうか。
Phase.123 島の幻影を打ち破れ
「一旦、空からこの島を見てくる」
地上を歩き回っても埒が明かないと判断し、マサシはフライゴンに乗って島の上空へ移動する。
そこから見えた光景は、半径がおよそ2〜3km、そして島の中央に開けた場所があった。
「…」
双眼鏡を取り出し、その開けた場所を観察すると、明らかに人が生活しているような痕跡が見受けられた。
「(地上からじゃあの場所に辿り着けない何らかの仕掛けでもあるのか…? 一度、ここから直接向かってみるか)」
フライゴンに指示を出して、一直線にその開けた場所へ向けて急降下する。
空からならば、あの場所へ辿り着けるかどうかを判断する為だった。
「…何っ!?」
開けた場所へ向けて急降下していた筈が、着地した場所は森のど真ん中。
明らかに、今の今まで向かっていたのとは違う場所に着地していた。
「フライゴン、もう一度空へ飛んでくれ」
島の謎を解く為、マサシは思考を張り巡らせる。
様々な視点から手掛かりを求め、色々と行動を起こす。
まずは、島に着陸して、すぐにまた上空へ飛び立った。
「(明らかに、さっき向かっていったのとは全く違うポイントに着地している。一体何があったのか…。確かめてみるか) フライゴン、はかいこうせん=v
何かを試すかのような目つきで、フライゴンに指示を出す。
その攻撃の標的となったのは、先ほどの島の中央部。
離れた場所から先程自分に起こった現象を観察する事で、ヒントを掴もうとしていたのだ。
「…」
ズドォォォォンッ!!
中央部に目掛けて攻撃した結果、そのはかいこうせん≠ナ爆発が発生したのは、島の全く別の場所。
この光景を見て、マサシは一つの確証を得た。
それを知らせる為、マサシは急いで二人の所へ戻っていった。
「2人とも、何となくだが謎が解けてきた」
「それはいいけど、さっきの爆発は何?」
「ちょっとした確認をしただけだ。お陰で、ある確証を得られた」
「何だ、それは?」
マサシは2人の問いかけに、軽く頷くと説明を始めた。
「さっき俺が上空からこの島の様子を見た時、島の中央部だけ開けていた。しかもその場所は、明らかに生活の痕跡があった」
「つまり、その場所にトレーナーがいる可能性が高いと言う事か」
「だけどそこで一つ問題があった。上空からその場所へ向けて『一直線に』向かっていったんだが、何故か着地したのはそこからかなり離れた場所だった」
「え、どういう事?」
「最初は無意識のうちに方向感覚を狂わされているのかと思った。けど、もう一つ別の可能性もあったから、それを確認する為にはかいこうせん≠撃った」
「さっきの爆発の事ね?」
「ああ。それを見て確信した。そのはかいこうせん≠ヘ、中央部に向けて撃った筈なのに、全く関係の無い場所で着弾、爆発を起こしていた」
「…それって、どういう事?」
「恐らくだが、テレポート≠フ上位技のようなものだと思う。ある一定の範囲に物体、攻撃問わずに入り込むと、その瞬間別の場所に転移する仕掛けだ」
「でもそれだと、2回目に島に入って行った時、マサシの持ってたロープが全部消えた事の説明が付かないわよ?」
「それは多分、転移させられる途中で一瞬だが意識を失い、その間に手放したんだろう。ロープを俺が手放し、『完全に独立した』事により、俺達とは違う場所に転移させられた」
「…成る程な。それなら説明がつかない事も無いか」
「やっぱりマサシって凄い。すぐにこんな事に気付くなんて」
「あくまで仮説だけどな。それに、例えこの仮説が正しかったとしても、このテレポート領域を破れるかと聞かれると、それは別の話だ」
「そっか…」
「だけど、これではっきりと解った事がある。こんな凝った仕掛けを施したのは、間違いなく証を持ったトレーナーだと言う事だ」
「え…?」
「エンスの言っていた、相手のリズムを掻き乱すような戦い方と言う奴を、これは特に顕著に表している。ただ闇雲に突っ込むだけのトレーナーでは、決して辿り着けないようなこの面倒臭い仕掛け。間違いないだろう」
「…それで、どうやって中心部まで辿り着くの? マサシの推測どおりなら、その場所を覆うように広がっている筈よね?」
「それなんだが、その仕掛けについて、もう一つ立てた仮説があるんだ」
「何だ?」
「今推測した、一定範囲に踏み入ると強制的にテレポートする仕掛け。これは恐らく、全自動<オート>で発動しているわけではない と言う事だ」
「どうしてそう思うの?」
「元のテレポート≠セってそうだろう? 技を覚えたポケモンが、『発動』する事によって初めて転移するんだから」
「それで、お前の仮説と言うのは?」
「恐らくこの島全域を覆う、島内部の様子を探知する結界みたいなものがあるかもしれないという事だ」
「そうか。マサシの言う通り、手動で転移させているのなら、毎回決まったポイントで転移させるのは難しい話よね。それこそ、その物体がそこに居る と言う事を解ってなければ成立しないもんね」
「今の仮説が合っているとして、その領域を突破する方法が一つだけある」
「え?」
マサシの不意な打開発言に、思わず2人の視線が集まる。
一度深呼吸をして、マサシはその打開策を二人に説明する。
「さっき話したとおり、俺達の動きを感知して、それを頼りに転移効果を発動させているなら、0距離からの攻撃を仕掛ければ、破る事が出来るかもしれない」
「どうしてそう思ったの?」
「島内部での俺達の動きを感知し、一定領域に踏み込んだら転移させる。それはつまり、相手に手動でこれらをやるだけの余裕があったからだという事だ。つまり、転移する領域のギリギリ外のポイントで大技を撃てば、その結界のようなものを破壊できるかもしれない」
「そうと決まれば、早速実践よ! マサシのこういうときの推測って、かなりの確率で当たるのよね」
「よし、早速行動開始だ」
マサシの提案を実践すべく、3人は三度島の中心部へ向かっていく。
そして、そんな3人の会話を盗み聞く人物が1人。
「(たった数回の調査でここまで見破られるとは…。今度の挑戦者は侮れそうにないな。特にこの茶髪の少年の頭の回転の速さは想像以上だ)」
その人物もまた、マサシの洞察力の高さに驚愕するのだった。
Phase.124 惑乱のウェイガ
3度目の島内部の探索に踏み切った3人。
だが、マサシは2人か2〜3歩分後ろを歩いている。
「悪いな、二人とも。わざわざこんな役目を押し付けて」
「いいわよ。証を手に入れるために必要な事なんでしょ?」
「まあ…、な」
「私達が目の前で消えたら、そこがその境界って事よね」
「ああ。その場所から攻撃を叩き込めば突破できる筈」
「じゃあ、行くわよユキヤ!」
「しくじるなよ、マサシ」
「任せろ」
マサシがその場に残り、2人が先に奥へ進む。
そして案の定、途中で2人の姿が消える。
「……そこか」
マサシは、二人が消えたポイントのすぐ手前で足を止める。
そしてバクフーンを繰り出し、攻撃の準備を整える。
「散々俺達を惑わしてくれたが、それもここまでだ。瞬間連射15連かえんほうしゃ=I!」
その場でバクフーンが技を発動。
爆発と共に、硝子が砕け散るような音が鳴り響く。
どうやらマサシの推測通り、打ち破る事が出来たようだ。
光が多く差し込んでいる場所へ進むと、その先には一軒の小屋。
そしてその小屋の手前には、バトルフィールド。
どうやら、目的の場所へ辿り着いたようだ。
「ここか…」
「驚いたね。こんなに早く仕掛けを解除したトレーナーなんて、今まで1人も居なかったのに」
いつの間にか、バトルフィールドの中央に1人の男。
その男がマサシに対し、賞賛の言葉を浴びせる。
「随分面倒な仕掛けを施してくれたものだ。で、あんたが証を持っているトレーナーか?」
「そうだよ。俺が証を持つトレーナーの1人、ウェイガ」
「俺はマサシだ。証を賭けてのバトルを挑みに来た」
「マサシ…。つい先日、ランキング第1位に上り詰めたチームだね。最初にトウクと戦った時は、ランキング46位だったって聞いてたけど…。この2ヶ月ちょっとで頂点に上り詰めるとはね」
「それで、バトルは始めてもらっていいのか?」
「ん?ああ、いつでも構わないさ。君は1人しか居ないようだけど、それでもいいのかい?」
「すぐに俺の仲間も来るさ。それまで、あいつらの負担を少しでも減らしておきたいからな」
「それはいいけど、忘れてないよね?この予選のルールでは、チームリーダーである君が敗れたら、その時点で敗北が決定するんだよ?」
「そう簡単にやられるつもりは無い。これでも、予選内ランクの1位に立っているんだからな」
「いい返事だ。それじゃあ、早速始めようか!」
マサシとウェイガが、それぞれバトルフィールドに立ち、バトルの準備が整う。
「様子見無しで、いきなり一発ぶつけてみるか。バクフーン!!」
マサシが6匹の手持ちの中から、最初に繰り出したのはバクフーン。
それに対して、ウェイガはトリトドンを繰り出す。
「究極段階<エクストラレベル>:だいもんじ=I!!」
そして、出だしからいきなり究極段階<エクストラレベル>の発動。
更には炎タイプの大技であるだいもんじ≠フ発射は、ウェイガの不意を衝くには充分だった。
この技の影響で、この島を中心に小さな地響きと共に、巨大な火柱が発生する。
ズドォォォォォォンッ!!!
相性面ではマサシの方が不利だったものの、何とトリトドンを今の一撃だけで戦闘不能にしてしまった。
「…ッ! これは予想してなかったな。君は洞察力が優れているから、色々戦略を立ててから挑んでくると思ってたのに。いきなりこんな…」
「バトル開始からあれこれ戦略を練るのは、それだけ相手にも時間を与える事だからな。まずは出鼻を挫くところから、という訳だ」
「成る程ね、これはしてやられたよ。君は様々な戦略を立てる戦い方も、真正面から相手とぶつかり合える直線的な戦い、その両方を併せ持っているわけだね」
「…」
「それにしても、ビックリしたよ。どわすれ≠ナ特殊攻撃に対する防御は完璧だったのに、それでも受け切れないなんてね。流石は第1位のチームのリーダーと言った所かな」
マサシに対する驚きの言葉を並べつつ、次のボールを手に取る。
そこから飛び出したポケモンは、ピクシー。
「バクフーン、もう一度だいもんじ=I!」
マサシは再び、先ほどと同じく、究極段階<エクストラレベル>での攻撃を指示。
大の字の形をした巨大な炎がピクシーに迫る。
「フタチマル、みずあそび=v
「!?」
相手の指示で、マサシの顔色が一気に変わる。
マサシが反応を示したのは、相手の技ではなく、その指示をしたポケモンの名前。
フタチマルなど、今まで一度も聞いたことの無い名前だったからだ。
ピクシーの前に立つ、青い身体をした二本足で立つラッコのような特徴を持つポケモン。
恐らくこのポケモンが、今しがたウェイガの口に出した、フタチマルというポケモンなのだろう。
そしてフタチマルと呼ばれたポケモンが周囲に水を撒き散らす事により、だいもんじ≠フ威力を弱める。
「そしてピクシー、コスモパワー=v
役割を終えたフタチマルが後方へ下がり、ピクシーが自身に輝きのオーラを纏わせる。
それがバクフーンのパワーダウンした炎を弾き、ダメージを軽減する。
「何だ、あのポケモンは…。あんなポケモン、見た事が…」
「それは当然と言えば当然だろうね。このフタチマルというポケモンの系列は、イッシュ地方と呼ばれる地方以外では、全くと言っていいほど目撃された事が無いからね」
「イッシュ地方…? 聞いた事が無い地名だ」
「まあ、カントーやジョウト、ホウエン・シンオウからはずっと遠くの地方だからね。それも仕方ないよ」
「バクフーン、一旦戻れ」
ウェイガが話し終えるのを待ち、マサシはバクフーンを一度ボールに戻す。
「フライゴン、マニューラ!」
相手が2匹ポケモンを出しているため、それに対抗して此方も2匹のポケモンを繰り出す。
ここから先、2VS2のダブルバトルとなろうとしていた。
「フライゴン、ソーラービーム=I!」
マサシの指示で、太陽光からエネルギーを集め始める。
その攻撃で狙いを定めたのは、フタチマル。
「そう来たか。だけどそうはさせない。フタチマル、アクアジェット=I」
「そうはさせるか!マニューラ、こおりのつぶて=I!」
フタチマルが攻撃に移るよりも遥かに速く、マニューラが無数の氷の塊を撃ち出す。
マニューラの攻撃に妨害され、フタチマルはフライゴンに攻撃する事はできなかった。
だがその間に、ピクシーが何やらフライゴンに対して拍手するような仕草を見せていた。
「…フライゴン、撃て!!!」
マニューラの攻撃で怯んだタイミングを見計らい、ソーラービーム≠発射。
先ほどのバクフーンの時ほどではないが、それでも巨大な爆発を引き起こす。
「とどめだ! フライゴン、ドラゴンクロー=I!」
マサシはドラゴンクロー≠指示したにも関わらず、フライゴンは何故か再びソーラービーム≠フチャージを始めてしまう。
「な…!?」
「ピクシー、れいとうパンチ=v
「マニューラ! ピクシーを止めろ!!!」
「フタチマル、アクアジェット=I!」
今度は、先ほどとは全く逆の構図となった。
マサシが相手のポケモンを阻止しようと動いたが、それを阻止される形。
しかも今のフタチマルは、特性の『げきりゅう』によって、水タイプの技がパワーアップしてる状態。
とてもマニューラで受け切る事は不可能な破壊力だった。
「マニューラ! フライゴン!!」
ウェイガの攻撃で、一転して劣勢に立たされたマサシ。
マサシの中では、少しずつあの時何が起こったのかを整理していた。
「あの時、ピクシーは拍手みたいな動作をしてたな…。あれは、アンコール≠セったか」
「まだまだこれからさ。惑乱の二つ名の、その真価はね」
相手の力の片鱗を垣間見て、マサシは1人でこれ以上戦うには無理があると感じた。
他の仲間2人が合流するまで、何とか持ち堪えなければ…と。
Phase.125 VSウェイガ
相手のポケモンは、フタチマルとピクシー。
そしてフタチマルは、既に特性の『げきりゅう』が発動するほど消耗している。
相手を打ち崩すとすれば、まずはあのフタチマルを退けるところからだろう。
マサシはそう判断して、速攻能力に優れるフローゼルを繰り出す。
「究極段階<エクストラレベル>:アクアジェット=I!」
その常識を遥かに超えた凄まじいスピードの、水を纏った突進でフタチマルに突撃する。
だが、その前にまたしてもピクシーが立ちはだかる。
「ピクシー、コスモパワー=I」
そしてまたしても、ピクシーの防御能力を前にフローゼルの攻撃は止められてしまう。
否…。
「そう来るのを待ってた! 『究極段階攻撃特化=ャGクストラレベル:ブレイクシフト>』!!」
「…! 何だ、急に攻撃力が…!?」
エンスチームとの戦いの中で習得した、『究極段階<エクストラレベル>』発動中の、一つの能力だけを集中的に強化する能力。
その中の一つ、『攻撃特化<ブレイクシフト>』をピクシーと激突した後に発動し、圧倒的なパワーでピクシーの防御を打ち破る。
「今だ、オーダイル!!」
そして今、フローゼルがこじ開けた隙間をオーダイルがこうそくいどう≠用いた超スピードで突破し、フタチマルに接近する。
「究極段階<エクストラレベル>:アクアテール=I!」
膨大な水を纏ったオーダイルの尾を、フタチマル目掛けて振り下ろす。
その凄まじいパワーに、尾に纏われていた水は巨大な噴水のように天高く伸び、周囲に散っていく。
これ程の技を受け、満身創痍だったフタチマルに耐える術は無かった。
「そう、君は必ず先に消耗したフタチマルを狙うと思っていたよ」
「何…?」
「気付いていなかっただろうけど、僕のピクシーは戦いの合間を縫ってふるいたてる≠使って攻撃能力を強化しておいたんだ」
「ふるいたてる=c!?」
「自身の物理攻撃力と特殊攻撃力を上げる技さ。そしてフタチマルが倒れたこの瞬間、この技は最大の威力を発揮する。かたきうち=I!」
ズドォッ!!
途轍もなく重い、パワーの篭ったピクシーの一撃がオーダイルを襲う。
『究極段階<エクストラレベル>』発動中であるにも関わらず、一撃で戦闘不能となってしまう。
「かたきうち≠ヘ、自分のポケモンが戦闘不能になった後すぐに使うと威力が増大する技。だから態々さっきのポケモンを棄てたと言う訳か」
「え…?」
ふと、マサシの背後から2人とは別の声が聞こえた。
振り向くとそこには、ユキヤの姿。
やや遅れて、アヤもこの場所に到着していた。
「2人とも!」
「相手はどうやら、イッシュ地方のポケモンを扱っているようだな」
ユキヤがマサシの横に並び、ウェイガに視線を向けつつ喋る。
「ユキヤ、イッシュ地方を知ってるのか?」
「トーホク大会が終わってからの4年間、俺は一度カントーへ行った。その後、全く未知のポケモンが生息すると言うイッシュ地方に渡って旅を続けてきた」
「それなら、ユキヤは多少イッシュ地方のポケモンや技について詳しいんだな?」
「ああ。その点なら、お前よりは上だ」
「なら、知恵を貸してくれ。馴れないポケモンやら技やらで、普段どおりに戦えない」
「任せろ」
「じゃあ、今回はユキヤが私達のサポートって事かしら?」
「そうなるかな。 だけどアヤ、いつもみたいな直線的な戦い方は避けろよ。戦う前にも言ったが、こいつは様々な補助技や、変わった効果を持つ攻撃技でこっちのリズムを乱すタイプだからな」
「大丈夫。その辺はマサシがしっかり指示してくれれば。これも戦う前にそう約束したでしょ?」
「そうだったな。この戦いは、イッシュ地方のポケモンに関する知識を持つユキヤ、それを元に戦略を立てる俺と、相手に大きなダメージを与える攻撃力を持ったアヤと、それぞれがしっかりと役割を担わなければ勝つ事は出来ない」
「真に、チームとして一体になって戦えってことか。面白い」
「やるわよ! 私達はもう、前までの私達じゃないんだから!」
この戦いは、3人が真に一致団結する事で初めて勝利を手にする事が出来る。
ある意味、この戦いこそが3人にとっての最大の試練になるのかもしれない…。
To Be Continued
[アットの一言感想]
予選内ランクの1位だけあって、結構注目を集めているらしいマサシ達。
今回のバトルは、今まで以上にチームワークが物をいう戦いになりそうですね。