ラジルシティから程離れた沖にある小島。
 今そこで、マサシチームは3つ目の証を賭けた戦いを繰り広げている。

 これまでの戦いから、マサシ・アヤ・ユキヤの3人が一致団結しなければ勝利できない事を悟っていた。
 この3人の、真の絆が問われる戦いになるのだろう。
 戦いは中盤に差し掛かり、マサシチームが少しずつ反撃を始めていく。







COM マスターリーグ編
第34話
第3の証(後編)







 Phase.126 一致団結





 現在ウェイガがバトルに出しているポケモンはピクシーのみ。
 だがそこで、別のポケモンに入れ替えてくる。

「ケンホロウ、頼むよ!」

 続いて繰り出してきたのは、ケンホロウと読んだ見た感じは鳥ポケモン。
 それを見て、ユキヤが即座にタイプを2人に伝える。

「あれは標準的な飛行タイプのポケモンだ。普通の相手なら、そのままやってもまず負けることは無いんだが…」

「相手が相手だけに、油断は禁物と言うわけね」

 3人揃って沈黙し、相手の出方を伺う。
 対するウェイガもマサシ達がどんな出方で来るのかを見定めようと、自ら動こうとしない。
 完全に、膠着状態に陥ってしまう。

「フローゼル! 究極段階<エクストラレベル>:ハイドロインパクト=I!」

 いつまでも様子見で居ても埒が明かないと判断し、マサシがまず攻撃に出る。
 アクアジェット≠強化し、スピードと破壊力が大幅にアップしたフローゼル最強の技で速攻を試みる。

「ケンホロウ、フェザーダンス=I」

 対してウェイガは、ケンホロウは突っ込んでくるフローゼルに羽毛をばら撒く。
 その影響で攻撃力が低下し、満足なダメージを与えられなかった。

「ケンホロウ、エアカッター=v

「…! マサシ、避けろ!!」

 相手の技を見て何かに気付いたユキヤが、慌てた様子でマサシに指示を飛ばす。

「フローゼル!!」

 ユキヤの声を聞きながらフローゼルに指示を出し、何とか回避に成功する。

「ユキヤ、一体どうしたんだ」

「あのポケモンの特性は、『はとむね』か『きょううん』のどちらかだが…。急所に当たりやすいエアカッター≠使ってきた時点で、特性は決まりだろう」

「『きょううん』は技が急所に入りやすい特性だったよな。けど、『はとむね』ってのは?」

「自分の物理防御力が下がらない特性だ。まあ、こっちの方がずっと楽だったんだがな」

 ユキヤの解説に、マサシも納得と言った表情を見せつつ小さく首を縦に振る。
 確かに後者の場合なら、普通に戦う分には全く問題は無い。
 しかし問題なのは前者の方。

 ただでさえ相手の攻撃が此方に対して急所に入りやすいと言うのに、それに加えてエアカッター≠ニ言う技まで用意してある。
 これでは、相手の攻撃をそう何度も耐えられない事は解っていた。

「本当にやり難い相手だ…。けど、どっちにしろやるしかないか」

 迷っていた所で、この戦いに決着がつくわけでもない。
 目の前の敵を倒すには、どっちにしろこのまま戦いを続けるしかないのだ。
 しかし、相手の攻撃が急所に入りやすいとは言え、『命中するまで』は通常の技と何ら変わりない。
 マサシは、その事には気付いていた。

「アヤ。上手くお前との連携であいつの攻撃を相殺し、向こうが次の攻撃に移る前にユキヤが決める。これが最良の攻撃手段だ」

 これだけの発言で、アヤはマサシのやろうとしていた事の全てを把握したかのような表情を見せる。
 流石は、幼馴染と言った所だろうか。
 マサシの考える事を即座に把握できると言う事が、かなり有利に働いていた。

「(マサシはスピードを使って向こうの攻撃を上手く誘導してくれる。私はそれを、相殺すればいい)」

 心の中でマサシの持ちかけてきた作戦を復唱しつつ、ブーバーンの入ったボールを手に取り、準備を整える。
 ユキヤもアヤと同じで一瞬の隙を待ちつつ、今か今かとその時を待っていた。


「『究極段階速度特化=ャGクストラレベル:アクセルシフト>』。フローゼル!!」

 今現在、マサシの手持ちはフローゼル・バクフーン・グレイシアの3匹。
 このうちグレイシアは最後の切り札として温存するとして、残り2匹のうち素早さに秀でているのはフローゼル。
 ゆえに、必然的にこのポケモンを選択し、更に『速度特化<アクセルシフト>』を選ぶ事になった。

「このスピードは…!」

 フローゼルのスピードを目にしたウェイガが、独り言のように呟く。
 それと同時に、今までの自分の記憶の中で一番スピードに自信を持っていたトレーナーを思い描く。

 自分と同じ、今回のマスターリーグ予選で証を持ったトレーナーの1人、ジグサ。
 彼は、頭の中で彼のポケモンのスピードと、今目の前で戦っているフローゼルのスピードを比べていた。

「驚いたよ。まさかジグサに匹敵するほどのスピードを持った奴がいるなんて!」

 そして比べあいをした結果、そのスピードは殆ど互角だと判断するに至った。
 それ程、今のフローゼルのスピードは凄まじかった。

「だけど、そのスピードには馴れているよ。ケンホロウ、エアカッター=I」

 先程ウェイガ自身が口に出したように、今のフローゼルのスピードは、ジグサの手持ちポケモンに匹敵した。
 にも関わらず、まるで狙い澄ましたかのようにぴったりのタイミングでフローゼルに真空の刃を発射してきた。
 しかしそれでも尚、マサシの表情には笑みが浮かんでいた。

「今だ!!」

 マサシが声を出した瞬間、フローゼルがその場所から姿を消失する。
 そしてウェイガから見てその奥に、アヤのブーバーンが力を蓄えてスタンバイしていた。
 この時点で、初めてウェイガはマサシの狙いに気付く。

「エアカッター≠命中される前に相殺するつもりか!」

「そうだ。特性の『きょううん』と急所率の高い技のコンボは強力だが、それは相手に命中して初めて最大の効果を発揮する」

 マサシがウェイガに対して説明をしている間に、ブーバーンのスタンバイが完了する。
 そして今まで貯めていた力を一気に放出し、桁違いの熱量を持った炎を発射する。

 そのままケンホロウの放った真空の刃と真正面から激突し、風船が破裂するかのような爆発を引き起こした。
 ズドォォォンッ!!


 爆発の影響で周囲に熱風が吹き荒れ、この辺り一帯の気温が上昇する。

「成る程、そういう事か…」

 爆発に乗じて、ユキヤは動き出していた。
 ケンホロウの右サイドから接近し、グライオンを繰り出す。

「はさみギロチン=I」

 そのままグライオンの、両手の代わりを務める巨大な鋏でケンホロウをがっちりと捉える。
 ケンホロウも必死にもがくものの、全く逆らう事が出来ない。
 グライオンはそのままケンホロウを地面に叩きつける。
 こうして、ウェイガの3匹目のポケモンがダウンする。

 マサシ達3人の連携が生んだ、見事な攻撃だった。







 Phase.127 幻影を見せる者







 形勢はマサシチームが若干有利に傾いてきた頃。
 戦っている相手、ウェイガは手持ちポケモンの半数を失った状況。
 対する此方は、まだアヤとユキヤは殆ど無傷。
 マサシのポケモンがだいぶ倒れているとは言え、まだまだ余裕のある状況だった。



 …だが、ここから。
 ここから、『惑乱』の異名を持つウェイガの最大の力がマサシ達に襲いかかろうとしている。

「それじゃあ4匹目だ。行け、オコリザル!」

 ウェイガが続いて繰り出したポケモンは、格闘タイプのオコリザル。
 それを見たアヤが笑みを見せながら、モンスターボールを手に取る。

「エーフィ!!」

 ポケモンバトルのセオリーに従った選択をし、相性の良いエスパータイプのエーフィを繰り出す。
 格闘タイプが相手なら、まず負けることはないだろうという確信を持っていた。

 …だが、彼らは思いもしなかっただろう。
 この時点で既に、ウェイガの術中に完全に嵌ってしまった事に。
 マサシですら、この状況には一切の違和感を持っていなかったのだから。

「行くわよエーフィ! サイコキネシス=I!」

 エーフィの額にある宝珠が輝き、強力な衝撃波が放たれる。
 直線上の地面を削りつつ、そのままオコリザルに襲い掛かる。
 だが、それでもウェイガは何も指示を出そうとしない。

「(何故、何も指示を出さない! さっきみたいに、ピクシーのかたきうち≠フパワーアップのために捨てるつもりなのか?)」

 ウェイガが何も動きを見せない事から、マサシはさっきやられた戦略をもう一度やるのではと言う思考が最初に生まれた。
 だが数秒後に、それが誤りである事を知る。
 否、今までの自分達の常識を覆す驚くべき戦略を思い知る事になる。

「…な!?」

 狙いは正確だった。
 今の攻撃で直線上に削られた地面から見ても、あのオコリザルに直撃した事は間違いない。
 にも関わらず…。



 ―――何故、あのオコリザルは平然と立っている………?


 信じられない光景を前に、マサシ達3人は完全に思考が停止していた。
 そこをウェイガが見逃す筈も無い。

「行け!」

 不意を衝かれ、まずエーフィが襲われる。
 攻撃を回避できず直撃を食らい、一撃で倒される。

 次にフローゼルに狙いを定め、突撃する。
 エーフィがやられた事で我に返り、何とか攻撃に反応して防御姿勢を取ることが出来た。
 だが肉弾戦が防がれた事を悟るや、距離を取って巨大な漆黒の衝撃波を飛ばしてくる。

「あくのはどう=c!!?」

 続けざまに攻撃が来る為、防御姿勢を取るも間に合わず、フローゼルまでもが戦闘不能にされてしまう。

「どういう事だ…。何でオコリザルがあくのはどう≠ネんて技を…。それにこの破壊力、完全に扱いなれているレベルだぞ…」

「マサシ、これ見て」

 ふと横からアヤに呼ばれたので、そこに駆け寄る。
 アヤが指差したのは、今さっき倒されたエーフィ。
 よく見ると、エーフィの身体に鋭い爪か何かで切られたような傷跡が残っている。

「オコリザルって、こんな鋭い切り傷を残すような技なんて使えたかしら?」

「いや、俺の知る限りじゃこんな技は使えないはずだ」

「となると…」

 自分達の知識の中で有り得ないことが起こっているとなると、最後に頼りになるのはユキヤ。
 再び、自分達の知らないイッシュ地方の技が使われたのだろうと判断したのだ。

「ユキヤ!」

「…生憎だが、あれは俺にも解らん」

 マサシが言葉を発する前に、その疑問に答えたユキヤ。
 そしてそれは、2人から希望を奪い去った。

「とにかく戦うしかない! バクフーン!」

 マサシは再びバクフーンを参戦させ、速度特化<アクセルシフト>≠発動する。
 先ほどのあの動きから察するに、このレベルのスピードでなければ、恐らく追いつく事は出来ない。
 流石にこの状況、自然とマサシの表情も険しくなっていた。

「究極段階<エクストラレベル>:瞬間連射10連かえんほうしゃ=I!」

 ここに来て初めて試す、速度特化<アクセルシフト>≠ニ瞬間連射の連携技。
 超スピードを行いながらの連射攻撃は、ほぼ同時に多方向からの攻撃を可能にした。

「オコリザル!」

 しかしその全てを、オコリザルは己の物理技のみで掻き消していく。
 やはり、火力面で不足してしまうようだ。

「グレイシア!」

 このままでは埒が明かないと判断し、マサシは遂に切り札であるグレイシアを投入する。
 究極段階<エクストラレベル>を発動し、速攻を仕掛ける。
 マサシの横から姿を消したと思った瞬間、オコリザルの胴体に体当たりを食らわせていた。
 ドゴンッ!!

 目にも止まらぬほどのスピードで突撃し、その衝撃の強さは尋常ではなかった。
 オコリザルはそのグレイシアのスピードに負けないぐらいの勢いで、近くにあった大木に背中から激突する。

「………! 何だ、あのポケモンは……!?」

 激突の際に土煙が舞い上がり、オコリザルの姿は見えなくなっていた。
 だがこの場所を風が吹き、すぐに煙は晴れた。
 しかし、そこにオコリザルの姿は無く、代わりに…。

「やれやれ、ばれちゃったか」

 代わりに、全身が漆黒の色をしたキツネのような姿のポケモンがいた。

「改めて紹介するよ。こいつが俺の4番手、ゾロアークだ」

「ゾロアーク…!?」

 またしても自分達の知らないポケモンの登場。
 反射的に2人はユキヤに視線を向けるのだが、ユキヤも首を横に振る。
 どうやら、ユキヤさえも知らないイッシュ地方のポケモンのようだ。

「ゾロアークの特性は『イリュージョン』。自分の手持ちポケモンの姿になりきることが出来る」

「イリュージョン…?」

「なりきるといっても、真似できるのは姿だけ。能力やタイプ、使える技などは変わらない。ただ、外見だけを他のポケモンに変化させる」

「成る程。それでそのポケモンが本来使えないはずの技を披露して相手を戸惑わせ、そこから一気に突き崩す。それがあんたの切り札か」

「その通り。ただしこの『イリュージョン』には欠点があってね、一回でも相手から直接ダメージを受けると元の姿に戻ってしまうんだ」

「そうか、グレイシアの攻撃を受けたから…」

 マサシの言葉を最後に、しばらくの間沈黙がこの場を支配する。
 数秒ほど間を置いて…。

「正体がばれた以上、もう遠慮する必要も無いね。他にもポケモンは残っているけれど、このゾロアークが俺の切り札だ。こいつがやられたら、もう君達に勝つ方法は無い」

「ということは、実質これがラストバトル…か。2人とも!」

 マサシの掛け声で、アヤはバクフーン、ユキヤがガブリアスを繰り出す。
 それに合わせて、マサシが『行くぞ!』と声を出す。

 ウェイガとの戦い、その最後の勝負へと突入していく…。







 Phase.128  VSゾロアーク





「ゾロアーク、ナイトバースト=I」

 最終対決で先に攻撃を仕掛けてきたのは、ゾロアーク。
 視界全てを黒で埋め尽くすほどの巨大なエネルギーが、3人に襲い掛かる。

「ここは私が! バクフーン、ブラストバーン=I!」

 先ほどの時と同じように、相手の攻撃を受け止める役をアヤが自ら買って出る。
 自身の相棒であるバクフーンの、最大級の技をフルパワーで撃ち出して迎え撃つ。

「…!」

 二つの技が激突した瞬間、アヤの表情は一瞬で焦りと動揺で満たされた。
 ほんの少しも加減していない、炎タイプ最強の技が押し戻されている。
 このままじゃ、あの途方も無い攻撃をまともに食らう事になる…。

 それを見たマサシは小さく舌打ちすると、グレイシアと共にアヤの援護に回る。

「究極段階攻撃特化<エクストラレベル:ブレイクシフト>=@ふぶき=I!」

 マサシもまた、持てる限りの最大級の技を発射。
 グレイシアの撃ち出した猛烈な寒波を伴う暴風は、先の爆発により上昇した気温を元に戻すどころか、一瞬で氷点下にまでするほどの力を発揮した。
 そんな強力なふぶき≠ニバクフーンの最大技で、ようやく打ち消す事に成功した。

「何てパワーだ…! あんなのとまともにやりあうには…」

 あのパワーを目の当たりにして、答えは一つしかない。
 自分達の手の内で、あれ程のパワーに対抗する手段はたった一つ。

 アヤの切り札、バースト・ストライク≠フエネルギーを取り込む事で発動する『バースト・ブレイク』。
 マサシはアヤに視線を向け、合図を送る。
 アヤもそれを把握して頷き返し、バクフーンに指示を出す。

 だが、発動までには多少の時間が必要になる。
 それまでの間、マサシとユキヤでゾロアークを足止めに掛かる。

「グレイシア、でんこうせっか=I!」

 速度特化<アクセルシフト>≠使っていないにも関わらず、グレイシアのスピードは凄まじい。
 比較するならば、先程ウェイガがジグサとほぼ同格だと言い放ったフローゼルよりも上。
 縦横無尽に残像を残す機敏な動きで、ゾロアークをかく乱する。


 かく乱する、筈だった。

「な…!?」

 だがゾロアークの方も、幻影を見せる能力を活用し、周囲に無数の己の姿を投影する。
 狙いが定まらず、少しずつグレイシアの動きにぶれが生じ始める。

「ガブリアス!」

 そんなタイミングでユキヤが指示を出す。
 指示と共にガブリアスが大きく跳躍し、腕を高く振り上げている。
 次に何をするのかを察したマサシは、同じくグレイシアに大きく跳躍するよう指示を出す。

「…跳べ!!」

 そしてグレイシアが跳躍すると同時に、ガブリアスが地面に着地すると同時に腕を地面に叩き付ける。
 その衝撃で島全体に振動が発生し、バトルフィールド全体に亀裂を入れた。

 ゾロアークも当然、この攻撃から逃れるべく上空へ跳躍していた。
 そのチャンスを逃さず、グレイシアは氷のエネルギーを集中させた光線を発射する。
 しかしそれを、ゾロアークは最初に発射したのと同じ技、ナイトバースト≠ナ押し戻す。

「…!」

 それを見たグレイシアは急遽攻撃を中断、急降下して地上に戻る。
 やはりあの技を食い止めるには、アヤの『バースト・ブレイク』しか無い。

 そんな時、ユキヤも更なる力を発揮する。
 ガブリアスの全身に破壊爪<デストラクションエッジ>≠フ力を纏わせ、飛躍的にその能力を上昇させた。

 『ブレイクヴェール』。
 ユキヤの、新たな切り札だ。

 ガブリアスはパワーアップしたその状態でゾロアークに接近、攻撃を仕掛ける。
 最小限の動きでゾロアークはその攻撃を回避し、黒く塗り潰された鋭い爪で反撃に出る。

 だがそれをガブリアスは片腕で防御し、空いたほうの腕で攻撃し、地上に殴り落とす。
 ズドォォンッ!!!

「ゾロアーク、ナイトバースト=I!」

 そしてこのタイミングで、ゾロアークが最後の攻撃に出る。
 今まで以上の力を宿した、巨大な漆黒のエネルギーが放たれた。
 まともに食らえば、3人纏めて全滅しかねないほどの破壊力だった。

「アヤ!! 今だ!!!」

 だがそれ程の攻撃を前にしても、3人は微塵も臆する様子を見せない。
 ここぞとばかりに、マサシはアヤに声を飛ばす。
 それを聞いたアヤも、待ってましたと言わんばかりの表情でスタンバイしていた。

「バクフーン、ブラストバーン=I!!」





 ゾロアークのナイトバースト≠ナ島は闇に覆われ、夜を思わせる光景が広がっていた。
 だがその中、一筋の青白い光が迸る。
 バクフーンの発射した青い炎がゾロアークの闇を振り払い、徐々に明るさを取り戻していく。
 一直線に進む炎は、そのままゾロアークに命中してその身を焼き尽くす。


 ズドォォォォォォンッ!!
 爆発と共にゾロアークの闇は全て振り払われ、代わりに爆発で生じた青白い光が島中を包み込むのだった。







 Phase.129 リーラシティを目指せ







 結局、アヤが放った最後の一撃でバトルは決着がついた。
 ゾロアークは戦闘不能となり、ウェイガが敗北を認めた。

 その場でマサシ達は3つ目の証をウェイガから受け取った。
 その後3人は船でラジルシティまで戻ってきて、ポケモンセンターで今後の事について話し合っていた。

「これで、3つの証を手に入れた。残るはリーラシティに居る、ナリサさんだけだ」

「明日この町を出発して、グレマタウンでナギサを回収。それからリーラシティに向かう事になるわね」

「だが、グレマタウンから前に俺達が通ったルートでは時間的に間に合わないだろう。多少の危険は伴うが、ロズ山を越えるルートを取る」

 端末のマップ機能を使いながら、今後のルートを確認する3人。
 確かにユキヤの言う通り、以前通ったルートでは、一旦リノアシティを経由して北の海岸線を迂回する必要がある。

 それに比べてロズ山を越えるルートは、ヨハロ地方の中心部を突っ切るだけで済む。
 時間的な意味では此方の方が理想的だが、道中の険しさは比にならないだろう。

「でも、このルートしかもう方法は無いんだ。行くしかない」

「道中何も無ければいいんだけどね…。これだけの騒動を起こした連中と遭遇せずに済むなんて、都合の良い話ある訳無いわよね」

「そうだな…。それにこの先の戦いで、今回みたいにイッシュ地方のポケモンを扱うトレーナーと出会わないと言う保証も無い」

「こればっかりは、徐々に対応していくしかないわね。逆に私達も、向こうの技を取り入れられればかなり戦いの幅が広がると思う」

「それは道中で俺が多少は指導出来るだろう。が、最終的に習得できるかどうかは2人次第だ」

「やるに決まってるじゃない、ユキヤ。私達はこの大会で優勝する為に、まだまだ強くならなくちゃいけないんだから!」

「ならば明日、グレマタウンでナギサと合流してから始めるぞ。奴も戦力に数えているからな」

「解った。じゃあ、今日は休もう」

 無事に3つ目の証を手に入れ、今日のところは床に就くマサシ達。
 今後、更なる大きなうねりが待ち構えている事を覚悟しつつ、しばしの休息を取る事にするのだった。







 ヨハロ地方北東エリアの、とある小さな町。
 そこのポケモンセンターのベランダに、フジヤチームの3人は佇んでいた。
 昨日のエンスチームとの騒動で居場所がばれてしまった為、急遽潜伏先を変更したのだ。

「フジヤ君、あのエンスさんって人と戦ってよく無事だったね」

「それは向こうがどういうつもりなのか、途中で戦いを切り上げたからだよ。あのまま戦いが続いていたら、俺1人じゃちょっと不味かったかもしれない」

「…でも良かった」

 昨日の出来事の後、フジヤが無事なのを確認してからと言うもの、ずっとチズサは胸を撫で下ろしたまま。
 余程フジヤの事を心配していたのが伺える。

 そんな時、フジヤ達の宿泊している部屋の扉がノックされる。
 コンコンッ…。


「フジヤ、僕だよ」

「その声はペキルか。入れ」

 フジヤの許可を貰い、扉を開けて仮面をつけた巨体の男が部屋に入ってくる。

「アロナシティで別れた後の調子はどうだ」

「順調だよ。予選内ランク11位以下のチームは全滅したし、10位以上のチームも既に何チームか潰したよ」

「具体的に、あと何チーム残ってる?」

「フジヤのチームを含めて後4チーム、11人だね」

「生き残っているのは、俺のチームとエンスチーム。ミノルチームにマサシチームか」

 フジヤは端末のランク表を確認しながら、今しがたペキルの口にした生き残りのチームを確認する。

「この状況で一番に警戒するべきは、第1位のマサシチームと第2位のエンスチームが合流する事だ。奴らが組んだ時の力は、正直想像できない」

「解ったよ。極力この2チームに攻撃は集中させる事にするよ」

「そういえば、第4位のミノルチームにはフルカが潜伏していた筈だが、あいつはどうした?」

「やられたよ。その所為で、出場者の中に僕達の仲間が紛れ込んでいる事がばれちゃったんだ」

「…それで此方の被害もかなり出ているのか。証を持った4人が、本格的に俺達を殲滅する為に動き出したか…」

「これからどうするの?フジヤ」

「このまま逃げ切れるかとも思ったけど…。そのことが向こうにばれたのなら仕方が無い。残りの3チームに警戒しつつ、近いうちに総力戦を仕掛ける」

「フジヤ。今現在残ってる主戦力はレクトにレノム、ミオンにウラグがいるよ」

「1人で1チームを纏めて相手できるだけの実力者は、それくらいしか居ないか…。けど、数の上ではまだ此方が遥かに上だ。それに、いざとなればペキル。お前もいる」

「…」

 フジヤがペキルを信頼しているような言葉を発した瞬間、ペキルが発する雰囲気が変わる。
 背筋が凍り、実際に部屋の室温が低下しているかのような錯覚を与えるほどの悪寒。

「フジヤ。それともう一つ、頼まれていたポケモンを持ってきたよ」

「ありがとう。これで万が一の事があっても、俺達が負ける事は無い」

「既にフジヤから渡されたあの力も、既に全員に行き渡っているし、その上でそのポケモンがいるなら、確かに負ける光景なんてイメージできないね」

「準備は整った。頃合を見計らって残る3チームも殲滅し、俺達がこのマスターリーグの頂点に立つ」

 マサシ達の知らぬ所で、着々と事態は動き始めている。
 今からそう遠くない未来、フジヤ率いる大会出場者殲滅を目論んだ集団との全面戦争が繰り広げられるだろう。

 その事を知らずとも、そんな予感を、マサシ達を始めとする生き残った3チーム8人が全員感じ取っていた。







 マスターリーグ予選終了まで、後24日。







 To Be Continued

 

[アットの一言感想]

 それにしてもマサシチームの3人って、序盤を考えると、とても息が合わなそうな3人に思えてました←
 実は実力よりも、その辺りのチームワークが一番成長したのかも知れませんね。

 

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