ウェイガとの戦いから翌日。
 ラジルシティの北東エリアに、マサシ達3人は居た。
 この町を出発し、およそ半日の距離でグレマタウンに到着する。

「今からグレマタウンに向かうわけだが、そこにはナギサと、大会出場チームが1組待機しているらしい」

「へぇ、それはラッキーね。上手く協力関係を結べればいいんだけど」

「この状況ならそれはまず問題ないだろう。さて、行くぞ」

 3人はラジルシティを後にし、北東方面へ歩き出す。
 残る最後の一つの証がある、リーラシティを目指して。







COM マスターリーグ編
第35話
総力戦−T 決戦へのプロローグ







 Phase.130 生き残りは3チーム





 ラジルシティを出発し、3人は他の出場チームとの遭遇を願いつつ足を進めていた。
 だが何故か、途中一度も遭遇する事も無く、グレマタウンまで後半分の所まで来てしまった。

「ねえ、おかしくない?幾らなんでもこんなだだっ広い草原地帯で、一度も他の出場チームと出くわさないなんて」

「既に出場チームの大半が奴らに潰されたと考えるべきか…?」

「ユキヤ、その考えは外れていない…」

 ユキヤの推測に対し、端末を確認しながらマサシはそれを肯定する。
 気になって2人も、マサシの持つ端末のランク表を確認する。

「な…、何これ!?」

「残っているチームが、僅か4チーム…だと」

 そう。
 端末のランキング表に残されていたチームは僅か4組。
 マサシ、エンス、フジヤ、ミノルのチームだけだったのだ。

「フジヤが黒幕だと言う事は、エンスから聞いている。つまり、今の段階で奴らに対抗出来るのは、俺達を含めて僅か3チーム9人…!」

「いや、3チーム8人だよ」

 今のマサシの発言を修正するかのように、突如聞こえた別の声。
 だがその声に、マサシ達3人は聞き覚えがあった。

「トウクさん…」

 予選開幕当初、ここから北へ少し進んだ場所に位置するリミアシティで戦った相手、トウクだった。

「久し振りです。 ところで、何で8人なんですか?」

「ミノルチームの1人が、レクトの仲間だったんだ。まあその仲間は、ナギサと言うトレーナーが撃破したそうだけどね」

「ナギサが…」

「ん、彼女は君達の知り合いなのか?」

「ええ、この大会とは関係ないんですけど、俺達の仲間の1人です。彼女はグレマタウンですよね?」

「ああ。ミノルチームの2人と一緒に、今はグレマタウンで待機しているよ」

「俺達、ナギサと合流する為にグレマタウンに向かっている所だったんです。それにこの前、エンスさんからこの騒動の黒幕と思しき奴がリーラシティにいたって言う連絡を貰いました」

「黒幕…? レクトが元凶じゃなかったのか?」

「いえ、レクトさんすらも操る奴がいるんです。そいつがこの騒動を引き起こし、マスターリーグを大混乱に陥れた」

「信じられないな…。今のレクトは僕ですら勝てないのに、それを操る奴がいるなんて…」

「兎に角、俺達にはその黒幕については既に見当はついているんです。だから俺達はグレマタウンでナギサと合流した後、リーラシティに向かう予定だったんです。どっちにしろ、もう一度ナリサさんと戦うつもりだったので」

「なら、一度ミノルチームの2人に会ってくれ。今現在、近くにいる生き残りのチームは君達2組しかいないんだ」

「わかりました。とりあえずミノルチームに会って話をした後、今後の動きを決めようと思います」

 マサシとトウクの会話でこの場に居る者の意見は固まった。
 一同は、この場から更に北東方面へと進む。
 進んでいくうちに、マサシ達にとって見覚えのある懐かしい町並みが見えてくる。

「グレマタウン…。あれからまだ2ヶ月ちょっとしか経ってないのに、随分懐かしい感じだ」

「マサシ、懐かしんでないで今はナギサたちと会うのが先よ!」

「わかってる。行こう」

 懐かしさに浸る間もなく、4人は町に足を踏み入れる。
 その町のポケモンセンターのロビーで、彼女は待っていた。

「マサシ君、皆!」

 ポケモンセンターの自動開閉ドアが開き、その向こう側からマサシ達が建物に入ってきた。
 そのとき彼らの姿を視認したナギサは、反射的に彼らの元へ駆け寄っていた。

「皆、ごめん。あの時、私がレクトさんを倒せていたら…」

「謝る必要は無いさ、ナギサ。今のレクトさんの力は、『終焉の道標<エクストレーム>』にだって匹敵するかもしれないんだ。それ程の敵が相手じゃ、仕方ない」

 マサシは、自分を励まそうとしてくれているのは解っている。
 しかし、それでもレクトを逃してしまった事と、もう一つが心のつっかえとなっていた。
 全力を出せないまま、逃してしまったと言う事に…。

「何だ? お前が待ってたチームってのは、そいつのチームかよ」

 近くの椅子に座っていた男のトレーナーが、歩み寄りながらナギサに喋りかける。
 その男は、マサシの方に視線を向けながら喋っていた。
 予選のランク分けでに顔を合わせた時と同じ視線で。

「ミノル…。どこかで聞いたと思っていたが、お前の事だったか」

 マサシも、このタイミングでミノルの顔を思い出す。
 だが今となっては、そんな事はほんの些細な問題だった。

「ミノル、お前も今のマスターリーグの状況はわかっている筈だ。このまま何もしなければ、奴らにやられるのは時間の問題だと」

「…チッ、認めたくはねぇがその通りだ。あのレクト相手に、俺は負けた…。それに、聞いた話じゃ奴すらも操ってる奴がいるんだろ?」

「ああ。フジヤチームが、全ての黒幕だ」

「フジヤチームだ? 奴らは予選内ランク第6位にいながら、そこまでの力を持っているようには見えなかったぜ?」

「俺達も途中でフジヤチームと戦ったけど、確かにそこは疑問だった。 けど、お前だって見たんだろ?レクトさんが使う、あの黒い力を」

「あの力は一体何だ? ポケモンにあそこまでの影響を与えるな力なんて、聞いた事がねえ」

「あんまり表沙汰にはしたくない事なんだが、仕方ないか…」

 今までマサシ達は、出来る限り魔属性の事は伏せてきた。
 それによって、余計な混乱が生じるのを危惧していた為だった。
 が、今となってはそんな事を考えるだけの余裕は無い。

 マサシは、7年前にあったリュウイチ達との戦いの事も含めて、事細かに説明した。

「7年前…か。そういや、その頃にこのヨハロ地方で何かでかい事件があったって話が上がってたな。あの事か…」

「ミノル、お前はヨハロ地方出身なのか?」

「そうだ。このヨハロ出身である以上、他の地方のトレーナー如きに負けてはならないって言う…。この地に生まれた奴に、トレーナーになる前から植え付けられるプライドみてぇなもんがあるんだよ」

「そういえば予選ランク決めの時もかなりの上から目線だったよな。それも、ヨハロ地方出身なら仕方ないか」

 溜息を吐くような感じで喋るマサシ。
 喋りながら、横目でユキヤに視線を向ける。

「しかし、そこまでレクトが危険な奴だと解っているなら、何で奴は今まで逃げ延びる事が出来た?単純に強いだけじゃ納得できねえぞ」

「さっき話した魔属性には、普通の攻撃は通じないんだ。ポケモン達が本来持つ基礎的な能力じゃ、あの力を持った奴にダメージは与えられない。俺みたいに、あれに匹敵する強大な力を持っていれば話は違うんだが…」

「その、お前の言う力を持ってる奴って言うのはそこまで少ないのか?」

「少なくとも、俺の知る限りじゃこの力を使えているのは1人だけだ。しかもそのチームはまだ生き延びている」

「エンスって奴のことか? 少し前にお前のチームが倒したって言う…」

「ああ。だけどお前も、ここまで生き延びたトレーナーに違いは無い。レクトさんと戦った時も、少しは通用してたんじゃないのか?」

「あの時は、既にトウクが2匹倒していたからな。その後の2匹は、俺でも倒す事は出来た。だが、奴のジラーチだけは別格だった」

「ジラーチ…!! 前に俺達が戦った時からゆうに1ヶ月近くは経ってるのに…。やはり、ジラーチの千年に一度、七日間しか活動できないっていう性質は覆されているみたいだな」

「マサシ君、それだけじゃないよ。前に戦った時、マサシ君の技で魔属性を弱体化させた上で、私がしっかり止めを刺した筈なのに」

 マサシとミノルの会話に、ナギサが参加する。
 ナギサの言葉で、あの時の戦いの事を今一度思い出した。

「だが、レクトさん本人が魔属性の力を持っているんじゃ、結局同じ事か…。やはり、レクトさん本人の魔属性をどうにかしないと」

「レクトさんを戦闘不能にさせた上で、俺が魔属性の力を浄化させる。それしかないだろうな…」

「マサシ、問題はそこだけじゃないと思うわよ」

 背後からアヤに呼びかけられ、其方を振り向く。
 それを確認して、アヤは更に話を続ける。

「マサシ、言ってたでしょ?前にあのミオンって奴を助けに現れた男の事。そいつも、魔属性の力を持っていたって…」

「ああ…。お前に言われなくても解ってたさ、アヤ。フジヤの配下ほぼ全てが、魔属性の力を持っていると思って間違いない」

「もしそうだと、かなり辛いわね。現状、魔属性に直接対抗できるのはマサシとユキヤ、それにエンスさんだけだから…」

「アヤちゃん。私も、魔属性に対抗出来る技は習得してるよ?」

 だがそんな中、ナギサがアヤに語りかける。
 その内容は、その場にいた全員の注目を集めるものだった。

「私は皆みたいに特別強力な力があるわけじゃないから、基本的な技の組み合わせとかで頑張ってきたんだけど…。その中で、私でも対抗出来る術を見つけたのよ」

「まあ、天属性無しでも強力な技があれば少しはダメージを通せるが…。本当に大丈夫なのか?」

「大丈夫。攻撃能力は殆ど無いけど、魔属性を祓う威力だったらマサシ君にも負けてないから」

「…その顔を見る限り、相当自信があるみたいだな」

 ナギサの表情から漲る自信をマサシは感じ取り、ナギサに今一度確認の言葉を投げかける。
 その問いかけに対して、ナギサも力強く頷いた。
 それを見た事で、マサシ達の決意は固まった。

「よし。まず俺達はリーラシティへ向かい、途中でエンスチームと合流する。その後、近くに潜伏しているであろうフジヤチームを見つけ出し、奴らを叩く!」

「マサシ、それはいいがどうやってリーラシティまで行くつもりだ。ここからヨハロ北の海岸線を迂回するルートじゃ時間が掛かりすぎて逃げられるかもしれないぞ」

 と、そこでミノルが当たり前な質問をぶつける。

「それについてはここに来る前に考えてきた。ここから北部の海岸線は迂回せず、ロズ山を越えるルートを取る」

 端末のマップ機能を開きながら、考えていた進行ルートを指でなぞりながら説明する。

「ロズ山っていやあ、ここへ来るのに俺達が通ったルートじゃねえか」

「そうなのか? なら、ここを通るにあたって危険な所とかあるか?」

「そこまで危ない所は無いな。比較的登山道や山の中を貫くトンネルもそこまで複雑じゃねえ。登山道以外の所の傾斜も比較的緩い。 解りやすく言えば、どんなルートでも突破は出来る」

「そうか…。だけどそうなると、途中で敵の待ち伏せに遭う可能性も出てくるな」

「そこは何とか強行突破するしかないな。何とかしてロズ山を越えて、リーラシティに辿り着かないと」

 その後、2組の会議は続いた。
 気がつけば、既に日がとっくに沈んでいたと言う。







 マスターリーグ予選終了まで、後23日。







 Phase.131 ロズ山突入







 グレマタウンで一夜明け、マサシ達6人は出発の準備を整えていた。

「…よし」

 それぞれが出発の準備を整え、グレマタウン南東方面の境目に集合していた。

「前に俺達がリコナチームと戦った場所から東に進めば、ロズ山の登山道だ。山の中腹辺りにロズタウンがあるそうだから、今日はそこまで辿り着くのを目標にしよう」

「行こう」

 マサシの言葉を合図に、マサシ達6人はグレマタウンを出発する。
 前に通ったことがある場所なだけに、足取りは軽かった。
 そして…。

「あの時の地形変化はそのままなんだな…」

 マサシ達は、この予選で初めての戦いを繰り広げた場所に、再び足を運び入れる。
 何だかんだで、感慨深い場所となっていたようだ。

「おいマサシ、今日中にロズタウンに行くんだろ?こんな所で時間潰していいのかよ」

「ああ、悪いな」

 ミノルの呼び掛けで我に返り、謝罪の言葉を掛けつつ再び歩き出す。
 山脈の合間を、進路を東に向けつつ進んでいく。

「おい、マサシ」

 山脈を進んでいる途中、再びミノルがマサシに呼びかける。

「今度は何だ」

「グレマタウンにいるときに聞いたんだが、あのレクトって野郎とお前らは昔馴染みらしいな」

「…ああ」

「いざって時に戦えないとかほざかねえだろうな」

「それは要らない心配だ。とっくにあの人と戦う覚悟は決めている。何があろうとも、俺はあの人を倒す」

「…」

 マサシが喋るのを聞きながら、ミノルはマサシの顔色を伺っている。
 だが、一点の曇りも無い決意に満ちた表情を見て、自分の不安は杞憂だと納得するのだった。




 それから間もなくして、再び平原に差し掛かる。
 そこから数キロほど離れた距離に、巨大な山が聳えていた。

「あれがロズ山…。傾斜は確かにそれ程じゃないが、その分随分大きいな」

「ところで、この山を越えるにしてもどう動く。このまま固まって行動するのか?」

「いや、この6人を3チームに分けて行動する。敵が何処までこっちの動きを把握してるのかは解らないが、少なくとも敵をかく乱する事は出来る筈だ」

「成る程な」

「まず、原則として俺、ユキヤ、ナギサはそれぞれバラバラに行動する。そうしないと、奴らの魔属性に対抗できないからな。それと、俺とミノルも別行動だ。俺達2人が集中攻撃をされたら、それこそ一巻の終わりだ」

「まあ、それが妥当だな。んで、俺が聞いてんのはどういうペアにするのかって事だ」

「なるべく戦力的に均衡になるように分けたい。だから…」

 その後、10分ほど組み分けに関する議論が続いた。
 その結果、組み合わせは以下のように決定した。


 マサシ&カズヒコ
 ユキヤ&ミノル
 ナギサ&アヤ




 この組み合わせに分かれて、3人は別々に待機する。

「このロズ山は、どんなルートを通るにしても、必ず中腹にあるロズタウンを通過する事になる。今日はそこで合流だ」

「分かった。じゃあ行こう、 皆、無事で!」

 こうしてマサシ達6人は3組に別れ、それぞれのルートでロズタウンを目指す事になった。
 そして当然、マサシ達の一連の動きは、前もってロズ山に待ち構えていた敵は感知していた。



 ロズ山中腹辺りで、コンパンと並び立つ男が1人。
 コンパンの能力を使い、この山周辺の様子を探っていた。
 そんな中、突如コンパンが大きな反応を見せる。

 今しがたロズ山に突入したマサシ達の存在を感じ取ったのだ。

「そうか、やっぱりこのロズ山に来たんだね。フジヤさんの言った通りに」

 男は、自身の背後で待機する集団に指示を飛ばす。

「フジヤさんの言った通り、このロズ山に残ったマスターリーグの出場チームがやってきた。1人残らず、殲滅しろ」

 集団は、ざっと見積もっておよそ15人。
 男の指示を受けて、それぞれマサシ達を迎え撃つべく散り散りに動き出す。
 その後、男は再びコンパンと共にマサシ達の動きを捕捉する作業に戻るのだった。

 先ほどの集団に、それぞれ素早く的確な指示を飛ばせるように。





 その一方で、マサシ達はいつ敵に襲われてもすぐに戦えるよう、周囲を警戒しながら山を登っていた。
 ロズ山のやや南側方面、ユキヤ&ミノルはこのエリアから登山を続けていた。

「一つ聞きてえ」

 ロズ山を登っている途中、突如相方に呼びかけたのはミノル。
 表情から察するに、単なるお遊びで呼びかけた訳ではないのが伺える。
 何処か、真剣な表情をしている。

「お前、俺と似た雰囲気を纏っている気がしたが…。もしかして」

「…そうだ。俺もお前と同じ、このヨハロ地方出身だ」

「その割には、随分あいつらと仲良くしてたな。ヨハロ出身のトレーナーとしてのプライドは無ぇのか?」

「俺は4年前、あいつらと同じ大会に出た事がある。そのとき、俺は決勝戦でマサシに敗れた」

「…!」

 ヨハロ出身のトレーナーが敗れたという発言に、ミノルは目を見開き、驚きの表情を見せた。

「あの時の俺は、まだまだ未熟だった。俺がヨハロ出身だからと言う事で、油断しきっていたのが敗因だ」

「あいつ、そんなに強いのか?」

「お前は、予選ランク決めの時にあいつのバトルを見たと言ったな。その時、あいつは全く本気は出していなかった」

「何故、見てもいないのにはっきりとそんな事が言える?」

「あいつが相手次第で本気を出すようになったのが、この予選が始まった後だからだ。当初、あいつは出来る限り切り札を温存しようって言う考えだったからな」

「成る程。で、お前の最終的な目標はあいつらに勝ち、ポケモンマスターの座をつかむと共に己の誇りを取り戻す…か?」

「そういう事だ。どういう結果になるにしろ、この予選が終わればまたあいつらとは敵同士になるからな」

「それでも、自分を負かしたあいつの事はライバルとして認めていると言う訳か」

 ミノルの最後の発言に対し、ユキヤは言葉を発しなかった。
 ただ静かに両目を瞑り、小さく頷くだけだった。

「無駄話が過ぎたな。さっさと先に進むぞ」

 歩きながら話をしていた為、自然と進む速度は遅くなってしまった。
 ペースを元に戻し、一刻も早く目的地へ向かうべくやや早足で進み始める。

 だが途中から、ユキヤが周囲に視線を配る動作をし始める。

「おい」

「何だ?」

「戦いの準備をしておけ。既に近くで、俺達を見張っている奴がいる。かなりの数だ」

 傾斜こそ緩やかだが、周囲は岩盤などが無造作に聳えている地形。
 敵が身を隠すにはこれ以上無い程に有利な場所だった。
 そしてミノルも、その気配に言われてから気付く。

「確かに、かなりの数だ。が、流石にこれだけの数が3分割されているって事はまず無いな。チームリーダーである俺がいるからこそ、集中攻撃のために数を揃えてきたか」

「時間が無い。纏めて一掃する」

 ユキヤとミノルがモンスターボールを手に取り、戦いの準備を整える。
 その瞬間、今まで2人の様子を伺っていた敵が、一気に飛び出した。







 Phase.132 ロズ山攻防戦@





 最初に感じ取った敵の数は、ざっと見積もって25前後。
 だが、実際に飛び出してきたトレーナーの数は5人。
 残りの数は、全て彼らが前もってボールから外に出していたポケモン達だった。

 その何れもが、魔属性の霧状のエネルギーを纏っていて、邪悪な存在感をアピールしていた。

「メタグロス、ボスゴドラ」

 ユキヤはこの2匹だけを繰り出し、掌を前に翳す。
 指示は、それだけだった。
 それだけだったにも関わらず…。

 ズドドドドドドドッ!!!
 その2匹が、その巨体に似合わないスピードを発揮して最初に飛び出してきた集団の半数近くを薙ぎ払う。
 メタグロスのこうそくいどう≠ニ、ボスゴドラのロックカット≠ェ可能とした動きだった。

 そしてこの2匹に打ち破られたポケモン達から、魔属性の力が振り払われていた。

「ハガネール!!」

 そんなユキヤに負けじと、ミノルもハガネールで応戦する。
 その巨大な体から繰り出される鋼の尾を使った薙ぎ払いで、敵の数を着実に減らす。

「バンギラス!」

 そしてミノルのポケモンを確認したと、ユキヤは3匹目のポケモンを投入する。
 バンギラスがボールから飛び出した瞬間、辺り一帯に強烈な砂嵐が発生する。

 それは局地的な台風とも取れるような、凄まじい勢いを持った暴風だった。

「今のうちだ」

「はっ、言われるまでもねえよ!!」

 突然の砂嵐で戸惑う敵集団相手に、2人は真っ向から向かっていくのだった。






 ユキヤ達が敵の襲撃を受けたことは、さっきの砂嵐で他のチームに知らせていた。

「あれは、ユキヤ達の向かった方角! やっぱり待ち伏せが…」

 最初の登山口から、まっすぐ東へ進んでいるのはマサシとカズヒコ。
 向かって右の方角で、遠方で茶色い竜巻を目視した事で、ユキヤが敵と遭遇した事を直感した。

「いや、ユキヤなら大丈夫だ。幾ら魔属性の力を持ってる奴らが相手でも、雑魚相手に負けるほど弱くは無い。お前も、チームリーダーの強さは熟知してるだろ?」

 マサシは後ろを振り返りながら、自分と行動を共にするトレーナー、カズヒコに呼びかける。

「確かにミノルの強さは、この予選を通してよく見させてもらった。が、お前達の話を聞く限りじゃそれも少しばかり不安が残る」

「どういう事だ?」

「ミノルの基本的なスタイルは、耐久力の高いポケモンで相手の攻撃を受け止め、そこから一気に仕留める、所謂カウンター型だ。が、お前達の言う魔属性の力の所為で、あいつのポケモンで敵の攻撃をそう何度も耐え切れるかどうかが心配だ」

「ユキヤがいるんだから心配はいらないさ。あいつがいれば、魔属性の力は振り払えるんだから」

「…だといいんだが」

「それよりカズヒコ、用心してくれ。向こうが敵と遭遇したとなると、そろそろ俺達も敵のテリトリーに進入する頃と考えるべきだ。ましてや俺はチームリーダーで、尚且つ天属性の力を持っている。連中が一番警戒するとすれば、間違いなく俺達のところだ」

「マサシ。お前は何で、こんな状況でそんなに冷静でいられるんだ?俺は内心、こんな状況に怯えているのに…」

「馴れ…かな。俺はトレーナーになった日から、色々と騒動に巻き込まれる事が多かった。だからもう、こういう状況にも自然と対処できるようになってるんだ」

「俺には想像もできないな…。俺はごく普通に旅をして、旅先で適当にバトルをして親睦を深めて、そして大会に出場するだけだった。御伽噺に出てくるような巨悪との戦いなんて物とは、無縁だったのにな」

「それが一番さ。何事も無く、平和に過ごして暮らせる。そんな当たり前を取り戻す為に、まずはこのマスターリーグを混乱に陥れた黒幕を倒さないとな」

「お前の言う事は正論だが、果たしてフジヤまで辿り着けるかな?」

「…っ!」

 突如背後…。
 登山道の先のほうから途轍もない圧迫感と共に、聞き覚えのある声が耳に入る。

「お前は…!」

 そこに立っていたのは、灰色の髪の毛が腰辺りにまで伸びている男。
 そしてその周囲を囲むように、緑色の身体をした巨大なドラゴンが1匹。

「あの時のレックウザ使い…」

「伝説のポケモン、レックウザ…。こんなポケモンを直に見ることも、普通の生活じゃありえない事だよな」

 その巨大な姿を見て、カズヒコが最初に漏らした言葉がそれだった。
 その圧倒的なレックウザを前にして、恐怖よりも先に、感動すらも覚えているようだった。

「カズヒコ、気を抜くな。こいつは恐らく、フジヤの配下のトレーナーの中でもトップクラスの実力を持っている。少なくとも、レクトさんに匹敵するくらいの実力は…」

「レクトなど、俺の足元にも及ばんよ。奴が魔属性の力を得て自我を失ったのがその証拠だ。俺は奴とは違い、この力を持て余す事など無いからな」

 そう喋ると同時に、レノムの全身から黒い影のような魔属性のエネルギーがあふれ出す。
 同時に周囲の視界が少しずつ黒く染まり始め、一層邪悪な雰囲気を醸し出している。

「気を引き締めてくれ。最初から全開で戦わないと、すぐにやられる…!!」

「分かった!」

 マサシの声を合図に、2人はボールを手に取り、臨戦態勢を整える。
 それを見届けた後、レノムは右掌を前にかざす。

「行け、レックウザ」

 そしてその号令を合図に、レックウザがマサシ達目掛けて襲い掛かるのだった。







 To Be Continued

 

[アットの一言感想]

 気づけばだいぶ人数は減っていたらしい。しかも1人、ナギサが削ってるし(何)。
 しかしある意味、人が残り少なくなってからが、本番かも知れませんね。

 

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