ヨハロ地方の西側中央に聳える、巨大な山脈。
現在マサシチームとミノルチーム+ナギサの計6人は、ここを横断しようとしていた。
道中、敵が待ち構えている事を警戒し、6人は2人ずつ3組に分かれて行動を開始した。
ユキヤ&ミノルチームは早くも敵の襲撃を受けるも、圧倒的優位のまま戦闘を進める。
そして、その一方で…。
COM マスターリーグ編
第36話
総力戦−U レックウザの脅威 マサシVSレノム
Phase.133 ロズ山攻防戦A
マサシとユキヤのチームが敵の襲撃を受けたのに対し、山の北側を進むアヤ達の前には、全くと言っていいほど敵が出現しなかった。
「さっきから遠くの方で音が聞こえてるけど…。マサシ君達、もしかしてもう敵に…」
「考えられるわね。もう山も中腹辺りに差し掛かってるし、そろそろ敵の待ち伏せに遭ってもおかしくない頃合だわ」
「やっぱり私達のルートだけ敵が居ないって言うのは、ラッキーだったからなのかな?」
「違うわ。私達は、完全に舐められてるのよ。私達は向こうの2組と違って、チームリーダーがいなければ、魔属性に対抗する力も無い。取るに足らない雑魚だって、向こうは思ってる筈」
アヤはそこで言葉を一旦止め、彼女と並んで歩くナギサに視線を向ける。
「だけどそれが幸いしたわね。こっちにも、魔属性に対抗しうる力を持ったトレーナーがいるのを、奴らは見逃した」
視線を向けたまま、アヤは力強い笑みを作る。
このロズ山の戦いで鍵を握るのは、ほぼ確実に敵の不意を衝くことが出来る自分達だと確信しているからだ。
ナギサも表情と雰囲気からそれを感じ取り、小さく頷いた。
「行くわよ、ナギサ。私達が最初にロズタウンに到着して、マサシ達と戦っている連中の背後から不意を衝くわよ!」
アヤとナギサは駆け出した。
ロズタウンへ一刻も早く辿り着く為に。
ロズ山の西側で、轟音が鳴り響いた。
それと同時に、音の鳴った場所で大量の粉塵が巻き上がる。
その中から左右に2人のトレーナーが飛び出した。
「カズヒコ!大丈夫か!!」
右側に飛び出したトレーナー、マサシがもう1人のトレーナーに向けて声を飛ばす。
「大丈夫だ!」
向こうから声が返ってきたことで、一先ず無事は確認した。
しかし、それで安心できるような状況ではない。
今マサシ達は、伝説のポケモンレックウザを相手にしている。
先程マサシが言った通り、一瞬でも気を抜いた瞬間にやられる。
それ程の相手だった。
状況的に言えば、レックウザのトレーナーはマサシとカズヒコに前後を挟まれた状況。
にも関わらず、圧倒的な余裕を見せた態度を示している。
「どうした。来い」
「…っ! マニューラ!!」
マサシは手に取ったボールを投げ、その中からマニューラが飛び出す。
飛び出すと同時にその場から消えると、一瞬も経たないうちに冷気をまとった爪でレックウザに一撃を浴びせていた。
「速いな。聞いていたより、随分と強さが違う」
「エンペルト!れいとうビーム=I!」
今度はレックウザの背後から、カズヒコの声。
エンペルトに指示を飛ばし、上空のレックウザ目掛けて冷気の光線を発射する。
「こっちは話にならんレベルか」
横目でエンペルトの攻撃を見ただけで、レノムは彼への関心を失くす。
そしてマサシの方を向いたまま、レックウザは尾を横に振るって光線の起動を逸らしてしまう。
「しんそく=v
レノムが指示を出すと、先ほどのマニューラにも劣らないスピードでエンペルトに突撃。
その圧倒的なパワーで、どんどんエンペルトを押し込んでいく。
「エンペルト、アクアリング=I!」
レックウザの突撃を食い止めながら、エンペルトは自分の周囲に水製のリングを展開する。
そのリングからエネルギーを受け取る事で、少しずつダメージを回復して、何とかレックウザの一撃を受け止める。
「何てパワーだ…! 一撃を止めるだけでこんな…」
「お前は第4位のチームだと聞いていたのだが。期待外れだったな」
「…」
「レックウザ、しんそく=v
速攻カズヒコに止めを刺すべく、レックウザが先ほどよりも更に増したスピードで突撃する。
だがその直後に待っていた結果は、レノムの立てた憶測とは大きくかけ離れていた。
「何…?」
何かをした動作はあったが、確かなのはレックウザが致命的ともいえるようなダメージを受けていると言う事だった。
「え…?」
勿論マサシにも、今の一瞬で何があったのかは把握できていない。
「もう一度来いよ。今度はちゃんと、その目で何があったのかを見極めてみろ」
挑発に乗る訳ではないが、確かに敵が何をしたのかは把握しておきたい。
敵の手の内に未知の技があるという事は、それだけ向こうにアドバンテージがあると言う事。
それをいち早く把握する為にも、あえてレノムは3度同じ攻撃を仕掛ける。
「…」
目を凝らし、カズヒコとエンペルトの動きを見る。
レックウザの常軌を逸したスピードを、カズヒコはその目で的確に捉えている。
そして自分達に向かってくるレックウザを、身体を多少動かす程度の最小限の動作で回避。
そのまま敵の懐へと飛び込み、未だ突撃の勢いの残るレックウザに、懇親のカウンターの一撃を叩き込む。
ドゴンッ!!!
「…! 成る程な、最小の動きから繰り出すカウンターと言う訳か」
「そうだ。さっきも言ったが、俺にはこの大会に出場してる奴らみたいに、並外れた力がある訳じゃない。だから俺に出来るのは、敵の持つその力を利用して、一撃を叩き込むこの戦い方だけだった」
「並外れた力が無いなど、よく言ったものだ。今のレックウザの動きを捉えた貴様の動体視力、それこそ常軌を逸しているぞ」
「これだけが俺の唯一の取り柄でね。これがなければ、この戦い方も実現できなかった」
「仮にも、ここまで生き残ったトレーナーと言う事か。力だけでその者の実力を測ってはいけないな」
そう言いながら、今度はマサシの方に視線を向ける。
「そしてマサシ、今度は貴様の力を見せてみろ。貴様は、フジヤが一番危険視するほどの男だ」
「だが、レックウザは既に戦闘不能寸前のダメージを受けているぞ。それ以外の5匹で、俺の相手をするつもりか」
「それは要らん心配だ。レックウザは既に、ねむる≠ナ回復済みだ」
「(いつの間に…)」
確かにレノムの言う通り、レックウザは先ほどのダメージが無かったかのような動きを見せている。
ダメージを回復したと言うのも、嘘ではないのだろう。
レックウザは、一直線にマサシ目掛けて攻撃を開始するのだった。
Phase.134 ロズ山攻防戦B
「究極段階<エクストラレベル>=c!」
爆音と共に、マサシ達から銀色の光があふれ出す。
それが肥大化して爆ぜ、今の音を発生させた。
煙の向こうから、今の光と同じエネルギーを全身に纏ったマサシ達が姿を見せる。
「究極段階<エクストラレベル>:ハイドロインパクト=I!!」
レックウザの突進を、マサシはフローゼルで迎え撃つ。
大量の銀色に輝く水を纏い、真正面から突撃する。
ドゴォォォォォンッ!!!
激突により生じた衝撃は、凄まじい轟音を周囲に放ち、広範囲の大地を破砕する。
「…中々のパワーだ。だが、地上で戦うだけでは…」
そこまで喋った時、レノムは自分達に降り注いでいる日光が何かに遮られている事に気付く。
咄嗟に上を向くと、いつの間にかマサシのフライゴンがレックウザの上に陣取っていた。
「いつの間に…!?」
想像もしていなかった状況で、レノムの反応が一瞬遅れた。
フライゴンは爪を天属性のエネルギーで銀色に輝かせると、そのまま振り下ろす形でレックウザを切り裂く。
頭上からの強烈な衝撃に墜落しかけるが、レックウザは余裕でその場に留まる。
「妙だな」
「?」
「そのレックウザは、俺達が前に戦ったグラードンとカイオーガの争いを鎮めたポケモンだって聞いてたんだが…。とてもそんな力を持っている風には感じられないな」
「…その2匹の争いを鎮められたと言う所以は、レックウザの戦闘能力ではなく、その特殊能力故のこと」
「特殊能力……!?」
「グラードンは日照りによって海を干上がらせ、カイオーガは洪水によって陸地を海に沈めた。だがレックウザは、それらの気象を意のままに操る事ができるのだ」
「…!」
「見せてやろう。レックウザの真の力を、お前が戦った2匹のポケモンを遥かに凌ぐ強大な力を」
レノムが右手を天に伸ばし、レックウザに合図を送る。
すると、晴天だった空に黒雲に覆われていく。
あっという間に、ロズ山は暴風雨に襲われた。
「…! これは」
かつて、カイオーガと戦った時の事を思い返したマサシ。
あの時は、海に面した場所で戦ったので、カイオーガの力の影響も強かった。
だがここは山。
海とは縁遠い地形にもかかわらず、あの時以上の大雨を発生させていた。
「かみなり=v
「!」
ズドォォォォォンッ!!!
感覚的にいえば、レノムが指示を出した途端雷撃が頭上から襲い掛かっていた。
当然回避する余裕などあるはずも無く、フローゼルは戦闘不能となり、マサシ自身も麻痺でまともに身体が動かせなくなっていた。
「…っ!!」
心の中で、マサシは目の前の敵の強大さに恐怖していた。
天候を自由自在に操り、尚且つ全ての天候下でも何ら影響なく戦える敵の能力に。
「フライゴン…!」
まともに身体が動かせない為、フライゴンに乗る事で機動性を確保する。
「どっちにしろ、雨の影響下じゃ雷の餌食になるだけだ。フライゴン、すなあらし=I」
「無駄だ。レックウザは全ての気象を意のままに操ると言った筈だ」
確かにレノムの言う通り、マサシが指示を出したにもかかわらず、天候は変化する兆しを見せない。
今のこの豪雨の気象を、レックウザが完全に支配している事の証明だった。
「そしてそのフライゴンには、しばらく退場してもらおう」
そう言うと、再びレックウザがしんそく≠発動する。
その常軌を逸したスピードから、己の尾をフライゴンに叩きつけた。
「フライゴン、持ち堪え…。 な!?」
レックウザに吹き飛ばされたフライゴンが、勝手にマサシのボールの中に戻されてしまう。
何が起こったのかわからないまま、レックウザが次の攻撃に移る。
「フリーフォール=I」
そして、マサシのマニューラを掴むと、そのまま急上昇する。
「何を…、するつもりだ…!!」
急上昇である程度の高度まで到達した後、一気に急降下を始める。
そしてそのまま地上付近でマニューラを地面目掛けて叩きつけた。
ズドォォォォォンッ!!!!
「マニューラ!!」
この大技の前に、マニューラは一撃で戦闘不能となる。
ドラゴンタイプのレックウザに大ダメージを与えられるポケモンを失い、先行きが不安な物となってしまう。
「フライゴン!」
先程強制的にボールに戻されたフライゴンを、再び投入。
そして…。
「究極段階<エクストラレベル>『速度特化<アクセルシフト>』!」
真正面から戦っても、勝ち目は殆ど無い。
だからマサシは、得意のスピードを活かして敵をかく乱する作戦に出た。
如何に相手がしんそく≠覚えていようとも、使わせなければいいという魂胆だった。
「行け!!!」
「これは…!(さっきのマニューラよりも、更に速い…)」
最初は、レックウザの正面から爪による斬撃。
それによってよろめいた所を、背後から尻尾による打撃。
そのすぐ直後に左方向からのりゅうのはどう=B
そしてとどめといわんばかりに、懇親の一撃でレックウザを地上に叩き落す。
ドゴォォォォォンッ!!!
「…流石に、レックウザだけで倒せるような相手ではないか」
戦闘不能となったレックウザをボールに戻しながら、レノムは呟く。
「今回はただの力試しだ。近いうちに、今度は本気で相手をしてやろう」
「負け惜しみにしか聞こえないな」
「事実だ。今度は、俺の手持ち6匹総動員した全力で相手をしてやると言ったのだ」
「…!」
その言葉を聞いて、マサシはハッとする。
確かに今回、レックウザを倒すだけでもかなりの苦戦を強いられた。
それ以外にもまだ5匹、手持ちがいるとなると…。
そう考えただけで、マサシはこれ以上レノムに対して攻勢でいられなかった。
「しかし、思ったよりもお前達は強いようだ。折角フジヤが呼び寄せた選りすぐりの精鋭達だというのに…。ここから南の方に展開していた連中も、かなりの被害が出ている」
「(南…、ユキヤ達の方か。あの2人なら心配する必要も無いが、問題なのは…)」
「さて、そうなるといよいよ此方も隠し玉を投入する必要がありそうだ」
「(隠し玉…? 奴らは伝説級のポケモンをも従えているというのに、まだ何か切り札があるのか)」
表情にこそ出さないが、マサシは内心動揺を隠せないでいた。
今までの戦いの経験からして、敵の手強さは半端なレベルではない。
にも関わらず、これ以上の切り札があると言うのだ、無理も無かった。
「ウラグ、俺だ。『奴ら』の準備を済ませておけ」
レノムは無線で仲間と思われる人物と連絡を取りながら、この場を後にする。
マサシはユキヤ達の事を気にかけるように、南の方へ視線を向ける。
「マサシ、どうした?」
カズヒコが呼びかけてきたので、マサシは慌てて視線を元に戻す。
先程自分が喋った事を思い返しながら、再びロズタウンを目指して登山を開始する。
「(そうだ。さっき自分でユキヤ達は心配無いって言ったんじゃないか。そんな俺があいつらの心配をしてどうするんだ)」
迷いを振り払い、まっすぐな決意を持ち、二人は山頂目指して歩みだすのだった。
Phase.135 ロズ山攻防戦C
「ハガネール、アイアンテール=I!」
ズドォォォォォンッ!!!
ミノルの指示とともに、ハガネールが巨大な尾を振り回して敵を薙ぎ払う。
当初はこれだけでも敵の数をかなり減らす事ができたのだが…。
「残ってる奴は、ただの雑魚じゃねえって訳か」
残りの敵は、今の攻撃だけでは撃破出来ないほどの実力を持つ強敵たちだった。
少なく見積もっても、ここにいる敵1人1人がマサシに匹敵する実力を持っている。
そしてその全てが魔属性の力を有していて、そう簡単に突破できるような状況ではなくなっていた。
「ドリュウズ!!」
敵の1人が、土竜のような外見のポケモンに突撃させる。
先程ユキヤはバンギラスを投入させた為、この場は砂嵐が吹き荒れている。
敵はそれを視野に入れてこのポケモンを投入したのだ。
「…! おい、天候を変える技を持ったポケモンは!?」
敵のポケモンを見た途端、ユキヤがいきなり平静を失う。
唐突にそんな事を聞かれたため、ミノルも一瞬と惑ってしまう。
「あ? 急にどうした」
「答えろ!!」
「い、いねえよ。んな小細工する訳ねえだろ」
「…チッ」
ユキヤはサンドパンを繰り出し、ドリュウズに挑む。
「ドリルライナー=I!」
ドリュウズは右腕をドリルのように回転させ、サンドパンに攻撃を仕掛ける。
「破壊爪<デストラクションエッジ>=c、『幻惑<ミラージュ>』!」
特性の『すながくれ』を利用した、敵の死角から破壊爪<デストラクションエッジ>≠ナ攻撃する新技。
完璧な形で技は決まり、ドリュウズに懇親の一撃を叩き込んだ。
だが、ドリュウズを戦闘不能にするには至らず、再度攻撃を仕掛けてくる。
それを見たユキヤは、サンドパンの破壊爪<デストラクションエッジ>≠フ二刀流で応戦する。
今までのような一撃タイプではなく、それを幾度と無く連続で叩き込む攻撃。
数で言えば、最低でも10発は確実に打ち込んだ。
「…タフだな」
それでも、まだ倒せない。
ドリュウズの耐久力が、尋常ではない事を、ユキヤはこの攻撃で痛感した。
そしてドリュウズは、先ほどと同じドリルライナー≠ナ攻撃。
今の連続攻撃で多少疲労を見せたサンドパンは、直撃を受ける。
ドゴォンッ!!!
「しまった!」
一撃受けただけなのに、もうサンドパンは片膝を地面につかなければならない程のダメージを受けていた。
その理由は、ドリュウズの特性にあった。
「ドリュウズは特性が二つあるが、そのどちらも砂嵐の影響下で真価を発揮する」
「そう。『すなかき』と『すなのちから』だ。前者はドリュウズの素早さを、後者は岩、地面、鋼タイプの技の威力を増大させる特性だ」
ユキヤの言葉を補足するかのように、ドリュウズのトレーナーである男が付け加える。
それを聞いてミノルは、さっきユキヤが慌てていた理由に納得する。
「(成る程、この天候じゃかえって敵を有利にするだけ。自分の得意な状況を作ろうとした事が仇になったのか)」
「……破壊爪<デストラクションエッジ>=@究極昇華」
独り言のようにユキヤが口走る。
直後、サンドパンから辺り一体を吹き飛ばすような衝撃波が発生。
その後、破壊爪<デストラクションエッジ>≠フ白いエネルギーを全身に纏ったサンドパンがそこにいた。
「『刹那』」
一言だけそう呟くと…。
ドゴンッ!!!
「!?」
一瞬でドリュウズが吹き飛ばされ、ドリュウズのトレーナーは動揺を見せる。
そこをすかさず、ユキヤは更なる怒涛の連続攻撃を仕掛ける。
ズドドドドドドッ!!!
瞬く間に四方八方からの攻撃を食らい、流石のドリュウズも戦闘不能となった。
「(これ程の実力者がまだ何十と残っているのか…)」
ユキヤは周囲を見渡し、残る敵の数を確認する。
見える範囲で、敵のポケモンは10匹近くは残っていた。
残りの敵が、今の敵と同レベルだと仮定すると、流石にこれ以上戦いを続行するのは厳しい物になってくる。
故に、ユキヤの中で真っ先に『撤退』という選択肢が頭に浮かんだ。
「ミノル、いくら俺でもこれ以上この数を相手にするのはきつい。一度この場を離れるぞ」
「あ? ヨハロ出身のお前が真っ先にんな考えを持つのかよ」
「俺達の目的は何だ。このロズ山を突破して、リーラシティ周辺に潜伏しているフジヤを倒す事の筈だ」
「…だが、俺は逃げるという考えには同意したくねえ」
「プライドを捨てろ。でなければこの場でお前は間違いなくやられる。フジヤを倒すには、生き残って居る8人全員が団結する必要がある」
「………分かったよ」
一度深呼吸をして、頭を冷やしたミノル。
落ち着いて考えをまとめた結果、ユキヤと同じ結論に至ったのだ。
「ガブリアス、あなをほる≠セ。東へ向かって掘り進め」
ユキヤはガブリアスに指示を出し、地面の下にトンネルを作らせる。
その後に続くように、二人とミノルのハガネールが穴に飛び込む。
無論その後を追うかのように、敵集団もまとめて穴に飛び込もうとするのだが…。
「馬鹿が。ハガネール、グラウンドブレイク=I!」
だがミノルは、ガブリアスの掘った穴の入り口近くで待機していた。
敵の集団が入り口に集まった所を見計らい、ハガネールの全ての力を解き放つ。
広範囲の地面に亀裂が走り、そこから橙色の光があふれ出す。
「…!!」
敵もミノルの攻撃に気付くが、時既に遅し。
大爆発が発生し、この場に居た敵は全て戦闘不能となるのだった。
一方でユキヤは、ミノルの技の影響を受けないかなり先のところまで進んでいた。
中々後を追ってこないミノルを心配するかのように、時々後ろを振り返っていた。
「…遅かったな」
待つ事、およそ5分。
ようやくミノルが追いついてきた。
「この穴の入り口に集まってきた所を一掃した。これで後ろから狙われる心配は無くなった」
「そうか。ところで、ロズタウンへの方角は合っているか?」
「ちょっと南に逸れてるな。少し進路を北方向へ修正してくれ」
「分かった。ガブリアス」
ミノルの指示を頼りに、ガブリアスが穴を掘り進む。
ユキヤ達2人は、敵に気付かれる事がないように細心の注意を払い、地下から目的地を目指すのだった。
Phase.136 ロズ山攻防戦D
マサシとユキヤのチームがそれぞれ敵の襲撃を受けたのに対し、アヤ達2人は全く敵に襲われること無く、目的地のロズタウン近くへ差し掛かっていた。
「ナギサ、そろそろ山の中腹辺り。ミノル達の話だと、そろそろ目的地が見えてくる頃よ。その分、敵に狙われる可能性も出てくるから用心はしておいて」
「大丈夫。いつでも戦えるから」
ロズタウンへ近付くごとに警戒を強め、慎重に足を進める二人。
だがやはり完全に舐められているのか、町が遠くの方に見えるほど近付いても、全く敵の気配を感じない。
「ここまで近付いてこの静けさ…。やっぱり敵の注意はマサシ達のほうに完全に向いているみたいね」
「アヤちゃん、どうする?」
「当初の予定通り、一番先にロズタウンに乗り込んで背後から敵に奇襲をかけるわ。ナギサ、魔属性の攻撃が来たときは任せたわよ」
「うん」
お互い顔を合わせて頷くと、駆け足でロズタウンへ突っ込んで行った。
そのロズタウンでは、先程マサシと戦ったレノムがここに戻ってきていた。
「おい、ウラグはいるか」
「はい。ポケモンセンターに」
彼に声をかけられた女性トレーナーが、ウラグの現在地を伝える。
それを聞いたレノムは、無言のままポケモンセンターへと足を運んだ。
「ウラグ」
「やあレノム。もう始末できたのかい?流石だね」
「逸るな。今回のはただの様子見だ。奴がどれだけの実力を持っているかを確かめる為のな」
「ああ、そうだったね。それで、成果は?どうせ取るに足らない雑魚なんでしょ?」
「当たらずとも遠からずといった所だ。レックウザ単体で挑んだが、返り討ちにされたよ」
「成る程、いくらレノムでもレックウザだけでは勝てないか」
座っている椅子の前にあるテーブルに肘を立てながら、ウラグは呟く。
だが、その表情には不安そうな様子は見受けられない。
「俺が本気を出せば、あの程度の奴は簡単に捻り潰せる。他の仲間が全員集まると、流石に少し面倒だが…」
「それでも問題ないでしょ。君がここに来たって事は、いよいよ僕の出番って訳なんでしょ?」
「ああ、そうだ。『δ』を投入してもらう」
「オーケー。あいつらの扱いなら僕の専売特許だ。早速何人かここに呼んで欲しい」
そう言いながらウラグは、懐から幾つかのモンスターボールを取り出す。
そしてそのボールを、起用に並べていく。
「さて、敵さんはどんな風に驚いてくれるのかな〜♪」
ウラグの表情は何処か無邪気で、幼さを感じさせた。
「(あいつ…!)」
既にロズタウンに到着し、物陰に身を潜めていたアヤ達。
彼女は丁度、ポケモンセンターから出てくるレノムの姿を目の当たりにした。
「(あの時の男…。あいつを倒すには、ナギサの魔属性迎撃用の技が必要ね)」
「(いつでもやれるよ、アヤちゃん)」
気配を悟られないよう、小声で言葉のやり取りをする2人。
そして、作戦会議を終わらせると同時に飛び出してレノムの背後から奇襲を仕掛ける。
「!」
突然の背後からの攻撃に、レノムは一瞬反応が遅れる。
アヤのバクフーンのフレアストライク≠まともに食らって吹き飛ばされた。
ドゴンッ!!!
「…貴様らは」
まともに食らったにも関わらず、ダメージを受けていないかの様子で立ち上がる。
衣服を叩き、土煙を掃った。
「私達のほうに敵が全然来なかったから、随分簡単にここまで来られたわ」
「それはお前達が我々にとって、取るに足らぬ雑魚だからだ。我々の情報では、お前達2人には魔属性に対抗する手段は無いと聞いている」
「だから放置しておいても問題無いって事? 舐められたものね」
「しかし、ここまで来てしまった以上無視する事も出来ないな。ここで排除する」
そう言い放ち、レノムはユキノオーを繰り出す。
それと同時にロズタウンに吹雪が突如発生した。
「ユキノオー…? あんた、あの時のレックウザはどうしたのよ」
「さっきマサシと戦い、倒された。今は回復中だ」
「そう。あのレックウザがいないなら、私達でも何とかなりそうね!!」
アヤはチャンスとばかりに、レノムに戦いを挑む。
相手が氷・草タイプのポケモンなので、アヤはブーバーンを繰り出す。
「かえんほうしゃ=I!」
アヤの指示で、口から灼熱の火炎を発射するブーバーン。
しかしその攻撃は、空中で何かに阻まれるかのように四散してしまう。
「え…!?」
「ユキノオーの特性で降りだしたこの吹雪は、敵にダメージを与え続けると共にユキノオーを守る攻防一体の天気。その程度の攻撃は通じん」
「だったら…!」
半端な攻撃で通じないのなら、最強の攻撃をぶつけるしかない。
そう考え、『バースト・ブレイク』での攻撃に移ろうとした時だった。
「キュウコン、にほんばれ=I!」
彼女の横で、ナギサがキュウコンに指示を出す。
キュウコンの尻尾から放たれた橙色のエネルギーが天空に溶け込み、日差しが強くなる。
その影響で、吹雪はあっという間にやんでしまう。
「アヤちゃん、力任せだけじゃ駄目だよ。もうちょっとこういう風に工夫しなくちゃ」
「分かってるけど、これが一番私らしいのよね。ブーバーン、マントルバズーカ=I」
ナギサの援護を受けて、ブーバーンが腕の砲門から勢いのある溶岩流を発射。
だが敵のユキノオーも、フルパワーのふぶき≠ナ迎え撃つ。
超高熱の攻撃と超低温の攻撃とが激突し、爆発と共にロズタウンに水蒸気が立ち込める。
しかもその爆発の規模はかなり大きく、ロズタウンから半径500mは爆風が行き届いていた。
「…! カズヒコ、伏せろ!!」
当然、ロズタウンを目指して徐々にそこへ近付いていたマサシ達もその影響はまともに受けることになる。
咄嗟にその場に伏せる事で影響を最小限に抑え、何とかその場をやり過ごした。
「びっくりした…。今の突風は一体」
「今の衝撃、かなりの熱を持ってた。しかも出所は恐らくロズタウン。多分、アヤ達が一番乗りしてそこにいる敵と戦いになったんだ」
「じゃあ急がなきゃ!」
「ああ。急ぎたい所だが…」
急がなければならないというのに、マサシは走る素振りを見せない。
不思議に思ったカズヒコが周囲を見渡すと、その訳をすぐに把握する。
「これは、霧…?」
「さっきの爆発と一緒に運ばれてきたのか。視界がほとんど利かない…」
マサシ達の周囲を覆う霧はとても深く、数m先を見通すのでやっとと言う程だった。
「ここは俺に任せろ。ピジョット、きりばらい=I」
この状況は、カズヒコが打開した。
ピジョットを繰り出し、強力な突風で周囲に立ち込める霧をあっという間に吹き飛ばした。
「ロズタウンはもうすぐだ。急ごう」
視界が晴れたので、2人は急ぎ足で進み始める。
一刻も早く、ロズタウンへ辿り着くために。
To Be Continued