戦局は刻一刻と動きを見せている。
危機に陥ったマサシ達を助けたのは、証を持つ4人のトレーナーの1人、ウェイガ。
彼の話によると、トウクの呼びかけにより残る2人も既に動き出していると言う。
強力な助っ人が現れた事で、いよいよマサシ達の反撃が始まろうとしていた。
COM マスターリーグ編
第38話
総力戦−W 助っ人参戦 猛反撃開始
Phase.140 ロズ山攻防戦H
最初に敵の襲撃を凌いで以降、ずっと地下を進んでいたユキヤ&ミノル。
あれからも北東に進路を取って、少しずつ進んでいた。
そんな折、先程から地上で起こっている戦いの振動を感じ取っていた。
「さっきから上が騒がしいな。すぐ近くで戦いが起こったのか?」
「ユキヤ、そろそろロズタウンの近くだ。一旦地上に出るぞ」
「わかった。ガブリアス」
ガブリアスは、地中から地上へ飛び出す。
その後に続くように、二人もまた地上へ。
「何だこれは…」
2人がまず最初に目にしたのは、ロズタウンの南端すれすれの所で土砂崩れがあった光景。
これは先程、アヤ達の戦いによって発生したものだ。
「まだ他の2組はどちらも到着していないようだな」
「おいおい、俺達が一番乗りかよ。結構時間食ったと思ったんだが」
「いや、ついさっきまでここに誰か居たのは間違いないな」
「あ?」
「町のあちこちで煙が立っている。恐らく、ついさっきまでここで戦いが発生していた証拠だ」
「誰か一度ここに来たって事かよ?」
「恐らくな。が、近くにいないとなると、一度ここから撤退したと考えるべきか」
推測を交えながら会話をしている2人に、足音が近付く。
そこに現れたのは、ウラグだった。
「あれ。あれだけ沢山トレーナーを配置したのに、こんな所まで来るなんて意外だなー」
「貴様がこのロズ山西方のトレーナー達をまとめている奴か」
「まあそうだね。あれだけの数を相手にしてここまで辿り着くなんて、流石だよ。やっぱりランキングの上位チームのトレーナーが相手じゃ、彼らは不足だったかな?」
「多少の力はあったが、何の変哲も無い雑魚だったな。大した相手ではなかった」
「…ん?何の変哲も無いって、後から僕が送り出したトレーナーとは遭遇しなかったのかな?」
「俺達は最初に敵と遭遇してから、ずっと地下を進んできた。敵の目を掻い潜る為にな」
「成る程、地下とは僕達の想定外だったな。けど、ここからは僕の想定どおりに事は進む」
「貴様がこのあたりのトレーナー達のリーダーだったな。かなりの実力はあるようだが、いずれ合流する他の4人も一度に相手をするつもりか?」
「いや、8人だね。ついさっき報告があって、この西側に君達に味方する者が増援に来たらしいよ」
「増援? 一体誰だ」
「証を持ったトレーナー、トウクとウェイガだよ。いよいよ向こうも、僕らと全面対決する事になったらしいね」
「…」
「まあ、それを知った所で君達には何も有利に働かないよ。僕の配下達がまだこのロズ山西方に散らばってるからね」
「雑魚相手に証を持った奴らの相手が勤まるとは思えねえがな」
「いや、案外侮れないよ。ついさっき報告に来た奴だって、君のチームのリーダーを敗北寸前にまで追い込んだから」
そう言いながら、ウラグは指をさす。
指先は、ユキヤに向いていた。
それを聞いて、ユキヤの目が大きく見開く。
動揺しているのが、明らかに見て取れた。
「馬鹿な…、奴が雑魚を相手に遅れを取るだと…?」
「だから雑魚じゃないって。まあそれは、僕が証明してあげようか。君達を、完膚なきまでに叩きのめしてね」
「…ボスゴドラ!」
ボールから飛び出したボスゴドラが、ロックカット#ュ動と同時に瞬間移動と錯覚するようなスピードでウラグの目の前に移動する。
そしてその巨体を利用し、ウラグの頭上から拳を振り下ろす。
「!」
ズドォォォォンッ!!!
しかしその攻撃は、咄嗟にウラグが繰り出したナッシーによって受け止められた。
「ナッシーか。ボスゴドラ、もろはのずつき=I」
もろはのずつき≠ニは、防御する事を捨てて、全力の捨て身で相手に突撃する技。
今のボスゴドラは、その捨て身の威力に加えてスピードまでもアップしている。
恐らく、通常の2〜3倍の威力は出ているだろう。
それだけの破壊力を持った攻撃がナッシーに激突し、暴風にも似た衝撃が発生する。
だがその衝撃波の発生源で、ナッシーはボスゴドラの突撃を完全に受け止めていた。
「…!」
ユキヤはまたしても、驚きの表情を見せる。
倒すとまではいかなくとも、今の一撃で致命傷レベルのダメージは与えられると踏んでいたからだった。
しかしこのナッシーは、そのボスゴドラの一撃を完全に受け止めていた。
それで動揺しないほうがおかしかった。
「驚くのはまだ早いよ。今度はこっちの番だ」
「…ボスゴドラ、ステルスロック=I!」
敵が攻撃に出る前に、ユキヤが先手を取る。
ボスゴドラが無数の中サイズの岩を飛ばし、それをウラグの周囲に漂わせる。
本来は、新たにボールから飛び出したポケモンにダメージを与える技だが、ユキヤの場合はそれ自体がストーンエッジ&タの鋭さを持っている。
相手が何か動きを見せようものなら、その度にダメージを与える強化版なのだ。
…最もそれは、敵が直接動く『打撃技』を使えばの話だったが。
「さあて、と。驚かせてあげるよ君達、δ種の凄さを見せてあげよう。ナッシー、きあいだま=I!」
「…!」
ユキヤの予測を裏切り、ナッシーが使ってきたのは、何と格闘タイプの技。
意外すぎる相手の攻撃に、ボスゴドラは防御反応が間に合わない。
「…っ!!」
慌ててボスゴドラをボールに戻そうとするが、間に合わず直撃を食らう。
「チッ、戻れボスゴドラ」
戦闘不能になってはいないが、相当なダメージを受けたため、ユキヤはボスゴドラを下がらせる。
そしてあまり表情には出していないが、ナッシーのあり得ない技の発動に驚きを隠せないでいた。
「あははは、やっぱり驚いてくれた。まあ、君達みたいな普通のポケモンしか知らない奴らからすれば当然かもね」
「貴様……、何者だ」
「そうか、まだ自己紹介をしてなかったね。僕はウラグ。この通常とは異なる属性を持つポケモン、δ種の生息する地、『ホロン』のトレーナーだよ」
「δ種…。普通とは異なる技を覚える奴らのことか?」
「そうだよ。僕の住んでた『ホロン』って言うのは特殊な環境でね。そこで育ったポケモン達は、普通とは異なる能力を得たのさ。僕のナッシーみたいに、格闘タイプの属性を得たりとかね」
「格闘タイプだと…!」
今のウラグの発言を聞き、先程のボスゴドラとの激突の事を思い返す。
確かに相手が格闘タイプを持っていたのなら、あの一撃を受け止められた事も納得がいく。
「さあ、どんどんいくよ。はどうだん=I!!」
「ちっ、メタグロス!!!」
ユキヤはメタグロスを繰り出し、応戦する。
しかし敵は、次から次へとはどうだん≠撃ち込んでくるため、中々攻撃に移れない。
無論この攻撃はミノルにも及んでおり、彼もトリデプスで攻撃を防ぐ事しか出来なかった。
否、彼は防御をしつつも反撃の準備を整えていた。
「メタルバースト=I!」
今まで防いできた分のはどうだん≠フエネルギーを増幅させ、ナッシー目掛けて発射。
その途方も無い威力に、ナッシーの巨体が吹き飛ばされた。
「こうそくいどう≠ゥら、コメットパンチ=I」
吹き飛んだナッシーに追撃をかけるため、スピードを強化した後に鋼のエネルギーを纏った拳を真上から振り下ろす。
そのパワーを前にナッシーは地上に叩きつけられ、大量の砂塵が空気中に舞い上がる。
この2人の連続攻撃を前に、ナッシーは耐え切れずにダウンする。
「う〜ん、流石にランキング上位のチームが相手じゃそう簡単にはいかないか…」
ウラグはナッシーをボールに戻し、人差し指で右頬を軽く引っ掻いた。
「まあいいか。君達の仲間が来る前に、もっと面白い物を見せてあげるからさ♪」
それは、これ以降ウラグが更に強力なポケモンを駆使して戦うと言う宣言に他ならない。
普通とは異なる属性を持つδ種を相手に、ユキヤ達は間違いなく苦戦を強いられる事になる。
Phase.141 ロズ山攻防戦I
「ウェイガ! それに、マサシ達も」
ロズ山西方中腹。
そこで、マサシ達はウェイガの肩を借りて何とか立っていた。
そんなところへ、更にトウクも加勢に現れた。
「トウクさん、救援要請助かった…。ウェイガさんが来るのが後少しでも遅かったら、俺達は負けていた…」
「君達がここまでボロボロになるなんて、敵はレクト以外も強敵揃いって訳か…」
「その事だがトウク。敵はどうやら『δ種』の使い手らしい」
「δ種…。まさか、ホロンの!?」
「まだ憶測の域を出ないが、δ種使いの奴らを率いている奴の正体は間違いなく…」
マサシ達には何の事だか分からない話だったが、なにやら深刻な状況だと言うのは雰囲気で察する事が出来た。
「ホロンのトレーナー…か。まあ、δ種を引き連れてる時点でそれは当たり前と言えば当たり前かな…」
「トウク、考えるのは後だ。問題なのは、フジヤ達を一刻も早く止めることだ」
「あ、そうだね。それじゃあ、行こう」
トウクがマサシ、ウェイガがカズヒコ。
それぞれ肩を貸しつつ、4人はユキヤ達が今まさに戦いを繰り広げるロズタウンを目指して歩き始めるのだった。
そんなマサシ達から見て、先程の起きた土砂崩れを挟んで反対側。
ロズタウンから7時の方角に少し進んだ地点に、アヤ達はいた。
先程のレノムとの戦いから撤退し、辛うじてここまで逃げ延びていた。
「あの土砂崩れのお陰で、何とかここまで逃げ延びれたわね」
「うん…。でもまさか、あそこまで強い人がいるなんて思わなかった…」
2人は膝を抱えながら呼吸を整えていた。
戦いの後、撤退する為に全力疾走でここまで来たので、体力はかなり消耗していた。
「少し休憩したら、またロズタウンに向かうわよ。その頃には、多分もうマサシ達も到着してるだろうし…」
「それにしても、さっきの戦いで随分やられちゃったね」
「そうね…。私はエーフィがやられたのと、他のポケモンがダメージを少し受けただけだけど…」
「私はメガニウムとニョロトノがやられちゃってる。他は全員無事だけど…」
「流石にこれから先、さっきまでみたいに敵が私達を無視するって訳にもいかないでしょうね。曲がりなりにもロズタウンに一番乗りした上、あのレノムとあれだけの戦いをしたんだから」
「それはいいけど、ここどうするの?」
ナギサが喋りながら、目の前を指差す。
それを見て、この場に沈黙が訪れる。
先程、ロズタウンでレノムと戦った際、土砂崩れが発生した。
その時はこの土砂崩れのお陰で逃げ切れたのだが、もう一度ロズタウンに向かうとなるとこの土砂は障害にしかならない。
数秒間アヤは頭を抱え、ようやく言葉を口にする。
「やっぱりここを越えていくしかないわね。一度麓の方を迂回するって考えも浮かんだけど、それだと時間が掛かりすぎるし…」
「そうだね。でもここを越えるのだって、結構時間使いそうだよ?」
「何も、馬鹿正直にここを昇っていく必要は無いって事。地下からこの土砂の向こうへ進めないかって話」
「そっか、あなをほる≠セね?」
「そうよ。ナギサ、あんたなら持ってるでしょ?あなをほる≠覚えてるポケモン」
「勿論。キュウコンが覚えてるわ」
「じゃあ頼むわ」
「任せて! キュウコン、あなをほる≠諱I」
ナギサの指示を受け、キュウコンが地面の下にトンネルを掘り始める。
その後に続くようにアヤ達も穴に飛び込んでいく。
だが穴を掘り始めてすぐ、アヤ達は驚きの光景を目の当たりにする。
「何、これ…。何で地下に別のトンネルが掘られてるの?」
キュウコンが掘り進んでいた所、突如地下の空洞に辿り着いたのだ。
よく見たところ、その空洞は一直線に伸びていて、何処からどう見ても別の『誰か』が作ったトンネルだった。
実を言うとこのトンネル、先程ユキヤ達がロズタウンへ向かう時に通ったルートだった。
そして、トンネルの伸びている方角を見て、アヤは気付いた。
「このトンネル、ロズタウンのあった方角に続いてる!」
「え? それって」
「ユキヤ達だわ。この辺りは、最初皆と別れたポイントから結構南の方へ下った場所だから…。きっとユキヤ達が敵の目を掻い潜る為に作った道なのよ」
「それじゃあ、ユキヤ君達はもうロズタウンに?」
「入れ違いになったみたいね。私達もこのトンネルを辿ってロズタウンに行くわよ。そこでユキヤ達が戦っているのなら、それに加勢する!」
アヤ達は既にユキヤ達がロズタウンに到着していると仮定し、急ぎ足でそのトンネルを進み始めるのだった。
そのロズタウンでは、ユキヤ達がウラグとの戦いを繰り広げている。
先程ナッシーを失ったウラグだが、未だに次のポケモンを繰り出そうとしない。
そんな様子に不気味さを感じたのか、2人も様子を伺っている。
「君の仲間達、隠れるのが上手みたいだね。10人くらいの配下をあちこち散策させてるのに、全然見付からないよ」
よく見ると、ウラグは無線機を装備していて、リアルタイムで配下からの報告を受けているようだ。
そんな彼の話からすると、まだアヤ達は敵と接触していないとユキヤは受け止めていた。
「随分と呑気だな、目の前に俺達が居るという時に」
「いやー、君達の相手をするのはもちろんだけど、部下達からの報告にも耳を貸さないわけにもいかないでしょ?」
「まだまだそんな事に気を回す余裕がある…という事か」
「どう受け取ってもらっても構わないけどね。まだまだ、戦いはこれからなんだからさ」
そう言い放ち、ウラグは2個目のモンスターボールを放った。
その中から、今度はラフレシアが出現する。
「見た目だけで通常のポケモンとδ種との見分けはつかない。戦いの中で相手の使ってくる技、此方の技の有効具合を見極めて、敵の属性を突き止めるしかないな」
「…ったく面倒くせえな。訳のわからねえポケモンなんか引き連れてきやがって。常識外れにも程があんだろ」
今、ミノルが発した最後の一言。
それを聞いた瞬間、ほんの微かにウラグの表情が険しくなった。
しかし、それに彼らは気付かなかった。
「さて、早速行こうか。ラフレシア、はなびらのまい=I!」
「!」
ウラグが最初に指示を出したのは、無数の花弁を自由自在に操り相手を攻撃する技。
しかもその1枚1枚がはっぱカッター≠ニ同じように鋭い刃のように研ぎ澄まされている。
ユキヤはメタグロス、ミノルはエアームドで攻撃を迎え撃つ姿勢を見せる。
「さあ行くよ」
ウラグが喋ると、ラフレシアの周囲を舞っていた花弁が一斉にユキヤ達に襲い掛かる。
その全ての花弁はラフレシアによって操られているため、攻撃は真正面からだけではなかった。
彼らの横や背後、頭上など、あらゆる方角から同時に攻撃が襲い掛かる。
「…バンギラス!!」
しかしユキヤは、バンギラスを繰り出す事で攻撃に対処する。
バンギラスの特性によって発生した砂嵐に、ラフレシアの攻撃は阻まれる。
「ストーンエッジ=I」
そして即座に反撃を開始。
バンギラスの周囲に鋭く研ぎ澄まされた岩の弾丸を無数に精製し、それを一斉にラフレシア目掛けて放つ。
ドガガガガガガッ!! ガキンッ!!
「!?」
技を放った直後、否、ラフレシアに命中した途端、岩より硬い『何か』に当たったような音が響き渡る。
その音と共に、バンギラスの撃ち出した岩の弾丸は全て粉々に砕け散ってしまう。
「何だと…」
「あのラフレシアもδ種か。岩の技が効きにくい属性、地面・格闘・鋼か。そのいずれかを持ち合わせているらしいな」
「…ならば確かめてみるか」
ミノルの推測を聞いて、ユキヤは攻撃技を変更する。
指示を出した技は…。
「グラウンドバーン=v
だいちのちから≠更に強化した大技で、相手の足元から特大の火柱を噴出させて攻撃する技。
その巨大な火柱は、容易くラフレシアの全身を飲み込んだ。
ズドォォォォォンッ!!!
「あら、もう見破られちゃったのか」
このδ種ラフレシアのタイプは、エスパー・鋼。
先程ミノルが推測したとおり、鋼属性を持ち合わせていた。
「だけど、まだこんな程度じゃ倒れないよ。ラフレシア、そしてデンリュウ!!」
ウラグは、更にデンリュウを追加して2VS2のダブルバトルに持ち込んできた。
そしてこれは、更にユキヤ達の戦況を悪化させる。
「あのデンリュウも、δ種なのか? だとしたら、一体何の属性を…」
世間の一般的な常識が一切通用しないδ種相手に、速攻を仕掛けるのは無謀な行動。
まずは相手がどんなタイプを持ち合わせているのか、そもそもδ種なのかどうかすら、外見だけでは見分けがつかない。
心理的揺さぶりで、2人は攻撃に転ずる事が出来ずにいた。
そんな中…。
「ブラストバーン=I!!」
突如背後から、女の声が飛んできた。
それと同時に強大な炎の塊がデンリュウを飲み込み、大爆発。
炎の飛んできた方角に、2人が視線を向けると、そこには…。
「やっぱりユキヤ達だったのね。あのトンネルを掘り進んでたの」
先程自分達が通ってきた地下トンネルから、アヤ達が姿を見せたのだった。
Phase.142 ロズ山攻防戦J
「何故お前達がそこから出てくる。最初にお前達が進んだ方角は、俺達とは全く逆の方角だろう」
「色々あったのよ。それより、あのデンリュウ何なのよ…」
状況的には、ユキヤ達2人はアヤ達のほうを見ていて、ウラグに背を向けている。
つまり、今現在ウラグのほうに視線を向けているのはアヤとナギサだけ。
そんな2人が動揺しているので、2人もすぐに視線を戻す。
そこには、先程バクフーンのブラストバーン≠フ直撃を受けたデンリュウが、何事も無かったかのように立っている。
δ種の存在を知らないアヤ達には、冷や汗を流しても当たり前の事だった。
「アヤ、今の攻撃ではっきりした。あのデンリュウも、やはりδ種だ」
「δ種…って、何?」
「通常種とは全く違うタイプ、技を持つポケモンと考えろ」
「つまり、あのデンリュウは電気タイプじゃないって事?」
「今のお前の技を真正面から受けてあの程度のダメージだ。炎タイプに抵抗を持つタイプを持つと見て間違いない」
「それで、隣のラフレシアも、そのδ種なの?」
「ああ。あのラフレシアは、恐らく鋼タイプだ。岩タイプに抵抗を持ち、地面タイプを弱点としていた」
「どっちにしろ炎が弱点って事ね。じゃあ私はあっちのラフレシアを引き受けるから、ナギサはユキヤ達のサポートを頼むわよ」
「任せて!」
「だがアヤ、油断はするな。δ種と言う事に意識が向きがちだが、奴らの能力も相当なものだ。その上、奴はまだ魔属性の力を使っていない」
「油断なんかしないわよ。こうして向かい合ってるだけでもはっきり感じるから、あいつの強さ…」
「なら心配は要らないか。行くぞ」
「オッケー!!」
アヤ達も参戦し、ロズタウンで繰り広げられる戦いは混戦模様を見せ始める。
ウラグが繰り出す2匹のうちの片方、ラフレシアの相手はアヤが。
もう一方のデンリュウは、ユキヤ&ミノル&ナギサが相手をする事に。
「(バクフーンはさっき『バーストブレイク』を使ったから、もうそんなに余力は残ってない。一気に行くしかないわね)行くわよ、かえんほうしゃ=I!!」
然程余力は残っていないとは言え、バクフーンの放つ炎は凄まじい熱を持っている。
真正面から食らえば、さっきのダメージが残るラフレシアでは大ダメージは免れない。
しかしアヤは、一つ勘違いをしていた。
このδ種ラフレシアのタイプが、鋼だけだと思い込んでいた事だった。
さっきの会話からそう思い込んでいると確信したウラグは、不敵に笑みを浮かべる。
そして、不気味なほど穏やかな口調で指示を出す。
「ラフレシア、サイコキネシス=v
「な…!?」
咄嗟にアブソルを繰り出して相手の攻撃を防御する。
ダメージは無効化できたものの、衝撃までは防ぎきれずアヤ諸共アブソルは弾き飛ばされた。
「ぐっ、エスパー技……!?」
「ありゃ、悪タイプのポケモンがいたんだ。ラフレシアのタイプを鋼だけだと思い込んでたみたいだから、不意を衝けると思ったのに」
「何てパワーよ、全く…。こんなの、そう何度も耐えられないわよ…」
ラフレシアの想定外の攻撃に、アヤは手痛いダメージを受けてしまう。
そんな彼女の傍らで、ユキヤ達も戦いを繰り広げている。
「バンギラス、だいちのちから=v
ユキヤはまず、この技で様子を見ることにした。
デンリュウの足元から火柱を噴出させて攻撃し、ダメージを与える。
所々焦げ目はあるが、弱点を衝かれたと言うほどではない。
「デンリュウ、チャージビーム=v
「ガブリアス!」
デンリュウが電気技で反撃してきたので、ユキヤはガブリアスで防御。
その隙に、今度はミノルがエアームドで特攻を仕掛ける。
「食らいやがれ、ゴッドバード=I!!」
膨大な白銀のエネルギーを身に纏ったエアームドが、一直線にデンリュウ目掛けて突撃。
エアームドがデンリュウに激突すると同時に爆発が発生し、デンリュウを吹き飛ばす。
「この手応え…。飛行タイプに耐性を持ってるわけじゃ無さそうだ。って事は岩タイプでもねえな」
「…。ガブリアス、ドラゴンクロー=v
吹き飛んだデンリュウに追撃をかけるべく、ガブリアスが鋭い爪でデンリュウを切り裂く。
だがその攻撃に対して、ウラグは逆襲に出る。
「デンリュウ、ドラゴンテール=I!」
「!」
ガブリアスの爪を回避して懐に潜り、胴体に自身の尾を思い切り叩き込む。
その衝撃にガブリアスは吹き飛ばされ、ユキヤのモンスターボールの中に戻ってしまった。
「何だ!? 何でボールに戻っちまうんだよ」
「ドラゴンテール≠ヘ、食らったポケモンを強制的にボールに戻す技だ。ドラゴンタイプの技に対して露骨な反撃姿勢…。やはりか」
「あのデンリュウは、ドラゴンタイプって事か?」
「だとしたら厄介だ。ガブリアスなら弱点を狙えるが、それは相手も同じ事だ。氷タイプの技が無ければ、此方がかなり不利だ」
「…。俺の手持ちに氷技を覚えた奴なんていねえぞ」
「それは俺も同じだ。ナギサ、お前はどうだ」
「ニョロトノが覚えてるんだけど、さっきやられちゃって…」
「デンリュウ、りゅうのはどう=I!」
3人が作戦を練っている所へ、容赦なくウラグが攻撃をしてくる。
この攻撃は、ユキヤのサンドパンが難なく弾く。
「破壊爪<デストラクションエッジ>=v
サンドパンはそのまま、持ち前のスピードを活かしてデンリュウに急接近して強烈な一撃を叩き込んだ。
ドゴンッ!!
「やるね。でもまだまだ」
ズドォォォォォンッ!!
突如、アヤが戦っていた方から爆音が響き渡った。
その音の発生した場所で、ラフレシアが黒焦げになって倒れていた。
「バーストストライク・ツインブラスト=Bやっと、倒せた…」
どうやらアヤは、先程引き受けたラフレシアを撃破したらしい。
しかし余程の激闘だったのか、バクフーンはボロボロだった。
「流石に強いね。じゃあ、そろそろ本腰を入れようか。デンリュウ!」
「グレイシア、フロストウィンド=I!」
そんな折、彼らにとって聞きなれた声が左方面から聞こえてきた。
それと同時に猛烈な寒波がデンリュウに襲い掛かり、一撃で戦闘不能にした。
「皆、元気そうだな…」
トウクの肩を借りつつ、ボロボロの姿のマサシがロズタウンに到着した。
そんな彼の横には、唯一無傷のグレイシアが並んで立っていた。
「…!!」
トウクの姿を視界に入れた途端、ウラグは全身に電流が走ったかのような錯覚を受けた。
更に…。
「どうやら、全員無事のようだな」
少し遅れて、カズヒコと共にウェイガがロズタウンに到着。
トウク、ウェイガの姿を視界に入れた途端、ウラグの様子が激変する。
ズドォォォォォォンッ!!!!!
突如としてウラグを中心に大爆発が発生。
それと同時に、ロズタウンに漆黒のエネルギーが充満していく。
「…!!!」
そのあまりの桁外れの力に、マサシ達は戦慄する。
否、戦慄した原因はもう一つ存在した。
「この時を、ずっと待っていた。マスターリーグを、この手で必ず捻り潰せる時を!!!!!!」
性格が激変すると共に、ウラグの全身に禍々しい漆黒の模様が浮かび、彼の白目の部分が黒一色に染まっていく。
彼の激昂した理由とは?
ウラグの凄惨な過去が明らかになると共に、解き放たれた恐るべき魔属性の力がマサシ達に襲い掛かる事になる。
To Be Continued