ーーー『あれ以来』、毒タイプは苦手だ。


ーーーその中でも「あいつ」は特に駄目だ。


ーーー名前を聞いただけでも気分が悪くなる・・・もし見てしまったら・・・多分・・・


ーーーだけど、ここに来たのは俺自身・・・・・・どうなっても、自己責任・・・かもな。

 

 

 

25話「傷痕」

 

 

 

蒼夜たち一行は、ハジツゲタウンに向かうため、114番道路を歩いていた。
しかし、蒼夜は一番怪我が酷かったからかエアームドの上でぼんやりと空を見上げていた。
近くには春華がいるし、まぁ大丈夫かな・・・と思いながら、奏は一番後ろを歩いていた。



「蒼夜さんよりも・・・気になるのは・・・・・・」



僅かに眉根を寄せながら、ちらりと夕希に視線を向けた奏。
一見すると夕希は普段通りにも見えるのだが、どうも無理しているようにしか見えない。


「・・・・・・ホントにお前、何でここに来たんだよ?・・・・・・・・・苦手なくせに・・・」



「奏君。・・・どうかした?」


割と奏の近くにいた悠火は、微妙な表情の奏に気がついたのか、ふと問いかける。



「・・・えーっとそれは・・・・・・・・・・・(・・・何か、いる?)」



何かを言いかけて、奏は背後に気配を感じる。


徐々に近づいてくる『それ』に悠火も反応し、身構える。



「・・・奏君。・・・多分、ポケモンだよね?」


「はい。・・・ちっ、このスピードだと迎撃は難しいか・・・・・・っ!!」


奏がそう言いながら、振り向いた時には、『それ』は目前に迫っていた。



「やべっ・・・!ボールから出すのは間に合わねっ・・・・・・・・仕方ないっ!!」



そう言うが早いか、奏は右腕を前に突き出した。
横では、悠火が静止の声を出しているようだったが、奏は聞く様子はなかった。


そして・・・・・・・・





がきんっ!!!!





「な、何!?」



「後ろ!?・・・奏君っ、悠火君!?」



突如響いた金属音に驚き、春華と翼架は慌てて後ろを振り向く。
蒼夜も、声こそ出していないものの、びっくりしたような表情はしていた。




「え・・・・・・・・・あ・・・・・・」




そんな中、夕希だけはどこか様子がおかしい。
ただ呆然と、その光景を見ていた。


それに気がついたのは蒼夜だけだったがすぐに思い当たることがあったのか何も言わなかった。







「奏・・・・・・君・・・その・・・腕はっ・・!?」




一番驚きの声を出していたのは傍にいた悠火であった。




今、彼の目の前にあるその右腕は・・・・・・

奏が着ている黄色の長袖のパーカーの裂け目から覗くその腕は・・・・・・



生身の腕ではなかった。



鈍く光る金属の・・・いわゆる、「機械鎧(オートメイル)」・・・・・・一般的に言う、「義手」と呼ばれるものだった。




「(ってこら作者!!こんな時にボケたナレーションするんじゃねーよ!!)」


やだな、蒼夜。たまには必要じゃないか?・・・束の間のボケというものも。
というか、心の中でツッコむとは・・・・・・やるじゃないか。


「(今すぐ真面目に書かねーと『本気で怒る』からな?)」


ううむ・・・相手がまずかったか(汗)。
ここからは真剣に書かせていただきます、えぇ本当に。

(ちなみに蒼夜が本気で怒ると・・・(詳しくは23話参照(ぇ)






「ここに来る直前っ、ちょっとジョウトでありまして・・・・・・ねっ!」



『ねっ!』と言うと同時に、奏は右腕を捻る。

そしてその勢いを利用して右腕に噛みついていた『それ』を引き離す。



「・・・後でちゃんと言いますっ、それよりも今は・・・こいつをどうにかないといけねーっぽいですよ!悠火さん!」


「そうだな・・・こいつは・・・確か・・・」





「・・・・・・ハブネーク・・・・・・っ!!」




震える声で、夕希は言った。
流石に、蒼夜以外も彼の異変に気がついたのか、表情が険しくなる。


最も、事情を知る奏・・・それと、ソライシ教授は比較的落ち着いていたが。
(え?今回教授のセリフないって?・・・一緒にいますよ?←前回までを参照))





「・・・う・・・駄目だ・・・・・・・来るな・・・・!」




どこか怯えた様子で、僅かに何事か呟いている夕希。



「奏君・・・一体、夕希君はどうして・・・っ!・・・わっ!」



それを見て何があったのかを悠火は奏に尋ねようかとしたが、目前に迫っていたさっきとは別のハブネーク2匹に気づき咄嗟に結界を作り出す。



ぱしっ!!



「げっ・・・3匹もいんのかよ!?・・・とっ!!」


奏は奏で、いつの間にか取り出した長い棒で先ほどのハブネークをいなす。





そんな、時だった。




どさっ・・・・・・・・・・・!




「「ゆ、夕希君!?」」



突然、夕希はその場に倒れた。

慌てて春華と翼架が彼に近づく。・・・そこで、翼架は気付いたのだった。


「息が・・・かなり乱れてる?・・・それに・・・酷い汗・・・!」


「で、でも・・・さっき岩場にいたときは・・・」



そのように困惑する女子二人の方に、奏が振り向き不意に叫ぶ。




「夕希は・・・駄目なんだっハブネーク・・・というか毒タイプ全般が!!・・・・・・しばらくすれば落ち着くはずだからっ、こいつらは俺に任せて先ハジツゲ行ってくださいっ!」




「わ、わかったわ!・・・夕希君、立てる?」


翼架の問いかけに、夕希は緩く首を横に振る。
顔色は、かなり悪かった。


「・・・無理そうね・・・春華ちゃん、手伝って?」


「あ、はい!」





それを視界に入れつつ、奏は隣の悠火に話しかける。



「・・・さて、と。悠火さん、どうします?」




「ん?・・・・・・潰す・・・ってか捕まえるべき?」


さらりと、こんなことを言ってますよ。この人(ぇ)




「Σ潰す!?・・・・・・というか、悠火さん。捕獲はできますか?(汗)」


奏の問いかけ。

数秒の沈黙。




「・・・と、とりあえずバトルして・・・ね?」



そして、奏は察した。


「(あぁ、苦手なんだな・・・(汗)」





それはともかくとして、奏と悠火は、3匹のハブネークを一瞥し、モンスターボールを手に取る。


まず先に動いたのは悠火。


「さてとっ、じゃあ・・・ヒビキ!!・・・砂おこし、発動していいよっ!」


パートナーであるバンギラス♂のヒビキを繰り出し、指示するは『砂おこし』。
バンギラス(等、数匹)の特性:砂おこし。
場に出したその瞬間から砂嵐を起こす効果を持つ。

しかし、どうやら悠火のヒビキの場合は、必要な時以外は砂嵐を起こさないようにもできるようだった。



そして今、周囲には砂嵐が巻き起こった。




「バンギラスか・・・・・・・なら、サンドパンっ!」




一方の奏が出したのはサンドパン。
偶然にも、砂おこしと砂隠れの特性のポケモンのコンビとなった。

サンドパンが出てきた瞬間、僅かに悠火の表情が変わったような気もしたが、奏は気にせずにとりあえず声をかける。



「・・・悠火さんっ!とりあえず攻撃お願いしますよ?」




「わかったっ!・・・ヒビキ・・・・・・地震!」


表情の変化があったのは一瞬。
すぐさま気を取り直し、悠火が指示を出す。



ごごごごご・・・!


直後、周囲を激しい揺れが襲う。



そうして、隙ができたハブネークども(ぁ)に奏が追撃をかける。



「今だっ!サンドパン!!」



砂にまぎれていたのだろうか。
不意にサンドパンが現れ、回転攻撃を連続ヒットさせる。



「・・・転がる?」


ぽつりと悠火が呟くと、奏はにやりと笑む。


「そうですよ?・・・・・・・さてと、捕獲しましょうかねー?」


言いながら、奏はモンスターボールを3つ取り出し、先ほどから持っている棒を構えていた。

軽く深呼吸してから、一気に弾く。


かっ・・・!

かこんっ・・・!

がんっ・・・・・・・!



互いを弾きあい、的確にハブネークを捉えるそれはまるで・・・・・・



「ビリヤード・・・か?」



そう悠火は思ったが、まさしくそれである。
例えるならば・・・ポケスぺのゴールド並のキュー捌きといったところだろうか?


「・・・あのさぁ、俺の『これ』はキューじゃないから。・・・というか、棒術用?」


「いや、何で疑問形?(汗)」


くるくるーと棒を回しながら、奏は突っ込む。だけど疑問形?



「っと、捕獲完了っと♪」


「Σいつの間に!?」


そんなこんなで捕獲完遂してましたのよ(ぇ)












さて、ところかわってハジツゲタウンのポケモンセンターのとある一室。

「・・・さてと、夕希、大丈夫か?」

何やらパソコンで操作しつつ、そう声をかけるのは蒼夜。

その画面には「ポケモン総合研究所:ダークポケモンについての考察」と表示されていたような・・・という証言は翼架である(何)

「(ちなみに、右腕の傷は医者に見てもらったらしくあまり動かすなと言われたとか。)」

「・・・・・・・・う・・・あぁ・・・大分ましに・・・」

ベッドの上で汗だくなTシャツを握りしめながら起き上がるのは夕希。
まだ万全、というわけではないがぶっ倒れた時に比べると落ち着きを取り戻しつつあった。

軽く辺りを見渡しながら、やがてぽつりと言葉を発し始める。




「・・・・・・さっき、奏が言ってたの聞いただろ?・・・あれは、本当だ。」



夕希は、ちらりと視線をソライシ教授に向けた。
教授は黙ってはいるが同意のような仕草はしている。



いかにも、気まずそうな様子で辺りを見た後、夕希は少しばかりの溜息を吐きだした。


数秒後・・・何か決心がついたのか、額を隠すようにつけていた少し長めのバンダナの結び目に手をかけた。


そしてそれを一気に・・・・・・・・・・・




しゅる・・・! ばさっ・・・




「・・・本当は見せたくなかったんだけど・・・・・もう隠せないしな・・・」




外されたその下には・・・
くっきりと皮膚を切り裂かれたような大きな、傷痕。





静まり返った雰囲気を、やぶるようにして夕希は話始める。



「・・・・・・・・・・きっかけは、フィールドワークだった。」



その日も、俺は父さんのフィールドワークについていってた・・・。

あれは、スノウを捕まえた直後・・・だったか。

俺と父さんは流星の滝の調査を一通り終えて、114番道路の方へ出てきたんだ。
そうそう!その時にシャニーを捕まえたんだよな。


しばらくは、普通に調査してた。
俺はそこで1匹のザングースに懐かれていたっけ。

やがて調査を終えて、帰ろうとした時。



「もう、今日は終わりだよ・・・な・・・?」



そう言いかけた俺だったけど、急に殺気のようなものを感じて咄嗟に身を固くした。
父さんも気付いていたみたいで(珍しく)警戒の表情になってた。

俺が出してないのにいつの間にかスノウとシャニーが勝手にボールからでてきて・・・少し前からそばにいたザングースも臨戦態勢のようだった。
(ここで補足。スノウはユキワラシ♂、シャニーはソルロックです(by作者)




僅かな時間の後、殺気の正体は姿を現した。
大きな、ハブネークが・・・。




しばらくはみんなが頑張ってくれていたけど、俺じゃ押しとどめる程度しかできなかったんだ・・・。




「!? 夕希っ、危ないっ!!」




父さんのその声に気づきはしたけど、俺は一歩も動けなかった。
そうしているうちにハブネークのポイズンテールが・・・。










「・・・俺がはっきりと覚えているのはここまで。・・・気がついた時にはカナズミの病院だったよ。」




夕希は。傷痕に触れながら、軽く息を吐いた。


しばらく黙って聞いていた一同だったが、まずは蒼夜が疑問を口にする。



「そのザングースって、もしかして・・・?」



その問いに夕希は軽く頷いてから言った。


「なんか、俺から離れなかったみたいで・・・野生だから逃がしてやろうかとも思ったけど懐かれてたしそのまま・・・これがランスとの出会いだっけな?」



「そんなことあるんだ・・・」


春華がそれを聞いて呟いている中、翼架は夕希に話しかける。



「つまり・・・ハブネークを見るとその時のことを思い出して動けなくなる・・・えっと、PTSD、だったかしら?が起こるわけね?」



「・・・ハブネークだけじゃなくて毒タイプ全般、ですけどね。・・・察してるでしょうけど、精神的にちょっと・・・」


「そういうことだったのね・・・ありがとう、話してくれて。」



そうして翼架が納得しているなか、この二人はというと・・・。


「えーっと・・・蒼夜さん、PTSD?ってわかります?」

「春華・・・俺に振るな。・・・何だっけな、医学用語なのはわかるんだけど・・・」


・・・そして蒼夜はパソコンを見て呟く。


「・・・調べた方が早い、か?」


蒼夜は医学には詳しくないからなぁ。
というかこいつは基本手当してもらう方だし。
それに・・・ぶっちゃけ私も詳しくないし(おいこら)











「・・・だから、さっきは・・・。」


「そういうことです。・・・ところで、悠火さん。貴方は・・・」


一方、悠火もまた、奏から夕希の事情を聞いていた。
と、そこで奏が別の話題を切り出す。

思わず苦笑しながら悠火は口を開く。


「・・・やっぱり、気づいてた?」



「ということは、苦手なんですね?」


にこっと笑いかける奏はどこか怖かったという(後日談)



「昔、サンドパンに襲われたことがあったから・・・それでだよ。・・・最も・・・」



そこまで言って悠火は少しの間口を止めた。
ほんの僅か、考えるそぶりをしていたが、それはわざとだったらしくすぐにはっきりと言い切った。




「あれは僕にとっては嫌な記憶だけど、バトルに関わるきっかけでもあるから忘れられない・・・忘れちゃいけないと思ってる。」




少し虚をつかれたような表情を見せていた奏だったが、しばらくすると笑みを見せる。


「ずいぶんとはっきり言いますね・・・。そんなに駄目だったんですか?」




「そう。バトルはやりたくもなかったよ、あの日までは。・・・だから今でも信じられないよ。そんな僕が今ではジムトレーナー、それもジムリーダーを守る最後の砦っていうのが・・・ね。」



微妙な笑みを悠火が見せたのは1秒にも満たなかった。
それでも奏は見逃せなかった。

やがて、あることに気付いて奏は大声を出した。


「って・・・ジムトレーナー!?・・・どこのジムの!?」


今度は、悠火が驚いた顔をしていたが、数秒で気を取り直す。



「フスべジム、だけど?(にこっ)」



悠火がそれだけ言うと、奏は軽く舌打ちをしつつ吐き捨てる。



「・・・先にジョウトのジム全部いっとくべきだったか・・・・・・?」



その言葉で納得したのか、悠火は不意に話を変える。


「そういえば・・・奏君。・・・その右腕・・・はどうして・・・?」


しばらく考えた後、奏は口を開く。



「・・・詳しいことは後で言います。・・・けど、友達を庇った結果だから、俺としてはあんまり気にすることでもないんだよな。」




「そう・・・(本当に気にしてないのか・・・?いや・・・)」



悠火は奏を追及しようとしたが、今聞いたところでまともに答えてくれないだろうな、と判断して何も言わなかった。

そのまま彼は思案しつつもこの場と後にしようと奏に告げるのだった・・・。





〜あとがきのようななにか〜

さて、久々の星空、いかがだったでしょうか?
今回は夕希のことをメインに、奏と悠火を書いてみました。
ちなみに夕希の件は、大分前から伏線は出してました。(詳しくは3話参照)
・・・ところで、書いてるうちは気にしてなかったんですが。気になったことが。
悠火の言い回しがポケスぺのルビーっぽい(ぁ)
どこかはいいませんg(ぁ)


多分次あたりに奏のことをどうにか・・・する・・・かも?(予定)

 

[一言感想]

 ルビーっぽいって思ったのは悠火の言い回しよりも、夕希の境遇かも(ぇ)。
 まぁ、ルビーはトラウマになる程でもなかったけど……なってたらサファイアお前だけど(謎)。
 そういえば金銀で、発電用に利用されているマルマインを倒すシーンがあって、僕は全て捕獲してやりました。
 うち1匹は旅の連れに(オイ)。
 でも悠火だったら、やっぱり……潰す?(爆)
 そういえば夕希の話がメインだったはずなのに、なぜか悠火ばかりを語っている自分がいる……。

 

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