「ふぅ・・・疲れたー・・・」

「いや、実際捕獲したの俺ですけど!?」


「それはそうなんだけどさ・・・どうして外に出しっぱなしなのさ・・・・・」


そんなやりとりをしながらポケモンセンターに入ってくる二人のトレーナーがいた。

一人は足元にサンドパンを連れている少年。
そしてもう一人はなぜかそこから視線を逸らしている青年だった。


やがて、彼らに気がついて声をかける男がいた。


「お前ら、ここにいるってことは片付いたのか? 悠火、奏!」




26話「心の闇を抱えし存在」




「・・・あ、蒼夜さん・・・」

「というか蒼夜は間違いようがないね。・・・目立つし。」



蒼夜はため息をついた後、ぽつりと言った。



「悪かったな、目立つ外見で・・・・・・。・・・というか、奏。そいつがびびってるみたいだからボールに戻せ・・・」



その言葉に、奏は一瞬笑ったかと思うと、さらりと返す。


「・・・そんなに体力減ってなかったのもあるけど・・・まぁわざと戻してなかったともいいます♪」


「・・・・・・そうかよ(汗)」


もはや、呆れてツッコむ気力もないようだった。
しかし気を取り直してもう一人、奏の隣で立っていた悠火に声をかけた。



「えっと・・・あ、そうだ!悠火、お前、夕希のこと・・・」


サンドパンに怯んでいた(爆)悠火は、慌てて言った。

「え、あぁ・・・奏君にさっき聞いたよ。」


「そうか。・・・それなら、いいんだ。」


言いながら、蒼夜はポケギアを取り出し、どこかへ向かおうとした。


「あれ?蒼夜、何かするつもりだったの?」

「ん、あぁ・・・ちょっと、電話するところがあってな・・・ところで、俺としては『このこと』以外に気になることあるんだけど・・・なぁ、奏・・・・」


悠火の言葉にこたえつつも、目線は奏の右腕に向いていた。
奏は左手で袖の破れた部分を隠しているが、それでも僅かに金属製の腕が見えている。


「・・・やっぱり、これですか?」


やや視線を横に逸らしながらぽつりと反応する奏。
蒼夜はそんな奏に少し苦笑いしつつも続けた。


「それ以外に何があるって?・・・そのことなんだけどさ、・・・俺にも少なからず責任があると思ってんだよ。」


「え?」


聞き返されて、思わず口に出さなければよかったと後悔した蒼夜だったが、それでも話しておこうと思ったのは何故だったのか。


「・・・俺がカナズミに戻った時、夕希に会う直前に電話で聞いたんだ。マツバから・・・ジョウトで、何があったか。」


「え?マツバってエンジュのジムリーダーのマツバさん?・・・ですよね?」


「そうだ。それでなんだが・・・」

意外な人物の名前に困惑する奏に気にせず話を続けようとした蒼夜だったが、奏の疑問の声に遮られた。


「ちょっ、ちょっと待ってください!どうして『あの件』に蒼夜さんが関係あるんです!?」


そんな時、黙って話を聞いていた悠火が不意に口をはさむ。



「最近ジョウトで起こった事と言えば・・・『あれ』しかないよね?アサギの・・・。・・・奏君。僕は蒼夜が気にする理由に心当たりがある。」


「えっと、悠火さん、それは・・・」

「まぁ、多分僕の察し通りだろうけど・・・蒼夜に続きを話してもらったほうがいいと思うんだよね・・・ということで。」


心当たりと言われてもわからない、と言いたげな奏を遮るように悠火は蒼夜に続きを促した。


「その右腕を見なかったら気付けなかったと思う。・・・お前だろ?俺の妹を・・・潤を助けてくれたっていうのは。」


その言葉に、驚きの表情を浮かべ、思わず奏は聞き返していた。

「え・・・潤・・・の兄・・・?」

それを聞いて、一瞬だけ笑みを作った蒼夜は淡々と言葉をつなぐ。


「やっぱりそうか。・・・そのことについては感謝してる。だけど・・・潤は巻き込まれる理由、なかったんだよ。・・・俺がジョウトにいたら、間違いなく俺が・・・」


「・・・ねぇ、1つ確認とりたいことがあるんだけど。いいかな?」

このままではどんどん深みにはまっていくんじゃないかと思い、悠火は蒼夜の言葉を遮断するように疑問を口にした。
その表情にはどこか呆れのようなものが混じっている。


「・・・『あれ』に巻き込まれた人たちに、何か共通点はなかった?」

「あっ!・・・そういえば・・・「俺と親密な人ばかりが狙われている」・・・ってマツバさんが言っていたんだ!・・・それで・・・」

そこまで言って不意に奏が思い当ったように閉口した。
それに続けるかのように、悠火は言った。


「蒼夜はね、マツバさんと従兄弟同士なんだ。・・・そして・・・潤ちゃんとは・・・、半分だけ血がつながっている・・・」


「え、えっと・・・それはつまり?」

いきなりそんな突拍子もないことを言われて戸惑うしかない奏に悠火ではなく蒼夜が答えた。


「俺は、エンジュ生まれのヒワダ育ちでな。・・・この辺の事情は複雑だから・・・まぁ簡単にいうと、俺の母親はマツバの家系だったって話だよ。」

「蒼夜・・・さ」


「事情が事情だからさ、潤には何も言わないつもりだったよ。けど・・・ツクシが言ったんだ。「いつかはわかること。だったら自分から説明した方がいいんじゃないか」って。
だから俺は言った。だけど潤は言ってくれた。「そんなこと言われたって蒼夜兄はあたしのお兄ちゃんなのは変わらないわ」・・・って。
俺は潤のその言葉が嬉しかった。だからこそ・・・今回の件には責任、感じてて・・・」


それだけ言うと、自嘲気味な笑みを浮かべながら蒼夜は立ち去ろうとした。
しかし、悠火がそれを止めた。


「奏君が困ってる。・・・君の悪い癖なんじゃないの?無駄に責任を感じる。」


言った瞬間、ぴたりと足を止めた。
そしてゆっくりと振り向くと奏に申し訳なさそうな表情を見せてぷつりと呟く。



「・・・悪い。奏、お前に当たるつもりはなかったんだけどな。・・・それと、そのことに関しては俺抜きで話進めても構わないからな?さっきも言ったが俺は知ってるから・・・」



それだけ言うと、通信設備が固まっているであろう場所へ歩みだす。
何も言えずにその場に立ち尽くしていた奏だったが、悠火の声で我に返る。


「元々、蒼夜は責任感が強いんだってさ。だから、昔から必要以上に責任感じることがよくあるって・・・前に、聞いたことがあるんだ。」


「それで、さっきもあんなに気にして・・・?」

ようやく声を発した奏だったが、どこか呆然としたような雰囲気は残っている。
軽く溜息をついてから、悠火は言う。


「・・・多分、それもあるけど・・・大切な人が傷つくのはもう見たくないじゃないかな・・・?
・・・・・・仕方ないといえば仕方ないんだけどね。あぁいう風になるのも・・・さ」


一瞬だけ困ったように笑った。
奏にはその真意はつかめなかったが思い切って聞くことにした。


「あなたは、蒼夜さんの過去をご存じなんですか?」


それは悠火も予想外だったのかやや驚いたような口ぶりで反応した。


「全部、というわけじゃないけどね。どうしても気になるのなら教えるけど・・・重いよ?」


その言葉にどこか釈然としない様子の奏。
なんとなく、「今日は年上に振り回されてるかもな、俺・・・」とか思ってみたりもしていた(ぇ)
やがて、僅かに口を開く。


「というか、本人いないのにこんな話、してもいいんですか?」


少しいたずらっぽく微笑むと、悠火はしれっと言い放つ。


「いいのいいの!自分からは滅多なことがないと言わないだろうし。」


・・・いいのか、お前(汗)
でも話が進まないので気にせず進行させます(by作者)




「その前に、・・・奏君。2年前にヒワダタウンで起こったこと、知ってる?」



少し前までのどこかふざけた(?)様子は一切消し、真剣な様子で悠火はそう前置きした。
しばらく考え込んでいた奏だったが、不意に思いだしたように呟く。


「2年前・・・ヒワダ・・・・・・。そういえば、大きな事件が・・・ってあれ?
・・・・・・・・ちょっと待てよ?確かニュースで・・・「目撃者の蒼髪の少年」・・・・・・・・・まさかとは思いますけど、この少年って」


奏の記憶通りだと、2年前の今頃にヒワダタウンで大事件が起こったと報道されていたのを聞いた覚えがある。
そして、その後しばらくした後、新たなヒワダジムリーダーが就任したということもなんとなく覚えていた。
それでも、すぐに信じられる話ではなかった。

悠火は黙って奏が言うことを聞いていたが、やがてその疑問を確証に変える。


「そこまで知ってるなら話が早い。・・・君の察する通り、その少年は蒼夜。最も・・・僕も後からそれはわかったんだけどね。
ともかく・・・だ。蒼夜は零哉さん・・・ヒワダジムの先代といった方が早いかな?・・・彼が亡くなったことを2年経った今でも、ずっと気にしている。
・・・・・・彼は蒼夜にとってバトルの師匠であり、恩師でもあるらしいから。」


そこまで言うと、微妙に息をつき、どこか寂しげな表情で続けた。


「僕がこのことを聞いたのは、その事件の後、蒼夜と親しくなってから。でも僕はそのことを知った時、どう声をかけるべきなのか、わからなかった。・・・ううん、何も言えなかった。
蒼夜の心の傷がどれぐらいのものか、なんとなく想像はできた。だけど・・・だけど完全に知ることはできるわけなかった。似た経験をしたこともなかったし・・・仮に同じ状況になったとしても僕は僕、蒼夜は蒼夜だ。
同じ答えなんて出せるわけないし・・・出すわけにもいかないんだよ。みんなそれぞれに悩みを抱えてる。一見同じ悩みに見えても、結局のところは自分自身でしか解決できないんだよ、何もかも。」




「・・・俺は、そうでもないと思う。」



言って、奏は自分で驚いていた。
どうして急にそんなことを言ったのかわからなかったからだ。
しかし、なんとか気をもちなおして思ったままのことを言ってみることにした。


「確かに・・・悩みの理由は人様々。だけど、自分ではどうにもならないこともあるんじゃないですか!?
誰かの些細な一言で救われたり、予期しないうちに救っていたりすることも・・・!」



僅かに目を見開いた悠火はくすりと笑んだかと思うと盛大に息をついた。


「・・・確かにそれもあるだろうね。・・・だけど・・・蒼夜の場合、自分でどうにかするしか・・・」



ぱしっ!



そんな音がポケモンセンターのロビーに響いたのは、悠火がすべてを言い終わるか終わらないかというところだった。
悠火は驚きに満ちた顔で奏を見る。


「・・・もう、このへんにしておきましょう?・・・周りの人たちにまで、この微妙な空気が移ってる。それに・・・」


そこで一旦言葉を切った奏はわざとらしく表情を緩めた。


「目の前でそんな泣きそうな表情されたら、どうしたらいいかわからないです」


いつから悠火がそんな様子になっていたのかはわからなかった。
しかし、この会話の中でそうなっていたのは確かだった。

一瞬戸惑っていた悠火だったが、僅かに右頬にそっと触れた。
そしてどこか機嫌が悪そうに奏に言い返した。


「別に、叩かなくてもいいじゃないか・・・!」


どうやら先ほどの音は奏が悠火の右頬を叩いたからだったらしい。
そして手を出した当の本人は悪びれる様子は一切ないようだ。


「左で叩いたのは俺の精一杯の配慮ですけど?」


それを聞いて怒る気もそがれたのか悠火はわざとらしく大袈裟に肩をすぼめてみせた。


「まったく・・・うん。確かに気にしすぎだったかな、僕・・・」






悠火と奏が話していたところから少し離れた場所で電話していた蒼夜もその音には気付いたようで、一瞬言葉に詰まった。


『蒼夜君?それで・・・その話、間違いないんだね?』


蒼夜は慌てて電話の相手の声に反応して答える。


「あ、はい・・・それに、俺だけじゃありませんよ。隣で見ていた人もいますしね。・・・え?えっと・・・多分、邪なオーラが見えたのは俺だけです。」


『じゃあ、『彼ら』に説明しておくよ。・・・あぁ、また後で連絡するから君の連絡先、メモしておくよ。」


「よろしくお願いします。クレイン教授。」


ぷつっ・・・


用事はひとまず終わったので、蒼夜は手元のPCのディスプレイを切った。
どうやらテレビ電話のような機能があったらしい。



「ふう・・・これで。ダークポケモンの件はどうにか・・・なりそうかな?」


そう言いながらも、蒼夜の胸中は穏やかではなかった。
頭にちらつくのは、2年前の光景ばかり・・・。


「(零哉さん・・・俺は・・・このままでいいんだろうか・・・?)」


答えが出ることはなく、ただ葛藤だけが彼の心を支配し、それ故に立ち尽くしていた・・・。






「・・・あれ?クレイン所長、通信中でした?」


オーレ地方。
ついさっきまで蒼夜と会話していた男性は、背後からの声に振り向いた。


「いや、今終わったよ。イオン君。」


イオン、と呼ばれた少年・・・おっと、彼の年齢的に青年というべきか。
彼は半年ほど前、オーレ地方第2のダークポケモン事件の功労者となった人物である。

そして、イオン、それからクレイン所長が今いるこの場所は「ポケモン総合研究所」といった。
今こうして研究所にイオンがいるのは自宅でもあるからなのだが・・・そこはまぁいい。

クレイン所長は何気なくやってきたイオンを引きとめ、こう言った。



「イオン君。・・・新たなダークポケモンが現れたらしい。ホウエン地方というところに。」



その言葉にイオンは表情を険しくした。
それと共に、1匹のサーナイトが突如としてイオンがベルトにつけていたモンスターボールから飛び出した。
そのサーナイトはとても不機嫌に見えた。


「そっか・・・。だったら!また僕たちが行かないと!!」


『あぁ!?・・・どこのどいつかは知らねーけど、俺が潰すっ!』


エスパーの力を利用したテレパシーのようなものでサーナイトはそんなことをさらっと言い放った。
イオンも少々驚いてはいたが、冷静にこう返した。


「・・・ハク・・・いつも思うけど何でそう危険というか過激というか・・・なのさ?」


ハク、それがこの少々物騒な思考のサーナイト♂の名前なのでした(ぇ)
・・・いや、ただ好戦的ってかゆうかんな性格だからというか・・・は影響あるかもしれない(おい)


とにもかくにも。

深き心の闇を抱えし蒼き者と、
深き闇に囚われしモノを救い出す力を持った黄の大地に育ちし者。
両者が繋がる時は確実に近づいていた・・・。





■後書き■

自分で悠火のキャラがいまだにつかめません。
前回はルビーっぽいとか思ったけど、今度はブルーです(ぇ)
彼は一体何を目指しているのでしょうか?私が知りたいです(こら)
・・・あぁ、本題からずれてますね。
では、今回のメインとなったことについて。
奏の『アサギの一件』。このことに直接蒼夜がかかわっているわけではありません。
ただ、蒼夜は過去の経験と性格的部分から必要以上に気にしているだけ。
このことについては今後の内容でもあるので詳しい解説は今は省きますが。

そして今回重要なことがもう1つ。
ついにイオン登場です!!
ちなみに年齢は19。翼架と同い年ですが・・・身ty(殺気を感じたので略)

今回はこのへんでしょうかね?
それでは以上でこの話の後書きは終わりにしたいと思います。

 

[一言感想]

 イオン……今作では目立てるといいね!(オイ)
 あと個人的に、マツバの名前が登場したのは意外でした。
 実際の出番もあるかも知れません。

 

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