俺は翌菜と戦っていた。

だけどいつものように、冷静でいられなかった。

何故だかわからなかったけど・・・多分、今なら。






30話「気づいた感情」






「奏が来てくれなかったらどうなってたのかしら?」



「さぁ・・・?でも、2人とも・・・いえ、ジムの人たちも無事だったじゃないですか」



ポケモンセンターのロビーで翌菜と奏が話していた。
だが、そこに蒼夜の姿はなかった。



2日前。
偶然ジムの外へ転がり出た蒼夜のポケモン、サニーゴによってジムの状況を知った奏はすぐに駆けつけていた。

ジムの壁は半分ほど崩れていて、2人の位置はすぐ奏にも確認できた、
だから迷わずにそこへ向かったのだが・・・


「予想通りというか、なんというか・・・」


翌菜と蒼夜の怪我の度合いを見比べて、思わず奏はそう口に出していた。


「ま、でもそんなこと言ってる場合でもないか。サーナイト!」



まずは手当が優先、そう奏は判断して隣に出していたサーナイトにテレポートさせて診療所へと向かった。



奏の見立て通り、翌菜に関してはほとんど怪我がなかった。
だが蒼夜は背中にそれほど酷くはないが、傷を負っていた。ついでにいえば右腕の傷も少し開いたとも。



それから奏と翌菜が交代で蒼夜の病室に顔を出していたのだが、まだ蒼夜は目覚めていない。




「じゃあ、奏。あたし、蒼夜のところに行ってくるね」


「あ、はい」



翌菜がポケモンセンターの扉から出て行くのを見た後で、奏はふと彼女に聞いたことを思い出していた。


「・・・翌菜さんの話だと、蒼夜さんは自分でもわからないうちに動いていた・・・か」


わからない、とは無自覚のうちに。

奏はその想いについて、わかるような気がしていた。


「俺の予想が正しければ多分・・・・・って他人のこと言ってる場合でもないんだけどな」


何故か奏はその時苦笑いを浮かべていたという・・・。







翌菜は蒼夜の病室の前まで来て、入るか入らないか迷っていた。



「起きてたら一体何て言えばいいのかな・・・」



そう言って先程から病室の扉を開けれずにいた。




かたん



そんな時に、病室から物音が聞こえてくる。
翌菜はそこで驚いて扉を開けた。




「・・・あ・・・すな・・?」



蒼夜から翌菜の顔は見えない位置だったのに、彼ははっきりとその名を口にした。
信じられない気持ちで翌菜が扉からベッドへ近づいて行く。


そして、蒼夜の顔が見える位置まで近づくと、笑顔で言った。



「蒼夜・・・ありがとう、守ってくれたんでしょ?」



その瞬間、蒼夜の顔が微かに赤くなったのだが、翌菜は気付いてないようでそのまま言葉を続けていた。




「おかげで、あたしはそんなに怪我してない・・・けど」



「ばーか。俺は自分で・・・庇って・・・」


蒼夜は翌菜の言葉を遮るようにこう言いながら、何とか左腕に力を込めて起き上がる。

そして、微笑みながら翌菜を安心させるかのように呟く。



「俺の勝手だけど、とにかく無事なら・・・よかった」



それを聞いて翌菜は心配されてたんだ、と内心で少しだけ思う。

そして気づいた。入る前は迷っていたわりには普通に会話ができていることに。
このことが翌菜にとっては大きかったようでやや迷いながらもポケットから何かを取り出し、それを蒼夜の左手に乗せる。


それを見て慌てて蒼夜は言った。



「これ・・・ジムバッヂだよな?・・・バトルは終わって」



今度は蒼夜の言葉を遮るように、悪戯っぽい笑みを浮かべながら翌菜は言う。



「守ってくれたのが蒼夜の勝手って言うんなら、ヒートバッヂを渡すのは私の勝手なんだから」


「だけど」


それでもなお受け取るのを断ろうと蒼夜はしたが、翌菜はそれでも言った。



「助けてもらったお礼と思って?・・・それに・・・多分あのままバトルが続いていたとしてもあたしはきっと負けてたもの」



もう一度微笑んだかと思うと、翌菜はそのまま病室を後にする。
勿論これは蒼夜が目覚めたことを報告しにいく為だったのだが・・・蒼夜はそれどころではなかった。

彼女の・・・翌菜の後姿を見つめているその顔は真っ赤になっていた。

そして、呆然とした様子で呟いていた。




「・・・もしかして・・・好きになってたのか・・・?」





言ってから、まだ翌菜の手のぬくもりが残っているヒートバッヂを見ると、溜息をついていた。




「大切な人を増やすつもりはなかったんだけどな・・・」



それだけ呟くと、少しだけ冷静になった思考でその理由を考えようとしたのか、自然と口が動いていた。



「ジムで再会した時・・・いや、そうじゃない・・・なら・・・最初に会った時から・・・?」



そこまで言うと赤かった顔が更に赤くなる。
いつの間にか、左手に持っていたヒートバッヂを握りしめていたが、そんなことも気づかぬぐらいだった。





「気づくよりも前にもう気持ち持ってかれてたのかよ・・・」






そのまましばらく動くこともできず固まっていたが、やがてまた彼女のことを思っているのだった。





「〜〜〜っ・・・どうしたらいいかわかんねーよ・・・こんな、ここまで女の子を考えることなんてなかったし・・・」






それからというものの、何度か何事か呟いていた。


だけど


それでも


最後に来たのはやはりこのことだった。







「やっぱり俺・・・翌菜が好きなんだ・・・!」






気づいた感情をどうすることもできないまま、蒼夜は一人途方にくれるのであった・・・。



これが、先へ進む為の・・・変わる為の前兆だったとは、後になって分かったこと。





■後書き■

気づいて動揺している蒼夜が楽しかったです♪←
とりあえず書きたかった話を書けて満足しています(ぁ)
これでフエン編は終わり、次からは新たな展開に。
中盤に入っていく物語をお楽しみに。

 

[一言感想]

 ある意味、翌菜は蒼夜をやっつけた←
 ともあれバッジもゲットしたし、今後も楽しそうな雰囲気だしで、何より(ぇ)。
 ただ、一度蒼夜vs翌菜は、きちんと決着もつける形で再戦してほしい気もします。
 結構、主人公vsヒロインのバトルが好きなので(何)。

 

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