「やっぱり、よく出てくるなぁ・・・」


ふと、古びた書物をめくっていた手を止めてぽつりと呟いた。
その声に気がついたのか、同じく近くで何かを調べていたであろう別の声が不思議そうに訊ねる。


「どうしたの?・・・悠火君?」


女性の声だった。
しかし悠火と呼ばれた人間は、それを聞いてはいず、何かを考え込んでいるようだった。



「となると、これはあそこと繋がって・・・いや、それだと」



いつの間にか、目線は先程まで見ていた書物ではなく、何やら色々と書かれているノートであった。
小さな声で何事か言いながらめくっては新たに何かを書き足し、またページを戻したり進めたりしている。

普通に書き込んでいるところを見ると、どうやらそのノートは彼のもののようだ。
だが、それにしては熱が入りすぎている。彼女にはそう感じられた。



ぱらぱらぱら・・・


かりかりかり・・・



しばらく紙をめくる音と、ペンを走らせる音が続いていたが、不意にその音が止む。


かと思うと、今度はP☆DAを取り出し何やら検索をかける。
やがて見つけた1つのページに僅かに驚いた表情をしていた。



「ゆ、悠火君・・・そろそろ説明してくれないかしら?」



そのタイミングを見計らって女性は再び彼に声をかけていた。
そこでようやく彼女もいたことを思い出したのか、苦笑いを浮かべながら答える。



「調べていた甲斐がありましたよ、翼架さん。・・・大体のことが繋がってきたんです。」








31話「紡がれる記述と約束」








「まず、これを見てくれますか?」



そう言って、悠火は先程まで書き込んでいたノートを見せる。
そこにはびっしりと文字が羅列されていた。



「・・・これ、ほとんど1人で調べたの?信じられない・・・」



ノートを手に取り、軽く目を通していた翼架が驚いたのは、その情報量の多さ、そのうえ細かいながらも見やすい文字が並んでいたことだった。

ある程度彼女が見たのを確認してから、悠火は語り始める。



「いくつもの文献を僕はトウカシティを出てから調べてきました。そのノートはその結果集まった情報を記述したもので・・・その中に、黄色で囲ってある言葉がありませんか?」



「え?・・・もしかして、これのこと?」



偶然にも、翼架が開いていたページに彼が言う囲みが存在していた。
悠火は軽く頷きながら、説明を再開する。




「その『鎮護の奏者(ちんごのそうしゃ)』という言葉が、必ずと言っていいほど資料には残っていたんですよ。それによれば、その人物は琥珀のオカリナを奏で、その音色によって争いを鎮めたといいます。そこで出てくるのがこの・・・彼です」




そして、悠火が翼架に示したのはついさっきP☆DAで開いていたページである。

そのページ自体は数日前に蒼夜が開いていたページなので翼架も知っていた。
しかし、その部分は翼架がはっきりと読んでいなかった部分だった。

読んでいくうちに、その表情が驚きを含んだものに変わっていった。



「・・・まさかとは思うけど、悠火君」



表示されている全てを読んだ翼架が、困惑の色が多い声色で思わず悠火に問いかけていた。

それに対する悠火の反応は、とても冷静なものだった。




「えぇ。恐らく彼・・・レオさんが『鎮護の奏者』だと思います。・・・それにしたって驚いた・・・これも、運命って奴なのかな・・・?」




「運命・・・?」



はっきりと把握しきれていない翼架が釈然としない様子で呟くと、悠火は不思議な雰囲気を含んだ物言いをしていた。





「過去の繋がりが、現在へと繋がる・・・転生を経て、2人は出会うべくして再会する。僕も彼もこのホウエン地方へ来る運命があった、ってところかな?」













同じ頃、ジョウト地方・フスベシティジム。

そこに、1人の少年が訪れていた。



「まったく・・・奏も無茶なこと言うよね・・・」



そう口に出しているものの、彼の口元は笑っていた。
そのことから、相手に対して怒っているというわけではないようだ。



ところで、フスベジムといえば、悠火の所属するジムである。
ジムリーダーに次ぐ実力を持つ悠火は、現在ホウエン地方へ行っていて不在・・・というのは読者の皆さんならご存知のことだろう。


そんなことはともかく、彼は今、ジムリーダーのイブキを目前にしていた。




「僕は、貴女に勝ちます。勝って、奏との約束を果たしに行きます。」



「奏・・・というよりも、君は春華という娘のことではないか?」



そんな宣言に強気に出るどころか、彼女にしては珍しく、くすくすと笑いながら、挑戦者である少年に話しかけていた。

すると、少年の声が小さくなる。


「な、何でイブキさんが知ってるんです・・・・?その、最近だと奏ぐらいにしか・・・」



言いながら、動揺を隠そうとしたのかかけていた眼鏡のフレームを指でかちゃかちゃといじっていた。

それがおかしかったのか、やはり彼女らしくなく声を立てて笑う。



「ふふっ・・・悠火が今ホウエン地方に行っていてな、それで、奏とその春華って娘に会ったんだと。それで、奏が教えてくれたとかなんとか連絡してきてたのよ」




「え、悠火さんが!?っていうか奏!?」



なんで悠火さんに言うかな・・・などと呟きつつ、少年はその場にしゃがみ込む。その拍子に僅かに黄緑の髪を乱れさせる。

しばらくそうしていると、落ち着いてきたようでゆっくりと立ち上がり、最初と同じようにはっきりとした声で、彼は言う。





「僕は、勝って春華に会いに行く。言わなきゃいけないことがあるんです!」





「私は、ジムリーダーの立場でなければ素直に君の恋路を応援したいところだが・・・生憎私はジムリーダーだからな。挑戦者に負けるわけにもいかない、だから流斗。」



どうやら、イブキとしては彼の後押しをしたいようだが、あくまでジムリーダーとして戦うという表明をする。

その対応に僅かに苦笑いを浮かべた少年、流斗だったが、その直後にはまっすぐにイブキを見つめていた。




「わかっています。・・・でも、僕、負けるつもりはないですから」










そして、流斗がホウエン地方に行こうとするきっかけを残していった奏はというと・・・




「ジョウトのジムを制覇した後で・・・ま、あいつならそれもできるだろうな。でも・・・俺は少しあんなことを言ったことを後悔してるよ。」



------ねぇ、もし僕が本当に達成して春華に伝えたら、奏はどうするの?

------その時は、俺も・・・。



「・・・ほんっとに俺は何言ったんだかな。」



ヒートバッヂを握りしめたまま、うとうととしている蒼夜の傍で、呟いていた。



「・・・青乃・・・」



名を呼ぶのは、そう、愛しい少女。





■後書き■

あれ?最初は悠火メインの話だけだったんだけど・・・まぁいいや。(ぇ)
悠火とレオ・・・2人が今後どう関わっていくのか?というノリかもしれない(おい)。
そして、津波さんのリクエスト?で流斗君の登場が早くなりました。1話か2話で名前出してからようやくの登場って感じかな?
ちなみに奏とは仲がいいですよー。
・・・っていうか流斗。何で奏が悠火に言ったことに文句をいっていたんでしょうか?自分でもわかりません(ぇ)

 

[一言感想]

 悠火とレオの関係性が今後も楽しみです。
 奏に流斗に青乃と、キャラが多くなってきたのでちょっと覚え切れてません←
 個人的には、1キャラずつメインの話があると嬉しいかもです。

 

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