さて、どうしようか。

そんなことをわりとのんびりと考えていた悠火の様子に呆れたのかはどうかわからない。



「お久しぶりです、ミクリさん。」


夕希、だった。ミクリは一瞬驚いたような表情を見せたが、少し笑みを見せた。


「久しぶりだね夕希君・・・だけど、どうしてここに?」


何度も言うようであるが、彼らが今いるのはハジツゲタウン。
この辺りでは彼はある意味有名人なので知っていてもおかしくないのだが、ミクリはその中でも比較的全てを知っていた。



「・・・まぁ、それは置いておいて。君は私に何の用かな?」



今度ははっきりと、悠火に対して話しかけた。
だが、答えたのは悠火ではなく、翼架だ。


「ミッションの対象、碧龍の護人その人・・・そう言えば、貴方ならわかると思います」


「成程、君が・・・。ところで」


ミクリはそれを聞いて納得すると同時に、ふと何かを言いかけた。
遮ったのは、悠火。



「あの、今お時間ありますか?お話しておきたいことがあるんですが・・・」








-A drop of starling sky- 33話「2人の理由」









数十分後。

ポケモンセンターのある一室が貸し切られていた。


チャンピオンの力というのはそんなにもすごいのだろうか?



「さてと・・・まずは、よく来てくれた、とでも言った方がいいのかな?ポケモンレンジャーさんに」


どこか楽しげな声でミクリが言えば、翼架は慌てて反応する。


「いえ、仕事ですし!そ、それに私は………元々、このミッションの担当じゃありませんし…」

「ちょっと待って。そういうこと初めて聞いたんだけど!?」

「今初めて言ったの!………言っておくけど、悠火君。奏君にも話してないわよ」


どこかふてくされるような呟きを漏らす翼架に、思わず困惑する男3人。
その反応を見た彼女は苦笑しながら口を開く。


「最初はね、カヅキっていう私よりちょっとだけ後輩の男の子が受けるはずだったのよ。彼、ホウエン地方出身らしいしね。だけど…ちょっと怪我しちゃって」


「あ、聞いたことがあります!確か、ゴーゴー団とかいう組織との戦いの中心になったポケモンレンジャーの1人、ですっけ?」


その名前に聞き覚えがあった夕希が言い、翼架は頷いた。
あ、ちなみにカヅキは言わなくてもわかるだろうけど初代レンジャーの男主人公ね(何)


それに対してミクリは少しだけ考え込んでいたようだった。



「この地方にも、ポケモンレンジャーはいる。なのに、わざわざ遠方から派遣依頼したのは何故だと思う?」



「状況が状況なだけに、より場慣れしている人材が必要だった…?」


「そう。ちなみに、こちらから出した条件はランク8以上のポケモンレンジャー…」


何気なく悠火がそう口に出せば、ミクリはすぐにそう返した。
それに反応を示したのは夕希だった。

「………ランク8って、レンジャーの中でもトップクラスのランクですよね!?」


「それぐらいの力は、確実に必要になると思ったのさ。何せ相手は海と陸の古代ポケモン…」


ミクリは特にその手の情報に関しては博識だ。
そのあたりのことについてはホウエン地方で旅をしたプレイヤーなら知っているだろう。


「だから、レックウザを制御できる僕の能力が必要だった、と。だけど………それだけで済まなくなったんですよ。それこそが、本題の1つです。」

「事態は、ホウエン地方だけでは収まらなくなったんです。」

「ダークポケモン………蒼夜さんは確かにそう言ったんだ」


悠火、翼架、夕希が流れるように言葉を繋げる。
するとそれまで余裕すら感じられたミクリの表情が僅かに曇った。


「ダークポケモン…?まさか、あれがまだ!?」


動揺を少なからず隠しきれない口調で彼が呟くのに重ねるように、悠火も言った。


「僕達もまだ信じられないんですが…、蒼夜がこういうことでは嘘はつかないのも知っています。」


その声は、自信と信頼に満ちていた。
ミクリもそれは感じ取ったのか、深く問いただしはしなかった。代わりに、こう言った。



「大事な人、なんだね。近くにいるなんて羨ましいよ…」



とても寂しげな顔を浮かべる彼の、大事な人…。
理由までも、その本人に聞いて知っている3人は互いに顔を見合わせる。




微妙な気まずさが部屋内に霞んだ…。




やがて、その雰囲気を破るように発言したのは翼架だった。



「風を掴み、誰かを守れる強い女の子なんです!だから、必ずこの依頼は完遂させてみせます。ランク9の意地を見せるのよ!」



「えっと、翼架さん?それは?」

「私の名前の由来!ウィンタウンは、高山地帯の街!空に近い、風を感じられる場所なんだから!」


その言い方が不思議だったのか、悠火がそう言えば、明るい声で翼架は言い切った。
思わず思いつめていたミクリの顔にも笑みが浮かんでいた。


「ふふっ…元気で、頼もしいレンジャーさんでよかったよ」


「それが取り柄ってエリダさんにも言われましたから♪」




「………エリダ?」

「ああ、確かウィンタウンのリーダーレンジャーの方です」

「夕希君は色々知ってるなあ」

「いやいや、悠火さんもよっぽど色々知ってますよ」

「そーかなあ?…あ、そうだ」



翼架の口から名前が出たエリダという人物について、話していた悠火と夕希。
その最中、ふと思い出したように悠火が呟いた。

視線は、ミクリに向けられていた。


「先程、言いかけた理由のもう1つ………3、4年前、だったかな?ヒンバスの進化のことで…」



ヒンバスの進化。

そのことはミクリにも覚えがあった。



「ああ、確かゲンジさんが聞いてきたことがあったっけ…?何かの用事でジョウトに行っていた時に…。」



思い出したミクリが口に出すと、悠火は笑いながら言う。


「あの時はまだジムトレーナーになってそんなに経たないぐらいだったなぁ…。」


「ははは、でも君がそのトレーナーだったなんてね。それで?そのヒンバスは元気かい?」

「元気なミロカロスの女の子ですよ、アマネは」


かちっ


言うが早いか、悠火はいつ手にしていたのだろうか、1つのモンスターボールのスイッチを軽く押す。


そこから現れたのは、神秘的な美しさを持つ水ポケモン・ミロカロス。

だが、それだけではなかった。



「色違い………話には聞いたことがあったが…、実際見ると素晴らしいものだな…!」



金色に輝く尾、垂れ下った水色の房。
その色がより神々しくさせているようにも見える。


「こんなに綺麗なのに、アマネはフスベシティ近くの湖に…ヒンバスの頃ですけど、捨てられていたんですよ?」


本当に小さな悠火の呟きだったが、彼の耳にはしっかりと入ったらしい。
途端に不機嫌そのものの様子で吐き捨てていた。




「捨てた…?水、タイプを…?それだけでも、許せない…。許せないのは…水タイプの本質をまるでわかっていないアクア団とかいう連中もだが…!」




………今、ミクリさんの後ろに黒いものが見える気がするのは…きっと気のせいだ。





「ミクリさんファンが見たら泣きますね…」


苦笑しながら言う夕希の頭には、ふと先日の蒼夜の様子が思い出されたが、それよりはよっぽどマシと思ったのだろう。落ち着いた声で呟いていた。

それに対し、にっこりとほほ笑みきっぱりとこう言い切るミクリの姿があったという…。




「心配いりませんよ。アダン先生や四天王の方々、あるいはダイゴとか親しい人間の前以外では平静を装える自信がありますから♪」




何か今、問題発言しませんでしたか?チャンピオン…。

そんなことをぼんやりと夕希が考えていると、ちょうどミクリの正面にいた悠火がさらりと同意していた。



「確かに、自分の好きなもの侮辱されるのは心外ですよね。僕だって、フスベジムに文句ある人がいたら、多分………」




それもどうなんだ…。



「………この場に蒼夜さんがいなかったのはある意味で正解かもしれない………」



こんな状況数日前にもあったなあ…などとなんとなく思う夕希。


その様子と、ミクリ・悠火の黒オーラを眺めていただけだった翼架が小さく言った。




「これって、修羅場…よね?」


「その解釈も間違っていると思いますが」



「でも、こういう時は余計な口を挟まない方が早く収まるわよ?」

「………口を挟まなくても長引くこともありますよ」




何となく、もしかして自分の周りには敵に回すべきではない人が多そうだと妙に冷静に彼は考えていたとかいなかったとか…。






■後書き■
おひさしぶりな星空ですが…ものすごくデジャヴを感じるんですが(ぁ)
まあ、花を集中的にやっていたことに後悔はないけど、約4カ月の間隔がちょっと大きかった(苦笑)
翼架がホウエン地方に来た経緯までは普通だったのに…。何があったのか、突然ミクリさんが腹黒くなった(汗)
ごめんね、決して夕希が嫌いなわけじゃないのよ!?
………結局、進んだのかどうかよくわかんないよこれ(おい)

 

[アットの一言感想]

 でも確かに、1つの作品を集中して進める方法は良いと思います。
 つか、見習いたいです←

 考えてみると、結構自分のこだわりが強いキャラが多いかも知れない。
 ふとした言動から、地獄絵図の引き金になるかも知れないメンツですよね♪(オイ)

 

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