ねこひじりの場合。

「み゛ぃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」

と言う、とっても特徴的な悲鳴が、あるにゃんこともんきち(おサル)が暮らす家の洗面所で上がった。
もんきちこと聖の弟、剣斬(つるぎ)は何時もの事だ、気にするまいと思いつつ、4日後の事で非常に頭が痛かった。
現在2月10日。
乙女の祝日(と作者は思わない)、バレンタインまで後4日である。
大抵の甘い物が食べられないにゃんこな姉を持つと、大抵の貰ったお菓子を消費しなきゃならないのは、弟の役目なのだ。
(ちなみに女子高のバレンタインの場合、特定の場合を除いてお菓子品評会の傾向が強い)

「あわわわわ・・・。」

こりゃお菓子作って食べたせいで体重増えたな・・・と言うのは、15年も弟業をやっていれば、容易に想像はつくわけで。
お菓子を沢山食べても簡単に消費できる人なんて、世の中の極々少数なのである。

「そだ・・・、奈月に聞いてみよう!」

と言うわけで、ぴっぽっぱっぽっぴぴぴっ♪と慌てて奈月に電話する聖の姿が見られたとかなんとか・・・。
ちょっと何時もと違うバレンタインデーまであとちょっと。
貴方は、どうしますか―?

 

 

 

『乙女の祝日まであとちょっと、お菓子作りで大乱戦』
〜 彼女のお料理の腕前、大丈夫? 〜

 

 

 

〜 ねこなつきの場合 〜
タマムシ市内某所、水峰さんちにて。

「やだーっ!」

何故か奈月の悲鳴があがる。

「何でだよ!?」
「何ででも!絶対ダメ!!嫌っ!!!」
「ダメもデモもストライキもあるか!!」

何故か、封真と夫婦喧嘩中。
有珠と輝汐と藍月と未空は、訳がわからず居間の畳でごろごろにゃんにゃん。
そして、居間の大きな樫の木で出来た机の上には、お菓子に手料理が沢山。
有珠の毒見によると、何の問題もなし。
じゃあ、何故に奈月が食べない?
大好きなお魚沢山なのに。

「・・・・・・・・・・あー・・・・、若しかして・・・・・。」

藍月が輝汐をいいこいいこしながら、ふとしたことに気付く。
ここ最近、奈月のお菓子の差し入れが異常に多かった。
で、奈月の大好物は、チーズケーキとかすっごくカロリーの高いものばっかり。
・・こうなれば、答を想像するのは簡単である。

「・・・・・まさか奈月ちゃん、・・・・太った?」
「・・・・・・・・・・・ま、まままままままさかそんなことあるわけ・・・・。」
「・・・・・・・ほんとに?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・ねーちゃん、この前風呂場で悲鳴あげてなかった?」

「・・・・・・きぃ?」
「へいへい、なんでもゴザイマセン。」

「・・・さいきんサマー、おっきめの服おおかったよね?」

数ミリずつ、居間から出ようとちまちまと出口に向かう。
・・・これは、イエスと言わなくても肯定したも同然。

「奈月?」

びくっとして慌てて飛びのき、すぐ側の階段から自室に向かって尻尾ふりふりにゃんにゃんにゃん。

「・・・・・・・・・・?奈月の奴、何かあったのか・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。神無月先輩ってさ、泉田さん級の鈍感・・・いや、無神経?」
「無神経・・・って言うよりは、魅音級のKY?」
「むしろこれ、某前原K1レベルでしょ。その内鉈か金属バットで闇討ちにあうんじゃない?」
「・・・兄貴は女心がわかんない、大うつけものなだけだよ。」
「・・・・サマー、かわいそう・・・・。」
「へ?」

全く訳がわからずに頭の上に疑問符を浮かべる封真。
その光景に、お子様4人は溜息をつくのだった。
封真が無事にチョコをもらえたかは、誰も知らない。
ただ、やたら機嫌のいい封真が15日、見かけられたとか・・・。


〜 ねこるみなの場合 〜

「ねぇねぇ。」

くいくいと琉水が颯紅の服を引っ張る。

「どした?」
「チョコ欲しい?」
「チョコ?・・・あ、そういうことか。欲しいが、甘い物はちょっとなぁ・・・。」
「んー、じゃあチョコじゃなくて何か激辛系のご飯作ろうか?」
「それ良いなw」
「がんばって作るね♪」

暁紀と楼蘭の2人の監視の下、相変わらず平和な日常を送る琉水と颯紅の姿があったとか。
若しもこれが警視庁の一角でなければ、もっとその光景は平和に見えたんだろうけど。

〜 ねこなつりの場合 〜

「みぃみぃ、にゃんにゃんw」

と鳴きながら(ちなみにBGMはEasy jesusのアウトロ・・)裏庭でりんごといちごを摘んで、毎度お馴染みのバスケットいっぱいに収穫中の夏理の姿が。
今日は泣きません様に・・と居間の神棚と仏壇に向かって莱や翆達がぱんぱんっと手を合わせて祈っているのは、何時もの事である。

「今年はね、沢山あっぷるぱい作って食べてもらうんだーw」と言うのは、本人の言い分では有るが・・・。
はたして、彼女の常識辞典の中に「人間が食べられる限界の量」とかそーいった物がインプットされてるのか・・・。
バスケットの中身を見る限りじゃちょっと怪しい物である。
一体何人分作る気だ、と言うのは、決して彼らだけの心の叫びでは無かった筈。

そして案の定、1学年分程度のアップルパイが量産されて、火曜日に振舞われたのは言うまでも無い。

14日、彼女が暫く「夢」と「りんご」が嫌いになるなんて、誰がこの時想像したのだろう―?


〜 ねこみずあの場合 〜

「・・・ばれんたいん・・・・って何?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

10何年も誘拐生活送ってた彼女にあんまり期待しては居なかったが、これはあんまりだ。
膝の上で絵本を読んでいる彼女について、考えてみる。
どーも彼女の脳みそに、「バレンタイン」って言う単語はインプットされてなかったらしい。

未来の義母さんがお菓子を作っている光景を見かけて、それでようやく「ばれんたいん」を知ったらしい。
流石に、作っていた本人も呆れたようだけど。

「水愛ちゃん、バレンタインって言うのはね、ニッポンだと・・そうだね、大事な人や好きな人にチョコレートをあげる日なんだよ。」

にゃんこ好みのミルクティ(練乳たっぷり)を水愛に差し出しながら、焼きあがったチョコケーキをはむはむする。

「・・・・・・・。ベリアル、ちょっとお外出てて。」
「どうした?」
「うー・・・なんででもっ!早く出ないと撃つよ!?」

顔を真っ赤にしながら、危険物に手をかける水愛を見て、そそくさと退散。

「どうしたの?」
「・・・・ベリアルにお菓子作る・・・・。(ぼそっ」
「あぁ、なるほどね。・・・でもね、水愛ちゃん?」
「?」
「もっと喜ぶ方法があるわよ?」
「みっ!?」
「それはね、ごにょごにょ・・・・・。」
「ふにゅ・・・・やってみる!」


14日当日。
頭にリボンつけて、可愛いワンピースを着た(着せられた)水愛がチョコ持ってベリアルの所に遊びに行ったとか。
お義母さん曰く、「ほんとに危機感ないのね・・・。」だったとか。
その日、今で仲良く日向ぼっこしてお昼ねしたにゃんこが2匹、居たとか居ないとか。

 

 

 

[一言感想]

 

※むしろ感想じゃないし。

 

〜 ねこまどかの場合 〜

 エネコやペルシアン、ニャルマーなどを手持ちとする、猫ポケモン使いのトレーナーことマドカ。
 彼女の想い人はいとこであり、同時に幼馴染でもある、同い年の少年である。

「…………」

 存外、マドカは家事を平均的にこなす。
 普段ツンケンな彼女だが、趣味は編み物と女の子らしいし、掃除洗濯料理などのスキルもそこそこには備えている。

 ゆえに、市販の板チョコを溶かして固め、適当なトッピングを加えて手作りとする。
 その程度は、本来ならば造作もない事だった。

「……そう、作るのは簡単よ。あとはソウトに渡すだけで……!!」

 彼女にとっての料理は問題ではない。
 むしろ、渡す方が彼女にとって重要課題。

 最悪、義理チョコと言って渡せばいいのだが、それすらも彼女には難しい。
 変なところで極度のツンデレが、ここへ来て裏目(?)に出ていた。

「そ、そうだわ。義理なんだから、何もこんな真面目に作る事ないんじゃない。全然っ……そんなんじゃ無いんだから、もっと適当そうなものを!!」

 これが、彼女の出した結論だった。
 マドカが珍妙なベクトルのツンデレ猫でなければ……本来の能力で真面目に料理をすれば……。
 食べ物が、食べれぬ物に変貌することなど無いであろうに。

 意図的な猟痢は、どう考えても悪意に満ちた凶器。

 ある年の2月14日、その犠牲になった少年が、グレン島在住S君だったとか。

 

〜 ねこらんの場合 〜

 5代目妖怪猫娘な声の少女にとって、調理こそが妖怪変化に他ならない。

 何故、同じ素材を用いているのに、こうも違うものが生み出されるのか?
 これは世界七不思議レベルの、実際の当事者にさえ解明できぬ最高峰の謎だった。

 早い話、彼女が手作りチョコを作ろうとすれば、毎度姿形が変貌する。
 無論それはデザインが異なるなんて、愛らしい結果を生む訳では断じてない。

「……ラン。お前、ホントにこれ全部、『同じ素材と方法で』作ったのか?」

「う゛ー……」

 ご主人様が呆れるのも当然。
 そこに並べられたチョコレートは、ただの板チョコから美味を想像するに難くない豪華なトッピングのもの、そしてどろどろぐちゃぐちゃのスライム的物質までピンからキリ。
 ちなみに中には、緑と紫の入り混じった変色チョコまでおいてあったり。

「……だって、頑張ったんだもん」

 ぐすんと泣(鳴?)かれては、ご主人ムキルも強くは言いづらい。
 12歳の少年は今、何気に崖っぷちだった。

 ランの恐ろしいところは、毎回見た目と味とがバラバラな点である。
 素直に美味そうなものが美味く、不味そうなものが不味い……というのが常であれば簡単だ。
 だが、実際はそうではない。
 彼女はたまに、美味しそうな毒物とか、食せばほっぺの落ちそうなゲテモノとか、そういうのもブレンドさせて生成しやがる。

「俺は今。物凄く、シクーのダウジングが欲しい」

 遺言だけ残して、ムキルは1つを選んでほおばる。

 けど、まぁ。
 目の前が真っ暗になるフラグは、うざったい程きっちり効果を成す訳で……。

 

 後日。
 類い稀なる生命力で命をつなぎとめたムキルにより、子猫ランはこっぴどく叱られたとか。
 それはもう、2人っきりで有意義な説教時間となる。

 ……いたずらされても、文句は言えまい(ぇ)。

 

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