空に星が瞬く夜。ホウエン地方の南海上を北上する南極探査船『ロンド』その保管室………


「明朝にはカイナシティの港に着く。着いたらこの箱ごと車に載せ替えてラルースシティまで運ぶんだ」

「ああ。でも一体何が入っているんだ?俺は探査に直接出かけたわけじゃないし、見た時には既に箱の中に収められていたからわからないんだ」


何重にも施錠されたトランク大の箱の前で2人の乗務員が話し合っていた。


「実は俺も見ていないんだ。だが他の奴が話しているのを聞いたところでは何でも半世紀ぐらい前に南極に落ちたっていう物体と関係があるかもしれな……いっ!?」


突然、船体が大きく揺れた。何やら吸い込むような音も聞こえる。


「な、何だ?何が起こったんだ?」

「待て、慌てるな。俺が外の様子を見に行くからお前はここで待っているんだ」


1人が保管室から外に出て音のした方向を向いて唖然とした。この船をすっぽり包み込む程の巨大な黒くて丸い穴があり、そこにこの船が吸い込まれていっているのだ。


「こ、これは一体…う、うわあああっ!!」


黒い穴は船を完全に飲み込むと次第に縮んでいき、消えてなくなった。船の姿は跡形もなくなり、ただ海面が波打つだけだった………










ポケットモンスター コズミックファンタジー
プロローグ:美少女と美少年










ポケットモンスター、縮めてポケモン。この世界には何百という種類のポケモンが存在しており、それらは人間と時に戦い、時に助け合い、共に生きてきた。そしてそのポケモンを強く育てて戦わせる人間、それがポケモントレーナー。多くの少年少女、そして大人までもがトレーナーとして旅をしているのだ。そしてここ、ホウエン地方にも………







ホウエン地方・カナズミシティ…その近郊の林……


“昨夜カイナシティ南海上で消息を絶った南極探査船『ロンド』の行方は未だ掴めておりません。海上保安庁では何らかの事故や事件に巻き込まれた可能性もあると見て捜索を続けています。では次のニュース……”

「ポチっとね。さてと、バトル始めよっか」


後ろ髪がはねたクレーンゲーム頭の女の子が小型ラジオのスイッチを切り、そう言った。向かい側にいる少年はモンスターボールを構えている。


「いつでもOK!俺はカナズミシティ・トレーナーズスクール所属、トーヤ!あんたは?」

「ハルナ!トウカシティのハルナよ!よろしくねv」


ハルナと名乗った女の子もパチンとウインクし、モンスターボールを構えた。何を隠そう彼女こそこの物語の主人公なのだ。



「使用ポケモンは1体ずつだ。行くぜ!行け、ジグザグマ!!」


トーヤの投げたボールが開き、中から体毛のとがったタヌキのようなポケモンが出てきた。鼻を動かしながら辺りの様子をうかがっている。


「ハルナは、この子!お願いマリル!!」


ハルナのボールから出てきたのは丸い体、丸い尻尾、丸い耳の青い体をした可愛らしいポケモンだ。体を小さく左右に揺らしている。


「こっちから行くぜ!ジグザグマ、体当たりだ!!」


ジグザグマがマリルめがけて走っていく。マリルはそれを迎え撃つ。


「マリル、一発の水鉄砲!!」


マリルは口からいきおいよく水を吹き出し、それをジグザグマにぶつけた。ジグザグマは押し戻される。


「うおっ、これじゃあ近寄れない。だったらこれならどうだ?ミサイル針!!」


ジグザグマは今度は体毛を逆立て、それを無数に前方へと撃ち出した。これなら一発では対抗できない。


「そう来たわね。それなら!たくさんの水鉄砲!!」


マリルの方は水鉄砲を連射し始めた。威力こそ一発よりも落ちるが、無数の飛び道具を撃ち落とすには最適だ。ミサイル針はあっという間に相殺されてしまった。


「し、しまった!」

「今よマリル、転がる攻撃!!」


その丸い体を使ってマリルが転がり始める。標的であるジグザグマに近付くごとにどんどん勢いを増し、命中した時にはそれをはじき飛ばすほどになっていた。マリルは命中の反動を利用して転がりをストップさせ、ジグザグマは地面に倒れて目を回して気絶。もうこれ以上戦えない。


「やった!勝利ゲットかも!」

「りるりる♪」


ハルナはニッコリしながらブイサインをし、マリルもその勝利を喜んだ。トーヤの方は悔しそうにしゃがみながらジグザグマをボールへと戻す。


「ジグザグマ、よく頑張ったな。くーっ!でも悔しいぜ!あんた強いじゃないか。バッジいくつか持ってるのか?」

「ううん。ハルナはバッジ集めてないの」


トーヤの質問にハルナは首を横に振った。バッジとは各地にあるポケモンバトルの道場(ジム)を攻略するとそこのジムリーダーから受け取ることができる勝者の証であり、バッジを規定数以上集めればその地方の最強トレーナーを決めるバトル大会への出場資格を得ることができるのだ。


「ハルナが目指してるのは大会じゃなくて、セクシーアイドルトレーナー!バトルも水着もお任せ♪かも!」

「はぁ…そうなんだ」


トーヤはなんとなく納得していた。ハルナはその幼さの残る顔とは裏腹にかなりの巨乳の持ち主である。服が体に密着しているためそれがよくわかるのだ。大物アイドルになれるかどうかは別としてグラビア路線ならかなりいけそうな感じがする。


「じゃあ、頑張れよ。写真集出たら買うよ。またな!」

「DVDも出たら買ってね〜♪」


その場を後にしたトーヤをハルナは手を振って見送った。トーヤが見えなくなった後、マリルが耳をピクピクと動かしているのに気付く。


「どうしたのマリル?」

「りる、りる…」

「…?何か聞こえる!かすかだけど……」


耳をよくすませるとそれは聞こえた。人の声のようである。すぐそこの草むらだ。ハルナは草をかき分けてその中を探った。するとそこに人……しかも少年がうつぶせに倒れているではないか。シルバーメッシュ混じりの黒髪がツンツンとはねているその少年は全身が傷と泥で汚れているが、すごい美少年だ。


「どうしたんだろう…ん?」

「う……」

「意識がある!助けなきゃ!」


ハルナは少年の体を草むらから引きずり出し、そのまま抱えて運び出した。










カナズミシティ・中央病院……










「あの人…大丈夫ですか?」

「ええ。傷もそれほどひどくないし、命に別状はないわ」


心配そうに尋ねるハルナにナースの女性はニッコリ笑って答えた。ホッとするハルナだが、すぐにベッドの上に横たわる少年に目を移す。


「でも……どうしてあんな場所にボロボロの姿でいたんだろ」

「わからないわ。彼が目を覚ましたら聞いてみるか、あるいは彼の荷物を見てみるとか……ホラ」


ナースが少年の左手の甲を指差した。彼がはめているグローブのそこにはクリアブルーの円盤が付いている。右手のグローブの円盤はクリアレッドだ。


「利き手の赤い円盤にはポケモンを入れたモンスターボールを6つまで、反対の青い円盤には荷物を、それぞれ出し入れできる特殊グローブ『カスタムサポーター』略称CS。あなたも付けてるからわかるでしょ?」

「は、はい。でも他人のは使えないし……」


自分の手にはめられたCSをさすりながら答えるハルナ。しかしナースは続けた。


「このCSは見たところ出始めて間もない頃に製造された旧式のもの。今のものと違って手にはめれば他人のものでも使えるはずよ。私の父がデボン社に勤めていたから見せてもらっていたの」


デボン社…正式名称デボンコーポレーションとはここカナズミシティに本社を置くポケモン関連製品の開発、製造を行う会社で、遠くカントー地方・ヤマブキシティに本社を置くシルフカンパニーと並ぶ大企業なのだ。


「そうなんだ……そんなタイプのがあったなんて、ハルナ初めて知ったかも……」

「まあ、彼の荷物を見てみるかどうかはあなたに任せるわ。どうする?」

「う〜ん……やってみよう!」


言うが早いかハルナは自分のCSを脱ぎ、少年の左手から彼のCSをゆっくり脱がせて自分の手にはめ、小声で呟いた。


「ごめんなさーい。少々拝見させていただきまーす……」


出てくるものは衣類に食料品に飲料水、寝袋といった旅の必需品が主で、特に変わったものは見つからない。旅のポケモントレーナーが必ず持つ機械・ポケモン図鑑もある。


「あれ、このポケモン図鑑…真ん中に見たことないロゴが入ってる。新型かな」


気になったハルナはその図鑑を手に取り眺めた。ロゴはアルファベットの“C”を満ちかけた惑星に見立て、それに土星の輪を合わせたようなデザインだ。そのロゴを見たナースは何かを思ってか顔をこわばらせる。


「そのロゴ、コスモ団……?」

「えっ?」


聞いたことのない名称にハルナはナースの方を見た。図鑑のメーカーにしては変な名前だ。そう思ったハルナにナースは小声でその正体を囁いた。


「コスモ団っていうのはね…このホウエン地方で暗躍している組織よ。この国の平和を守るということを掲げているの」

「え……ええーーーっ!?そんな裏組織みたいなのがこのホウエン地方にあったの!?」


驚きを隠せず大声で反応するハルナ。これではナースが小声で話した意味がない。しばらく驚いていたハルナだが、ナースの話を思い返して落ち着いた。


「でも…平和を守っているのよね。だったらそんなに驚くことはなかったのよね」

「いや、それは違う」


ハルナは一瞬固まった。明らかにナースとは違う少年の声。その声がした方に振り返ると先程までベッドに横たわっていたはずの少年が体を上げていた。


「平和を守るというのは表向きのものだ。奴らはそんなもの全く望んではいない」

「じゃ、じゃあ何を望んでるっていうのよ……まさか世界征服なんて言わないわよね」


急に話し出した少年に戸惑いながらも尋ねるハルナ。その問いに少年は何も迷うことなく真剣な表情のまま答えた。


「奴らの狙いは……この国を自分達の支配下に置くことだ」


国家の支配…規模は小さくても世界征服と似たようなものだ。尋ねたもののあまり本気ではなかったハルナは驚きながらも今ひとつ信じられない。果たしてこの少年の正体は。そして彼とコスモ団の関係とは………?










プロローグ・終わり










あとがきらしき文字の羅列
プロローグをお読みいただきありがとうございます。さて、この小説のタイトルは“コズミックファンタジー”。
敵として登場する組織・コスモ団を倒すための冒険という意味を持っています。その意味の通り、この小説は主人公であるハルナ達と敵であるコスモ団との戦いをメインに書いていこうと考えています。
だからハルナにはジム挑戦やコンテスト参加もさせる予定は全くありません。そして、この物語の世界観はアニメ版ポケモンの世界。しかもサトシ達が旅をしている時代から約半世紀後の世界となっています。
もしかしたらアニメに登場したあの人やこの人に関係する人物が登場するかも?(未定ですが) それとこの話、ラストまでの大きな流れは大体出来ています(敵の使用ポケモンなどの細かい部分は除く)。
思いつきで間に話を加える可能性はありますが、大きな流れそのものは変更しません。戦いがメインである以上バトルシーンが多くなるものの、各所にギャグやパロディ、ロマンスやエロティカルな場面などを入れていければいいかな…と思います。
んー、誰ですか、エロ場面優先だろうと言っているのは(蹴)。ちなみに…ハルナと最初にバトルしたトーヤ。彼の名前に特に由来はありませんので深く考えないようお願いします(いやマジで)。
最後に……ダイヤ・パールに登場する敵の組織がギンガ団だということを、コスモ団という組織名を考えた後で知りました。かすった!と思いましたが、思い切り被らないで良かった……

 

[アットの一言感想]

 サガさんの小説はポケFの頃からお色気重視なので、本作でも今後そちらが前面に表れてくることでしょう(ぇ)。
 今作は、「かも」が口癖なあの娘の孫とおぼしき女の子の物語のようです。
 コスモ団なる、新たな悪の組織との戦いに期待しましょう。

 

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