コスモ団が狙っているものがあるというムロ島を目指し、トウカシティを旅立った巨乳美少女ハルナと元コスモ団員スバル。今はそのムロ島行きの連絡船の甲板の上だ。
「あっ、見えてきた!あれがムロ島ね!」
「ああ。ところでハルナ。島に着いてからの行動について話し合おう」
「そうね。どうする?」
スバルは甲板の前の方へと歩きながら話し始めた。
「効率良く捜索するために二手に分かれたいところだが、ここは一緒に行動しよう。いいか?」
「えっ……どして?」
ハルナは顔を赤くしながら尋ねた。振り向いたスバルがハルナの顔の変化を気にしつつも答える。
(ん、どうしたんだハルナ……)「コスモ団はトップに君臨する総統の下にランク付けされた団員が存在することによって成り立っているんだ。そのランクによって異なる腕章を付けている。いわばその腕章がコスモ団員の証し」
彼の目を見ながらうんうんとうなずくハルナ。スバルは続ける。
「ランクは下から数えて不規則銀河、楕円銀河、渦巻き銀河といった感じで高くなっていく。腕章にはそのランクの星雲銀河が描かれているから一目でわかるはずだ。更にその上に五人の幹部クラスがいる。彼等はその人数から“ペンタゴン(五角形)”と呼ばれているんだ。星の腕章を付けている」
「ペンタゴンか。五方向に分かれた星ね。で、それとハルナ達が一緒に行動するのとどんな関係があるの?」
うなずき続けながら尋ねるハルナにスバルは目を閉じ、少しうつむき気味に答え始めた。
「正直言って俺達の今の強さでは渦巻きクラス相手だと一人ずつで互角に戦うことは難しい。だが二人で力を合わせれば何とか戦えるはず。コスモ団の実働部隊は殆どが渦巻きクラスまでなんだ。二人で行動していれば見つけてすぐに行動できるし、敵から見つかってもすぐに力を合わせて戦えるだろ?」
「うん。わかったよ」
二人が会話を交わしているうちに連絡船はムロ島の船着き場へと到着した。他の乗客達は次々と降りていく。
「よし、じゃあ行こうっ!」
「ああ。行くぜ」
ポケットモンスター コズミックファンタジー
3rd メイドさん
二人は甲板から桟橋を渡り、遂にムロ島へ降り立った。顔をくすぐる風は潮の香りがして心地良い。だが今はそれを楽しんでいる時ではない。
(せっかく水着用意してきたのにな〜……仕方ないか)
「まずは情報収集だ。奴等が狙いをつける程のもの。きっと手がかりは掴めるはずだ」
「情報収集ね。だとすれば酒場とか喫茶店に入るのが基本かも」
RPGのやりすぎだろ……そうスバルは思ったが、言われてみればそうだとすぐに思い直した。人がたくさん集まる場所ならそれだけ情報を持った人も多く、自然と情報が集まってくるはずである。二人は早速酒場か喫茶店を探し始めた。
「見つけた。ここに入ろう」
探し始めて間もなくスバルが喫茶店を発見した。看板にはこの店の名前“秋桜(コスモス)”の文字がピンク色を主体としてかわいらしく書かれている。コスモ団と似ているな。とハルナは少し怪しんだ。
「コスモ団のお店だったりして……大丈夫?」
「ああ。ここで確かな情報が得られそうな強い予感がする。行くぜっ!」
やけにやる気になっているスバル。そんなでいいのかな……ハルナはそう思いつつ、スバルの後ろに付きながら中へ入った。するとそこには………
「お帰りなさいませえ!御主人様あ!お嬢様あ!」
フリルたっぷりのかわいらしいメイド服を着た女の子達が二人を出迎えた。ハルナは吹いた。ここはいわゆるメイド喫茶だったのだ。スバルはわかっていて入ったのだろうか。表情を変えていないのでどうだかわからない。二人は席に案内され、品物を注文した。
「ふ〜ん、スバルくんってこういうの好きなんだ」
「メイド服が嫌いな男などこの世にいない」←力説
「そーいうもんなの?」
どうやらわかっていて入ったらしい。やる気の理由はこれだったのか。ハルナは届いた紅茶を飲みつつ周囲を見回した。メイド達の服は自前の持ち込みなのか選択して支給されるのかはわからないが多種多様だ。その中の一つにハルナは目を留めた。
「あ、あの服……」
ハルナの目に留まったメイド服、それは背中が思い切り見え、肩もわきも出ており肌の露出度はかなり高い。リボン付きの首輪を付け、ガーターベルトを履き、そのベルト部分が見える程のプリーツのミニスカート。やはりいたるところにフリルがちりばめられていた。
「どうした」
「あの服……かわいいかも〜〜v」
目を輝かせながらハルナはそのメイド服を見つめた。スバルもそこに目をやるが、その実物を見た途端に顔を背ける。……後ろ髪引かれつつ。
「どしたの?ああいうメイド服は好みじゃない?かわいいのに……」
「いや、好みだ。だがあの服は……確か……」
「前に行ったメイド喫茶じゃないの?」
「……あいつらだ」
ハルナの質問に正直に答えつつスバルは自分の記憶を探り当てた。またそのメイド服を見始めたハルナだが、そのメイドは店の奥へと引っ込んでしまった。残念そうに席に座り紅茶の残りを飲み干すハルナを確認し、ようやくスバルが少し小声になって話し始める。
「俺の知る限りあんな男にとって嬉しい……いや目のやり場に困るメイド服を着る人間はあいつらしかいない。コスモ団ペンタゴンの一人スピカとその直属の配下、メイド部隊」
「メイド部隊?変な部隊かも」
ハルナご名答。名前からして変な部隊だ。ましてあのメイド服を部隊の制服にしているという。そのような部隊を置いているなんてコスモ団って一体どういう組織なんだろう……そんな考えが頭をよぎった。
「ハルナ。ナイス発見かもしれないぞ。あの女がコスモ団員なら後をつけていけば奴等の狙っているもののところにたどり着けるかもしれない」
「はあ……でもさ、あの人がここの仕事を終えて出るまで待ってるつもり?」
「………」
言われてみれば確かにそうだという顔をしてスバルは黙り込み、紅茶を飲み干した。そのまま窓の方を見つめていると、先程のメイド服を着ていた女の子がそのままの服装で外を歩いているのが見えた。先程で上がりだったらしい。
「バイトの上がりだったらしいな……!よしっ!追いかけよう」
「マジ?都合よすぎかも!」(しかもあの服のまま?かわいいけどあの服で外を歩くのはなー……)
スバルの予感は的中した。すぐに席を立ち、店を出ようとするスバルと彼を追いかけるハルナ。慌ただしく代金を支払って外に出る二人をメイド達はしっかりと送り出す。
「行ってらっしゃいませえ!御主人様あ!お嬢様あ!」
メイド喫茶を後にしたハルナとスバルはセクシーメイド服姿の女の子の姿を追っていた。
「町を出ようとしてるみたいね」
「やはりお目当ては遺跡か何かか……?」
このムロ島には各所に有史以前に造られた建造物……つまり遺跡が点在しており、観光名所になっているものもある。また、遺跡のいくつかに古代人の遺した“何か”が眠っているとも言われているがそれを確かめた事のある者はいない。さて、ハルナ達はメイドを追っているうちに島の最北端まで来ていた。
「女の姿は見失ってしまったが……」
「ねえ、あそこに遺跡があるよ」
ハルナの指差した先に岩を並べたような形をした遺跡があった。周囲に他の遺跡はなく、メイドが向かったとすればそこしかない。二人はそこへ向かった。
「この遺跡の形……前に本で見た事がある“古代塚”と似ているな」
「あ、入り口発見かも!」
中央にあるひときわ巨大な岩に入り口らしき穴を発見したハルナ。しかしその声を聞きつけたのかその中から先程のメイドともう一人、同じメイド服を着た女の子が現れた。二人とも左腕に腕章を付けている。
「あ、あんた達はさっきメイド喫茶にいた二人っ!どうしてつけてきたのよっ!」
「つけられてたの?まったく……バイト先から直接ここに来るからよ。侵入者に入られたら連帯責任なんだからね!少しは警戒心持ちなさいよ!」
「ご、ごめんなさい……バイトちょっと長引いちゃったから……」
新しいメイドはバイトのメイドを叱りつけるとハルナ達の方へと向き直った。手には既にモンスターボールが握られている。
「あんた達がどういう理由でこの子についてきたのかは知らないけど、ここを見られたからには帰すわけにはいかない。かわいそうだけど死んでもらうわ」
「そちらこそ命が惜しければ立ち去れ。お前達二人でも俺には勝てない」
メイドの発言に言い返すスバル。彼もまた既にモンスターボールを手にしている。メイドはスバルの返答に少しカチンときたようだ。
「い、言っておくけど私達は並のトレーナーじゃないのよ。あんたこそそっちの女の子と協力したって勝てっこない……」
「やってみようぜ」
フッと息をつき、スバルはボールを開いた。中から出てきたのは緑の丸い体に手足の生えたサボテン型のポケモンだ。それを見たメイド二人は笑みを浮かべる。
「フッ、バカね。これで貴方の死は確実ね。行きなさいヘラクロス!!」
「乙女の後をこっそりつけるとは恥を知りなさい!行くのよドクケイル!!」
新しいメイドの出したヘラクロスは青い鎧のような体をしたカブトムシ型ポケモン。バイトが出したドクケイルは派手な羽をした毒蛾のポケモン。共に虫タイプだ。
「それじゃあ、スバルくんのサボネアは草タイプ。不利かも……」
「かもじゃなくて本当に不利!叩き潰せっ!!」
メイド側の二体が同時にスバルのサボネアへ向かっていく。対するサボネアは両手を前に突き出し、そこから鋭いトゲを無数に生やしていた。
「ニードルアーム?でも虫ポケモンには効きにく……いっ!?」
一瞬のうちにサボネアの両手が電撃に包まれ、それを向かってきた二体のポケモンにそれぞれ打ち込んだ。二体のポケモンだけでなく、その先のメイド達にも電撃が飛び火する。
「きゃああああっ!!」
「はうっ!!」
ポケモン達は倒れて気絶し、メイド達もその場に倒れた。サボネアの手に生えていた無数の鋭いトゲは引っ込み、電撃も消えていた。
「案山子雷拳(スケアクロウサンダーボルト)。言っただろう。お前達では俺には勝てないと。相性だけで勝てると思うな。いや、その制服でバイトをしていた時点でお前達は既に負けている。戻れサボネア。さあ、中に入ろう」
意味が難解な言葉を挟みながらサボネアをボールに戻し、スバルは倒れたメイド達をよけながら入り口に入っていく。ハルナは心配そうにメイド達を見つめつつもスバルについていった。
「どうしたハルナ。彼女達は死んではいない。気を失っているだけだ」
「そっか。ならよかった……」
遺跡の中に入るとすぐに下り階段の一本道になっていた。そこを駆け下りていくスバルとハルナ。メイド達が灯りを設置していたようで内部は明るい。やがて階段を過ぎるととても広い部屋に出た。壁には無数のポケモン画や古代の文字らしきものが描かれている。その一番奥に一人の女性がハルナ達に背を向け立っていた。入り口にいたメイド達と同じくセクシーメイド服を着ており、左腕には腕章。髪は黒のショートヘアーだ。
「あれ、団員さん達もっといると思ってたのに、一人だけ?あの人がリーダーかも」
「うっ……まさか、あの女は……」
額に汗を浮かべ、後ずさりするスバル。それに気付いたのか女性が振り向いた。年齢は10代半ばといったところか。美人だ。すごい巨乳持ちでもある。彼女はニコニコと微笑みながらこちらへ向かってくる。
「ねースバルくん、あの人キレイだね。オッパイも大きいし。……って、どしたの?」
「さ、最悪だ……どうしてよりによってあなたが自ら………」
女性は微笑んだままスバルの前まで歩み寄ると彼の首を左手で掴み、絞め始めた。
「君が邪魔しに来るとはね。でも遅かったわ。目的のものはもう既に運び出された後よ。残念だったわね〜〜スバルくんっ!!」
左手でスバルの首を絞めたまま女性は右手で彼を思いきり殴りつけた。それらを全て微笑みながらしているのが少し不気味だ。
「スバルくん!……ちょっとお姉さん、いきなり殴るなんてあんまりじゃないですか!スバルくんが何したっていうんです!?」
「ウフフ、何したって……“裏切り”」
怒るハルナを微笑みながら睨みつけると、女性は今度はスバルの顔に往復ビンタをかまし、首を絞めていた左手でドンと突き放した。スバルはよろけて倒れそうになるが何とか足で踏ん張り、持ちこたえる。
「くっ……その子には手を出すな。関係ない」
「スバルくん」
「口の減らない子ね。君と一緒にここに入ってきた上に“くん付け”してるような娘が無関係なわけないじゃない」
女性は軽く腕を振るとニッコリ微笑んだ。スバルとハルナは一歩後ろに下がるが、先にハルナがボールを出して言った。
「スバルくん。戦おうよ。この人がリーダーよね?二人で力を合わせれば勝てるって言ったじゃない」
「ハルナ……だがこの女は二人で協力したところで通用するレベルじゃないんだ。星の描かれた腕章。ペンタゴンの一人、スピカ。メイド部隊のリーダーだ」
「代わりに紹介してくれてアリガトv」
スピカの腕章には確かに星が描かれていた。しかもその星は透き通った水色に輝いている。スバルの言うことが本当ならばとうてい勝ち目はない!?
「だが、しかし彼女が逃がしてくれるわけがない。やろう、ハルナ。わずかな可能性に賭けてみよう」
「スバルくん……うんっ!!」
スバルもボールを取り出した。それを確認するとスピカは何を思ってか口紅のスティックを取り出し、親指でそのキャップを外す。するとそのスティックの中から輝く光とともに彼女のポケモンが現れた。口紅は特殊な形状をしたモンスターボールの一種だったのだ。現れたポケモンはイーブイに似ているがその体は氷のように透き通り、光を反射して冷たく輝いている。
「この子が私のポケモン、フリーフィ。今日はこの子しか連れてきてないのよ。でも貴方達は何体出してもいいわよ。この子を倒せたら今回は見逃してあげる」
「余裕ね……でも待って。見たところイーブイの氷タイプ進化形みたいだけど、イーブイが氷の進化をすると確かグレイシアっていうポケモンになるはずよ。あのポケモンはグレイシアと姿が違うかも。新種?」
「ハルナ。あのポケモンは……」
スバルも連れているポケモン、イーブイは様々な条件により何種類ものポケモンに進化することができるのだ。その条件とは特殊な“石”からのエネルギー、トレーナーとの信頼関係、育つ環境などに原因している。
「あのポケモンは……“人為的な技術により進化したイーブイ”なんだ」
「はらら……そうだったの……って、ええーーっ!?」
目を丸くしてフリーフィを指差すハルナ。だがしかし、技術が目覚ましく進んでいく現代においてはそのようにイーブイを進化させようと考える人間がいても……またそれにより進化をとげるイーブイが出てきてもおかしくはない。
「今から半世紀程前らしいんだが、ある悪の組織が実験的に新たなイーブイ進化形を創り出そうとしたという。フリーフィというポケモンもその実験によって人為的な進化を遂げたイーブイの一種なんだ。コスモ団はその進化についての資料をあの手この手でかき集め、自分達の手でよみがえらせたのさ」
「いけない子ね、スバルくん。そこまでしゃべっちゃうなんて。ちょっとお仕置きが必要みたい」
スピカが微笑みながら指を鳴らした。するとフリーフィの頭上に氷の固まりが姿を現し、それがどんどんと巨大化していく。大玉ほどの大きさの球体になると巨大化は止まり、周囲に無数の鋭いトゲが生え、氷の周囲を覆った。
「スパイクボール。揺れて!!」
名前通りのトゲ付き巨大球体がこちらへ向かってきた。命中したら大ダメージなんてものではない。串刺しだ。
「くっ……許せないかも。お願いサニーゴ!コーラルタワー!!」
ボールから出たサニーゴが一瞬のうちに床から珊瑚の塔を突き上げる。それはスパイクボールに命中し跳ね上げた。スバルもそれに続きポケモンを繰り出す。
「行けデルビル、火炎放射で氷を溶かすんだ!」
デルビルの吐いた炎が周囲のトゲを溶かし、スパイクボールをただの氷の固まりにしていく。しかし完全には溶かしきれない。
「サニーゴ、ロックブラストで氷の固まりを砕いて!!」
「サニッ!!」
大きく開けたサニーゴの口から岩の弾丸が連続で発射され氷の固まりに命中、粉々に打ち砕いた。その氷の破片が周囲に飛び散り、降り注ぐ。光を反射して輝いているのがまぶしい。
「ポケモンを使って実験なんて……絶対に許せないかも!!サニーゴ、たくさんのロックブラスト!!」
サニーゴの発射した岩が広範囲に広がる。しかしフリーフィは自分の目の前に素早く巨大な氷の壁を作り出し、それを受け止めた。自分だけでなくスピカをも守っているのだ。岩はことごとくはじけ飛び、砕け散っていく。その直後、スピカが笑いながらハルナに問いかけた。
「どうして?どうして許せないの?」
「人間の勝手な理由でポケモンの体をいじくって、望んでもない新しいポケモンにするなんて傲慢かも!」
「傲慢、ね……次、落ちて!!」
スピカの掛け声とともにハルナ達側の空中に無数のつららが次々と作られ、法則性なく落下してくる。
「デルビル、炎の渦で全身を包むんだ」
「サニーゴ、コーラルタワー×4・ピラミッド!!」
デルビルはその身に炎をまとい、落ちてくるつららを命中する前に溶かしていく。サニーゴの周囲の四ヶ所から珊瑚の塔が斜めに尽き出し、ピラミッドのように一つの頂点に達することによって頑丈な屋根となりつららからサニーゴの体を守る。
「それなら、人間が野生のポケモンをゲットすることも傲慢と呼べるのではないかしら?そのポケモンを戦わせることは?」
「うるさいかも!!」
「ハルナ、彼女の言うことに耳を傾けるな。デルビル、火炎放射!!」
もらい火特性によってパワーアップしたデルビルの炎がフリーフィの目の前に迫るが、それもまた氷の壁によって阻まれ、本体に届かない。
(炎でも破れない氷の壁とは……やはり彼女はペンタゴンの一人。余裕をかましているとはいえこちらの攻撃を完全に防御している)
と、そのようにスバルが考えていた時突然スピカの左前方の床から珊瑚の塔が突然突き出した。それはちょうど彼女のメイド服の肩ひもにかすり、それを切る。支えるひもの切れた服の左部ははだけて落ち、左胸を露出させた。服の上からでもその大きさはすごかったがそれでも服によって押さえられていただけらしく見えたそれは更に大きかった。流石のスピカも一瞬だけ驚いた表情になる。
「トレーナーがポケモンをゲットするのはその人とそのポケモンがお互いに惹き合ってるからだよ。ポケモンがトレーナーのために戦うのはその人を信じてるからだよっ……!」
出した胸を隠すことなく、スピカはまた微笑みだした。もしナエがここにいたら大変だったろう。半狂乱状態になってスピカめがけて突っ込んでいたはずだ。
「うふふ……。いい考え方ね。あなたみたいに熱くなっちゃう子、好きよ。でも全ての人がそう考えてると思わないことね。中にはポケモンを強引に戦わせたり利用する人もいる」
スピカが右手を高く掲げるとハルナ達の頭上に野球ボール程の大きさの氷の球体が無数に現れ、トゲを生やして空中に静止した。小型スパイクボールだ。合図とともに降り注ぐのだろうか。
「防御の体勢を整えた方がいいな。デルビル、もう一度炎の渦で体を包むんだ」
「サニーゴ、硬くなって」
「スパイクボール………舞って!!」
制止していたスパイクボール達がそれぞれバラバラな方向へと動き出した。しかもそれらは壁や天井に当たって跳ね返りながら広い部屋の中を飛び回る。
「でもサニーゴ達は防御してるから大丈夫かも……ひっ!」
ハルナの右肩にスパイクの一つがかすった。そこを押さえるが、今度は別のスパイクが左脚の側を通り抜け、スパッツを切り付ける。
「ハルナ、気を付けるんだ。恐らくこの攻撃はポケモンよりもむしろ俺達を……くっ!」
スバルの左腕にもスパイクが切り付けた。服が切られて覗く傷口から血が流れ落ちる。続けて右肩、右脚にもスパイクを受けていく。
「スバルくんっ!!」
「ピンポーン。この技の狙いはあなた達なんだ。服を切り開いて、裸にして、たっぷりと楽しませてもらうわ………」
スピカの言葉はその微笑みの不気味さも手伝ってハルナ達の恐怖を増大させていく。このままではスピカの言葉通りの道をたどるのも時間の問題だ。楽しまれてしまう。
「あの氷の壁を破れなければどうしようもない。ハルナ、一か八かだが……ちょっと耳を貸してくれ」
「えっ、うん。傷は大丈夫?」
「心配するな。いいか……………」
「わかったかも」
本当は右脚に受けた傷がかなり深く、片ひざをついてしまいたかったがハルナを心配させまいと、またスピカに弱さを見せまいと両足で立ち続けるスバル。痛みを堪えながら叫ぶ。
「デルビル、オーバーヒート!!」
デルビルの全身からまぶしく激しい炎が四方八方に放たれ、周囲を覆い尽くしていく。部屋を飛び交うスパイクボールはその炎によって、またそれの放つ高熱によって次々と溶けて消えていった。そして……
「今よサニーゴ、ミラーコート!!」
「しまった……フリーフィ!」
サニーゴの方向へ放たれていた炎がそのサニーゴを包んでいた光の膜、ミラーコートに命中・反射してフリーフィへと向かう。それはまた氷の壁によってさえぎられるが、その壁に徐々にひびが入り、押し込まれていく。壁が砕ければフリーフィに命中させられる。
(オーバーヒートを周囲に放ったのはスパイクボールを全て消滅させるための手段であると同時にサニーゴに向けた“炎の本体”を目立たなくするためのカモフラージュでもあったのね。そして向けられたエネルギー系の攻撃を威力倍増させて反射する技、ミラーコート。しかももらい火特性によって威力の上昇した炎の倍増し反射……2体が協力して今出来うる最大の炎攻撃を仕掛けてきた。やるじゃない)
「いっけーーーっ!!!」
壁は粉々に砕け散り、跡形もなく溶けて消えた。同時に炎も四散し、消滅した。相討ちだ。だが今ならフリーフィも無防備のはず。狙うことができる。
「今よサニーゴ、ロックブラスト連射!!」
フリーフィめがけて連なる岩の弾丸が迫る。これだけ命中すれば戦闘不能に追い込めるかもしれない。命中かと思われたその時………全ての岩が急に空中で静止し、地面に落ちていく。ハルナは目を丸くし、スバルはフリーフィの方を睨みつけている。そのフリーフィの影に目をやるとそこには目つきの鋭い三日月口の顔があった。
「こいつは、ゲンガー!?サイコキネシスで岩を止めたのか」
「いけない人達。スピカ様に牙を向けるなんて。命がいくつあっても足りませんよ」
感情のこもっていない声がフリーフィの方から流れてくると、その場にスピカと同じメイド服を来た三人の少女が一瞬のうちに姿を現した。テレポーテーションだろうか。向かって右の少女は赤毛の髪を右側だけ三つ編みにし、前に垂らしている。ちなみに胸は平ら。左の少女は黄色のショートヘアーに同色のイーブイ系耳付きヘアバンドを付けω形の猫口。スピカ程ではないがボリュームがありそうだ。中央の少女は無表情で紫色の髪を短いツインテールにしており、幼女並みの小柄な体。瞳の色は三人とも髪と同色だ。突然現れた少女達にハルナ達は驚く。
「あ、あんた達何者っ!?」
「スピカ様っ!危ないところでしたっ!ご無事でなによりですぅっ!!」
ハルナを思い切り無視し、赤毛の少女がスピカの手を両手で握りながら目を輝かせた。他の二人の少女もスピカの方を向いている。
「三人ともどうしたの?今日は待機と伝えたはずなのに」
「プレセペはそう言ったのですが、アンタレスがどうしてもと聞かなかったのです」
紫髪のツインテールが赤毛の方をチラ見しながら答えた。当の彼女は今度はスピカの手をさすり、瞳を潤ませている。よほどスピカの事を心配していたのだろう。
「だ、だってぇ……もしスピカ様に万が一のことがあったら私、生きていけないですぅっ!今だって……ねぇデネボラ?」
「そ、そうだけど……でもスピカ様だから大丈夫っ。危険な目に遭わせたのは許せないけどね」
黄色いイーブイ耳がようやくハルナ達の方を向いてくれた。だがその表情は少しお怒り気味に見える。猫口のままだが。三人ともスピカのことを思う気持ちは一緒のようだ。
「だから何よあなた達!揃いも揃って可愛い服着て!一着ぐらいはこっちによこしなさいよ!」
「ハルナ、意味不明だぞ。この三人もメイド部隊だ。しかも全員が渦巻きクラス。最悪だな……」
確かに三人とも渦巻き銀河の描かれた腕章を付けていた。一人か二人ならともかく三人。それにスピカもまだ戦える。フリーフィはまだ倒れていないのだ。この四人を相手にまともに戦って勝てる可能性は限りなく低い。
「でも、逃げられないよね」
「絶体絶命、か……でもハルナ、せめて君だけでも逃がし……」
「さあ、帰りましょう」
部屋の中が沈黙と疑問符に包まれた。ただ、その一言を出したスピカだけが微笑みを浮かべていた。ハルナ達は助かったと素直に喜ぶべきかどうかわからない。
「しかしあの二人はスピカ様に牙を向けた者。許すわけにはいきません。今、この場でプレセペが殺します。いいですね?」
「おやめなさい。これはただの遊びよ。今ここであなた達が手を汚す必要はないわ。いつでも狙うことはできる」
殺す発言に一瞬ヒヤッとしたもののスピカの制止に本当に見逃してくれるのかと一安心。しかしその直後に飛び出たいつでも狙える発言。スバルは比較的落ち着いているがハルナの方はその度に身構えたり喜んだりと忙しい。
「スピカ様ぁ……なんてお優しい言葉でしょぅ……」
(プレセペは遊びの邪魔をしたことになるのでしょうか?)「スピカ様のお心遣い……プレセペ、謹んでお受けしました。では、行きましょう」
自分達だけの世界に入り込んだようなオーラを放ちながら四人のコスモ団員とフリーフィ、それにその影に浮かんでいた顔はその場から消え去った。ひとまずホッとする二人。
「た、助かったかも……と思っていいのかな」
「すまない。俺の所為で君を危険な目に遭わせてしまって……」
「スバルくん」
申し訳なさそうに目を閉じるスバルにハルナはそっと顔を近付け、お互いの額をくっつけた。急接近にスバルの顔が一気に赤くなる。
「それは言わないで。スバルくんについていくって言ったのはハルナだもの。どんな危険なことがあっても大丈夫。だからもう言わないで、ね?」
「ハルナ……そうだな。わかったよ。もう言わない。………ありがとう」
目を開き、フッと微笑むとハルナの両肩を掴むスバル。二人は誓う。強くなることを。どんな危険も乗り越える強さを身につけることを。
一方その頃、スピカ達はコスモ団の本部と思われる場所の一室に到着していた。室内のインテリア等が少女趣味なところからしてスピカか他の三人のうち誰かの部屋なのだろう。
「到着です。プレセペ、お風呂を沸かしてきます」
「ええ、お願いね。後でみんなで入りましょう」
「じゃああたしは夕食の準備してきますね♪」
二人がその場を立ち去り、スピカとアンタレスだけが残った。自分の手を握りながら肩を寄せてくるアンタレスをスピカはもう片方の手でそっと撫でる。
「スピカ様ぁ……」
切なそうにスピカの方を向くアンタレス。ふと気付いた。スピカのメイド服の肩ひもが切れた部分に切り傷ができ、そこから血が出ているのを。ハルナの一撃で肩ひもが切れた際にできたかすり傷だろう。アンタレスの顔がショックを受けたように青ざめる。
「スピカ様……!あぁ、スピカ様の美しいお体に傷が……」
「大丈夫よアンタレス。すぐに治るから……」
「で、でも…あぁ……」
なだめるようにアンタレスの肩を撫でるスピカだが、そのアンタレスの体はワナワナと震え、悲痛な表情をし、目には涙を浮かべている。と、何を思ったか傷に顔を近付け、舌先で舐め始めた。相当慣れた舌使いだ。
「はぁ……スピカ様に傷を付けるなんて絶対に許せないですぅ……あの二人、苦しみ抜いて死んでしまえばいいわ……」
傷口に付いた血を全て舐め取ると、スピカに向き直り、体を寄せて腕を回して抱き付き、そして………唇を重ねた。スピカも腕を回し、アンタレスの肩を抱く。その唇を自分の唇で甘噛みし、その拍子にわずかに開いた口内に舌を入れ、絡ませる。アンタレスも自分の舌をスピカの口内に滑らせた。お互いの唇と舌を舐め合い、吸い続ける二人。
(んふっ……スピカ様…愛しいスピカ様ぁ……)
存分に味わった二人は唇を離し、きつく抱き合った。どちらも顔を赤く染め、うっとりとしている。
「スピカ様、愛していますぅ……」
「私もよ、アンタレス……」
3rd・終わり
あとがきらしき文字の羅列
第3話をお読みいただきありがとうございます。さて、今回はだいす けんさんからお借りしたイーブイ新進化形・フリーフィが登場しました。使用の許可をいただき、感謝感激です。イーブイには氷系の進化形・グレイシアがいますが、実はこの話を書いたのはゲームのダイヤ・パール発売よりも前のこと。その時はグレイシアの登場を知る由もありませんでしたので今回の話を写す際にそのあたりの台詞等を追加しました。
あと、メイド部隊のエロメイド服のデザインは某メイド漫画から拝借させていただいたものです。おわかりになりますかな?(ご存じない方のが多いかな)スピカ様の胸出しちゃったけど、これぐらいなら全年齢向けでも大丈夫だろうと(本当か?)カットせず出すことにしました。
更に、プレセペの髪型、表情、口調は某メルヘンファンタジー漫画の登場人物から拝借。服装や髪の色は異なりますが……(こちらはメイド服よりもご存じの方が多いかも)今回は拝借多いな。え、リユースですよリユース(汗笑)。
[アットの一言感想]
不規則、楕円、渦巻き……実際にある銀河の種類名なのは知ってるけど、何を基準に強さの階級名が定まってるのが謎かも←
今回はほんとにメイドネタが多かったかも。
露出あり、百合ありで、全年齢対象かどうかが疑問なのは置いといて(ぇ)、そのクオリティはさすがサガさんかも(オイ)。
そしてスバル君、基本はかっこいいんだろうけど、所々の発言がシュール過ぎて笑ってしまったかも。
……『案山子雷拳(スケアクロウサンダーボルト)』、英語読みだとかっこいいけど、漢字をそのまま読むと『カカシライケン』かも。