カイナシティにあるバトル施設で修業に励むハルナとスバル。連勝して波に乗る二人の前に現れた次の挑戦者スパはハルナに勝利する。続けてスバルが挑む。スバルはヘイガニ、炎使いのスパはブースターを繰り出した。その一方でコスモ団もハルナ達を倒す為の刺客を送り込もうとしていたのだ。










ポケットモンスター コズミックファンタジー

5th 変光星










「ヘイガニ、バブル光線だ!」


ヘイガニの開いたハサミの先からシャボン玉のように輝く泡の群れが放たれた。拡散してよけにくくなる。

「ブースターはパワフルな反面動きが遅いからこれならよけきれない!」

「ブースター、火の粉だっ!」


ブースターの口から吐き出された多量の火の粉……というよりも火の弾丸がバブル光線の一つひとつとぶつかり合い相殺され、水蒸気になる。


「そんなっ……全部消されちゃったよ」

「くっ……やはりそう簡単にはいかないか!」

「火の粉は確かに一発分の威力や射程では火炎放射などには遠く及ばないが一点に対する威力はかなり高い。そして何より連射力。今のように弾幕として最適なんだ」


接近戦になればブースターのパワーに押されてしまうと考えてある程度距離を置いて戦おうとしたスバルだったがこれでは中距離での戦いは難しくなる。


「それに今の火の粉も威力は低いとは言えなかった。今現在の公式平均は軽く上回っているだろうな」


公式平均とは技の威力を表した数値である。リーグなどの公式戦で使われたものの破壊力やダメージの強さ、使用頻度などを基準にし、そこから平均を出して”威力”として数値化したものだ。現在は年に一度改訂が行われている。また、公式平均の名の通り定められているのはリーグが公式と認定した技のみであり、トレーナーが独自に編み出したオリジナル技などには定められていない。もちろんその技がメジャーとなり多くのポケモンが使うようになれば公式の技と認められるケースもあるのだが。


「それならやはり接近戦だっ。ヘイガニ!」


ダッシュでブースターに接近するヘイガニ。ハサミをハンマーのように振り上げて殴りかかる。


「こいつもパワーならブースターにひけはとらない!クラブハンマーっ!」


だがそのハサミはブースターの体をすり抜けるかのように空を切った。空振りだ。その隙を突いてブースターが尻尾を振り抜く。


「受けろっ、フレイムセイバー!!」


ブースターが尻尾を剣のように一閃した後、それをまともに受けたヘイガニの体に真一文字の傷が付いていた。そこから湯気が立ち上っている。


「ヘイガニの硬い殻にあんな深い傷が……すごい威力かも」

(恐らくは強力な振りで真空状態を作りだしそこに勢いよく流れ込む空気、つまりカマイタチに炎による熱を込めたのだろうが……まさにフレイムセイバー……炎の剣だ!)


中距離でも防がれ、近距離でもかわされた上に反撃を受けた。ヘイガニは何とか立っているが次に攻撃をくらえば倒れそうだ。たった一撃でこの威力。恐るべしフレイムセイバー。


「それなら……真っ向勝負だ!行けるかヘイガニ?」

「ヘイヘイッ!」


かなり負けん気の強いヘイガニだ。フラついた体を気力でしっかりと支えた。


「たいした根性だ。気に入った。受けてやるぜ真っ向勝負を!」


スパは拳を握り締め、その瞳の中に炎が燃えているのがわかる。先程のハルナの時といい、どうやら彼は真っ向勝負が好きらしい。真っ直ぐ向かい合うヘイガニとブースター。そして二体は同時に駆け出した。


「行けえーーっ!!」

「砕けえーーっ!!」


お互いの拳、すなわちハサミと前脚が衝撃と共にぶつかり合う。二体とも動かない。沈黙が流れる。しばしの時、ヘイガニのハサミにひびが入り、その場に崩れ落ちた。


「負けちゃった……スバルくん」

「くっ……パワーだけじゃなく体の頑丈さもトップクラスか」


が、その直後ブースターもふらついた。ヘイガニとぶつかった方の前脚が震えている。


「俺のブースターの拳が一撃でここまでダメージを受けたのは初めてだ。よく鍛えられているな」

「いや、俺の完敗だよ。とてつもなく強かった」


握手を交わす二人。スバルは思った。この人程の実力者が仲間になってくれれば心強い、と。恐らくはハルナの心の中にも同じ思いがあるのだろう。


「そうだ。せっかくだから三人でご飯食べよ?」

「いいな。ちょうど昼時だし」


スパも乗ってくれた。これで交渉のチャンスが出来たのだ。三人はバトル施設を後にしたのだが、その様子を気付かれないように眺めるふたつの影があった……










「どこで食べようか?」

「メイドカフェ」

「悪いけど今回は却下」

「ちぇ……」


そんな会話をしながら二人はスパを連れて歩く。その時だった。目の前に突如ふたつの影が現れたのだ。日を背にしているためよく見えないが一人は背の高い男性、もう一人は小さな女の子のようだ。


「あ、すいませーん。この辺りに美味しいスイーツのお店ありますか?」

「初対面の人を相手にして出合い頭にいきなり聞くな!しかも昼食にスイーツか!」


突っ込むスバル。だがその突っ込みをないがしろにするかのように女の子が自分の背後を指差した。


「それならここから真っ直ぐ進んだ十字路の右側のビルの一階にありますう。今そこで食べてきましたからあ。おすすめはシフォンケーキですう」


ロリ声と呼べるかわいらしい声だ。しかもおすすめメニューまで教えてくれた。初対面の相手に対してとても親切な人だ。


「ありがとうございますっ!それじゃ!」


通り過ぎようとしたハルナの腕を女の子の手が掴んだ。


「あれっ?どうしたの?」

「もっとあなたにふさわしい場所に連れて行ってあげますよお。うふふう」

「ハルナっ!振りほどけ!こいつら敵だ!」


直ぐさま腕を思い切り振って女の子から逃れるハルナ。スバル達の方へ駆け戻る。


「敵ってこいつら何者だ?お前ら一体……?」


突然の事態にスパも身構えている。目が慣れて二人の姿が確認出来た。男の方は赤黒いマントを羽織った目つきの鋭い金髪の少年。スバルより少し年上ぐらいか。女の子の方は青をメインとしたミニスカートと服を着ており、髪は水色のツインテール。丸い飾りの付いたヘアゴムで留めている。背も低く大きな目をしており、更に大きな丸眼鏡をかけ、顔立ちと身長から小学三年ぐらいに見える。


「あ、女の子の左腕に!」


ハルナが指差した先にはコスモ団員の証である腕章が。しかも渦巻き銀河。かわいい顔して人は見た目によらない。


「ミラ……それにアルゴルっ……!」

「久しぶりだなスバル。会いたかったぞ」


男の方はスバルと知り合いのようだ。マントを翻したところで腕章が見えた。彼もまた渦巻き銀河だ。


「あの腕章はなんだ?なんかの団体か?」

「コスモ団……!奴らを一言で言うなら悪の組織だよっ」


翻したところで腕章以外のものも見えた。左腕のヒジから先に着けられた小手のようなもの。彼を見るスバルの目はどこか悲しげだ。


「俺を……倒しに来たのか?」

「そうだ。だが俺個人としてはそういう結果にはしたくない」

「アルゴルくんったら私情をはさんじゃ駄目ですよお」


私的な会話になっているところからしてどうやらコスモ団の中でもかなり仲が良かったらしい。


「スバル。お前は俺達の、いやコスモ団全ての者の誓いを忘れたか」

「いや、忘れてなどいない。だが……」

「だ、だからあ、私的な話はあ……」

「久々の再会なんだし、させてあげようよ」


自分が狙っている相手にたしなめられて少しムッとした顔をするミラ。それに構わず二人の会話は続く。


「今この国は一見すると平和に見える。だが実際には民族や思想、家柄や学歴、果ては容姿や個性にまで優劣を付ける優越主義が蔓延しているのだ」

「わかっているよ。表向きの平和のその裏で苦しめられている人々。その事実を知りながら目を背ける者達もいる」


話が重い方向に進んでいくのをハルナ達は黙って立ち尽くしながら聴いている。口をはさむ隙間などなかった。


「そうだ。優越主義を全ての人々から断ち切らぬ限り真の平和は来ないのだ。総統閣下の大いなる慈悲によって救われた我々がやらなければならぬとお前も共に誓ったではないか。閣下への恩も裏切ることになるのだぞ」

「だが、俺は知ってしまったんだ!団の考えややり方に反対したり妨害する者を裏で消している事をっ!平和のためなら人を殺してもいいのか!?人殺しに平和が作れるのかっ!?」


それまで小声でしか話さなかったスバルが叫んだ。だがその叫びに対するアルゴルの反応は冷ややかだった。


「多少の犠牲は仕方あるまい。それに優越主義を持つ者の命など塵ほどの重さもない」

「さてえ、お話はこれぐらいにしてくださいよお」


会話だけが続きなかなか進展しない状況に苛立ったミラがそのロリ声で半ば強引に話を切った。口をはさむ隙間を自分で作ってしまったのだ。


「アルゴルくんっ!ルームメイトに再会して嬉しいのはわかりますけど今回の仕事を忘れないでくださいねえっ!」


人差し指を立てながらアルゴルを叱り始めるミラ。ハルナ達の耳には再会を喜ぶ会話とは聞こえなかったが彼女の耳にはそう入ったらしい。その彼女のお叱りを聞いているのか、唾が飛んでかかっているのにも気付いているのかどうかわからないアルゴル。


「スバル。コスモ団に戻るつもりはないのだな。閣下を裏切るのだな」

「ああ。血に汚れた手で平和は作れない」


アルゴルを睨み、ボールを手にとり構えるスバル。もう先程までの悲しげな表情はそこにはない。それまで外野だったハルナ達も構える。


「私はスバルくんの味方だからねっ!」

「話を聞く限り、お前達を野放しには出来ないな」


ハルナはサニーゴを、スパは尻尾の先に火が灯り全身も炎のように揺らめく人型のポケモンを出した。続けてスバルが出したのは黒い羽毛の小型の鳥ポケモンだ。


「出たな。ミラ、やるぞ」

「年上を呼び捨てにしないでくださいぃ!さっきまで勝手に話し続けてたくせにい!わかってますうーやりますよおーだあ!」


アルゴルにあかんべえをしてからハルナ達とそのポケモンを視界に入れたミラ。眼鏡が妖しくギラリと光る。


「さあ!あんた達もポケモンを出しなさいっ!」

「いい気なものですう。勝てるつもりなんですかあ?」


ミラは余裕の表情だ。彼女のヘアゴムに付いた丸い飾りのひとつから光線が放たれた。ボールからポケモンが出て来る時と同じ光線だ。


「あ、あの飾り?」

「そうですう。この飾りはあなたたちが両手に着けてるCSと似たものなんですよお」


現れたのは青く丸い体を持った大きなポケモン。頭の上に鼻の穴がある。


「ミラのホエルコはつよーいですよおーっきゃはっv」

「その気になればお前らなど瞬殺できる。だが少しは遊んでやるぜ」


そういうアルゴルの方は腕組みをしたままでポケモンを出さない。それ程の自信があるのか。気に入らないハルナは彼を指差す。


「あんたはポケモン出さないのっ!?」

「俺は自分が実力を認めた相手にしかポケモンは出さぬ。この左腕で十分だ」


彼が前に掲げた左手の甲には女性の顔が彫られている。だがその恐ろしげな表情はまるで鬼のようだ。鬼女とでもいうべきか。


「気をつけろっ……アルゴルはポケモンなしでも強い!全員で力を合わせるんだ」

「スバルくん?うん。わかったよ」


街中で突如始まったコスモ団との戦い。ポケモンを使わなくても強いというアルゴルの実力の程は。彼の左腕には何が隠されているのか。そしてハルナ達に勝機は?










8th 終わり










あとがきらしき文字の羅列


第8話をお読みいただきありがとうございます。さて、お待たせしましたm(._.)mそして今回の話はずいぶん書き直しました。特にコスモ団と遭遇するあたりから。ミラも初めはもっと地味な感じでしたがかわいらしくしました。えへへ。

あと個人的に注目してほしいのは(こら)ブースターが使ったフレイムセイバー。炎タイプの物理攻撃です。ゲーム的に答えるなら炎タイプ版リーフブレードといったところかな。自信作です(何がだ)。

 

[アットの一言感想]

 炎タイプは現在、物理攻撃技の需要が高いから、確かに強いと思います。
 個人的には白黒に、既存の炎ポケモンの技追加を期待。
 しかし、またしても強敵の登場とは、なかなかハルナ達には心休まる時が訪れませんね。
 ……でもってミラ、意外と年齢いってるキャラ?(ぇ)

 

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