フエンタウンを目指して旅をするハルナ一行。フエンまではもうすぐだ。今一行はフエンの隣町・ストンタウンに差し掛かっている。なお、ストンタウンというのはEストーン騎士団という集団が築いた町で、同名の町は各地に点在しているのだ。主にポケモンの進化に関わる『進化の石』の産地の周りに築かれており、ここもホウエン随一の産地なのだ。


「今晩ここで休んで明朝発てば明日の夕方にはフエンに着くだろう」

「わーい温泉フエンの温泉♪」


はしゃぐハルナ。修業が目的だが温泉を楽しむのも有りだ。と、そこへ何人かの男が近付いてきた。マントを羽織り、顔のような帽子をかぶっている。


「ポケモンを進化させに来たのかね。いい事だ」

「ポケモンは進化させてこそだからね」

「は、はあ……」


言いたい事だけ言うと男達は去っていった。危なそうな人達だ。


「今のがEストーン騎士団?」

「らしいな」


Eストーン騎士団とは石によるポケモンの進化を信奉する団体である。いくつかの宗派があり、中には進化していないポケモンの存在価値を認めないなどという過激な宗派もあるらしい。


「あまり関わりたくないな……」

「ふっ。そう言うなよ。彼等は正しい事を言っている」


また声をかけられた。今度は騎士団ではなさそうだが随分とニヤついた男だ。


「また会ったな」

「お、お前は……」










ポケットモンスター コズミックファンタジー

12th 電ピカ名作シリーズ 〜四天王カグラと進化の石〜










「誰だ?」


随分とベタなギャグだが男はずっこけた。相手の方はこちらを知っているのだ。


「私を忘れたのか!キンセツ杯の初戦でお前に負けたヒデキだよ!」

「ああ、そういえばそうだった」


読者の皆様にとっては彼の名前は初耳だろう。選手紹介のシーンはカットされていた上にバトルも一瞬で終わったので名前が紹介されなかったのだ。


「ふん、お前はそうやって私を馬鹿にしおって」

「いや、名前を忘れてた事はすまん。だが馬鹿にしてるわけじゃないぞ」


彼は何かこちらに、正確に言えばスバルに対して不満があるらしい。


「私とお前のバトルをフルドの奴が八百長などとぬかしたおかげで私はあれからしばらくの間八百長野郎と罵られ続けたのだぞ。私が勝っていればそんな事にはならなかった。弱いくせに私に勝ったお前のせいだ!」

「何だその理屈は。勝手に恨むな!どちらも八百長なんかしてないんだから堂々としてろ!あと弱いとは何だ!」


スバルの呆れも最もだ。まるで負けた逆恨みだ。しかしヒデキの方は聞いていない。


「まあ良い。本来なら一生恨み続けてやるところだが私は広い心でお前を許そう。感謝しろ」

「はいはい。ありがとよ」


一生恨むと考える時点で心の広さは疑われるが、食い下がるとまたややこしくなりそうなのでスバルは素直にお礼を言って話を切る事にした。


「ふっ。人間素直が一番だ。さて、ところでお前達もポケモンを進化させに来たのか?」

「ううん、旅の途中に立ち寄っただけ」


首を横に振るハルナ。ヒデキは髪をかき上げる。仕草までフルドそっくりだが、真似なのかたまたまなのかは不明だ。


「それはもったいない。進化させられるポケモンがいるのならここにいるうちに進化させた方がいいぞ。何しろここには一通りの進化の石が揃っているそうだからな」

「そういうお前は誰を進化させるつもりだ」


ヒデキは髪をかき上げると手にしたボールを開いた。現れたのはイーブイだ。


「水タイプのポケモンを育てていなかったからな。水の石を使ってシャワーズに進化させようと思っている」

「この子、コンピューターの管理で育てたの?」


ヒデキはフルドの事を嫌っているが彼のやり方そのものは信じている。正確には彼はそのやり方を自分が先に始めたと主張しているのだ。


「もちろんだ。だがフルドとは決定的に違うところがある。奴にはポケモンに対する愛情がなかった。ポケモンを物扱いしていたのだ。そんな奴はトレーナーとして失格なのだよ」


コンピューターで育てるのに愛情がかけられるのかどうかは不明だが、少なくとも本人はそのつもりだ。


「私は育てる全てのポケモンに愛情を注いでいる。トレーナーの責務よ」


イーブイの頭を撫でるヒデキ。イーブイは嬉しそうに顔を擦り寄せる。かなり懐いているようだ。コンピューター管理の元でも愛情は込められるという事か。


「お前を立派なシャワーズにしてやるからな」

「ポケモンの意見は聞いた?進化を望んでるかどうか」


ハルナが何気なく尋ねた質問にヒデキは奇異の目で彼女を見る。


「何を言うか。ポケモンは口を利かぬ。それに進化出来るポケモンは皆進化を望んでいる。総合的な能力値、つまり性能が上昇するからな」

「で、でも進化前の特徴を活かす為にあえて進化させてない人もいるよ」


真っ先に思い浮かんだのがコスモ団のゴスロリ少女だ。彼女のハクリューは本当に手強かった。


「特徴より物を言うのは性能だ。性能は強さに直結する。強さを求めるなら最終的には進化させるべきなのだ」

「そう頭から決めつける事ないじゃない!」

「ハルナ、あまりムキになるな。ムカつくのはわかるが」


と、その時だった。ハルナとヒデキの間に何かが割って入った。それは……


「お、おにぎり……?」


突然現れたおにぎりを見つめ、目を点にする二人(+スバルとスパ)。正確に言えばおにぎりを両手に一つずつ持ち、それを二人の前に突き出した女性だ。長く美しい黒髪が見える。


「けんか、だめ……」


二人におにぎりを渡すと間から下がり、黒く大きな瞳で彼等をじっと見つめる。その視線が今手に持っているものを早く食べろと言っている。


「じゃあ、いただきまーす」


おにぎりに噛り付く二人。ご飯の柔らかさといい、握りの加減といい、絶品だ。具に行き着くと、それは食べるラー油だった。程よいピリ辛とご飯に染み込んだラー油が何とも言えない美味しさを引き出す。


「ん、おいしい」

「ふん、なかなかだ」


感想を聞くと嬉しそうに微笑む女性。注視していなければわからない程の表情変化だが。


「ん……?」


スバルは改めて彼女の姿を確認する。長く美しい黒髪に大きく黒い瞳、感情を殆ど表に出さない眠そうな表情、白い素肌。まとっているのは白襦袢に朱い袴……巫女服だ。そしてその上からでもはっきり確認出来る程の爆乳。年齢は十代後半辺りだろうか。


「あなたは、もしかして……」


突然飛び出した尻尾を振りながら尋ねるスバル。彼は巫女さんも好きなのだ。ヒデキも呆れ顔になる。


「あなたは、ホウエン四天王の一人、カグラさん?」

「……こくり」


四天王とは、各地のポケモンリーグにそれぞれ所属する四人の凄腕トレーナー。大会を勝ち抜いたトレーナーの相手を務める他に平和を乱す悪事の取り締まりなど地方の治安維持活動も行う。そのホウエン四天王の一人が今ここにいるカグラなのだ。


「どうして四天王の一人がここに?」

「……秘密」


教えてくれない。何か事件でもあるのか。それともただの私用か。


「ふっ。ちょうどいい。あんたにバトルを申し込む」


スバルに呆れていたヒデキだが、何かを思い付いたように突然カグラを指差した。


「ちょっと、いきなり失礼じゃない!」

「ふっ。ちょうどいい相手だと言ったのだ。私の本当の強さをお前達に見せてやる」

「ちょうどいい相手って、お前という奴はまるでカグラさんをそこらの雑魚扱いか!」


ハルナとスバルによって揉みくちゃにされるヒデキ。だがカグラは……


「ばとる……受ける」

「ほら、いいと言ってくれた。ならフルバトルだ」


フルバトル……その名の通り手持ちのポケモン6体全てを使うバトルである。大会の終盤戦から先は殆どこの形式で行われるというバトルの最高峰なのだ。


「おーけー」

「ほら離せよ。バトル開始だ」


しぶしぶ離れるハルナとスバル。この場でバトルスタートだ。


「行け、カイリキー」


ヒデキが出したのは筋肉隆々の肉体に四本の腕を生やしたその名の通り力の強そうなポケモンだ。腕の数は異なるがレスリングパンツと分厚い唇からはかつて活躍した牛丼好きの正義超人を彷彿とさせる。


「式神、ミカルゲ」


対するカグラが手にしたのは何とお札。何やら呪文のようなものとモンスターボールを思わせる印が書いてある。それを放つと現れたのは置き石の割れ目から吹き出した紫色のオーラに顔が付いたという不気味な姿のポケモンだ。


「ふっ。やはりミカルゲを出したな。カイリキー、見破るだ」


カイリキーの視線がミカルゲを捉え、目を光らせる。相手の本体や実体を探り出す際に使われる技が、その眼力は霊体などを一時的に実体化させる事も出来るのだ。


「あんたは四天王に就任して以来全ての公式試合でミカルゲを先発で出している。対策は嫌でも思い付くさ」


公式戦はトレーナーが挑むジム戦など小さなものなら非公開で行われるものもあるが、リーグ大会や四天王、チャンピオンの公式戦はテレビ放送やインターネット配信などで全て公開されるのだ。


「四天王のバトルもチェックしていたか。あいつ、ただの理屈バカじゃないな」

「そしてあんたは就任以来他の四天王やチャンピオン以外の相手にミカルゲだけで勝ち続けている。次のポケモンを引きずり出してやるぞ」


実体化してしまったら物理的な攻撃も効いてしまう。ゴーストタイプにとっては丸裸にされてしまったも同然だ。


「カイリキー、クロスチョップだ」


腕を交差させミカルゲに迫るカイリキー。ミカルゲはその体の特徴から動きが非常に鈍い。かわせない距離まで詰められた。


「もらった」

「ミカルゲ、散るのです」


命中と思われた瞬間、ミカルゲの体を構成しているオーラが散り散りになった。カイリキーの手刀は虚しく空を切る。


「馬鹿なっ見破ったなら体を分ける事も出来ぬはず。どうしてだ」

「集合……です」


散ったオーラが再び集まりミカルゲの体を成す。


「ミカルゲの体は百八の魂で構築されている。見破ってもミカルゲの場合は実体化したそれらが一つ一つ分かれているから分散は可能なんだ」

「ぴんぽーん……説明、感謝……」


スパの解説にうろたえるヒデキ。カグラは解説してもらったのが何だか嬉しそうだ。


「くう、信じられん。信じられーんっ!」


再びカイリキーがミカルゲに襲い掛かる。今度は迎え撃つミカルゲ。そして……










バトルも終盤に差し掛かっていた。カグラのミカルゲに対してヒデキは善戦するも5体目のポケモンまで追い詰められている。


「カビゴン、眠る……」

「ミカルゲ、悪の波導です」


太った熊のような巨体のポケモンが眠りに就く間もなく、ミカルゲの全身から放たれた黒いオーラが体を貫いた。戦闘不能だ。


「戻れカビゴン。やめだ。もうギブアップするよ」


まだ一体、イーブイが残っているがヒデキは何故かギブアップを宣言した。


「自分からフルバトルを申し込んだくせに途中でギブアップ?」

「ふ、ふん。イーブイは進化させねば戦力外さ。5体で十分勝てる自信があったのだ」


自信の割にはミカルゲ一体に一方的にやられてしまった。ミカルゲは実体化させられたものの後はピンチの場面も殆どなかったのだ。カグラのおっとりした見た目とは掛け離れた実力だった。


「ふっ。流石は四天王。だが私はリーグを勝ち上がり再びあんたに挑戦する。そして必ず勝つ。さらば!」


ヒデキはくるっと後ろを向き、走り去って行った。カグラは無表情のままブイサインをする。なんだか可愛らしい。


「……ぴーす」

「よし、いいバトルを見せてもらったところでポケモンセンターに行こうぜ」


三人はカグラと一緒にポケモンセンターへと向かった。










この町のポケモンセンターには進化の石の売店が設置されていた。ガラスのショーケース越しに宝石のように光る石が陳列されている。燃えるような橙色の炎の石や、海のように青色をした水の石など様々だ。


「うわーいっぱい!でも高いかもー」

「品揃えがいいな。国産のSランクまである。今時珍しい」


スパも驚く。進化の石には専門の鑑定士がおり、その品質を見てSからCまでの等級を付ける。そしてその証拠として鑑定証を出したものだけが店頭での販売を許されるのだ。


「高い石、使うと……強く進化する……らしいです」

「見た感じは変わらないのになー」


見るとSランクのものはなんと百万円を超える値段のものもある。Cランクでも一万円前後。等級の低い石でも一般トレーナーにとっては高い買い物なのだ。










夕食を済ませてしばらくした後、ポケモンセンターの裏手に温泉が湧いていると聞き、ハルナはそこにやってきた。温泉郷として有名なフエン同様ここも火山が近い為あちこちに温泉が湧くのだ。


「よーし入ろうっと!」


脱衣所を抜けるとそこには立派な天然の岩風呂が。何か立て札がある。


「えーと、進化の湯……進化の石の生成時に地面に溶け出してしまう一部の成分がお湯の中に染み込んでいます。極微量の為ポケモンの進化は起こりませんが人間は稀に進化するかも?か……」


人間の進化とはどういう意味だろうか。あまり深い意味はないのだろうが気になる。


「ハルナの胸ももっと進化しないかなー。……誰かが昔そんな発想したような、してないような、そんな気がしたかも」

「誰……ですか」


後ろから急に声がしてハルナはビクッとした。振り向くと湯煙に包まれたすぐそこにカグラの姿が。彼女も浸かりに来ていたのだ。


「ハルナ……ちゃん」

「カグラさん。先に来てたんだ」


ホッとしてお湯に浸かり、彼女に近付くハルナ。カグラも表情は変わらないものの何だか嬉しそうだ。


「温泉……好き」

「ハルナもだよー。気持ちいいもんねー」


近付いてみるとカグラの胸は想像以上に大きかった。ハルナも年に不相応な大きさの胸を持っているが、カグラのそれはそんなものではない。ハルナの母、ナエに迫るものがある。腰のくびれもまた胸の大きさを引き立てている。あまりにまじまじと見ているとカグラが恥ずかしそうに両手で胸を隠す。


「あまり……見ないで」

「やっぱ恥ずかしいか。そうだよね」


隠したとは言っても両手でも完全に隠しきれる大きさではない。彼女の顔の紅潮は恥ずかしさの為か、単にのぼせているだけなのか。


「どうしたらそんなに大きくなるんですか?」


突然女同士ならではの質問を投げ掛けるハルナ。


「……胸、大きくしたいの?」

「うん。女の子の価値は胸だけじゃないけど、自分の魅力のひとつとしてそういうとこは伸ばしていきたいなーって……」


困った顔をするカグラ。表情が変わらないまま眉だけが八の字型に下がる。


「胸大きいと重たい……合う服がない……ちかんによく遭う……いい事ない……」

「あう……ごめんなさいかも」


カグラは爆乳なりの悩みを抱えていたのだった。少し反省するハルナ。だがそればかりではない。


「でもカグラさん。悪い方ばかりに見ないで。カグラさんのステータスなんだから!」

「すてーたす……?」

「そう!ん……?」


外が騒がしい。何かあったのだろうか。二人がそう思った時だった。脱衣所のドアがガラッと開く。


「いるかハルナっ!大変な事が起きた!すぐ来て……」

「どうしたのスバルくん!?」


突然の展開に驚き立ち上がるハルナとカグラ。それがまずかった。巨乳と爆乳、二人の美少女の一糸まとわぬ姿を直視したスバルは一瞬で硬直。真っ赤になってひっくり返ってしまったのだ。


「きゃースバルくんっ!大丈夫ーっ!?」

「これ……すてーたす?」










「なんで混浴の露天風呂に水着も着ないで入ってるんだよ。そりゃ少しは期待……いや何でもない」

「え?水着を着て入るお風呂があるの?」

「水着着て入る……お湯に失礼……」


それぞれの言い分を主張しながら現場に向かう三人。先頭を走るのはスバルだ。


「そこだっ」


現場はポケモンセンターの一室。ジョーイさんや婦警のジュンサーさんもいる。ただ事ではなさそうだ。


「一体何が……あっ!」


いたのはイーブイだった。だがおかしい。体の一部が青く変色し、尻尾がまるで魚類のそれのようになっている。それに苦しそうだ。


「どうしたの……こんな……」

「進化不良を起こしているのよ」


進化不良……進化の途中でそれが停滞する症状だ。だが自然では滅多に起こらない。


「どうなるかはわからないわ。無事に進化しても能力はあまり上がらないし、このままの姿か、最悪の場合死んでしまうかも……」

「そんな……」


悶え苦しむイーブイの様子を見ながらカグラが眉を八の字に下げる。


「どうしたんですか?」

「……」


彼女が指差した先には黒ずんだ石が。代わりにジョーイさんが答える。


「使用済みの水の石よ」

「恐らくは等級外の粗悪品と思われます」


ジュンサーさんも続ける。先程も話題に上った石の等級。そこでCランクにも入らなかったものが粗悪品なのだ。成分の質が悪く、進化不良を起こす危険がある。


「この子のトレーナーは?」

「ヒデキという人よ。石の入手経路を聞いたわ。今は食堂にいるはずよ」


ジュンサーさんが彼から聞き出した話によると、行商人のような男から二千円で買ったという。ヒデキは石の等級を気にせず、一番安く買える手段を選んだらしい。


「密売人か……」


粗悪品の石による進化不良はあまり報道されないが、実は年間百件以上起きているというのだ。その裏には粗悪品を大量に買い取り、安く売りさばく組織があるらしい。主に高値の石を買えない駆け出しトレーナーが被害に遭う事が多いという。


「粗悪品の石でも必ず進化不良を起こすわけじゃないから、実際にはもっと多くの密売がされているに違いないわ」

「とにかくこの子を治療室へ運びます!ラッキー来て!」


ナース帽子をかぶったピンク色のタマゴ型ポケモンがイーブイをタンカに乗せて運んでいく。


「大丈夫かなあの子……」

「わからん。あいつの為に俺達に出来るのは犯人を取っ捕まえる事だ!」


スパが拳を握り締めて叫ぶ。


「警察でも総出で犯人を捜索しています。近隣の町にも応援を要請したわ」

「私も……手伝います」


カグラがゆっくりと手を挙げて名乗り出た。


「あなたは?……あ、四天王の!」

「高千穂 神楽(タカチホ カグラ)……です。この件の調査指令を……ホウエンリーグから受けて……来ました」


そんなフルネームだったのか。自己紹介の際にも下の名前だけで済ませる人が多い今、少し珍しい。そして彼女がこの町に来ていた理由も明らかになった。


「私のポケモン、町に着いた時に一体出した……町中捜索……」


流石に用意周到だ。そこへ一人の若い刑事が駆けて来る。


「警部補!犯人らしき男を山道で発見との連絡が入りました!只今交戦中との事です!」

「わかったわ!カグラさん、向かってくれますか?」

「はい……!」

「私達も行きます!」


スバル達も同調して頷く。刑事の案内で向かう事になったのだが、センター内の食堂にて……


「おい、犯人の居場所がわかったそうだ。お前はイーブイの仇討ちに行かないのか」

「ぶつ……ぶつ……」


何か独り言を呟いているヒデキ。スパが声をかけても聞いている様子がない。


「おい!聞けよ!」

「完…な能力…のイーブイを…ットしてここ…で育て…のに…れだけ…時間と…がかかったと…っている…だ……」


耳を済ませると呟き声が聞こえてくる。イーブイの身を案じているのだろうか。だがどうやら違うようなのでスバルは聞き返してみた。


「今何て言った?」


ようやくこちらを向いて反応を見せたヒデキ。不機嫌そうな顔をしている。


「探してもなかなか見つからなかった完璧な能力値のイーブイをようやく見つけられたというのにこのザマだ。育てるのに費やした時間と金が無駄になったよ」

「だったら何故安物の石を使った?粗悪品を疑わなかったのか?」

「どんな石でも水の石ならシャワーズになるのだから安い方がよい。ぶつぶつ……」


また小声で呟きだす。聞き取ろうと澄ませた一行の耳に信じられない言葉が入って来た。


「こんな事ならシャワーズになど進化させるんじゃなかった。考えてみればシャワーズより優れた水ポケモンはごまんといるのだ。やはりエーフィかサンダースにすべきだった」

「ちょっと!そんな言い方ないじゃない!」


あんまりな言い草に怒ったハルナがヒデキにくってかかる。


「そうだ。あんた前に『ポケモンに愛情をかけるのはトレーナーの責務』と言ってたじゃないか!それなのに苦しんでいる自分のポケモンを見捨てるのか!」


ハルナの肩を押さえながらスバルも怒る。だが当のヒデキは呆れたように髪をかき上げ、二人を鼻で笑った。


「ふっ。確かにその通りだ。だがな。ポケモンは性能が命なのだ。助かっても性能が落ちるのだろう。そんなものに愛情をかけられるか。性能の低いポケモンなど育てる価値もない」


あのイーブイの頭を撫でていた人の言葉とはとても思えない。ハルナは尚も訴えかける。


「そ、そんな言葉聞いたら!あの子傷付くよ!あなたの事あんなに好きなのに!」


だがそんなハルナに対してヒデキはまたしても奇異の眼差しを向けるのだった。


「本当におかしな奴だ。ならばお前があれのトレーナーになればいい。私は知らん」


イーブイのボールを取り出すと、内側にある登録解除スイッチを入れた。これによりヒデキはあのイーブイを手放した(逃がした)事になる。


「それで、それでいいのっ!?」


ようやく立ち上がったヒデキ。センターを立ち去ろうとするところで今度はカグラが呼び止めた。


「せめて、あの子の傍にいて……あげて……」


眉を八の字に下げ、悲しそうに声をかけるが彼には届かない。


「私はあれの飼い主ではないからそんな義理はない」


そう言い残すと立ち去り、夜の闇の中へ消えていくヒデキ。彼の姿が見えなくなると、ハルナは顔をぐしゃぐしゃにしてカグラに泣き付く。


「ひどいよ……どうして?どうして?」

「ポケモンを逃がす行為そのものは悪事じゃないし罪でもない。しかし、あいつのやった事はっ……!」


テーブルを平手で叩き、怒りをあらわにするスパ。ハルナはカグラの胸に顔を埋め、泣き続ける。


「よしー、よし……」


泣きじゃくるハルナの頭をカグラは優しく撫でる。少しして落ち着くとハルナは顔を上げ、腕で涙を拭いた。


「ありがとうカグラさん。あの子の為に、私達が戦おう!」

「ああ!」

「行くぜ!」

「れっつごー」

「ではついて来てください。こっちです!」


刑事の案内で犯人の元へ急ぐハルナ達。果たして捕まえる事は出来るのか!?










12th 終わり










執筆後記

第12話をお読みいただきありがとうございます。さて、今回も前回に続き電ピカシリーズより、ストンタウン編をお送りいたします。電ピカの面影全くなしですが(駄)。

ジムリーダーに続き、四天王も登場しました。登場人物のフルネームを出したのも、名前に漢字を当てたのも初めてです。モンスターボールはお札。ここまで薄型&軽量化出来ました(?)。てか既にボールじゃない!ちなみに特注なのでカグラしか持ってません。

ヒデキはかなりと言いますかすごく酷いキャラですね。ある意味フルドよりもタチ悪い……同名の方ごめんなさいm(._.)m

 

[アットの一言感想]

 ゲームだと進化の石は、さして気にも留めずに使ってますが、粗悪品を使うとどうなるか等、設定を膨らませていくのも面白いですね。
 ヒデキもまた、ハルナ達とは相容れぬ考え方のようです。
 そしてついに初登場した四天王。
 この事件の中で、その力は披露されるのでしょうか?

 

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