フエンタウンの隣町、ストンタウンまで到達したハルナ一行。キンセツ杯でスバルに敗れたヒデキや四天王のカグラと出会う。ところがヒデキのイーブイが正当な売買ルートを経ていない進化の石により進化不良を起こしてしまった。ポケモンの存在価値を性能にしか見られないヒデキに見捨てられてしまったイーブイの仇を取る為、犯人の元へ向かうハルナ達だが……










ポケットモンスター コズミックファンタジー

13th 電ピカ名作シリーズ 〜対決!最強進化ポケモン〜










「あそこです!」


案内の刑事が指差した先に警官隊とバトルする行商人風の男がいた。警官隊は大勢だが苦戦しているようだ。


「ラフレシア!花びらの舞いだ!」


黒い顔に短い手足が生え、上に赤黒い巨大な花が乗ったポケモンが回転すると、周囲に花びらの嵐が巻き起こる。


「うわああーっ!」


警官隊と彼等のポケモン達は一瞬のうちに倒された。相当の実力者のようだ。


「ふん。雑魚どもが。お前達など恐るるに足りん。進化もせずに進化ポケモンにかなうものか」

「そこまでだ!」


ちょうどそこへ駆け付けるハルナ達。男を睨みつける。


「あんたが密売人ね!観念して!」

「俺にかなうかな?行け、ラフレシア!」


間髪入れずいきなり襲い掛かってきた。だが。


「ブーバー、火炎放射!」


とっさにスパが出したブーバーの吐いた炎がラフレシアを包む。あまりの早さに男から余裕の表情が消え、焦りの色が浮かぶ。


「進化ポケモンが進化もしていないポケモンに倒されるなど許されん!ラフレシア、月の光で回復だ!そして……」


夜空に光る月明かりがラフレシアに降り注ぎ、ダメージを癒していく。同時に男はもう一体ポケモンを繰り出した。


「行けっ、パルシェン!水の波動だ!」


いかつい殻を持った巨大なアコヤガイ型のポケモンが放った水のエネルギーがブーバーに襲い掛かる。


「うおっ!」


間一髪でかわすブーバー。そのままパルシェン目掛けて突き進む。腕にまとった炎が電気に変わっていく。


「行くぜ火力発電!神鳴パンチだ!」

「くっ!パルシェン、殻を閉じて防御。ラフレシア、覚醒めるパワー岩!」


パルシェンの殻はナパーム弾でも破壊する事が出来ないという超硬質だ。いかに水をよく通す電気技を持ってしても破る事は不可能に近いのだ。攻撃を受け止められたブーバーの背後からラフレシアが無数のエネルギー弾を放つ。


「三角跳びっ!」


拳がぶつかった体勢から腰を丸めて殻を蹴り、その反動で跳んでラフレシアの攻撃をかわすブーバー。敵の攻撃が終わったと思い殻を開くパルシェンだが、そこへかわされたエネルギー弾が直撃した。


「し、しまった!」


パルシェンは大きな音を立ててその場に倒れた。跳び上がったブーバーは全身を炎で包みラフレシア目掛けて突っ込む。


「ファイヤーダッシュ!!」


真っ赤に燃えるブーバーのタックルを受けたラフレシアもその場に倒れた。焦る密売人。まさか2対1のバトルに敗れるとは思っていなかっただろう。


「う、う……も、戻れパルシェンにラフレシア!」

「さあ、覚悟しろ!刑事さん、手錠を!」

「あ、はい!」


スバルに言われて思い出したように手錠を取り出し、密売人の腕にかけようとした時、密売人が突然脚を振り上げ、刑事の腹部に蹴りを入れた。


「ごふっ……うぐ」

「刑事さんしっかり!」

「捕まってたまるか!出ろライチュウ、穴を掘れ!」


長い尻尾の先端が稲妻のような形状になり、耳の尖ったオレンジ色のネズミ型ポケモンがそのコッペパンのような手で地面を掘り返し始めた。あっという間に深い穴となり、密売人がそこに飛び込んだ。


「ではさらばだ!」


彼等が穴の中に消えると同時にその穴は土に埋まってしまった。これでは追跡できない。


「「「「逃げられたー!」」」」

「でも……大丈夫」


そこへふわふわと飛んで来るものがいた。髑髏の仮面を着けた幽霊のような姿。カグラの肩にちょこんと乗る。


「きゃっ!お化け!」

「この子、私のヨマワル。捜索得意……」


驚くハルナだが、この幽霊はカグラが町に着いた時に放っていたポケモンなのだ。


「……敵の基地、見つけたって。いい子」

「じゃあすぐ向かおう!」

「よし!刑事さんはやられた人達の手当てとジュンサーさんへの連絡をお願いします!」

「わかった。気をつけて!」


再び飛び立ったヨマワルについていく一行。その先に密売を仕切る親玉もいるのだろう。










その頃、スパに敗れた密売人は基地に戻ってきていた。礼拝堂のような場所の奥には司祭らしき姿の男が一人、その周りにはシスターのような女性達が数人立っている。


「何があった。警察は振り切れたのだろう」

「じ、実は教祖様……警察に味方する強いトレーナーが現れて……」


事情を説明する密売人。カグラの正体も知っていたらしくそれも伝える。


「なるほど、四天王の一人も嗅ぎ付けてきおったか」

「ここが知られるのも時間の問題では……」


心配する密売人をよそに教祖様と呼ばれた男はニヤリと笑う。


「構わん。返り討ちにしてくれよう。こちらには最強の進化ポケモンがいる」

「そ、そうですな。教祖様にかなう者などおりません。例え四天王といえども……え?」


巨大な体に長い腕を持つウナギ型のポケモンが密売人の前に現れ、鎌首をもたげた。体のあちこちからバチバチと電気が弾けている。


「あ、教祖様?」

「せっかく私がSランクの石を与えて進化させたポケモンを二体も進化前のポケモン、しかもたった一体にやられるとは。罰を与えよう」


ウナギの電気が口元に集束していく。腰を抜かす密売人。後ずさりしながら許しを乞う。


「お、お願いします教祖様。どうかお慈悲を……ぎゃあああああっ!!」


激しい電撃の束が密売人に放たれた。悲鳴を上げ、黒焦げになってその場に崩れ落ちる。


「反省房に入れておけ」

「はッ!」


シスターの一人が黒焦げになったそれを抱え、運び去っていった。


「四天王であろうが我等に反する者には同じ目を見せてくれるわ」










ヨマワルの案内でハルナ達がたどり着いたのは町のはずれにある教会風の建物。だが付いているマークは十字架ではなく、宝石を思わせる中にEの文字が入ったエンブレムだ。


「ここみたいね」

「聖エボリュウ教会と書いてあるな」

「いーすとーん騎士団の……一派」


前話の冒頭で少し触れた通り、Eストーン騎士団にはいくつかの宗派が存在する。その中には進化を信奉しながらも強制はしない穏和なものも多いが、この聖エボリュウ教会は過激な部類に入る一派なのだ。


「進化を妄信するあまり悪事にまで手を出したのか」

「……中、入る」


入口の鍵は開いていた。中に進入する四人。だが誰もいない。するとヨマワルが祭壇の後ろへ飛んでいく。


「どうしたのかしら?」


その祭壇をよく調べてみると、奥の目立たないところにボタンスイッチがあった。


「押してみよう。ポチッとな」


スバルがボタンを押すとガゴンという物音と共に祭壇の周り半径数メートルが沈み始めた。


「みんな早く乗るんだ!」

「ヨマワルはみんなにここを教えて……」


ヨマワルを残し、スバルに続いて飛び乗る三人。そのまま祭壇は暗闇の中を降下し続ける。


「どこまで続くんだ?」

「粗悪品の保管庫かも」


しばらくするとズンという音と共に降下が止まり明かりが点いた。周りは上の教会とは打って変わり研究所のようだ。ハルナの予想は外れた。


「地下施設か……ここで何をしているんだ?」

「前のドアが開いてるよ」


隙間から覗き込み、誰もいないのを確認すると中に入った。そこには……


「これは……」

「進化の石……?」


奥行きの広い部屋の中、両側の壁に奥まで並んだカプセルの液体で満たされた中に一つずつ進化の石が浮かんでいる。


「これは……?」


部屋の奥にまた開いたドアがある。更に進む四人。次の部屋はスタジアムのように広い。その時。


「ようこそ、聖エボリュウ教会の地下研究所へ!」

「ここは教義に反対する者や侵入者を取り囲み、始末する部屋」

「お前達にはここで消えてもらう」


周囲の四方から修道士やシスターの姿をした男女が次々と現れて行く手と出口を塞いだ。


「信者達だな。お前らのお偉いさんが何をしているか知らないのか!」

「知っているとも。全てのポケモンとトレーナーの未来を創る事だ」

「お前達にはわかるまい。覚悟!」


それぞれにポケモンを繰り出し襲い掛かってきた。どれも石で進化したポケモン達だ。


「なんとかして切り抜けるぞ!ブースター!」

「イーブイ!」

「お願いサニーゴ!」

「式神、ドータクン」


カグラは青緑色をした銅鐸形のポケモンを出す。ミカルゲとはタイプも全く違うものだ。四人はそれぞれのポケモンと共に四方に散った。長引けば数で大きく勝る相手が有利になる。一気に片付けなければならない。


「イーブイ、仇討ちだ!」

怒りに燃えた瞳でイーブイが敵ポケモンを次々と蹴散らしていく。

「仇討ちは味方が倒された怒りを威力に変換する技なのに、初めからなんて威力だ」

「お前達の犠牲になったポケモン達を……そして今回同族のイーブイをやられた怒り!それが今の力の源だ!」


スバルをはじめとして、四人は次々と敵を倒していく。しかし……










「ブースター、炎の渦!はぁ、はぁ」

「サニーゴ、砂嵐!ふぅ、ふぅ」

「イーブイ、ムーンサルト!ぜぇ、ぜぇ」

「ドータクン、サイコキネシスです。……」


攻撃範囲の広い技を繰り出し、まとめて倒していくが、それでも相手が多すぎて徐々に体力を奪われていく。ポケモンだけではない。トレーナーもだ。


「このままじゃみんなここで倒れちまう」

「仕方ない。手伝えスバル!」


奥の通路が見える方向にブースターを向き直らせたスパ。スバルも察してイーブイを向き直らせる。


「奥へ進む道を切り開くから二人で先に行くんだ!」

「二人ともっ!」

「こいつらを片付けたらすぐに追う。心配するな」


心配そうにするハルナにスバルが微笑んだ。カグラも了解する。


「……わかりました。ありがとう」

「イーブイ、ブースターを手助けだ!」

「助かる!行くぜブースター!火炎放射!」


イーブイからパワーを受け取ったブースターの吐いた炎が一直線に伸びて敵を退けさせる。素早くポケモンを戻し、そこを一気に走り抜けるハルナとカグラ。


「ありがとう。気をつけてね!」

「感謝……」


残った二人を再び取り囲む団員達。ハルナ達を追い掛けはしない。


「馬鹿め。それは計算済みだ」

「ここを抜けたところであの二人は教祖様に倒されるのだ。分散された事で我々もかえって楽よ。かかれーっ!」


倒す相手が少なくなった事で勢いづいた団員達が一気に襲い掛かってきた。










二人が通路を抜けると礼拝堂のような場所に出た。そこに立つ司祭風の男。


「ようこそ。私が聖エボリュウ教会の教祖(マスター)エボリュウだ」


教祖エボリュウが指を鳴らすとシスター達が一人ひとつずつケースを持って現れ、それを開く。中には各種進化の石が。


「見たまえ。これは我々が造った石だ。ここに来る途中で見ただろう。粗悪品の石を素に造り出したのだよ」


最初の部屋で見たカプセルの中の石。人工的に造られたものだったのだ。その石は人工物とは言ったものの本物と見分けがつかない。鑑定士が見ればわかるのだろうが、石を求めるトレーナーがこれを本物と言われれば買ってしまうだろう。


「粗悪品を集めて売ってたんじゃなかったの?」

「そういう組織もあるようだが我々はしない。金が目当てではないからな。いいか。進化の石は一般のトレーナーにはそう手の届かない代物。不公平だと思わぬか。金のない者は進化させたくとも出来ぬのだ」

「だから自分達で石を造ろうとしてるの?」


頷くエボリュウ。彼は続ける。廃棄されてしまう大量の粗悪品の成分を集めて再結晶化し、人工的に進化の石を造り出した事、そしてそれらを実験的に売っていると。


「まだ実験段階で副作用として進化不良が起きるケースがあるようだが技術の進歩によりいずれはなくす事は可能だ。Sランクの石にも劣らぬようになる。近いうちに必ず来るぞ。誰もが手軽にポケモンを進化させられる時がな」


確かに安全性が確保されるのであれば人工的に造られた石も受け入れられるかもしれない。廃棄されるものが原料の為コストもかからずエコロジーだ。だがハルナは疑問を投げかける。


「でも、その為にポケモンが苦しんでもいいの?」

「それは我々も心苦しい事だ。だが完全なものにする為に実験は必要。これも尊い犠牲だ。哀悼の意を表し、祈っているよ」


尊い犠牲、哀悼、祈り。綺麗な言葉を並べ、エボリュウは手を差し出す。


「理解していただけたかな?もしよければ君達も同志にならぬか」

「わからないかも。本当にポケモンやトレーナーの為なら隠れずに堂々とすればいいのに隠してやってるって事はやましい事があるんだ!」

「他の人を騙して売る……悪い人」


エボリュウの誘いを間髪入れず断るハルナとカグラ。だがそれは予測済みと言わんばかりにエボリュウは笑う。


「はっはっは。ならば消えてもらうしかないな。お前達は下がっておれ」


シスター達がその場を退き、エボリュウ一人だけになる。二つのボールを手に取り放った。


「出でよドンカラス!シビルドン!」


エボリュウが繰り出したのはヤミカラスを一回り大きくしたような姿をし、その名の通りドン(首領)のような威圧感を持った鳥ポケモン。もう一体は先程密売人を黒焦げにした巨大電気ウナギだ。


「お願いヌマクロー!」

「争うしか、ないのですね……式神、ユキメノコ」


ハルナは毎度お馴染みヌマクロー。カグラは白い着物を着た鬼のような小柄なポケモンだ。それぞれシビルドンとドンカラスに向き合う。


「ユキメノコ、吹雪です……!」


ユキメノコの口から目の前が真っ白になって見えなくなる程の猛吹雪が吹き出された。あっという間に相手二体を包み込む。


「す、凄いかも……」


吹雪が晴れた後、相手は二体とも分厚い氷の中に閉じ込められていた。


「これで、争い終わり……」

「馬鹿め。それで動きを封じたつもりか!二体とも、氷を粉砕せよ!」


二体を覆う氷に亀裂が入り、砕け散る音と共に弾け飛んだ。そこから健在の二体が現れる。


「自然進化するポケモンと違い石で進化するポケモンは進化に必要なエネルギーを自分で作れない。だからその分石で得られるエネルギーが重要だ。すなわちランクがな。私のポケモン達はSランクの石で進化させているのだ」


エボリュウの話に呼応し、勝ち誇るように雄叫びを上げる相手の二体。


「高いランクの石で進化させた方が強くなる事は漠然としか知られていない。ランクなど関係ないと思っている者もいるしな。だがその差は確実に表れる。進化前との能力差はCランクでも大人と子供程、Sランクなら超人と赤子程の開きがあるのだ。あの程度の氷、並のポケモンなら砕けずとも私のポケモン達ならばたやすいわ」

「来るっ!」


素早くユキメノコに飛び掛かるドンカラス。その黒い翼を振り下ろす。


「危ないっ!」

「仲間の心配をしている暇はないぞ」


シビルドンが全身を電気で包みながらヌマクローに突っ込んできた。


「ワイルドボルト!」


激しい突進にヌマクローは吹っ飛ばされる。しかも電気によるダメージも受けたのだ。


「くっ……」


電気をよく通す水タイプでありながらヌマクローには本来電気技はまず通じない。併せ持つ地面タイプが電気を吸収する力を持つ上にヌマクローの体を覆う粘膜が電気を遮断するのだ。だがエボリュウは言う。


「絶縁粘膜にしろ地面タイプの耐性にしろ遮断したり吸収出来るのは電流のみ。電気の放つ高熱や電圧までは防げない。それにより粘膜をぶち抜いたまでよ」


外側が強い分内側は弱かった。ヌマクローのダメージはかなり大きく、ふらついている。一方ドンカラスの攻撃を素早くかわしたユキメノコは避けがけに息を吹き掛ける。


「凍える風……!」


冷気で相手の体をかじかませて動きを鈍らせる技だ。寒さに耐性がある相手にもほぼ確実に効果が見込める(ドンカラスは寒さに耐性はないが)。


「もう一度、至近距離から吹雪です……!」

「不意打ちだ!」


ユキメノコが吹雪を吐き出す前にドンカラスの一撃が飛び出した。動きが鈍っているのにかなりのスピードだ。


「至近距離でかわしきれないのはお前も同じ。辻斬りだ!」


翼の一閃が刀のようにユキメノコの体を切り裂いた。


「はっはっは。……なにい!?」


真っ二つにされたユキメノコの体が透け、消えていく。はっとするドンカラスの背後にユキメノコの本体が現れた。


「身代わりか!自身の生命力をそっくりの姿に練り上げて放つ技だ。不意打ちの段階で既に分身だったとでもいうのか」

「不意打ち、受ける直前に出した……出す隙を作る為に動き鈍らせた……」


その技により放たれた生命力はダメージによってそれ自身が尽きるか本体が倒れない限りは本体からの脳波による遠隔操作で動かす事や技を出す事まで可能なのだ。


「逃がしません。氷牙(ひょうが)……!」


床から生えた無数の鋭い氷柱がドンカラスの全身を切り裂いた。その場に崩れ落ちるドンカラス。


「くっ、戻れドンカラス。シビルドン!こいつを倒せ!身代わりを使い体力を消耗している筈だ。火炎放射!」


口から炎を吐き出すシビルドン。だがユキメノコは素早くかわし、黒いエネルギー弾を打ち出した。


「かわせ!むっ!?」


弾とは反対の方向から水鉄砲が吹き出された。かわす動きを狂わされたシビルドンは弾を避けきれずくらってしまう。


「こっちだってまだ終わってないかも!」

「あの娘、邪魔しおって。だがこうなった以上お前達に勝ち目はないぞ。私のシビルドンはタッグを組んだ味方を失う事でその真の力を発揮するのだ」


シビルドンの体に弾ける電気の強さが増していく。


「えっ?」

「ドンカラスはタッグパートナーであると同時に強さを抑える為の枷でもあったのだ。さあ見せてやれシビルドン。雷光四頭龍(ライトスートロン)!!」


シビルドンの前に二つの電気エネルギー球が現れ、そこから光の束がそれぞれの相手目掛けて放たれた。


「避けてっ!」


これだけの力ならヌマクローの粘膜など一瞬のうちに引き剥がしてしまうだろう。うまく避けられた二体だが、直ぐさま次が来る。これだけの攻撃を二連射出来るのだ。まさに光る四つ首龍だ。


「はっはっは。逃げろ逃げろ!四天王と言えども敵うまい。このシビルドンの強さはサンダーやライコウ、ゼクロムさえも上回るのだ!」


エボリュウが挙げた名前はどれも電気を司る伝説や神クラスのポケモンだ。それらを凌駕する事を自称出来る程このシビルドンの強さは凄まじいものだった。


「くっ……ヌマクロー、たくさんの水鉄砲!」

「ユキメノコ、冷凍ビームです」


隙を見つけて反撃を試みるがどちらの攻撃もシビルドンに大ダメージを与えるには至らない。体を包む電気が薄い防御幕のような役割を果たしているようだ。


「シビルドン!電磁砲だ!トドメをさせ!!」


口元に集束したエネルギー球が光の束となってヌマクローを貫き、包み込む。光が収まった時、ヌマクローは黒焦げになりそこに倒れ伏していた。


「あっ、ヌマクロー!……戻って!」


ハルナがボールを出そうとしたその瞬間。


「アシッドボム!」


シビルドンの口から吐き出されたサッカーボール大のジェル状の球がハルナの右手を捉えた。


「くうっ!」


右手に走る激痛にボールを落としうずくまるハルナ。強酸の球だったのだ。


「痛いっ……!」


CSのグローブのおかげである程度は防げたもののかなり焼けている。早く治療しなければ痕が残ってしまう可能性もあるだろう。


「これでポケモンの交代は出来ない。次はそっちだ!」


今度はカグラの方に強酸弾を放つシビルドン。だが素早い動きで当たらない。


「体の割には軽い身のこなしだな。これならどうだ!」


シビルドンの口から毒ガスのような煙が吐き出された。カグラの周囲を取り囲むように迫る。


「火炎放射の熱でアシッドボムを気化した。じわじわと焼かれるがいい」

「妖しい風っ……!」


カグラの前に立ち塞がったユキメノコが霊気を含んだ強風を巻き起こす。煙はあべこべにシビルドンを覆っていく。


「くっ……こちらにダメージが……」

「とどめ……ですっ」


ユキメノコが放った黒いエネルギー球がシビルドンにクリーンヒットした。酸により皮膚が脆くなった為ダメージも増している。その場に崩れ落ちた。


「私のシビルドンが……」

「覚悟……」


一歩ずつエボリュウに近付いていくカグラ。黒い瞳の奥に静かな怒りが燃えている。エボリュウはうろたえ、後ずさりを始めた。


「わかった……降伏する。石はちゃんと許可をもらって造るようにする。安全が確認出来るまで売ったりもしない。だから許してくれ」


許しを乞うエボリュウだが、カグラは目の前まで迫ってくる。その彼女の背後でうごめくものがあった。


「か、カグラさん後ろ!」

「馬鹿め引っ掛かったな!シビルドン!やれ!」


ハルナが叫ぶより早くカグラは振り向き、ユキメノコを呼ぶ。間に入ったユキメノコは巨大な雪の結晶の壁を作った。飛び掛かってきたシビルドンはそれにぶつかる。


「往生際が悪いかも!」

「馬鹿どもが!全ては計算ずくだったのだ!」


両手を高く挙げるシビルドン。二つのエネルギー球がそれぞれカグラの左右に現れる。


「まとめて消えろ!雷光四頭龍!!」


エボリュウが叫ぶと同時に光の束が左右からカグラとユキメノコを貫いた。また二連続だ。


「カグラさん!」


体がボロボロになり片膝を着くカグラ。ユキメノコにも大ダメージが叩きつけられた。


「耐えたか。流石は四天王。だが今の電磁エネルギーでモンスターボールの開閉システムは一時的にダウンしたはずだ。その傷付いたユキメノコだけではもうかなうまい」


カグラを見下ろしながら勝ち誇ったように口元を歪めるエボリュウ。この絶望的な状況の中、勝機はあるのだろうか。










13th 終わり










執筆後記

第13話をお読みいただきありがとうございます。さて、ストンタウン編を今回で終わらせようと考えていたのですが、書いていくうちに長くなったので次回まで続ける事にしました。

今回登場の新ポケモン、シビルドンですが、個人的になかなかお気に入りです。特性のおかげで事実上弱点がなく、技も結構多彩。でも一番の理由は動きが可愛いところ(笑)。

かなり人が傷付く戦いになってますね。ポケモンバトルというよりポケモンを使った人間同士のバトル。このままだとハルナもカグラも満身創痍でお嫁に行けなくなr(蹴)

 

[アットの一言感想]

 大会や公式戦ではあくまで試合という形でバトルを書きますが、自分も結構、実戦っぽいポケモンバトルは書きますね。
 そういう戦いはポケスペ等でもよく見られたので、参考にする時があります。
 教祖エボリュウ、四天王のカグラですら苦戦を強いられる強敵のようです。
 次回辺りで決着でしょうか。

 

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