マサラジム・門下生卒業試験が始まった。合格条件は老師のポケモン1体とのバトルに勝利すること。今のところ合格を果たしているのは、圧倒的な実力を見せたカオル、弱虫と呼ばれていたが自ら編み出した新技によって一瞬で勝負を決めたアンの2人だけ。更にそれに触発された門下生達が順番争いを始めてしまうが、老師の必殺の一言により落ち着きを取り戻し、試験は続けられたのだった………



「行け、ポッポ!」
「ポッポォーッ!」
「ガビーッ!!」

まるまると太った巨体を持つ居眠りポケモン、カビゴンのお腹にはじき飛ばされ、小さな小鳥ポケモン、ポッポは地に落ちた。他の門下生達もカオル達に続こうと次々と挑戦していったが、さすがに歴戦のポケモン達、挑戦する者達は次々と倒されていく。結局2人が合格してから1人の合格者も出ていない。そしてとうとう最後の1人……サトリの番となった。

「よしっ、1ヶ月の修業の成果、見せてやるわ!絶対合格よ!!」

サトリはやる気満々である。ライバル視しているカオル、秘めた強さを持ったアンが合格を決めている。自分も合格し、3人目の合格者とならなければという思いがあったのだ。

「おいおい、無理だろう。」
「そうだ、何年も合格できない奴だっているのに。それに1ヶ月の修業で合格した奴なんて今まで1人もいないんだ。」
「え?確か1人いたって聞いたことあるけど。」
「そこ、静かに!」

おしゃべりの過ぎた者達を注意する老師。彼等はそそくさと縮こまる。そんな周りの言葉を聞き流しつつサトリは前に進み、モンスターボールを選び、それを開いた。

 

 

 

第4話 水と炎、熱き戦い!!

 

 

 

「グゥアーッ!!」

咆哮とともに出現したのはリザードンだった。最初の挑戦者を一度の足踏みだけで倒したあいつだ。サトリのゼニガメにとっては相性のいい相手のはずだが、数々の戦いを乗り越えてきたリザードンとバトルを始めて一か月のゼニガメとでは能力に天地の開きがある。確かに水は火を消すが、水の力が弱ければ火は水を蒸発させてしまう。能力差が開いてしまうと逆に水タイプの方が不利になってしまうのだ。

(運がない奴だなぁ。)
(1ヶ月の修業じゃとてもリザードンには勝てないね。)
(老師のポケモンの中で一番強いんだ、あのリザードンは。)

周りの門下生達は口にこそ出さなかったがサトリは合格できないと予測している。それほどまでにこのリザードンは老師のポケモンの中でも圧倒的な強さを誇っているのだ。

(『100の知識より1の経験』…一か月の修業の中でこの言葉の本当の意味がわかってきたような気がする…それは言うなれば『一度の経験はテキスト100ページ分の知識にも相当する』ということ…そう、経験することによって体で覚えるということなのよ!果たしてこの一か月の経験がどれほどのものになったのか、勝負よ!!)

サトリはリザードンの方を向いた。お互いに睨み合うが、リザードンの方はサトリのことを鼻で笑っているようにも見える。

「笑っていられるのも今のうちよ……よーし、行くのよっゼニガメッ!」
「ゼニィーッ!」
「一気にいくわよ!ゼニガメ『水鉄砲』!!」

ゼニガメの口から水が吹き出す。1ヶ月前とは比べ物にならないほど勢いが増している。だが、それでもリザードンから見れば大したことではない。軽く火を吹いただけで全て蒸発してしまった。

「ええ?嘘ぉ!?」

サトリは目を丸くした。あれだけパワーアップしたのにまるで通じないとは思いもしなかった。格の違いを見せつけられた感じだ。ゼニガメも目を丸くしている。自分の顔の様に丸い。

「ゼニ…」
「だったら蒸発しきれないくらいやってやるわ!連射よゼニガメ!!」
「ゼ、ゼニィッ!」

ゼニガメは小刻みに水を発射し続ける。それを見たリザードンは一瞬ほくそ笑んだような顔をし、先ほどとは比べ物にならないほどの炎を吐きだした。リザードンの得意技『火炎放射』だ。ゼニガメの連射もむなしく、炎が水を巻き込み蒸発させていく。

「嘘でしょ…これもまたダメなの?……はっ、ゼニガメ、よけて!!」

言うより早く、炎がゼニガメを捉えた。ゼニガメは甲羅にこもって耐えようとするが、それにも限界がある。このままでは蒸し焼きだ。

「どうすれば……そうだ、ゼニガメ、『高速スピン』!!」

ゼニガメが勢いよく回転を始めた。回転によって起こされた風の力で炎を吹き飛ばそうというのだ。その作戦は上手くいった。炎は弾き飛ばされ四散し、火の粉となった。その火の粉のうちのいくつかがリザードンに当たり、一瞬ひるませる。その隙にゼニガメが回転しながら突っ込んでいく。

「そのまま『体当たり』!!」

ゼニガメはリザードンの腹部に一撃を食らわせた。腹への攻撃は相手に対して実に多大な苦痛を与えるのだ。

「グオォォッ!!」

リザードンは苦しそうに声を上げる。ゼニガメは『体当たり』の反動を利用して飛び上がり、頭と手足を出し、そしてリザードンの口の中へ頭を突っ込んだ。

「今よ、最大出力で『水鉄砲』!!」

リザードンの喉の奥めがけてゼニガメが水を放つ。リザードンが苦しそうにフィールド中をのたうち回る。見ている側にとっては大迷惑だ。慌てて隅の方に逃げ出す。

「ひええっ、こっちに来るなぁっ!」
「こら押すな!」
「……お、終わったようだぜ。」

リザードンが動きを止めると同時にゼニガメが口から転げ落ちた。先ほどの炎の熱がやはり応えたのだ。

「無理させちゃった……ごめんねゼニガメ……」
「ゼニ…ゼニッ!」

ゼニガメは元気に立ち上がってガッツポーズをしてみせた。ダメージは大きいようだが体力はまだかなり残っていそうだ。このゼニガメは意外にタフなようである。

「大丈夫?良かった…」

サトリが言い終わった次の瞬間、ズシン、と何かが倒れる音がした。その音の正体はリザードンの倒れる音だった。外野達は驚きを隠せない。

「マジかよ…あいつ……」
「あのリザードンに勝っちまうなんて……」
「すげぇ…」
「なんと…サトリ……」
「ピガチュウ」

さすがの老師も目を丸くした。サトリの方もまだ信じられないような目をしている。試しに自分のほっぺたをつねってみた。痛い、夢じゃない、現実だ。サトリは老師のリザードンに勝ち、合格を決めたのだ。

「やっ…やったー!!」

サトリは歓喜の声を上げた。外野達も騒ぎ出す。凄いバトルが見られたことを喜んでいるのだ。サトリは彼等と一人ひとり握手していく。が、カオルの前で止まった。彼は相変わらず無愛想な顔をしている。

「フン、馬鹿騒ぎなんかして……うるさい連中だ。」

と言いつつ、カオルは右手を差し出した。サトリは一瞬戸惑ったがすぐに自分も右手を差し出し握手する。それから少しの間大騒ぎが続いたが、老師の一言で静まり返った。

「皆の者、整列!」

その言葉に従いフィールドの中央に整列する門下生達。老師はコホンと咳払いをすると話を始めた。

「今回の合格者はカオル、アン、サトリの三名!おめでとう!これで晴れてポケモントレーナーとしてこのジムから旅立つことができる!不合格だった者も次回の試験では合格できるように精進を積むように!!では、本日はこれにて解散!」
「ハイ、老師!!」

合格した者はその勝利をかみしめ、不合格だった者達も次回の合格を目指し、それぞれにジムを後にしたのだった………しかし、サトリは残っている。ジム内の老師の家で寝泊まりしていたのでここが“帰る場所”だからだ。

「さて、わしらも戻るか。」
「うん!」



その日の夕刻………

「はぁ〜、終わったァ、これでハナダシティに帰れるわ。ママに連絡しなきゃ。」

家の中の居間のソファーでくつろぎながらサトリがそう呟くと、その言葉を聞いた老師が話し始めた。

「あぁ、それならさっきわしが連絡しておいたぞ。そうしたら『おめでとう。せっかくだからハナダまで自分で戻ってきたら?』と伝えるようにと言っておった。」
「え、どういうこと?それって……」

目を丸くしたサトリに老師は笑いながら答える。

「ハッハッハ、旅じゃよ。旅はいいぞ、わしも若い頃このピカチュウと一緒に色々な場所を旅したんじゃ。それに運命の出会いが待っているかもしれんぞ。何を隠そうばあさんはわしが旅に出て最初に出会った女の子だったんじゃ。なつかしいのお。始めて出会った時のあの平手打ちがつい昨日のことのようじゃ……」
「ピガチュウ」

老師の話を聞き、うなずくサトリ。旅もいいかな…と思った。特に『運命の出会い』という部分に惹かれたようだ。が、少々の疑問もあった。

(ママったら…ただ迎えに来るのが面倒なだけじゃないでしょうね……)



同じ頃、ハナダジムでくしゃみをした女性が1人………

「はっ…はっくしょん!ん〜、誰か噂してるのかな…『サトミさんはGカップ美人』とか?はたまた『子持ちなのにナイスバディ』とか〜?」

サトミは1人で勝手な解釈をしていたのだった………



その夜………

「ハァー、いい汗かいた後のお風呂っていいわぁ…せまいのがちょっと嫌だけどそこのところは一発合格の上機嫌でカバーできる……」

気分上々のサトリは体を丸めつつ湯舟につかりながら呟いた。

「ママ…あたしやったよ……おじいちゃんのポケモン倒しちゃった…一発合格だよ……」

少しのぼせたサトリは体を湯舟から出し風呂のへりに座った。僅かに開いた窓から吹き込む風が彼女の色白の肌に鳥肌を立たせる。

「うぅ…さむっ…もう一回入ってから出よう……」

サトリは窓を閉め、再び湯舟につかった。

「明日出発準備して、明後日旅立とうっと。そういえば明後日はあたしの12歳の誕生日だ…誕生日に旅立ちかぁ〜…なんだか格好いいかも。」

別に特別格好いいわけでもないが、サトリは誕生日の旅立ちに胸をふくらませるのだった………



同じ頃………

「サトリったら、一発合格かぁ…やるじゃない。」

湯舟のへりに腰掛けながら呟くサトミ。この母娘、別の場所にいながら同時刻に入浴していたのだ。

「…明後日はサトリの誕生日か。プレゼントを用意しておかなくちゃね。なにがいいかしら……」

サトミは湯舟に体を沈ませながら考えた。沈ませたといっても健康的な半身浴である。

「そうだわ、服にしよう。旅をする女の子にピッタリのセクシーでファッショナブルな服に……」

旅する女の子にファッショナブルはともかくセクシーは別に必要なさそうだが、そこはサトミのこだわりである。そして彼女が自らのこだわり(=好み)で娘のために選んだ服は文字通りピッタリしたセクシー系だったという………



第5話に続く。



改訂後記
サービスカット数あれど、入浴シーンは基本中の基本です(主張(^^☆\バキ!(−−;))。前回なかった分増量させました………というのは冗談です(^^;)。
さて、改訂により試験の合否基準が変わりました(笑)。『平均ダメージ数をコンピューターで割り出す』のはサトシらしくないよなあ…というわけです。どちらにしろ合格した3人は改訂前でも老師のポケモンを倒したのだから変わろうが変わるまいがノープロブレム(?)。他の方々は倒せていないので不合格は変わらず。こうしてストーリーに変化を与えることなく無事に試験は終了したのでした…(^^;;;)

 

[一言感想]

 確かに、そのサービスカットは基本ですが、基本はとても大事なので……(ry
 さて、見事合格を決めたサトリです。
 カオルとも握手をかわし、これからいよいよ旅立ちます。
 彼女が老師の血を引いている事を改めて思い出させてくれる次回、果たして!?(何)

 

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