マサラタウンから旅立ったサトリはオニスズメの集団に襲われるが、喋るニャースを連れた青年に助けられ、彼の案内でトキワシティのポケモンセンターへと向かったのだった。
2人と1匹がトキワシティのポケモンセンターに着いたとき、太陽は真っ赤に染まり、西に傾いていた。

「こっちだ。そこのカウンターで頼んでポケモンを預かってもらうんだ。」
「ありがとう、スイマセーン!!」

サトリは青年に礼を言い、誰もいないカウンターの前で大声を出して係の人を呼ぶ。するとピンク色の髪に薄桃色のエプロンドレス姿をした女性が出てきた。どうやら女の医者、女医さんのようだ。

「こんにちは。……もうこんばんはかしら?あら、非道い傷……」
「あたしよりゼニガメを…『水鉄砲』の撃ちすぎで疲れちゃったの……」

そういうとサトリはゼニガメを出した。まだ息があがっている。

「まあ、一体何があったの?」

サトリは何があったかを全て話した。ちょっとしたアクシデントから次々とオニスズメに襲われたこと、抵抗したが数が多すぎて逃げ出したこと、疲れ果てて倒れたところを青年に助けられたこと………

「そう…無理して疲れがドッと出たんだわ。一晩ゆっくりさせることよ。この子も、あなたもね。」
「あの、あたしのゼニガメ、大丈夫ですか?えっと、あの……」

不安そうに聞くサトリ。女性の名前を言おうとしたがまだ聞いていないことに気がついた。

「わたしの名前はジョーイよ。あなた、本当にこの子が心配ならこれからはあまり無理をさせないようにね。産まれてそれほど経っていないポケモンならなおさらよ。」
「はい……」

ジョーイの少し強めの言葉に軽くうなずくサトリ。目が少しうるんでいる。そこへ、さっきの青年が声をかけた。

「どうだった?大丈夫かい?」
「うん、疲れてるだけだから一晩ゆっくりさせるようにだって……」
「そうか、君の方も非道い傷だし、今日はここに泊まるのがいいだろう。」
「色々とありがとう、えっと……」

ジョーイの時と同じくまだ名前を聞いていなかった。それはお互い様である。青年の方から自己紹介を始めた。

「オレの名前はコタロウ、21歳。よろしくな。」
「わしはニャースじゃにゃ!」
「あたし、サトリ!今日で12歳。こちらこそよろしくね。」

 

 

 

第6話 悪の組織・ネオロケッツ!

 

 

 

「ひえぇ〜っ!しみる〜っ!!」
「こら、じたばたするなって、薬が塗れない。」

コタロウはサトリに人間用の傷薬を塗っていた。が、嫌がるわ痛がるわで思うように塗ることができない。

「切り傷にはこれが一番効くんだ。我慢してくれよ。」

サトリをなだめ、コタロウは薬を塗っていく。と、その時、センター内のスクリーンテレビに臨時ニュースが流れた。

“今入りました情報によりますと、犯罪組織『ネオロケッツ』のメンバーの1人で指名手配中の男がトキワシティに侵入したとのことです。市役所では住民に注意を呼びかけ………”
「ぶっそうね。ネオロケッツ、名前くらいは聞いたことあるけど…」

サトリは痛みも忘れてスクリーンテレビに見入っている。そのうちにコタロウは薬を塗り終え、サトリに説明した。

「主にカントーを中心にポケモンの密猟や密売を主に行う組織だ。中には誘拐や人殺しを担当する者もいるらしい。」
「しかもロケット団の後継組織を勝手に名乗るとんでもない奴らじゃにゃ。」

ニャースは怒った表情をする。ロケット団という言葉にサトリも反応した。祖父の若い頃の思い出話が脳裏に浮かぶ。

「ロケット団……そういえばおじいちゃんに聞いたことがあるわ。しょっちゅう現れてピカチュウを狙っては飛ばされるドジな集団だったって。」
「にゃに?ドジじゃと?失礼にゃ、ロケット団は由緒正しい悪の軍団だったのにゃ!」
「悪に正しいもガザCもないわよ!!」

サトリの言葉にニャースが怒り、言い合いを始めてしまった。

「おみゃーには悪の美学がわからんかにゃ!?」
「わかんないわよそんなもん!!ねぇコタロウさん!?」

さっき自己紹介し終わったばかりなのにサトリはまるで前からの知り合いのように馴れ馴れしくコタロウの名を呼んだ。

「ああ……でもこいつにロケット団の悪口は禁物だぜ。大のロケット団マニアだからなァこいつは。」
「そうじゃにゃ、ロケット団は愛と真実の悪を貫くのじゃにゃ。」

誇らしげに胸を張るニャース。が、サトリの言った言葉にどこかつっかかるものがあったようだ。

「おじいちゃんのピカチュウを狙う……?まさかこの娘はあの……いや、きっと偶然にゃ。」



日が完全に沈み、夜になった。2人と1匹はセンター内の食堂へ向かう。

「センター内の食堂は無料なんだ。好きな物を頼みなよ、はい。」

コタロウがサトリに説明し、メニューを手渡した。品数はかなり豊富だ。和食、洋食、中華……まるでファミリーレストランのようである。

「ありがとう、どれにしようかなー。あ、ポケモンフーズもあるんだ。ゼニガメはどんな味が好きなのかな。ん?なんだろ、入口の方が騒がしいけど…」

センターに怪しい男が入ってきたのだ。その顔はまるで“自分は悪人です”と言っているように人相が悪い。その男は突然モンスターボールをかまえ、中にいた人々を脅すように叫んだ。

「お前ら全員動くな!命が惜しいならここにいるポケモンを全て差し出すんだ!!」

突然の出来事に利用者達が震えだす。そこへジョーイが駆けつけた。

「なんですあなた、いきなり!」
「うるせえ!!ひっこんでろ!!さあ早くポケモンを出しな!!」

ジョーイに向けて怒鳴りつけると男はさっきよりも強い口調で命令した。が、ジョーイも負けずに言い返す。

「何を言っているんです!警察を呼びますよ!!」
「黙りやがれこのアマ!!」

男はジョーイにつかみかかり力任せに殴り倒した。ジョーイはその場に倒れ気を失う。見ていた人達は思わず顔を背けた。サトリの隣にいるニャースも両目を押さえている。

(何あいつ…女の人を殴るなんて許せない……でもゼニガメは戦えないし……あれ?コタロウさんは?)

サトリはふと前を見た。コタロウがつかつかと歩いて男の前に立ったのが見える。

「へぇ、いさぎよい兄ちゃんだな。さぁボールを渡すんだ。」

男は手を差し出した。次の瞬間、コタロウの右拳が男のほおに炸裂した。見ていた人達はオーッと歓声を上げる。

「コタロウさん…かっこいい……」

サトリは呟いた。一方の殴られた男は顔を真っ赤にして激怒する。

「てめェ…よくもこのオレ様を殴りやがったな……ハンサムフェイスが台無しじゃねえか!許さねぇ、出てこいマルマイン!!」

男の言葉に周囲は一瞬間の悪い沈黙に包まれた。サトリも呆れ顔だ。

(自分で言うか〜……)

だがサトリも自分で美少女と言っている。似たようなものだが異なる点はサトリは本当に美少女だがあの男はハンサムではないということだ。それはさておき、男のボールから出てきたのは巨大なモンスターボールのような姿をしたポケモン、爆弾ボールの異名を持つマルマインだ。よく爆発を起こすことで知られている。

「ハッハハハァーッ!!そいつは今体内にためこんでいるエネルギーが限界点近いんだ。少しでもショックを与えれば大爆発だぜ!!」

大爆発…その一言でセンター内は恐怖に包まれた。

「イヤーッ、助けてェーッ!」
「死にたくなーいっ!!」
「わしもまだ生きたいのじゃにゃ〜!」
「ハハハーッ!ヒーロー気取りの兄ちゃん、さぁてどうする!?」

男は勝ち誇ったような顔で高笑いをした。だがコタロウは男を小馬鹿にするように言い返す。

「何考えてんだ。ここで爆発したらお前も巻き込まれるぞ。」
「はっ…そうだった……考えてなかったァ〜!!」

男は頭を抱えながら情けない奇声を上げた。後先考えずに立てた作戦だったのだろう。

「まぬけな奴…」
「馬鹿じゃにゃ…」

サトリとニャースも含め、センター内の人間は皆呆れた顔だ。と、コタロウがマルマインの方を見ながらモンスターボールを手に取った。

「さて、爆弾処理をしようか、出てこい、ハガネール。」
「ウオォォーン」

体がいくつもの節に分かれた鉄蛇ポケモン、ハガネールだ。ダイヤモンドを凌ぐ輝きと硬度を誇り、頭から尾までの長さは9〜10メートル程はある。

「ハガネール、マルマインを覆い隠すんだ。」

コタロウがハガネールに指示を出すと、ハガネールはマルマインの体をとぐろを巻いて覆い隠し、ぐぐっと力を込めた。とぐろ巻きの中で、ドドンという音が響く。処理が完了したのだ。爆発によってマルマインのエネルギーは底をついた。

「よし、よくやった。戻れハガネール。」

コタロウはハガネールをボールに戻すと、男を睨みつけた。

「聞きたいことがある。お前はさっきニュースで言っていたネオロケッツのメンバーか?何のためにここを襲ったんだ。」

「へっ、確かにオレはネオロケッツだが何のためかは知らん。オレはただの下っ端だからな。上から命令されただけさ。」

男は答え終えると、気を失っているジョーイの首根っこをつかみ、隠し持っていたナイフを彼女の首筋に近づけた。

「こいつの命が惜しかったらとっとと……」

言い終わる前にコタロウが男のナイフをはたき落とした。

「見苦しいことはよせよ。ホラ、後ろを見てみな。」

男が振り返るとそこには青い髪の若い婦人警官に率いられた警官隊がいた。センターでの騒ぎを変に思った近くの住民が通報したのだ。

「確かに指名手配中のネオロケッツのメンバー!あなたを逮捕します!」
「くそっ、なんてこった……」



男は逮捕され、警官隊に連行されていった。その姿は言っては悪いが様になっている。

「ホラ、きびきび歩く!」
「くっそぉ〜……」

マルマインが爆発した場所ではところで警官隊を率いていた婦人警官が残った警官隊数人と共に現場検証をしている。スリットの入ったミニスカートから覗く脚が色っぽい。

(かっこいいな〜…それにセクシーだし…)

『今世紀最後のセクシー系美少女』を自称するサトリも思わず見とれるほどだ。ジョーイも目を覚まし、男の持っていたマルマインを担架に乗せていた。

「後から行くから病室に運んでおいて。」
「ラッキー。」

看護婦を務めるたまごポケモンのラッキーが担架を運んでいった。その分類が示すとおり薄桃色のタマゴのような姿が愛くるしい。

「あの子、どうなるのかな、トレーナーの男は逮捕されちゃったし……」

運ばれていくマルマインを見ながらサトリが心配そうにつぶやいた。

「新たにトレーナーを募集するんだ。ポケモンに罪はないからね。」
「へぇ、だったらあたしがあの子もらって育てようかな。」

コタロウの説明に安心したサトリがそんなことを言い出すが、バカにしたようなニャースの言葉が邪魔をする。

「おみゃーにできるのかにゃ?マルマインは扱いが難しいポケモンじゃにゃ。」

だがそんな言葉にひるむサトリではない。反撃の言い返し攻撃だ。

「失礼ねー、できるわよ!」
「本当?」

その声にサトリが振り返るとそこにはジョーイがいた。急な問い掛けに少々驚きながらもニッコリとうなずくサトリ。

「は、はい!頑張って育てます!いいですか!?」
「ええ、じゃああなたのモンスターボール、カラのものを1つ貸して。新たにあなたのポケモンとして登録し直しておくわ。明日の朝になったら取りに来てね。それまでにあの子のダメージも回復しておくから。」
「わかりました。お願いします。あ〜あ、もう腹ぺこよ。何か食べましょう。」

サトリはカラのボールをジョーイに預けると、お腹をおさえながらそう言った。先ほど食堂の席に着いていたものの、まだ注文もしていなかった。騒動の中で忘れかけていたのを今思い出したのだ。

「そうだな、食堂へ戻ろう。」

2人と1匹は再び食堂へ向かった。



「あー美味しい。お腹がすいたときの食事は格別だわ。」

口のまわりを拭きながらサトリが言った。食べているのはご飯や味噌汁をメインにした和食だ。それを見るニャースは呆れ顔をしている。

「だからといって食べ過ぎじゃにゃ。」
「そう言うなよニャース。よく食べるのはいいことだ。」

そんな格言があるかどうかは知らないが、とにかくサトリはたくさん食べている。ご飯だけですでに5杯目だ。

「ゼニガメもおいしい?」
「ゼニ、ゼニ。」

サトリの足元でポケモンフーズをほおばるゼニガメもウンウンとうなずく。彼もまたかなり食欲旺盛だ。

「いつもそんにゃに食べてるのかにゃ?」
「うん。これぐらいは軽いわよ。」

これぐらいは軽い…驚きの発言だ。その割にサトリの体はスマートである。それもそのはず、食べた栄養分の多くは胸に行っているのだ。とても12歳のそれとは思えない。

「ハーイ、ごちそうさま〜♪」

サトリは最終的にご飯を7杯食べたという………



夜もふけた頃、センター内の寝室でサトリはふと目を覚まし、向かい側のベッドにいるコタロウに声をかけた。

「ねぇ…コタロウさん?」
「ん、何だい?」

コタロウはまだ眠りについていなかったようだ。サトリの話に耳を傾ける。

「ネオロケッツの男に向かっていった時のコタロウさん、すごくかっこよかったよ。」
「いや、別に……あいつが許せなかっただけさ。」

コタロウは少し照れくさそうに言った。

「でも、勇気がないとできないよ。あたしなんか怖くて震えてただけだし……んっ…」

喋っているサトリの頬は自分でも気付かないうちに赤くなっていた。胸がドキドキする。

(あれ、変だな……ただコタロウさんと喋ってるだけなのに……胸が熱くなる……こんなドキドキのしかた初めて……)
「どうしたんだ?」

コタロウが声をかけるとサトリはハッと我に返った。コタロウに悟られないように呼吸を整える。

「う、ううん、何でもないよ、じゃあそろそろ、おやすみ……」
「ああ、おやすみ。」

おやすみと言ったものの、サトリはなかなか寝付けなかった。今まで感じたことのない胸のときめきのために………



次の朝、サトリはセンターのフロントで先日ジョーイに預けていたボールを返してもらった。

「はい、大事に育ててあげてね。」
「ありがとうございます!よーし、マルマイン、ゲットだよ!!」

サトリはボールを掲げ、前から考えていたらしい決めゼリフを吐いた。旅立ってから初めてのポケモンゲットだ。

「さーて、ハナダシティ目指してレッツゴー!」

ボールをしまい、右手を振り上げるサトリ。それを聞いていたジョーイがアドバイスした。

「ハナダシティに行くのね。だったらここから北のトキワの森を抜けてニビシティ経由で行くのがいいわ。気をつけてね。」
「ハイ!!」

そのアドバイスにサトリは元気良く答えた。するとコタロウが続ける。

「だったらオレが道案内するよ。あそこは何度か通ったことがあるし。」
「にゃ!?ぼっちゃま、こんな小娘放っておくにゃ!」

その名乗り出にニャースは反対する。昨日の言い合いが原因でサトリは嫌われてしまったのだろうか。

「でも女の子1人じゃ危ないだろう?」
「にゃ…わかりましたにゃ。」

ニャースはチラチラとサトリの方を見ながらしぶしぶ了解した。別に嫌っているわけでもないらしい。その視線を感じたのかサトリがニャースに近づく。妙にニコニコしているのが怖い。

「ん〜?ニャースちゃんどこ見てるの〜?昨日の夕食の時も見てたよね〜このスケベ!!」
「い、今は見てたにゃ…で、でも…昨日は…見てにゃい…」

表情を豹変させニャースの肩をつかむサトリ。ニャースはガタガタと震えながら弁解している。

「まあ、いいわ。行きましょう!ありがとうジョーイさん。」

サトリはジョーイにお礼を言うと、そのまま駆け出した。

「アハハ、急がなくてもトキワの森は逃げたりしないよ。さぁ、行こうかニャース。ジョーイさん、お世話になりました。」
「いいえ。気を付けてね。」
「はい!」

返事を済ませるとコタロウはサトリの後を追いかけ始める。ニャースもしぶしぶついていく。ジョーイは手を振りながら一行を見送った。一歩先に行ったサトリがスキップしながら進んでいくのがわかる。

「やっほーっ!トキワの森ではどんなポケモンが待ってるのかな〜♪」



ポケモンセンターでの事件がきっかけでマルマインをゲットしたサトリ。次の目的地であるニビシティへと向け、昼なお暗いトキワの森へと進んでいくのだった………



第7話に続く。



改訂後記
タイトルが改訂前とほとんど変わってないなあ…『!』マークが付いただけか。あ、別に改訂したからといって必ずしもタイトルを変更するわけではないですよ…それはさておき、ニャースが一足早くスケベになりました(爆)。
ここでサトリとコタロウの年齢差を再確認。9歳差です。ハタ目からは少し年の離れた兄妹のようにも見えるかもしれません。まあ、イチャついてればそうは思われないでしょうが…ですがまだイチャつくには早いです。出会ったばかりですから…^^;

 

[一言感想]

 食べた分だけ胸に栄養がいくとは、なんてハイスペックな体でしょうか(ぇ)。
 けれども成長期は永久に続く訳でもないですし、今のうちから節制を心がけておいたほうがいいような気もします(苦笑)。
 コタロウに対しての想いに戸惑い気味なサトリですが、やはりこれが運命の出会いということになるのでしょうか。
 ニャースは口では何だかんだ言っても、しっかり鼻の下を伸ばしているようです。

 

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