ここは昼なお暗いトキワの森。虫ポケモンや鳥ポケモンが数多く生息している場所だ。

サトリ達はここを通ってニビシティへ向かうのだ。

「へぇ、森の中ってこんな感じなんだ。あ、何かいる!」
サトリの目の前にいたのはキャタピーだ。サトリはポケモン図鑑をそのキャタピーにかざしてボタンを押した。
「キャタピー・・・芋虫ポケモン、緑の皮膚に覆われている。成長すると糸をかけて蛹(さなぎ)になる。」
「よーし、ゲットしよう!」
と、サトリがモンスターボールを構えるより早く別のポケモンがキャタピーに飛び掛かった。ポッポだ。驚いたキャタピーは大慌てで逃げ出してしまった。
「あ〜っ、逃げられちゃった・・・えっと、あのポケモンは・・・」
「ポッポ・・・小鳥ポケモン、おとなしい性格で小さな虫を主食とする。」
「じゃああんたをゲットしてやるわ!行くのよマルマイン!!」
「ビビーッ!!」
「『スパーク』攻撃!!」
マルマインは電気を放った、が、まだわずかな電気しかたまっていなかったのでそれはポッポには届かなかった。
「ほれ見ろにゃ、マルマインは扱いが難しいと言ったじゃにゃーか。」
ニャースがサトリを馬鹿にする。サトリはムッとした顔をした。と、コタロウがサトリにアドバイスをした。
「そのマルマインはまだレベルがそれほど高くないから電気エネルギーをためるのに時間がかかるんだ。素早さを活かして攻撃をよけながらエネルギーをためるといい。」
「ありがとうコタロウさん。よーし、マルマイン、『転がる』攻撃よ!!」
マルマインは転がりだした。ポッポはその動きについていこうとするがやがて目を回してしまった。そして勢いをつけたマルマインがスパークしながら一撃を加えた。
「今だ! モンスターボールを!!」
「よーしっ行けぇっモンスターボール!!」
サトリはポッポに向けてモンスターボールを投げつけた。ボールはポッポに命中し、ポッポが中に吸い込まれる。中に入ったポッポは必死に抵抗するがやがておとなしくなり、キャプチャーマーカーの赤い光が青くなった。

 

 

 

第7話 トキワの森! ニドランを助けろ!!

 

 

 

「やったーっ!! ポッポ、ゲットだよ!!」
サトリは歓喜の声をあげ、右手でVサインをした。
「ビッビビビー!!」
マルマインも喜んでいる。ゲットだぜ、と言っているらしい。
「何を浮かれているにゃ。ぼっちゃまのアドバイスがにゃかったらゲットできにゃかったのにゃ!!」
「あんたは黙っててーっ! ハッ、コ、コタロウさんありがとう。おかげでゲットできたわ。」
ニャースを怒鳴りつけ、サトリはコタロウに礼を言った。
「いや、礼には及ばないよ。これからもその調子でどんどんゲットできるといいな。」
「うん!戻ってマルマイン。」
サトリは元気良く返事をした。と、昨日の夜と同じように胸がドキドキし始めた。

(あれ・・・?また・・・)

その時、近くの草むらがガサガサとうごめいた。そこから1匹のポケモンが這いだしてきた。左の前足に深い傷を負っている。
「このポケモンは・・・ニドランの♀だ。しかしこの傷は・・・」
コタロウの言葉にサトリが図鑑をかざした。
「ニドラン(♀)・・・毒針ポケモン、針は小さくても毒は強力。♀の方が角が小さい。」
「ニドランか・・・この傷・・・何かに噛まれたようだわ。」
「ああ、だがこの森にはこれほど深い傷痕をつけるほど強い牙を持つポケモンはいないはずだ。ということはトレーナーの持つポケモンか・・・誰だっ!?」
コタロウが何かの気配を感じ、後ろを振り返った。そこには10代後半くらいの少年がいた。その傍らには暗黒(ダーク)ポケモン、ヘルガーが。むき出しにしたその牙には血がこびりついている。少年が口を開いた。
「そのニドランをこっちへ渡してもらおう。」
暗めの声だ。
「ちょっと、この子をこんな目に遭わせたのはあんたのそのポケモンなの!?」
サトリが気丈にも言い返す。
「そうだ、そいつはオレがゲットしようとしたところを逃げられたんだ。せっかくそいつの親を殺しておびき出したのにな。」
「な・・・」
「親を殺しただと・・・」
「にゃんて卑劣にゃ・・・」
少年は続けた。
「逃げたそいつを追いかけたがこのヘルガーが噛みついたところで草むらに逃げ込まれてな。傷物になっちまった。しかたがないからそいつも親のところに送ってやる。さあ、渡せ。」
話を聞いている2人と1匹に怒りの感情がふつふつと沸き上がった。
「そんな・・・非道いことを・・・」
「許せない・・・」
「最低の人間じゃにゃ・・・」
口々に言われても少年の方はむしろ得意げだ。
「非道い? 許せない? 最低だと!? 何を言う、ポケモンなど人間の為に使われる奴隷のようなものなのだぞ、奴隷をどう扱おうと人間の勝手、何が悪い!!」
「違う!! ポケモンは奴隷なんかじゃないわ!! 人間の友達、仲間なのよ!!」
サトリの声が怒りに震えている。そのサトリをコタロウが落ち着かせた。
「サトリちゃん、こいつには恐らく何を言っても通じない。バトルでわからせてやる。オレが戦うから君は下がっていろ。」
「コタロウさん、あたしも戦う。あたしだってあいつをコテンパンにしたいもの。」
「へっ、お熱いな、見ててイライラするぜ、まあいい、身の程ってやつを教えてやろう、出ろっノクタス!!」
「ノクタス・・・案山子草(かかしぐさ)ポケモン、真夜中、砂漠を歩く旅人の後ろを集団でくっついて歩く。」
図鑑をしまい、サトリはモンスターボールを構えた。
「行くのよ、ゼニガメッ!!」
「ゼニゼニッ!!」
「行けっ、アーマルド!!」
「グォオーン!!」
コタロウが出したのは甲冑ポケモン、アーマルドだ。古代ポケモンの化石から復活させたポケモンだが、何故コタロウが持っているのかはまた今度の機会に。

(ニドラン・・・待っててね・・・こいつを倒してすぐにポケモンセンターに連れていってあげるから・・・)

サトリはニドランの方をチラッと見ながら心の中で呟いた。
「行くぜっ! ヘルガー、『スモッグ』!!ノクタスはちっこい方に『ニードルアーム』!!」
「ヘルッ!!」
「ノクッ・・・!」
少年側の先行だ。だがゼニガメとアーマルドは攻撃を難なくかわした。
「なにっ、速い!!そんな馬鹿な!!」
「ゼニガメ、『水鉄砲』!!」
「アーマルド、『メタルクロー』!!」
水鉄砲はヘルガーによけられてしまった。が、アーマルドの放ったメタルクローはノクタスの急所を捉えた。ノクタスはその場にうつぶせになって倒れた。
「くそっ、戻れノクタス! 使えない奴だぜ・・・ヘルガー! 奴ら2匹まとめて噛み砕けっ!!」
「ヘルッ!!」
「アーマルド! ゼニガメを『守る』んだ!!」
アーマルドは守りの体制に入り、ヘルガーの攻撃を跳ね返した。
「今だ、サトリちゃん!!」
「わかったわ! ゼニガメっ、怒りの一撃をくらわすのよ!!」
「ゼェーーーニィーーーッ!!!」
ゼニガメの口から放たれた水がいくつにも分かれていく。分かれた水の一撃一撃がヘルガーを襲い、吹っ飛ばした。少年はその巻き添えを食い、後ろに生えていた木に叩きつけられた。
「ぐっ・・・馬鹿な・・・あのちっこい奴からここまで強烈な攻撃が来るなんて・・・戻れ、ヘルガー!! くそっ、覚えておけよ!!」
少年は捨て台詞を吐いて逃げ出してしまった。
「戻って、ゼニガメ。逃げられちゃった。あいつは何者なのかしら・・・」
サトリは少し悔しそうだ。
「聞いたことがあるのを思い出したにゃ、あの顔、あの目つき、あいつはポケモンキラー、ダンテなのじゃにゃ!」
隠れていたニャースが語りだした。
「ポケモン・・・」
「キラー・・・?」
「ポケモンキラーとは強力なポケモンを使い人やポケモンの殺害を請け負う殺し屋じゃにゃ。あいつはその道では有名なのじゃにゃ。」
「殺し屋・・・ポケモンをそんなことに使うなんて・・・そうだ! ニドランを早くポケモンセンターへ!」
「急ごう、早くしないと手遅れになってしまう、ここをまっすぐ行けばニビシティだ。」
サトリはニドランを抱きかかえて走り出した。コタロウ達も走り出す。

(お願い・・・間に合って・・・)

サトリは走りながらずっと祈り続けていた。



目の前に光が広がる。森を抜けた。すぐそこにニビシティが見える。2人と1匹は更に走る速度を上げた。ニビシティに入った。
「ハァ・・・ハァ・・・ポケモンセンターはどっち!?」
「こっちだ!! 早く!!」
サトリはオニスズメに追われていた時よりも全力で走った。全力で走り続けた距離、記録更新だ。そしてやっとセンターに着いた。
「お願いします! この子を一刻も早く・・・ゼェ、ゼェ・・・」
センターに入るなり、サトリは大声で叫んだ。何ごとかと医務室から出てきたのはトキワのセンターにいたジョーイと瓜二つの女性だった。
「えっ・・・?」
サトリはなんで? と思ったが考え事をしている時間はない。
「早くこの子を・・・ポケモンキラーにやられたんです・・・。」
「えっ!? まぁ非道い傷、担架を!!」
「ラッキー。」
「ラッキー。」
ジョーイに似た女性に呼ばれ、ラッキー達がニドランを担架に乗せ、運んでいった。サトリはそれを不安そうに見つめている。
「あの子・・・助かりますか・・・? えっと・・・ジョーイさん?」
「ええ、私はジョーイよ。トキワにいたのは私の妹。似てるでしょ? 今すぐにあの子の治療に取りかかるわ。待ってて。」
そう言うとジョーイはニドランの運ばれていった治療室に入っていった。
「大丈夫か、間に合ったか!?」
サトリに僅かに遅れてコタロウがセンターに到着した。
「今治療が始まった。ねぇ、・・・あの子、助かるよね?」
コタロウを見つめながらサトリが言う。その目は少し涙ぐんでいる。
「あぁ、君が全力で連れてきたんだ。助けたいっていう君の気持ちがあの子にも伝わったはずだぜ。だからその涙、早く拭けよ。」
そう言うとコタロウはサトリにハンカチを貸した。
「あ、ありがとう・・・」
ハンカチを受け取ったサトリの胸がまたドキドキし始めた。

(いつも何なの!? このドキドキ・・・。トキワのポケモンセンター、トキワの森、それに今・・・。あたしどうしちゃったんだろう、こんな時に・・・これってまさか・・・)

「ぼっちゃま〜、先に行かにゃいでくだされにゃ〜。」
間の抜けた声でサトリは我に返った。すっかり忘れ去られていたニャースが今ようやく到着したのだ。
「年寄りを置いていくものではにゃーい!!」
と、大声を出した瞬間、ニャースの腰がぐきっと音を立てた。ぎっくり腰だ。
「ぎゃにゃーーーーーっ!!!!」
ニャースの雄叫びが太陽の沈みかけたニビシティに響き渡った。



第8話に続く。



あとがきにかえて
今回登場のポケモンキラー、ダンテですが、ここで彼の名前の由来についてご説明しましょう。
皆さん、『神曲』はご存知ですか? 彼の名前はその神曲を作ったイタリアの詩人、ダンテ・アリギエーリからきているのです。彼がポケモンキラーになったのは過去に何かがあったのですがそれはまたの機会に。

 

[一言感想]

 そういえばダイパに入って、アニメではポケモンハンターなるものが登場したと聞きました(見てはいませんが……)。
 この話自体は相当前に書かれたものですが、偶然にも何かしらの因果を感じずにはいられません。
 もっとも、いつの世もポケモンを道具のように扱う者はいるという事なのかも知れませんが……。
 サトリの想いは徐々に強くなってきているようです。
 一方ニャースは着実にマスコット的地位を確立しつつありますが(?)、ぎっくり腰はお大事に(苦笑)。

 

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