ニビシティのポケモンセンターの治療室、ジョーイとラッキー達が懸命な治療を続けていた。その間サトリはずっと祈り続けていた。
(ニドラン・・・どうか元気になって・・・)


やがてジョーイ達が治療室から出てきた。サトリは居ても立ってもいられなくなりジョーイに駆け寄った。
「ニドランは・・・どうなんですか?助かりましたか!?」
「ええ、大丈夫よ。運ばれてくるのがもしあと30分遅れていたら左前足を切断するしかなかったわ。」
担架を押しながらジョーイがそう言った。
「良かった・・・ありがとうございます・・・。」
サトリはホッと肩をなで下ろした。
「そうか、良かった。だが心の傷が生じているかもしれない。親を殺されたんだからな。」
コタロウが真剣な顔つきで腕組みをしている。
「そうなの・・・この子の事、詳しく話してもらえるかしら?」
ジョーイも真剣な顔でコタロウに尋ねた。コタロウは話し始めた。トキワの森で傷ついていたこと、ポケモンキラーに狙われていたこと・・・。
「なるほど・・・ポケモンキラーがいたなんて・・・警察に連絡しておくわ。」
ジョーイが受話器を取りダイヤルを押そうとしたその時
「あっ、目を開けた!!」
サトリの声がした。みんなそちらの方を向いた。サトリの言ったとおりニドランが目を開けていた。が、少し様子がおかしい。おびえているようだ。
「どうしたの?」
「人を怖がっている?」
「無理もにゃい・・・」
「なんてこと・・・」

 

 

 

第8話 サトリ、ママになる(えっ!?)

 

 

 

ニドランがおびえているのも無理はない。親を殺され、追いかけられ、更に噛みつかれて傷を負ったのだ。そしてそれをやったポケモンに指示を出したのは人間なのだ。
「大丈夫、あたし達は敵じゃないわ。」
サトリが右手を差し出し撫でようとした。が、ニドランは恐怖のあまりサトリの人差し指に噛みついたのだ。
「痛ッ・・・!」
サトリは人差し指を押さえた。その瞬間、ニドランは担架から飛び降りて外へ走っていってしまった。
「サトリちゃん、大丈夫か!?くっ・・・ニャース!ニドランを追いかけてくれ!!」
「と言われましてもわしは今ぎっくり腰で走れないのでありますにゃ。」
ニャースは肝心なときに役に立たなかった。最も今までも役に立った試しはないのだが。と、サトリがニドランを追い外へ走り出した。
「だめよ!傷の消毒をしないと・・・」
ジョーイの声もサトリには届かなかった。追いかけたいところだが医者が仕事をすっぽかして外に出るわけにはいかない。
「オレが追いかけます。消毒薬を貸してください!」
コタロウが言った。
「わかったわ、お願いします。」
ジョーイは棚から消毒薬(人間用)を取り出しコタロウに手渡した。
「ありがとう、ニャースを頼みます!」
そう言うとコタロウは外へ走っていった。






一方サトリは市街地に出ていた。だがニドランは見つからない。頭の中を不安がよぎる。治療を終えてはいるが傷口は完全にふさがったわけではない。無理をすれば傷口が大きく開くかもしれないのだ。と、小さな影を見つけた。
「ニドラ・・・ン?違うか・・・」
その影はコラッタだった。サトリはため息をついた。その時、何か声が聞こえた。
「ニド・・・」
「えっ・・・?」
サトリは耳をすませた。確かにニドランの声だ。静かに声の聞こえた方へ向かう。いた。ビルの谷間に隠れるようにうずくまって震えている。
「こんなところにいたの・・・大丈夫、あたしは味方よ。怖がらなくていいの、おいで。」
サトリはゆっくりと近づき両手を差し出す。
「ニド・・・」
「さぁ、もう怖い人はいないのよ、だからこっちへ来て。」
戸惑っていたニドランも、サトリに敵意がないことをようやく感じ取ったのか、ゆっくりと近付き、自分が噛みついたサトリの指を舐めた。
「ありがとう・・・さぁ、行こうか。」
サトリはニドランを抱き、ポケモンセンターへの道を歩き始めた。ニドランの傷口もどうやら何ともなっていないようだ。
「ねぇ・・・ニドラン?」
サトリがニドランに尋ねた。
「ニド?」
ニドランはサトリを見上げた。
「もし、あたしで良ければ・・・あなたのママに・・・なってもいいかな?」
ニドランは何も言わずに首を縦に振った。言葉が通じたようだ。と、そこへコタロウが走ってきた。
「サトリちゃん!探したぜ、指を出すんだ、消毒しなくちゃ。 ! そうか、ニドランを見つけたのか、良かった。」
「うん、あたし、この子のママになることにしたの。この子はまだ親が必要だもの。」
指を差し出しながらサトリが言った。
「そうか、羨ましいな、君みたいな女の子がママになるなんてね。」
「コタロウさん、冗談やめてよ、笑っちゃうじゃない。ギャアーッしみるっ!!」
サトリの笑い声は自分自身の叫び声によって打ち消された。






「ニドランは・・・そうね、3日は安静にした方がいいわ。ポケモンも子供は傷の治りが早いからそれぐらいで傷口も完全にふさがるはずよ。」
ジョーイが言った。
「わかりました。じゃあそれまで旅はお預けね。」
「そうだ、だったらポケモンジムに挑戦したらいい。」
コタロウがサトリに声をかけた。
「ジムに挑戦?」
「そうさ、カントー各地にあるジムのリーダーとのポケモンバトルに勝ち、バッジをゲットしていく。そのバッジが8つ以上そろえばポケモンリーグのカントー地区大会への出場権が与えられるんだ。」
「それは知ってるわ。ママもおじいちゃんもジムリーダーだもの。」
サトリの言葉にコタロウは驚いた。
「そうだったのか!? じゃあ君はマサラタウンの老師の孫、ということはハナダジムのサトミさんの娘なのかい!?」
「ええ、そうだけど・・・コタロウさん、おじいちゃんやママとバトルしたことあるの?」
「ああ、手強かったよ。サトミさんは水ポケモンの扱いにかけては達人レベル、老師はカントー最強のジムリーダーと言ってもいい。」






その時、マサラタウンでは・・・
「はっくしょん!風邪かのう?体調に気をつけんとな。」
「ピガヂュウ。」






ハナダシティでも・・・
「はっ、はっくしょん!・・・またサトミさんって美人でナイスバディとか誰かが噂してるのかしら〜?」






「そうね、挑戦しようかな、明日にでも。あたしがいない間はニドランの世話、任せていい?」
「わかった。任されたよ。」
コタロウは快く引き受けてくれた。
「まあ、お似合いの夫婦ね。」
ジョーイが2人をからかった。
「えっそんな・・・ハハハ・・・」
夜のニビシティに明るい笑い声がこだました。






「・・・わしの出番が殆どにゃかったのじゃにゃ・・・」
ラッキーに腰のマッサージをされながら、ニャースはがっくりした。






第9話に続く。






あとがきにかえて
くしゃみには毎年悩まされています。スギ花粉症なもので(何)。ゴールデンウィークあたりまでは地獄の毎日ですよ。いやマジで。
ところで3回くしゃみをしたらそれは美人と噂されていると聞いたことがありますが、はてさて?
男だったら美男の噂かな?(笑)

 

[一言感想]

 ニドランの心の傷は、サトリママがゆっくり癒していってあげてほしいです。
 そして将来的にはコタロウと本当の娘を……(ry
 しかしサトミさんは、どこまでもプラス思考というか、その自信は賞賛に値するかも知れません。
 一方で出番が大して無かったニャースですが、次回の立ち振る舞いに期待することにします。

 

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