ポッポが全速力でイワークに突っ込んでいく。
「何を考えている、血迷ったか!?」
イワークの上半身(?)が突っ込んでくるポッポに命中した。が、確実に戦闘不能のはずのポッポはまだ羽ばたいている。
「馬鹿な・・・!あの勢いの体当たりに耐えただと・・・!?ならば・・・『のしかかり』だ!!」
「グオォーーッ!!」
イワークの巨体がポッポめがけて振り下ろされた。落下速度がつく分体当たりより威力は上だ。
「『電光石火』!!」
サトリはまたさっきと同じ指示を出した。ポッポがイワークに向かっていく。が、攻撃は跳ね返されてしまった。
「これで終わったな。2回もイワークの攻撃を喰らって戦闘不能にならない小型ポケモンなど存在しない。」
「さあ、どうかしら?」
ポッポはまだ力尽きていない。ジロウは自分の目を疑った。
「馬鹿なっ!どういうことだ!?」
第10話 ニビジムのバトル(後)
「なるほど、その手があったか!」
コタロウが相槌(あいづち)を打った。
「わざと相手に向かってぶつかり攻撃の勢いを落とさせたんだ!」
「そうよ、さすがコタロウさんvよけきれないならダメージを最小に抑えればいいのよ。」
どんなに勢いがついていても標的に当たる瞬間にその勢いが落ちるか止まるかしてしまえば威力は弱まってしまう。勢いを持続してこそ物理攻撃は100%の威力を発揮できるのだ。
「そうか、考えたな、だがいつまで続けられる?攻撃によるダメージは免れないぞ。君の方に決定打がない分こちらが優勢なのだ。」
「何よ、いい年こいて負け惜しみはやめた方がいいわよ!」
だが、ジロウの言うとおりである。飛行タイプのポッポには岩タイプのイワークに対する決定打はないはずだ。
「サトリちゃん・・・どうするつもりだ・・・?」
「ニド?」
イワークはポッポと睨み合ったまま動かない。ジロウが口を開いた。
「私のイワークはいわば山。動かざること山の如し。その山を動かさない限り君に勝ち目はないぞ。」
サトリはどういうことかわからない。考えてみた。
(山を動かす・・・どういうことかしら?もう何度も動いているじゃない・・・!そうだわ、そういうことね!!)
「ポッポ!イワークに思い切り威張ってやりなさい!!」
「ポッポー」
ポッポはイワークに尻を向け後ろ目で見ながら小馬鹿にするように尻を振った。それを見たイワークはカチンときた。
「グオオォーーーン!!」
オレを馬鹿にしやがってとでも言いたそうな顔でポッポに向かって突進してきた。その時、動かざる山が動いた。そう、今まで軸にしてきた体の下部が地から離れたのだ。
「怒りに身を任せた単純一直線の攻撃なんて簡単にかわせるわ!ポッポ!引き付けてからかわすのよ!!」
突っ込んできたイワークをポッポは紙一重のところでよけた。よけられたイワークの先には岩が。勢い余ったイワークはその岩に頭から激突した。流石(さすが)のイワークも脳震盪(のうしんとう)を起こし気絶してしまった。
「うむぅ・・・やりおるな、戻れイワーク!!だが2体目のポケモンがまだいる、決着はついていないぞ!」
「そうね、だったらあたしも2体目で勝負するわ!ポッポ、お疲れさま。」
2人はお互いに1体目のポケモンを下げた。
「あたしの2番手はこの子!行くのよゼニガメ!!」
「ゼニゼニッ!!」
サトリはゼニガメである。ジロウの使う岩ポケモンに有利な水タイプだ。
「やはり水タイプで来たか、ならばこいつが適任、行けっ、ノズパス!!」
見たことのないポケモンだ。その姿は南太平洋に浮かぶイースター島のモアイ像のようにも見える。サトリは図鑑を開いてみた。
「ノズパス・・・コンパスポケモン、磁石の鼻はいつも北を向いている。」
なるほど、あのノズパスも確かにゼニガメのいる方向とは別の方向に顔・・・というか鼻を向けている。その方向が北なのだ。
「どうでもいいけどそっぽ向いてちゃ勝てないわよ!ゼニガメ、『水鉄砲』!!」
「ノズパス、『砂嵐』!!」
ゼニガメの口から水が放たれると同時にノズパスの周りの土が細かく舞い上がり砂となり渦を巻いた。
「なっ!?」
ゼニガメの放った水鉄砲が砂に吸収されてノズパスに届かない。
「砂は水を吸収するのだ。その程度の水鉄砲ではこの砂嵐は破れんぞ。今度はこちらの番!ノズパス、砂嵐を広げるのだ!!」
「ヴォ・・・オーン!」
ノズパスの声と共に砂嵐が広がりスタジアム全体を覆った。ポケモン達の姿も見えなくなるくらいだ。
「サトリちゃん!砂嵐はポケモンの体力を少しずつ削っていく、気をつけろ!!」
「ニドッ、ニドッ!」
「わかったわ、ゼニガメ、聞こえる!?『からにこもる』のよ!!」
「ゼニィ!」
姿は見えないがサトリの声はゼニガメに届いたようだ。
やがて砂嵐がおさまった。
「チャンス!ゼニガメ、相手はスキだらけよ、『水鉄砲』一点集中!!」
「ゼニーーーッ!!」
ゼニガメは甲羅から顔と手足を出し水を吹いた。その水がノズパスに命中しそうになったとき、ジロウが叫んだ。
「ノズパス、『10万ボルト』!!」
「ウォーン!」
ノズパスの鼻から電気が放たれた。次の瞬間水鉄砲がノズパスに命中、それはつまりノズパスとゼニガメが水で繋がったということだ。当然電気は水鉄砲を伝ってゼニガメの方にも流れていった。
「ゼニニーッ!!」
ゼニガメは水タイプなので電気に弱い。かなりのダメージを受けたようだ。
「ゼニガメ、しっかり!」
「さあ、どうする?」
「なんてこと・・・これじゃあ・・・そうだ!ゼニガメ、『泡』よ!!」
「ゼニ!」
ゼニガメの口から無数の泡が出てきた。
「それがどうした!?そんな小技は効かないぞ、ノズパス、『10万ボルト』!!」
「かかったわね!」
「何!?」
ゼニガメの出した泡が10万ボルトの電撃を吸収していく。電気はゼニガメには届かない。しかもノズパスは電気を放った直後でスキだらけだ。
「今よ、横から回り込んで『水鉄砲』!!」
「『砂嵐』・・・くっ、間に合わない!」
砂嵐がノズパスを包む前にゼニガメの水鉄砲がクリーンヒットした。ノズパスは吹っ飛ばされ岩に激突して気絶した。
「なんということだ・・・マサラから来たトレーナーに3連敗してしまうとは・・・」
ジロウはがっくりと肩を落とした。サトリの勝利が決まったのだ。彼女は思わず叫んだ。
「やった・・・!やった〜!!やったよ〜っ!!!初めてのジム戦に勝った〜!!!!」
「やったな、サトリちゃん!!」
「ニドッ、ニドッ!!」
と、大喜びのサトリにジロウが声をかけた。
「君には驚かされた。私の完敗だ。さあ、このポケモンリーグカントー支部公認グレーバッジを受け取ってくれ!!」
「これが・・・よーしっ!グレーバッジ、ゲットだよ!!」
「ゼニゼニィ!!」
サトリ達がジムを出るとそこにはニャースが仰向けに倒れていた。コタロウが軽くニャースの顔をひっぱたいて起こそうとした。
「おい、起きろ、行くぞ。」
「にゃはっ・・・あっ、ぼっちゃま!小娘も・・・」
「あたしはサトリ!いい加減おぼえてよ!!」
「もうジム戦終わったのかにゃ、おみゃーの負けっぷりを見られにゃくて残念じゃにゃ。」
ニャースがにやけた顔で言った。そのニャースにコタロウが言った。
「起きてても見られなかったよ、サトリちゃんは勝ったんだからね。」
コタロウの言葉にニャースは驚いた。
「にゃんと?勝ったにゃか?にゃかにゃかやるにゃ、誉めてやるのじゃにゃ。」
ニャースは何故か偉そうだ。サトリはニャースの頭をコツンと叩いた。
「何よ偉そうに、さっ行きましょコタロウさん♪」
そう言うとサトリはコタロウと腕を組んだ。逆の腕でニドランを抱きながら。
「にゃ!?ぼっちゃま!!」
「どうした?腕を組むくらい誰でもするだろ。さ、ポケモンセンターに戻ろうぜ。」
「うん、行こ!」
「ニド!」
「そう、遅いと思ってたらジムに寄ってたの。結果はどうだった?」
ジョーイが尋ねた。
「ウフフ、ほら見てっジャーン!!」
サトリは自分の口で効果音を出しバッジをかかげた。
「まあ、おめでとう!さぁ、じゃあポケモンを貸して、回復するから。」
「どういたしまして!じゃあお願いします。さ、ニドランもゆっくり休んで。」
「ニド。」
サトリはモンスターボールをジョーイに預け、ニドランをラッキーの運んできた担架に乗せた。
「よろしくお願いね。」
「ラッキー。」
そして早くも3日(ジム戦の日も入れて)経ち、ニドランの左前足の傷も完全にふさがった。
「もう大丈夫、走ったりしても平気よ。傷痕は残ってしまったけど・・・。」
「ありがとうございます。さっ行きましょ。?ニドランどうしたの?」
「ニドッ、ニドッ!」
ニドランは置いてあるサトリの荷物からモンスターボールを取り出し、中央のボタンを口の先で押した。ニドランはその中に吸い込まれキャプチャーマーカーの赤い光が青くなった。
「自分の意志でモンスターボールに入った・・・」
コタロウが呟いた。ジョーイも続ける。
「それはサトリちゃん、あなたとこのニドランとの間に絆ができたからよ。」
「進んでおみゃーのポケモンになるにゃんて物好きじゃにゃ〜。」サトリはニャースの頭にげんこつを落とし、ボールを拾い上げた。「ニドラン・・・わかった!・・・よーしっ、ニドラン、ゲットだよ!!」
「いてて、にゃにするのじゃにゃ!」
「あんたがいつも怒らせるようなこと言うからよ!!」
また言い合いが始まった。
「まぁ、サトリちゃん落ち着いて・・・ニャースもいつもサトリちゃんに対して言い方きついぞ、どうしてだ?」
「わしはこいつが嫌いじゃにゃ!」
「あらあら、夫婦の間を良く思わない舅(しゅうと)さんみたいね。」
ジョーイが冗談っぽく言った。サトリは顔を真っ赤にした。今回は恐らくオクタンより赤いであろう。
「あっ・・・ははっ・・・やめてくださいよぉ、あっ、そろそろ行こう、ハナダシティへ。」
「そうなの、ハナダシティならここから東のオツキミ山を越えて行くといいわ。気をつけてね。」
「そうですか、ありがとうございます。じゃあお世話になりました。」
「ひとつ、いい?ニドランの心の傷は完全にふさがったわけじゃないわ。ママであるあなたが時間をかけて癒していかなければならないの。責任重大よ、わかった?」
出発しようとしたサトリにジョーイが言った。
「はい、わかりました!それじゃあ、ありがとうございました!」
2人と1匹はポケモンセンターを後にした。東にそびえるオツキミ山を越えれば、目指すハナダシティはすぐそこだ。
第11話に続く。
あとがきにかえて
なんだかんだでもう10話、あっという間です。でもサトリの旅は始まったばかり、まだまだ続きます。これからも『今世紀最後のセクシー系美少女』サトリを応援してあげてください。
[一言感想]
腕を組むぐらい、誰でも……しないと思います(ぇ)。
どうもコタロウは、そっち方面の認識がまだまだ疎いようですね。
そして、ついに初めてのバッジを手に入れたサトリ。
同様にコタロウもゲットできるのか、それはサトリ次第です(何)。