ニビジムのリーダー、ジロウとのバトルに勝ち、グレーバッジをゲットしたサトリは、コタロウやニャースと一緒にオツキミ山への道を歩いていた。
「疲れたーっ、まだオツキミ山に着かないの〜?」
「にゃん弱(軟弱)じゃにゃ〜おみゃーは。」
「ほら、ここからオツキミ山だよ。ここを登ったところの洞窟を抜けるんだ。」
立て看板を指差してコタロウが言った。
「洞窟かぁ、どんなポケモンがいるのかな?」
「岩ポケモンや蝙蝠(こうもり)ポケモンが主にいるんだ。あとこの山には有名なピッピが生息しているんだよ。」
「月の石もあるのじゃにゃ。この山の色々にゃところに埋まっているのじゃにゃ。」
「へぇ、ピッピかぁ、ゲットしたいなぁ、その月の石ってのも気になるし。早く行きましょ!」
さっきまでヘロヘロだったサトリが急に元気になって坂を登りだした。コタロウとニャースはゆっくりとついていった。
「ポケモンの事となると元気になるんだなァ、昔のオレみたいだ。」
「そんにゃ性格の人間を昔追いかけていた事があったにゃ〜、ここにも苦い思い出が・・・」
「おじいさまやおばあさまと一緒に旅をしていた頃か?」
「そうですじゃにゃ。」
2人(1人と1匹?)が話していると坂の上からサトリの声が聞こえてきた。
「来てーっ!見たことないポケモンがいるッ!!」
「何だって!?」
「にゃ!?」
コタロウ達が急いで坂を登っていくとサトリの目の先に見慣れないポケモンがいた。全身が白く、顔は黒い。頭には刀のような角がある。次の瞬間、そのポケモンは高くジャンプし山の頂上の方へ行ってしまった。2人と1匹はしばらくその場で呆然としていた。
第11話 オツキミ山での陰謀(前)
「何だったのかしら、さっきのポケモンは・・・」
人工的な灯りはあるものの薄暗い洞窟の中を歩きながらサトリは呟いた。上の方を無数のズバットが飛んでいる。
「見たことがないポケモンだったな。ハナダシティに着いたら調べてみようか。」
「そうね、でもその前にママに会おうよ、いいでしょ?」
「そうだな、サトミさん、オレを憶えているかな?」
「ピッピ」
「そう、ピッピ・・・え!?」
コタロウは驚いた。目の前にピッピがいたのだ。有名とはいえピッピは発見数の少ないポケモン、実物を見たことのある人は殆どいない。まして持っている人間はほんの一握りである。驚くのも無理はない。一方のサトリは大はしゃぎ。目をキラキラさせている。
「えーっ、嘘ーっ!?本物のピッピだーッ、可愛いーーっ、さっそくゲットしちゃおーっ!!」
「ピッピ、ピピッ、ピー!!」
「えっ、何!?」
ピッピは何か言いたそうだ。と、ニャースが通訳を始めた。数少ないニャースの見せ場である。
「ふむふむ・・・にゃるほど、怪しげにゃ奴らが山のあちこちを切り崩していると言っているにゃ。このままでは山がにゃくにゃってしまうから困っているそうじゃにゃ。」
「怪しげな奴らだって!?」
「もしかしてネオロケッツかしら?」
「それはわからない。だけど山を好き勝手に切り崩してポケモン達の住む場所を奪うなんて許せない。行こう!」
「ええ!!」
「ピッピ、ピピピッ、ピー!!」
「こっちで奴ららしき人間を見たと言っているにゃ。」
「よし、案内してくれ!」
一方その頃、洞窟の少し奥の方で話している2人の男がいた。彼等の服はヤミカラスのように黒く、胸には血のように赤い「NR」の文字があった。
「おい、この山を切り崩して一体どうするつもりなんだ?」
「何だ、そんなことも知らずにやっていたのか?月の石だよ。この山のあちこちに月の石が大量に埋まっているんだ。だから山を掘り起こして月の石を取り出すのさ。」
「そうか、何で石ころなんか集めてるのかと思ったぜ。」
「お前って奴は・・・ん?誰だ?」
そこへやってきたのはサトリ達だった。
「あんた達こそ誰よ!山を切り崩してる怪しげな奴らってあんた達!?」
コタロウが続けた。
「その胸のマーク・・・NR・・・ネオロケッツか!?」
「ロケット団のにゃ(名)を語る悪党どもじゃにゃ!!」
男達は少し引いたがすぐに言い返した。
「いかにもオレ達はネオロケッツ。」
「この山にある月の石は全て我々の物。黙って帰れば危害は加えない。」
それを聞いたサトリとコタロウは2人の男を小馬鹿にするような笑みを浮かべた。
「何言ってんのよ。下っ端にやられるあたし達だと思って?」
「今言った言葉、そっくり返すぜ。」
「帰るにゃら今のうちじゃにゃー。」
「ピッピ」
ニャースとピッピにまで馬鹿にされた下っ端達は激怒した。
「てめーら!!何故オレ達が下っ端だとわかった!?」
「そうだ!素人目ではわからないはずだ!!」
「あのねぇ・・・」
「こんなところで見回りか何かは知らないがウロウロしていればすぐわかるぜ。」
「ええーい、ならば下っ端の力見せてやるわ!出ろっズバット!!」
「オレもやってやるぜ、行けっデルビル!!」
「キィキィ!」
「デルルル・・・」
下っ端2人がポケモンを出した。サトリ達もモンスターボールを構える。
「行くのよ、マルマイン!」
「頼むぞ、サンダース!」
「ビビーッ!」
「サンッ!!」
「マルマイン、『スピードスター』!!」
「サンダース、『ミサイル針』!!」
2体のポケモンが同時に飛び道具系の技を放った。スピードスターはズバットを撃ち落とし、ミサイル針はデルビルの急所を捉えた。バトルはあっけなく終了を迎えた。
「育てが足りないわね。」
「ネオロケッツも大したことないな。」
「くそっ戻れ!こうなったら幹部様に報告だ!逃げろーっ!!」
2人は一目散に更に奥へ逃げていってしまった。
「追いましょう!」
「よしっ!」
「幹部もまとめて倒すにゃー!」
「ピッピ!」
更に奥、天井部分が開いて日が差し込んでいる場所に巨大な隕石のような物があった。そこに1人の男がいた。
「月の石の本体・・・いつ見ても美しい・・・」
「フッ・・・まるで私のようだ。」
初めからいた男とは別にもう1人の男がその場に突然現れた。その傍らには人型ポケモン、ルージュラがいる。
「お前は、ナルシス。何故ここに来た。」
初めからいた男が後から現れたナルシスという男を睨みつけた。するとナルシスは静かに口を開いた。
「お前がミスをしないかどうか心配でな。エコーよ、お前は以前からミスが多い。トキワシティの件も下っ端1人に任せなどしなければ上手くいったのだぞ。」
「なんだと!あれは予定外の邪魔が入ったからだ!!」
と、慌ただしい声が聞こえてきた。
「エコー様〜っ!ん?おぉ、ナルシス様も!」
「ハァハァ、この洞窟に侵入者が!」
さっきの2人だ。更に後ろからサトリ達が追いかけてきた。
「あんたが幹部ね!!」
「この山の月の石をどうするつもりだ!?」
予定外の来客に少し驚いたエコーだが、それを聞いて口を開き始めた。
「その通りだ。オレはネオロケッツ幹部の1人、エコー。首領の命令によりこの山の月の石を集めているのだ。月の石は特定のポケモンの進化に使えることが有名だが最近の研究でそのエネルギーを利用した兵器が造れることがわかったのだ。ネオロケッツにはその兵器を造るだけの技術も資金もある。つまり月の石さえ手に入れば世界は簡単に我々の手中に入るということだ。ハッハッハ!!」
エコーは得意げに語ったが、他の面々はあきれ顔をした。
「エコー様・・・そんなに喋ってしまっては・・・」
「敵に情報提供してどうするんですかっ!」
「醜いな、エコーよ。」
(やべえ、悪い癖が出ちまった・・・)
エコーは焦った。ちらっとサトリ達の方を見た。
「情報提供、ありがとう。」
「そこまで知ったからには黙っては帰れないな。」
「覚悟するのじゃにゃ!」
「ピッピ!」
敵に礼を言われるなんて・・・こうなったらこいつらを倒すしかない。そう考えたエコーは腰のモンスターボールに手をかけた。
「ネオロケッツ幹部『爆音のエコー』の実力、見せてやるぜ・・・!」
第12話に続く。
あとがきにかえて
今回登場したネオロケッツの幹部。彼等の名前はギリシャ神話から拝借しております。今回はエコーの解説を。ニンフ(いわゆる妖精の類)で、話し上手ですが少々おしゃべりでした。主神ゼウスが他のニンフに言い寄ろうとしたとき、彼の妻ヘラをごまかそうとしましたが見破られ、相手の喋った最後の言葉しか話せないという罰を受けてしまいました。木霊(こだま)の事をエコーというのはここからきています。
ちなみにニンフというのは女性ですが話の中のエコーは男にしています。女顔でおしゃべりの男・・・(笑)。
[一言感想]
お月見山には、ネオロケッツの姿が……!
しかし、いくら下っ端と言えど、少しは戦闘訓練を積んでたりしないのか……弱い(汗)。
とはいえ、幹部も出てきたとあっては油断できません。
果たして、その実力は……?