ハナダシティを目指し、オツキミ山の洞窟を通り抜けようとしていたサトリ達だが、その途中でこの山に大量にある月の石を使った兵器の開発を企むネオロケッツの計画を知る。
そしてそれを知ったサトリ達を無事には帰すまいと、ネオロケッツ幹部『爆音のエコー』がその牙を剥こうとしていた。
「秘密を知ったことを後悔させてやるぜ。」
「勝手にそっちが教えたんでしょ!」
サトリの言葉がエコーの胸にぐさりと突き刺さった。
「おっおのれぇっ!思い知らせてやるわっ!!おいっ下っ端2人!他の連中を集めろっ!!」
「はっはい!」
「では行ってきます!」
下っ端2人は走っていった。それを見ていたサトリ達が思わず笑い出す。
「あははっ!思い知らせてやるって言うからどうするかと思ったら・・・あははは・・・」
「にゃははっ!びびって損したにゃー。」
「フフ・・・1人でオレ達を倒す自信がないのか?」
コタロウも笑いを堪えている。笑い物になったエコーの怒りが頂点に達した。その顔はまるで噴火寸前のバクーダのようだ。
「違うわい!!お前達を倒した後袋叩きにするためだ!お前達などオレ1人で十分なんだよ!!」
第12話 オツキミ山での陰謀(後)
「サトリちゃん、こいつはオレが倒す。」
「じゃあもう1人はあたしが・・・」
2人はモンスターボールを手に取り開いた。
「行け、アーマルド!!」
「グォオーン!!」
「あなたの初バトルよっ、ニドラン!!」
「ニドニドッ!!」
「ぼっちゃま〜、あと小娘も、負けるにゃ〜(負けるな)!」
「ピッピー!」
「それならオレはこいつだ!行けっバクオング!!」
「グゥアァオォーン!!!」
天まで届かんばかりの大音響と共にその巨体は現れた。
「バクオング・・・騒音ポケモン、大声の振動で地震を起こす。体の穴から空気を激しく吸い込み始めたら大声を出す前触れ。」
「なんという大声だ・・・」
「耳がキーンとするわ・・・」
「さあ、まとめてかかってきな!」
「お前の相手はオレだと言ったはず、アーマルド、『原始の力』!!」
「グオォーン!!」
アーマルドの周りをオーラが包み、周囲の岩が持ち上がりバクオングに襲いかかった。
「バクオング、『超音波』で岩を破壊しろ!!」
超音波は人間の耳には聞こえないが岩が破壊されているのでそれが出ていることがわかる。一方サトリも攻撃を開始した。
「ニドラン、『体当たり』よ!」
「ニドーッ!」
ニドランはルージュラに体当たりを仕掛けようとした。と、今まで殆ど口を開かなかったナルシスがルージュラに指示を出した。
「ルージュラ、『リフレクター』。」
「やばーっ!ぶつかるっ、ニドラン、ストップして『毒針』!!」
サトリの急な指示でニドランは体を止め毒針を発射した。それはリフレクターに突き刺さったが突き抜けるには至らなかった。
「そんな・・・」
「醜いな。」
「えっ!?」
「その程度の小技ではリフレクターを破れぬことぐらいわかるはず。なのにお前は無駄に技を仕掛けた。その行いが醜いと言ったのだ。」
ナルシスの言葉にサトリはカチンときた。生まれて12年間、可愛いとか美少女とは言われたことはあっても醜いなどとは一度も言われたことはないのだ。
「むっ・・・かぁ〜!!今世紀最後のセクシー系美少女に向かって醜いですってぇ!!許せないわ、撤回しなさい!!」
が、ナルシスは冷たく言い返した。
「何を言うか、醜い者を醜いと言って何が悪い。そんな顔をすると更に醜いな。」
「むっきぃ〜〜〜っ!!」
「へっ、馬鹿な奴、戦わずして勝負は決まったな、そろそろこっちも決めてやるぜ!バクオング、あの技だ!チャージ開始!!」
サトリとナルシスのやりとりを見ていたエコーがサトリを小馬鹿にし、バクオングに指示を出した。バクオングが体の穴から空気を激しく吸い込む音が聞こえる。コタロウはその隙を見逃さなかった。「今だ!アーマルド、『破壊光線』!!」
「グオォッ!!」
アーマルドの額の模様から極太の光線が放たれバクオングの口の中を直撃した。バクオングは口から煙を出しながらその場に倒れた。「馬鹿なっ!?くそっ戻れバクオング!なんて奴だ・・・」
そこへ下っ端達が仲間を引き連れてやってきた。すぐさまエコーが彼等に指示を出す。
「待ったぞ、さぁこいつらを袋叩きにしろ!!」
「オーーッ!!」
「ゲッ、やばっ・・・」
下っ端達がサトリ達に襲いかかろうとしたその時、開いた天井部から1つの影が降りてきた。洞窟の入り口でサトリが見たポケモンだった。
「何だ、こいつは!?」
「見たことのないポケモンだっ!」
下っ端達が口々に言っているとそのポケモンは何かを教えるかのように鳴き声を発し、再び跳び去っていった。
「なんだ?」
次の瞬間、大地が激しく揺れ動いた。天井部が崩れていく。
「何!?どうなってるの!?」
サトリは慌てふためいている。
「考えるのは後だ、脱出しないと!」
その時、ピッピが大きな声を出した。
「ピーーーーッピーーーー!!」
すると、その声に呼ばれたのかどこからともなく大勢のピッピが現れた。そのピッピ達は月の石を囲んでなにやら念じ始めた。
「?」
誰もがそれを呆然と眺めていると月の石を中心にオーラが広がり、ネオロケッツを除く全員を包んだ。
「何という力だ、近寄れん・・・」
オーラのまぶしさにエコーが目を細めながら言った。
「仕方あるまい、引き上げよう。ルージュラ、『テレポート』。」
ナルシスがそう言うとルージュラは念を放ち、下っ端を含むネオロケッツ全員がその場から消えた。やがて揺れと天井部の崩壊が収まると皆を包んでいたオーラがゆっくりと消えていった。
「一体あの光は何だったの?」
「月の石のパワーにゃか?」
「こんなパワーが月の石にあったのか・・・?」
サトリ達はぼーっとしている。と、ピッピの1匹がサトリに近付いてきた。彼女達に助けを求めたピッピだ。
「あれ、あなたは・・・」
「ピッピ、ピピッ、ピー」
何かを言っているがサトリにはわからない。そこでとっさにニャースがそれを訳した。
「ありがとう、何かお礼は出来ないかしら、と言っているのじゃにゃ。」
「えっ・・・そう、じゃあ、あなたを旅に連れて行きたいんだけど、いいかしら?」
ピッピは仲間達の方を向いた。すると彼等が一斉に声を上げだした。
「ピッピ、ピピッ、ピピー!!」
「勇者だ、君が勇者だったんだ、言い伝えが現実になるんだ、バンザーイ!!と言っているにゃ。」
翻訳ぐらいしか見せ場のないニャースは張り切って訳している。
「?どういうこと?」
サトリは何が何だかわからない。
「ピー、ピッピ、ピピー、ピッピッピ、ピー!」
「『この山がかつてない危機に襲われたとき、2人の人間と1匹のポケモンが現れ危機を救わん、我が一族の勇者は彼等と共に旅立ち、世界の救世主とならん』という言い伝えがあると言っているにゃ。」
「つまりこの子があたし達と一緒に世界を救うって事?まっさかぁ・・・」
「この山にそんな言い伝えがあったとは・・・」
「まぁ、今は深く考えないでおこっと、よしっ、じゃああなたをゲットするわよ、行けっモンスターボール!」
モンスターボールは正確に命中し、ピッピが中に収まった。キャプチャーマーカーの赤い光がすぐに青く変わる。
「よーしっ、ピッピ、ゲットだよっ!!ん?」
別のピッピが現れ、サトリに小さな石を差し出した。それは月の石だった。紐が付けられておりペンダントのようになっている。が、その紐は短くてサトリには着けられない。ポケモン用のようだ。
「ピッピ、ピー、ピピピ。」
「これはお守りじゃそうじゃにゃ。勇者の首に下げてくださいとにゃ。」
「そっか・・・わかったわ。ありがとう、さぁ、そろそろ行きましょうか。」
「ああ、だがまた奴らが来たら君たちだけで大丈夫かい?」
コタロウがピッピ達に尋ねた。
「ピッピ、ピピピ、ピッピ、ピー。」
「大丈夫です、勇者が戻るまでここは我々が守ります、とにゃ。」
「そうか、なら安心だ。君たちも立派な勇者だね。」
「ありがとう、じゃあ、またね!」
サトリ達はその場を後にした。目指すハナダシティはもうすぐだ。
その頃、ネオロケッツ本部では・・・
「何、オツキミ山での計画に邪魔が入り失敗しただと・・・エコーよ、まことか。」
厚いカーテン越しに重い声が響く。
「はっ、見知らぬ男と小娘、それに人語を解するニャースが・・・」
「まあ良い、採取した分だけで今は十分だ。」
「首領様、私の処罰は・・・」
「僅かにしろ月の石を採取したことに免じて今回の失敗は不問に処す。もう下がって良いぞ。」
「はっ・・・それでは失礼いたします。」
エコーは首領の間を後にした。
(あいつら・・・もし今度会うようなことがあったらその時こそは倒してやる・・・だがあの時現れた白いポケモンは一体何だったのだ・・・あれが何かを教えるように鳴き声を発した直後に地震が起こったが、まさか・・・?)
第13話に続く。
あとがきにかえて(長いです)
今回は、ナルシスについて説明します。
ナルシス(ナルシサス、ナルキッソスともいう)はとても美しい青年でしたが、女性には全く興味を示しませんでした。ある日、森の中でエコーと会いましたが、ヘラの呪いを受けていたエコーは彼の言葉をそのまま返すことしか出来ませんでした。自分が馬鹿にされたと思った彼はエコーを手酷く追い返します。エコーは悲しむあまり洞窟に閉じこもってしまい、やがては声だけの存在と化してしまいました。
他人を思いやる気持ちを持たないナルシスは復讐の女神ネメシスの怒りを買い、自分だけを愛する呪いをかけられました。やがて泉で水を飲もうとした彼は水面に映った自分の姿に恋をしてしまったのです。彼はその場から動けずそのまま死んでしまいました。
その場には美しい水仙の花が咲いたといわれています。
ナルシスト(自己陶酔者)、ナルシサス(水仙の学名)という言葉は彼の名前から来ています。
・・・彼等2人にこんな関係があったんですね(話の中ではそんな設定ないけど(笑))。
[一言感想]
突然現れた白いポケモンが、今後を暗示してます。
それにしても、結果的にはサトリはナルシスに完敗……戦況的にも言葉的にも。
次に会うまでに、もっと腕を上げなければなりませんね。
さて、次回辺りで帰郷のようです。