セキエイ高原、ポケモンリーグカントー支部、そこに数多くの記者が集まっていた。今日ここで支部長が重大な発表をするというのだ。
「おぉ、支部長が現れたぞ!」
「今日の発表とは一体何なのです!?」
記者達は押し合いへし合いマイクを支部長に向ける。支部長は両手を横に広げ、高らかに宣言した。
「我々ポケモンリーグカントー支部は、今日よりポケモンリーグ協会から独立する事を宣言します!!」
一瞬全ての者が沈黙した。支部長はゆっくりと語りだした。
「今、このカントーにはネオロケッツと名乗る邪悪の輩(やから)がのさばっています。ですが協会は何の行動も起こそうとしません。そこで私は考えました。協会が何もしない以上、我等の力でネオロケッツと戦っていく事を。カントー全体で力を合わせるのです!!」
その場が一瞬ざわついた。支部長は仮面の下で怪しい笑みを浮かべる。
「なんと・・・」
皆、唖然(あぜん)としている。支部長が再び口を開いた。
「全ての人々が心をひとつにし、ネオロケッツとの戦いに勝利するのです!カントーの平和を守るために!!・・・では、以上です。」
そう言うと支部長は奥の部屋へと入っていった。会場は興奮の渦に包まれている。
「なんという勇気ある決断だ!」
「我らも戦っていこう!」
その場には邪悪な気が立ちこめている。だがそれに気付く者は誰ひとりいなかった・・・。
第13話 帰ってきたハナダシティ
「見えてきた〜っ、ハナダシティよ!早く行きましょ!!」
「そんにゃにはしゃぐこともにゃかろうに。」
「無理もないさ、久しぶりに自分の住んでいる街に帰ってきたんだから。」
無理矢理連れて行かれてから1ヶ月とおよそ1週間、やっと帰ってきた・・・サトリは嬉しくてたまらない。
(ママ、どんな顔するかな〜。そうだ、あれを買っていこう!)
サトリは走り出した。コタロウ達も慌てて追いかける。
「おーい、どうしたんだ?」
「わからにゃい娘じゃにゃ〜・・・」
ハナダシティに入った。サトリは走りながら辺りを見回す。
「えっと・・・そうだ、あそこだ!」
サトリは『ハナダ堂』と看板に書かれた店を見つけそこに入った。「すいませーん、カステラくださーい!」
「おっ、その声はサトリちゃん!久しぶりだねぇ。」
店のおじさんはサトリとは顔見知りのようだ。そこへコタロウ達が店へ入ってきた。
「サトリちゃん、どうしてここへ?」
「お菓子の店にゃ?」
「あっ、コタロウさん。ここのカステラ、凄く美味しいのよ。文○堂のよりも。あたしもママも大好きなんだ。買っていこうと思って。」
「ん〜?サトリちゃん、その兄ちゃんは誰だい?旦那様とか?」
おじさんがニヤニヤしながら言った。サトリとコタロウの顔が赤くなる。
「え、え・・・その・・・」
「似合いの夫婦じゃねーか、よーし、カステラ一個おまけでつけとくぜ!」
「あ、ああー・・・ありがとう、じゃあまた・・・」
サトリは体中から湯気を出しながら店を出た。
「お、おーい・・・待ってくれよ。」
コタロウもサトリを追って店を出ていく。
「若いって素晴らしいねぇ・・・」
2人を見送りながらおじさんは呟いた。
「ぼっちゃま・・・」
「ん?誰だおめえ?」
「わしはニャースじゃにゃ!!」
「見りゃあわかるわい!そうだ丁度いい、お前うちの招き猫になれ!」
「えっそんにゃ・・・ぎゃにゃ〜〜〜っ!!!」
“以上、ポケモンリーグカントー支部前からお送りしました。”
「支部長・・・どうしちゃったのかしら・・・」
ハナダジム内の一室でテレビを見ながらサトミは呟いた。その時ドアの方で呼び鈴が鳴った。
「はいはーい、今行きまーす・・・誰かしら?」
サトミがドアを開けるとそこにいたのは自分の愛する娘と自分好みの青年だった。
「ママ、ただいま・・・。」
「こんにちは、サトミさん、お久しぶりです。」
「サ、サトリ!おかえり!!よく帰ってきたわね・・・」
サトミは娘の体を抱きしめた。その直後後ろの青年の姿を見た。
「そっちの好青年は・・・コタロウ・・・さん?久しぶりねー、一体どうして2人が?まあ、上がって上がって。」
2人はサトミの後について部屋の中に入った。
「あっ、そうだわママ、これ買ってきたから後で食べましょ。」
「わぁお!カステラじゃないのぉ!しかもハナダ堂の!ありがとー!!」
サトミはまるで子どものように飛び跳ねて喜んだ。サトリが恥ずかしそうに苦笑いを浮かべる。
「ママ・・・いい年して飛び跳ねるのはやめて・・・」
「いいじゃないの、喜びを体で表すぐらい!」
彼女は子どもの純粋さ(?)を持った大人のようだ。
「そういえば、少し前にマサラタウンから来たっていう子とバトルしたわ。2人。カオル君っていう子と・・・もう1人は女の子で名前がちょっとエッチな響きの・・・えっと・・・」
「エッチな響きって・・・もしかしてアンちゃん?」
サトリは『エッチ』という言葉に反応して顔を赤くしつつ母の忘れていた少女の名を呼んだ。
「そう、そうだったわ、アンちゃん!知ってるの?」
「知ってるも何も、その2人はあたしと同じ日にマサラタウンを旅立ったのよ。」
「そうだったの!」
「その2人も老師のジムで修業したのかい?」
「ええ。」
サトリは何故か照れくさそうに顔を縦に振った。
「じゃああなたはなんで他の2人より送れてきたの?」
「それは色々あって・・・ねぇ、コタロウさん?」
「ああ。」
「えーッ、気になるーッ、教えて教えてぇ〜。」
サトミのおねだり攻撃!サトリは恥ずかしそうに顔を赤くした。
「恥ずかしいじゃないの!わかった!教えるから!!」
誕生日の旅立ち、朝寝坊、おじいちゃんからのプレゼント、ポケモン図鑑、オニスズメの襲撃、コタロウさんとの出会い・・・
ネオロケッツ、ニドラン、ポケモンキラー、ママになった、ニビジム戦、オツキミ山、謎のポケモン・・・
「・・・と、いうわけで2人より遅れていたの。」
「ふぅん、あなたも色々と大変ねぇ。その年でママなんて・・・ププッ」
「笑い事じゃないのよっ!!」
「ごめんゴメン御免・・・」
娘の怒鳴り声にサトミは恥ずかしそうに頭をかきながら舌をペロッと出した。
「そうだわ、そっちの方で何か変わったことは?」
「・・・さっきね、ニュースでやってたんだけど、ポケモンリーグカントー支部長が協会から独立すると宣言したの。」
サトミの顔が真剣そのものに変わった。
「えっ!?」
「何だって!?」
驚く2人を見つめながらサトミは続けた。さっきまでの彼女とはまるで別人である。
「ネオロケッツに対して何の行動も起こさない協会から抜けてカントー支部だけでネオロケッツと戦っていくためですって。」
「本当にそれだけが目的なのかしら?別の意図があるのかも・・・」
サトリが腕組みをしながら答える。
「奴らと戦うためだけなら独立する必要なんてないはずだし。」
「いや、ポケモンリーグの支部は協会からの指示がなければ公に活動をすることはできないんだよ。」
コタロウが言った。サトミも続ける。
「そう、でも脱退してしまえばそれができる。それだけじゃない、その気になればその地方を『支配』することだって可能になるのよ。」
「支配・・・」
「だからそのような事がないように支部長には優れた人格者が選ばれるのよ。とにかく、一仕事終えたら支部長に会いに行くわ。真意を聞き出すの。」
「一仕事?」
サトリが首を傾げながら聞くとサトミはにやーっとしながら言った。
「決まってるじゃない、あなたのジム戦よ。手加減しないからね。」
「そうだったわね、負けないわよ!」
「でも長旅で疲れてるでしょ、今日はゆっくり休みなさい。」
「はーい。あっ、もうこんな時間だわ、お風呂入りたいなー。」
時計は夕方6時をまわっていた。
「あら本当、お風呂は沸かしておくわね。そうだわ、お夕飯はサトリの好きなの作ってあげる、何がいい?」
「そうね、カレーがいい。」
「ハイハイ、丁度材料揃ってるし、期待しててね。あっ、サトリが無事に帰ってきた事おじいちゃんに連絡しなきゃ。」
親子の言葉のやりとりを見ながらコタロウは何かを思っていた。
(親子か・・・いいもんだな。オレは・・・ !!そういえばニャース、すっかり忘れてた・・・どこにいるんだ?)
一方その頃、ニャースは・・・
「ぼっちゃま〜・・・助けてくだされにゃ〜・・・」
「こらーっ!なってねえぞ!!腰を使え腰をぉっ!!」
招き猫になるための特訓を受けていた・・・。
第14話に続く
あとがきにかえて(殆ど私事)
サトミは料理が上手です。ですが彼女の母は上手ではありませんでした。そして父方の祖母は料理が上手でした。サトミの料理の上手さは祖母からの遺伝となります。これを隔世遺伝といいます。ボクの家族にも思い当たることが・・・母方の祖父は英語がペラペラだったと母が話してくれたことがあります。そしてボクの妹たちはペラペラとまではいきませんが英語が大得意。これも隔世遺伝の成せる業か・・・?いや、努力かも・・・。
[一言感想]
僕は英語が完全崩壊しております(ぇ)。
それはさておき、カントーポケモンリーグがポケモン協会から独立ということですが……。
何やら不穏な空気を感じますし、サトミさんがうまく調べてくれることを期待するばかりです。
久しぶりに帰郷したサトリは、いきなりコタロウを旦那様と認定されてしまいましたが、はてさて。
ニャースは相変わらず災難でした(苦笑)。