ハナダジム戦で母、サトミに敗れたサトリは修業をすることになった。
「コタロウさーん、いくわよーっ」
「わかった、頼むぞハガネール。」
「ウォオーン」
コタロウはサトリの手伝いをしているのだ。
「ゼニガメ、『水鉄砲』、ポッポは『風起こし』!」
「ゼニーッ」
「ポポーッ」
水鉄砲が風の渦に巻き込まれて小さな水竜巻となった。
「ハガネール、『砂嵐』。」
ハガネールの体が周囲の砂を巻き上げ砂嵐を起こす。水竜巻はそれに全て吸収されてしまった。
「まだまだだわ・・・」
第16話 海の宝石
さて、サトリ達が今いる場所について説明しておこう。ハナダシティの北部に位置する岬の海岸である。海岸といっても海の家はない。観光客も殆ど訪れない淋しい場所である。
「ちょっと一休みしましょ・・・あっ綺麗な夕焼け、・・・変わってないなー、ここ・・・」
「前にもこの場所に来たことがあるの?」
コタロウが尋ねた。サトリは砂浜にしゃがみながら言った。
「うん。昔ママに怒られたときはよくここに来て海の向こうを眺めてたの。ここから見える夕陽、凄く好きなんだ。」
「そうだったのか・・・ん?何か海の中で光っていないか?」
コタロウが海を指差して言った。海の中に数多くの赤い光が点滅している。
「うん、何だろう、行ってみましょう。」
とても勇気のある女の子である・・・。
海の中で光っていたのは大量のヒトデマンのコアだった。サトリは図鑑をそのうちの1体にかざした。
「ヒトデマン・・・星形ポケモン。体の中心部にあるコアが残っている限りどんなに細かくちぎられても再生できる。」
「へぇ・・・結構凄いポケモンなのね、能力も凄いけどこの数も凄い・・・」
「確かに。ヒトデマンは夕方から夜にかけて集団になってコアを光らせることは聞いたことがあるけどこの数は普通じゃない。」
コタロウの言う通りこれは普通ではない。このヒトデマンの集団は恐らく1万体を超えているだろう。
「あっ、見て!あそこの光は他のと違う!!」
サトリが奥の方を指差して叫んだ。その先には他のヒトデマンとは明らかに違う七色の光があった。
「あれはスターミーか!?」
「えっ?」
サトリは図鑑を名前入力モードにして検索してみた。
「スターミー・・・謎のポケモン。ヒトデマンの進化形だが詳しい生態は不明。」
「なるほど。で、あいつがこの集まりのボスなのかな?」
「恐らくそうだろう。」
「よーし、じゃあゲットしてくる!」
そう言うとサトリは海に向かって走っていく。
「えっ、サトリちゃん・・・どうやってあそこまで・・・」
「頼むわ、ゼニガメっ!!」
「ゼニゼニッ!」
サトリはゼニガメを海の上に出し、その背にうつ伏せに乗った。
「行くわよーっ!」
ボディボードのように海の上を渡っていくサトリとゼニガメ。
「スターミー!勝負!!」
サトリはポッポを出した。
「『風起こし』!!」
「ポポーッ!」
ポッポの起こした風にスターミーは一瞬ひるんだように見えた。
(よしっ!ポッポは夜になったら動きが鈍る、日が沈むまでに勝負をつけるわ、短期決戦よ!!)
「続けて『翼で打つ』のよ!」
ポッポがスターミーに向かっていく。と、スターミーのコアから3つのエネルギー球が発射された。色はそれぞれ赤、青、黄色である。
まずは赤の球が火の玉となりポッポに襲いかかる。
「まずいっ、よけてーっ!!」
ポッポは間一髪かわしたが続けて青の球が凍気となり黄色い球は電気を帯びてポッポに向かっていく。火の玉をよけた直後で隙だらけのポッポに2つの球は命中した。
「ああっ、ポッポ!」
「あの技は『トライアタック』か!」
トライアタックとは3つの属性エネルギーを撃ち出す技だ。通常は3つ同時に撃ち出されるがエスパーの力を持つスターミーは3つを別々にコントロールすることが出来るのだ。
「ポッポ!」
ポッポは大ダメージを負ったもののまだ羽ばたいていた。
「戻ってポッポ!」
サトリはポッポをモンスターボールに戻そうとした。が、ポッポは首を横に振っている。サトリはふっとニビジム戦を思い出した。勢いが落ちていたとはいえイワークの強烈な体当たりにも耐えたポッポである。タフネスは人・・・い、いやポケ一倍あるのだ。
「このままやれるの?」
ポッポは軽くうなずくとスターミーの方へ向き直った。次の瞬間、ポッポの体が輝きだした。その輝きの中でポッポの体が大きくなっていく。
「ポッポ、まさか・・・」
輝きが途切れ、体が一回りも二回りも大きくなり、顔つきも凛々しく(りりしく)なったポッポがそこにいた。ピジョンだ。
「進化した・・・ポッポが・・・」
「ピジョーッ!!」
「よーしっ、ピジョン、『突進』よ!」
ピジョンはポッポの時とは比較にならないほどのスピードでスターミーに向かっていく。対するスターミーも再びトライアタックを放つ。が、ピジョンは全てのエネルギー球を難なくかわしていく。
「凄い・・・これが進化したことによるパワーアップ・・・」
驚くサトリにコタロウが叫ぶ。
「スターミーのエネルギーの源はコアだ!コアを狙って攻撃するんだ!!」
「わかったわ、ピジョン!コアを狙うのよ!!」
「ピジョーッ!!」
ピジョンの突進がスターミーのコアに炸裂し、ひびが入った。
「チャンス!行けぇっモンスターボール!!」
サトリの投げたモンスターボールがスターミーのコアに命中し、スターミーが中に吸い込まれる。海に落下するボールの中でスターミーは必死にもがいているがボールが海の上に着水すると同時にキャプチャーマーカーの光が赤から青に変わった。
「やった!」
サトリはボールを海から拾い上げ決め台詞を言った。
「スターミー、ゲットだよ!」
「ふうぅっ・・・お腹が痛い・・・」
「大丈夫かい?」
うつ伏せのままずっとゼニガメの背に乗っていたため腹が押されていたのが原因である。
「大丈夫!・・・だけど服もびしょびしょ。でもポッポが進化したし、スターミーもゲットしたし、よしとしましょ。それにしてもなんであんなにいたのかしら・・・」
サトリは首を傾げた。
「ポケモンが時々大量発生することがあるというのは聞いたことがあるけれど・・・」
夕陽は完全に沈み、夜になっていた。ヒトデマン達のコアから放たれる赤い光が海の奥の方へ消えていくのがわかる。
「海に帰っていくのか・・・」
「綺麗・・・」
2人は思わず見とれた。光の最後の1つが見えなくなるまでずっと海を見つめていた。
「・・・そろそろ帰ろっか。」
「そうだね。おっと、風邪をひかないようにオレの上着を着なよ。」
コタロウは上着を脱いでサトリに渡した。
「えっ・・・ありがとう。コタロウさんは寒くない?」
「大丈夫。さっ、帰ろうぜ。」
2人はジムへの道を手を繋ぎ(つなぎ)ながら歩いていった。サトリの胸は高鳴っていた。
(コタロウさんの手・・・大きくて凄く暖かい・・・神さま、どうかしばらく時を止めて・・・少しでも長くコタロウさんと手を繋いでいたいから・・・)
同じ頃、ポケモンリーグカントー支部近くの宿泊施設にサトミはいた。
(支部長に会うための申請は済ませたわ、待っていなさい・・・)
一方、支部ビルでは・・・
「何、ハナダシティのジムリーダーが私と直に会って話をしたいだと・・・?」
「はっ、いかが致しましょう?」
「数日中には返事をすると伝えよ。下がれ。」
「はっ、かしこまりました。では・・・」
支部員は一礼すると支部長室を後にした。支部長は仮面の下で得意の怪しい笑みを浮かべている。
(フッ・・・ジムリーダー全員に招集をかけようと思っていたがその前に一足早くやってくる者がいたとは・・・しかもマサラタウンの老師の娘。油断は禁物だ・・・)
第17話に続く。
あとがきにかえて
生物の異常繁殖や大量発生、謎行動の原因はいろいろ。その中のひとつに「何か大きな天災(もしくは人災?)の前触れ」があります。動物は人間よりも早く危険を察知できるといいます。あの阪神淡路大震災の直前にもハムスターをはじめとする動物たちの奇妙な行動があったとか。備えあれば憂いなし。皆さん非常時の備えはきちんとしておきましょう(何)。あ、ボクもしておこう・・・。
[一言感想]
ハナダの岬といえばデートスポットですが、もしかしてヒトデマン達は団体デートしてたんじゃ(ぇ)。
でもあいつら、性別無いんだっけ……いや、あるけど判明してないだけかも?
いずれにせよポッポが進化し、スターミーをゲットし、コタロウとも手をつないで(それ関係あるのか?)戦力増強!
母娘対決のリベンジマッチも近そうです。
一方でサトミは、徐々に怪しい支部長に迫りつつあるようですが……?