マサラタウンジム、老師の部屋−そこにあるのはベッド、衣類を入れるためのタンス、そしてデスクの上にパソコン一台である。意外と簡素な部屋なのだ。そのパソコンにたった今メールが届いた。


“メールが来たヨ、メールが来たヨ”


パソコンがメール着信を知らせる言葉を連呼している。だが部屋の主は不在の模様、言葉を10回繰り返すと声は止んだ。
15分程して、部屋の主、老師が戻ってきた。50年以上の相棒、老ピカチュウを連れて。
「今日の挑戦者は手強かったの。でもいい勝負じゃった。若返るようじゃ。」
「ピガ、ピガ・・・ピ?ピガピ、ピーガッヂュウ。」
メールが届いている事に気付いたのはピカチュウだった。
「ん?どうしたピカチュウ?おぉメールか、一体どこから・・・!」
差出人の欄を見て老師の顔つきが変わった。
「ポケモンリーグ・・・カントー支部・・・5日の朝までにカントーのジムリーダーは全員支部に集まるように・・・か。」
「ピガ・・・」
そして、5日の朝がやってきた・・・。

 

 

 

第17話 集え!ジムリーダー

 

 

 

その日、一番に支部にいたのはハナダジムのサトミだった。それもそのはず、彼女は支部長に会って直に話をするために数日前からここにいたのだから。もちろん彼女にもジムリーダー集合の知らせは耳に入っていた。
「なんてこと・・・1対1の話がしたかったのに・・・こうなったら集まる前に・・・!」
サトミは支部ビルの中へ駆け込んだ。目指すは支部長室である。支部員が彼女を止めようとする。その支部員の目を見てサトミははっとした。その目は虚ろ(うつろ)で光がなかったのだ。
「これは一体!?考えてる場合じゃないわ!シャワーズ!」
「シャワァ」
「『半分溶ける』のよ!」
シャワーズは体を半液体にして板状に広がった。サトミがそれに飛び乗るとシャワーズはスケートボードのように高速で前進した。
「よしっ、振り切ったわ!」
「シャワァ」






サトミは支部長室に到着した。ドアノブに手をかけ回して押すとドアが開いた。鍵がかけられていなかったのだ。そして目の前には漆黒の仮面を着けた支部長が座っていた。
「・・・入るときはノックぐらいしてもらいたいな。」
「あら失礼、不用心な支部長さん?」
「何故1人でここまで来た。話すことがあるならジムリーダー達が集まってからにするのだな。」
「どうしても確かめたいことがあったの。パパの良きライバルだったあなたは何処へ行ったの?支部長、いえ・・・」
サトミが言い終わる前に支部長は言い放った。
「そんなことなど忘れたわ。まあいい、できればジムリーダーはこうしたくはなかったが仕方あるまい。いでよサマヨール!」
黒い光と共にサマヨールが出現した。
「その光は、パパに聞いたことがあるわ、確かダークボール!何故あなたがそんな物を・・・!」
「そんなことはどうでも良い!さあ、こいつの目をよく見るのだ・・・」
サマヨールの目が妖しく輝きだした・・・。






その頃、サトリの背筋に悪寒が走った。


(えっ・・・何?この感じ・・・まさか、ママの身に何か・・・)
「どうしたんだ?」
コタロウが尋ねる。サトリは一瞬はっとしたが首を横に振った。
「ううん、何でもないよ。早く今日の修業始めましょう。」
「たのもーっ!」
その時、ジムの入り口から声が聞こえた。






「フッ・・・もうお前に自分の意識はない。私の命ずるままに動くのだ。まずは・・・むっ!?」
サトミの前に水蛇のようなポケモンがいる。その体は光の球に包まれていた。サトミは笑顔で口を開いた。
「残念でした、あたしの意識はこの通りしっかりと残っているわよ。」
「そのポケモンは・・・ミロカロス!そうか、そいつの『ミラーコート』で術を跳ね返したのか・・・しかし何故私が術をかけようとしたことがわかった!」
支部長は机を両手の平でバンと叩き椅子から立ち上がった。サトミは彼の質問に正直に答えた。
「サマヨールが相手を操れる事は有名。しかもさっき目が虚ろな支部員がいた・・・あの人達もサマヨールで操っていたんでしょう?」
図星のようだ。支部長は冷や汗を浮かべている。もちろん仮面のせいで見えないが。
「さぁ、仮面を取って顔を見せてよ、悪に歪んだ顔をっ・・・!?」
次の瞬間、ミロカロスの顔が何かに殴りつけられた。だが誰も一歩も動いていない。
「何が起こったの!?」
「気付かなかったか、ならばもう一度見せてやろう。今度は見逃さぬよう目をよく見開くが良い!」
支部長の声と同時にサマヨールが右手を握り拳にして前に繰り出した。するとさっきのようにミロカロスの顔が何かに殴りつけられたのだ。サトミは唖然とした。
「これぞ『バニシングフィスト』。敵に近付くことなく一撃を加えられるのだ。」
「くっ・・・だったら攻撃できなくすればいいのよ・・・ミロカロス・・・『冷凍ビーム』!」
ミロカロスの口元から発射された冷気の帯がサマヨールを直撃し全身を凍らせた。
「続けて『アイアンテール』!!」
サマヨールの氷漬けの体を鋼の硬度を得た尻尾が直撃、粉々に打ち砕いた。
「ゴーストポケモンなら粉々になっても命に別状はないでしょう。でも勝負は決まりよ。」
「フッ・・・まだ戦うことは可能だが今回は君の勝ちということにしておこう、戻れサマヨール。」
「えっ・・・!!戻ってミロカロス!」
2人はポケモンを戻した。ドアの外から人の気配がしたからだ。その気配の主がドアをノックし入ってきた。
「Excuse me!・・・オゥ、先客がいたか。」
大柄な男だ。体は筋肉質で迷彩服を着ている。
「あなたは・・・クチバシティのジムリーダー、ガイル!」
「オゥ、サトミサン、相変わらずbeautifulね!」
「まあ、あなたも相変わらず正直ですことv」
サトミは嬉しそうにブリッ子ポーズをした。と、別の方向から少女のような声が聞こえてきたではないか。
「おばさんがそんなポーズしたって似合わないわ。」
その言葉にカチンときたサトミは声の聞こえた方向に怒鳴りつけた。
「だぁれがおばさんよ!あたしはまだ28よっ!大人のお姉さん!お・ね・え・さ・ん!!」
その顔はまるで夜叉のようであった。一方、声の主はクスクスと笑っている。
「いやーねえ、28なんて立派なおばさんよ、まして子持ちなら尚更(なおさら)のことv」
そう言うと声の主は音もなくドアから入ってきた。サトリと同い年くらいかもう少し上だろうか、それにしても短いスカートだ。股下1センチ・・・もなさそうだ。が、その中身はパンストでしっかり(?)ガードしている。それはともかく、彼女の足は床についていなかった。少し浮いていたのだ。
「オゥ、ユーはヤマブキシティのジムリーダー・・・」
「超能力少女、ナツミ!」
「これで3人・・・むっ・・・?」
ナツミと呼ばれた少女はチッチッチッと指を振った。といってもピッピの使う技ではない。
「超能力少女じゃなくてェ、超能力『美』少女なんだなvそこんとこわかるぅ?おばさんv」
「また・・・おばさんってェ〜・・・」
サトミの顔がまた夜叉になりかけたが、それをガイルが宥めた(なだめた)おかげでなんとか元に戻った。
「ところで今日は何のために呼んだのォ?早くしてよね、あたし午後から『腕輪物語』観に行くんだしぃ。」
ナツミは映画のチケットをヒラヒラさせながら言った。


(そうだ・・・あたしも終わったらひとまずハナダに戻ろう・・・)


サトミがそう思っていると支部長が話し始めた。
「マサラとニビのジムリーダーは都合により来られない。彼等を除く全てのジムリーダーが到着してから話す。それまで楽にして待っているが良い。」


(えっ・・・パパとジロウさんは来られない?どうして・・・)


「2人とも年寄りだしィ、ぎっくり腰にでもなってるんじゃないのォ?」
ナツミに父の悪口を言われたサトミはカチンときたがなんとか抑えた。が、はらわたは煮えくりかえりそうだ。


(この小娘〜・・・!)






「にゃっくしょん!・・・誰か噂してるのかにゃ〜・・・」
この噂が届いたのはぎっくり腰持ちのこの方。
「コラァ!さぼらずにやれぇ!」
「は、はいですにゃ〜・・・あたっ、ぎっくり腰じゃにゃ〜っ!!」
ハナダシティに間の抜けた声が響き渡った・・・。






第18話に続く。






あとがきにかえて
今回登場したナツミちゃんのように超能力者と呼ばれる人間は第6感が並みの人間に比べて優れているそうです。第6感というのは勘の働きとかをいいますが、通常それは男性よりも女性の方が優れているらしいです。ボクの下の妹も勘が鋭いけどもしかしてあいつは超能力者!?(おぃ) 数字選択式の宝くじを彼女の言った数字でやってみようかなという話が家族で持ち上がったり。どうでもいいけどボクの勘はかなり鈍いです。

 

[一言感想]

 僕も勘は鋭い方じゃないだろうなぁ。
 サトミと支部長のわずかな攻防の後、各地のジムリーダーが集まってきてしまいました。
 支部長はいったい何をたくらんでいるのでしょうか。
 そして、誰かに似たアメリカンやら、サトミさんを挑発するエスパー美少女まで。
 ジムリーダーであるということは、今後サトリが乗り越えていかなければならない壁となるのでしょうね。

 

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