支部長の話が始まった。手には黒真珠のようなモンスターボールが握られている。ダークボールとは別物のようだ。
「これから我がカントーのジムではこのモンスターボールの使用を義務づける。リーダーだけではない。門下生がいる場合は彼等にも使用してもらう。」
(趣味悪っ・・・)
サトミは心の中で呟いた。
(ダサッ・・・)
ナツミも心の中で呟いた。
(・・・きれいかも・・・)
レイカはちょっとだけ嬉しそうだ。
「ホワァイ、このような事を?」
ガイルが尋ねた。支部長がそれに答える。
「知っての通り我がカントー支部はポケモンリーグ協会から脱退した。新組織名は『ブラック・サン』。それはいずれ公にも発表しようと思う。そのボールは『ブラック・サン』の一員の証なのだ。」
(悪っぽい名前・・・)
サトミは再び心の中で呟いた。
(ダサすぎる・・・)
ナツミも再び心の中で呟いた。
(・・・格好いいかも・・・)
レイカはやはりちょっとだけ嬉しそうだ。
「隣の部屋に各ジムごとのボールが用意してある。持っていった者から帰ってよい。」
ジムリーダー達は口々に文句を言ったり面倒くさそうな顔をしながら隣の部屋へ向かった。だが2人だけ向かわない者がいた。超能力美少女、ナツミと霊と語る美少女、レイカである。
「な・・・何だ・・・2人とも!?」
第19話 無資格ジムリーダー
「行けっ、オレの2番手、バシャーモ!」
「バッシャーッ!!」
「バシャーモ・・・猛火ポケモン、戦いになると手首から灼熱の炎を吹き上げ勇敢に挑みかかる。」
「また見たことないポケモンか・・・ピッピ、『バブル光線』っ!!」
ピッピの指先から光る泡が多量に放たれ一直線にバシャーモに襲いかかる。
「バシャーモ、『火炎放射』!」
バシャーモは口から炎を吹き出す。炎と泡がぶつかろうとしたとき、泡の方が炎をよけてバシャーモの後ろに回り込んで背中に直撃した。
「やりぃ!」
「何だと・・・むっ、そうか、ピッピの『サイコキネシス』で泡の動きを操作したのか、だがこちらの攻撃もよけきれまい、ピッピは精神集中していたために隙だらけだ。」
「やばっ、ピッピ、よけてっ・・・」
ピッピは間一髪でかわしたが炎から吹き出す火の粉を受けてしまった。
「やるなっ、だが次の攻撃はよけられるか!?バシャーモ、『炎熱拳』だ!!」
バシャーモの両手が紅蓮の炎に包まれた。
「何だ、2人とも、早く隣の部屋にボールを取りに行かんか!」
「取りに行くけどォ、」
「・・・ちょっと気になることが・・・」
2人の美少女は支部長をキッと見つめている。羨ましいぞ支部長!(by作者)
「どーも、あんたの心の中が読めないのよねェ。」
「あたしも・・・あなたが誰だかわからない・・・」
(なっ・・・この2人を呼んだのは間違いだったか・・・!)
支部長は冷や汗を浮かべる。だが次の2人の言葉で胸をなで下ろした。
「まぁ、どーでもいいけどォ、じゃーねェ。」
「・・・ですがあなたにはあなたの考えがあるのですね・・・」
2人はそう言うと隣の部屋へ向かった。
(危ないところだった・・・あの2人の小娘、油断ならん奴よ・・・)
一方サトミはハナダシティへ向かっていた。
「何か嫌〜な予感がする・・・急いでペリッパー!」
「ペリーッ!」
「行けっ、バシャーモ!」
炎の拳を繰り出す度に火の玉が撃ち出されピッピに襲いかかる。
「ピッピ、この技よく見て!」
「ピーッ!」
ピッピの両手が炎に包まれる。だがその炎は小さく燻って(くすぶって)いて、すぐ消えてしまった。
「えっ!?」
驚くサトリにケンは言った。
「この技はホウエン地方にそびえる煙突山の火口で修業することによって体得したもの。そう簡単に真似は出来ないぜ。そしてこの火の玉は確実に相手を黒こげにする!」
「ピッピ、よけっ・・・間に合わない!『光の壁』!」
ピッピがバリアを張るが火の玉はそれを粉砕してピッピに命中した。ピッピはその瞬間こんがりと美味しそうに焼き上がった(おい)。
「ピッピ、戦闘不能、バシャーモの勝利!」
コタロウが今度はケン側のフラッグを挙げた。
「ピッピ・・・よく頑張ったね。ゆっくり休んで・・・これで1対1、あたしの2番手はこの子!行くのよスターミー!」
「ヘァーッ!」
「タイプの相性で来たか、だがそう上手くはいかないぜ。バシャーモ、もう一度『炎熱拳』!」
「バッシャーッ!!」
再びバシャーモの両手が炎に包まれ、その拳から無数の火の玉が撃ち出される。
「スターミーっ、火の玉1つひとつに向けて『水鉄砲』よ!」
スターミーの放った水が火の玉を1つずつ、だが確実に消火する。だがバシャーモも負けてはいない、拳を繰り出し、次々と火の玉を撃ち出す。連射速度はほぼ互角。先に気を抜いた方がダメージを負うだろう。と、バシャーモが攻撃をやめた。
「えっ、どうして・・・」
「よしっ、バシャーモ、ジャンプしろ!」
「バシャーッ!」
バシャーモのジャンプ力は通常30階建てのビルを跳び越えるほどである。この時のジャンプは勢いを弱めて跳び上がったのだ。
「こいつの炎熱拳にここまで対抗したポケモンは初めてだ。それに敬意を表して最大の技で決めてやろう、『煉獄焦熱砲』ー!!」
空中に跳び上がったバシャーモの両腕がいわゆる『かめはめ波』の構えをとり、手の中にエネルギーが集まっていく。その両腕の構えをずらしクロスした瞬間、極太の熱線が放出されスターミーを直撃、黒こげにした。スターミーはコアを上にしてその場に倒れた。「スターミー戦闘不能、バシャーモの勝利、よって勝者、挑戦者ケン!」
「そっ、そんなぁ〜っ!」
「よしっ、バッジゲットだ!」よくやったぞバシャーモ!」
「シャー!」
サトリはその場に沈んだ。本当に地面に沈んでいるように見えるのは目の錯覚である。と、スタジアムに入ってくる人物がいた。本当のジムリーダー、サトミである。
「マ、ママ!」
「ただいま・・・じゃないわよ!何やってんの!あなたジムリーダー資格持ってないでしょ!?」
それにはケンも驚いた。そんな事は聞いていないのだ。
「じゃあ、バッジは戴けないんですか!?」
「そうね、日を改めてまたあたしとバトルしてもらうことになるわ。」
「ちょっと待ってください。」
そこにコタロウが待ったをかけた。
「資格がなかったとはいえサトリちゃんのバトルはジムリーダーそのものでした。それに挑戦者のケン君も見事に勝ちました。ここは何とかできませんか?」
「う〜ん・・・」
サトミは腕を組んで考えている。
「でもあたしはそのバトル、見てないし・・・そうだわ!あの監視カメラに映ってるはず!」
ジムにはバトル中の不正や無断侵入者を監視するためのカメラが設置されているのだ。
「よしっ、見に行きましょう!」
「えー、バトルの映像を見せていただいた結果、挑戦者のケン君には特別にブルーバッジを授与します!はい、受け取って。」
「ありがとうございます。よし、ブルーバッジ、ゲットだ!」
ケンはブルーバッジを受け取ると高く掲げた。
「次は何処のジムへ?」
「ニビシティへ行こうと思っています。それでは!」
サトミの質問に答えるとケンは一礼してジムを後にした。
「よかった〜、もしママが帰ってこなかったらどうなってたのかなァ。」
サトリは気の抜けた声を発した。
「『よかった〜』じゃないわよ!何でバトルなんか引き受けたのよ!後でたっぷりお説教よ!!」
「そっそんなぁ〜、ママ許して〜・・・」
サトリはブリッ子ボイスで許しを請うがそんなもの母には通用しない。
「サトミさん抑えて、サトリちゃんだって・・・」
「コタロウさんは黙っててーっ!さぁお説教よっ!いらっしゃい!!」
サトミは夜叉の形相でコタロウを黙らせサトリを引きずっていった。
「たーーーすーーーけーーーてーーーっ」
サトリの声はハナダシティ全体には別に響かなかった。
第20話に続く。
あとがきにかえて
今回の挑戦者はホウエンから来たトレーナーですが、この小説の中にホウエンから来た人はあまり出しません。何故ってこの話が今のところカントーを舞台にしているからです。カントー出身の人の方が多く出会うはずですので。でも今回のように気が向いたらまた出すかもしれません。全てはボクの気の向きよう(ぉ)。
[一言感想]
やはりというか、サトリはお説教を受けることに……バトルには負けるし散々でしたね。
ケンはコタロウの計らいもあって、見事バッジを持ち帰れたようです。
で、支部長の考える新しい組織構成とはどのようなものなのか。
良からぬ方向に進もうとしていることは伺えますが。