「えっ?まだジム戦しないの?」
「うん、もう少し修業してからでいいかな?」
ハナダジムの親子の会話である。以前のバトルで娘のサトリは母のサトミに敗れた。パルシェンの硬い殻の前にサトリのゼニガメはどうすることもできなかったのだ。
(パルシェンのあの殻を破る方法はないかしら・・・)
そう、その方法が見つからなければまたパルシェンが出てきた時にはまた同じ負け方をしてしまうのだ。
「そうだわ、ポケモンゼミに行ってみたら?そこの人達とバトルすればいい修業になるかもよ?」
「ポケモンゼミ?」
ここで説明しよう。ポケモンゼミとはポケモントレーナーを育成する学校のようなものだ。卒業すればジム戦無しでポケモンリーグ地区大会の出場権が与えられる。なお、学校といっても学年制ではない。実力があればどんどん進級できる。早い人は1年経たないうちに卒業できるが遅ければ5年、6年経っても卒業できない。
「そうね、行ってみるわ。で、どこにあるの?」
「知らないの?小学校のすぐ裏よ。」
「えっ、あっ・・・そういえばそうだったわね、すっかり忘れてたわ。」
サトリはつい最近までポケモントレーナーになるつもりはなかったので小学校卒業後すぐにその存在を忘れていたのだ。
「じゃあ行ってきます。コタロウさんが帰ってきたら宜しく伝えておいて。」
「わかったわ、行ってらっしゃーいv」
第20話 サトリのゼミ見学
「わーっ、なつかしいなー。」
サトリは学校の裏手に回りながら呟いた。校舎、校庭、体育館。何も変わっていない。変わっているとすれば自分や友達がもう通っていないということだ。そうこうしているうちにゼミの入り口に着いた。
「失礼しまーす。」
サトリが言いながら呼び鈴を鳴らす。しばらくすると1人の男性が出てきた。
「こんにちはっ、、小学校の制服・・・ということはゼミ見学か!どうぞどうぞ。」
「えっ、そうじゃなくて・・・」
今サトリが着ている服は母からプレゼントされた旅する女の子のためのセクシー系の服ではなく前から着ていた小学校の頃の制服である。加えてサトリはスタイルこそ抜群だが童顔だ。見間違えるのも無理はない。
「よーし、まずは校舎案内だ。あ、私はこのポケモンゼミハナダ校の教頭です、宜しく。」
「あたしはサトリです、宜しく・・・じゃなくて!あたしはゼミ見学しに来たんじゃなくて・・・」
「さぁー、行きましょう!」
サトリが言い終えるより早く教頭は行ってしまった。あの分ではサトリの言ったことは全く耳に入っていないだろう。サトリは仕方なくついていくことにした。
「ここはコンピュータールームです。ポケモンの能力を数値化したデータや各地のジムリーダーのバトルデータがあり、シミュレーションバトルをすることも出来ます。トレーニングにもってこいで・・・」
教頭の説明が終わる前にサトリが言った。
「つまりはテレビゲームってことね。バトルデータだかダブルゼータだか知らないけど実際のバトルはゲームじゃないわ。データじゃ計れない能力がポケモンにはあるのよ。」
「ほぉ、いい事をおっしゃいますね。ですがデータも重要なことは確かですよ。では次はクラスルームを見ましょうか。」
教頭が歩き出す。サトリもそれについて行った。
クラスルームの後、図書室、食堂、宿舎などを見学したが、サトリは退屈でたまらない。
「ねえ、バトルはないの?ゲームじゃなくて本物のバトル!」
「はい、次はお待ちかねのバトルルームですよ。」
案内された部屋は他のどの教室よりも広かった。その中では多くのゼミ生がバトルをしている。
「今彼等がしているのは実技試験です。合格すれば進級できます。これはバッジ3つレベルの試験ですね。」
「あのねー、あたしはバトルを『見に来た』んじゃなくて『バトルしに』来たのー。早く気付いてよ。」
「何と、見学ではなかったのですか?」
「ずっと違うって行ってたでしょーっ!!」
教頭を怒鳴りつけるとサトリは試験を終えた生徒に話し掛けた。
「ねぇ、誰かあたしとバトルしない?」
生徒達は一瞬ちらっとサトリを見たがすぐにそっぽを向いた。
「何よ、やな感じ。」
「あれぇーっ、あんたサトリじゃないのーっ?」
別の方向から1人の少女がサトリに声をかけた。彼女はサトリに負けず劣らずスタイル抜群だ。
「その声・・・あんたはまさかっ!」
「そう、そのまさかー!今世紀『最初』のセクシー系美少女、ワカナ!」
「なんであんたがここにいるのよーっ・・・」
「あら、決まってるじゃない、ポケモンリーグ出場目指してここに通ってるのよ。ジムの子のくせにトレーナーになろうともしないあんたとは違うの。オホホホ・・・」
ワカナと呼ばれた少女は高飛車な態度でサトリを指差しながら言った。が、サトリも負けずに言い返す。
「ふーんだ、あたしもトレーナーになったのよ。マサラタウンのおじいちゃんのジムで修業してきたんだから!」
「へぇ、あの有名な老師のところでねー・・・よーし、だったらこのワカナちゃんが相手してあげてもよくってよ。あんた、ポケモンいくつ持ってるの?」
「6匹よっ!さぁ、やるならやりましょ!『タカビー系美少女』さん?」
サトリの言葉にワカナはカチンときた。
「ホ、ホホホ・・・『セクシー系美少女』よ!いいわ、フルバトルで勝負よ、教頭先生!審判お願いできるかしら?」
「し、しかしですね・・・」
言いかけたところでワカナの顔をチラッと見た。一見すると普通に微笑んでいるがその目がギラリと光っているのがわかった。
「わ、わかりました・・・しかしここでフルバトルというのもなんですからグラウンドの方へ移動しましょう・・・」
教頭はガタガタと震えながらバトルルームを後にした。
(ワカナ・・・色気だけが取り柄かと思ってたけど・・・やるじゃない。)
サトリはそんなことを思いながら教頭の案内でグラウンドへ向かった。
グラウンドでフルバトルが始まるという話は瞬く間にゼミ中に伝わりそのバトルを見ようとする生徒やワカナのファン達でグラウンドはバトルフィールドを除いて埋め尽くされた。なんと、次の時限に授業が入っている生徒もいるではないか。
「こらーっ、教室に戻らないかーっ!」
教師の叫び声は生徒達の歓声やワカナコールに打ち消された。
“えーっ、我らがアイドル、ワカナちゃんと彼女の元クラスメイト、サトリちゃんとのフルバトルが今まさに始まろうとしております!果たして勝つのはどちらかーっ!?”
いつの間にか実況席まで出来ていた。
「もちろん、ワカナーっ!!」
ファン軍団の叫び声も最高潮だ。サトリは少々呆れながら言った。
「なによ、この人達は・・・」
「あたしのファン達よ、あたしはゼミのアイドルなんだから!」
ワカナが得意げに言った。サトリはムスッとしている。
(ちょっと悔しいかも・・・まあいいわ、みんなの見てる前でこいつをやっつけてやるんだから・・・!)
“おーっ、2人が同時にモンスターボールに手をかけたあっ!!”
第21話に続く。
あとがきにかえて
なんだかんだでもう20話・・・早いものだなぁ・・・確か書き始めたのが今年(2003年)の2月か3月あたりだったっけかな。
思えば色々あったな、ネタが思いつかなかったり、ネタが思いつかなかったり、ネタが・・・(以下削除)
ですが、ポケFはまだまだ続きます。どうか気を長くしてお付き合いくださいませ。
あ、ちなみに今回登場のワカナちゃんは募集キャラではありませぬ。
[一言感想]
一度負けたものはそう容易く覆せるものでもなく、サトリはまだ再戦を保留にしたい様子。
確かに前回も負けちゃいましたからね。
そして今度の戦いは、今世紀……最初vs最後?
相手のテリトリー(?)だけあって、ワカナファンでいっぱいみたいです。
サトリにとっては精神的に不利かも知れません。
しかし、この戦いをキッカケに、新たな成長を得られる……のかも?