「こ、校長先生・・・」
教頭はガタガタと震えている。頭の中でどのように言い訳をしようか考えるが解雇を言い渡されるかもしれないという恐怖のせいで考えがまとまらない。
「教頭先生!!」
「は、はいっ!!」
校長の声に教頭は思わず背筋を伸ばした。次の言葉は解雇を言い渡すものだろうと思った。だが、その予想は見事に外れた。
「まさかフルバトルをしていたとは・・・何故呼んでくれなかったのかね?罰として・・・」
“あーっと校長先生乱入ーっ!果たして教頭先生の運命はーッ!?”
「・・・私に審判をやらせたまえ!こう見えても昔ポケモンリーグ所属の審判をしていたことがあるのだよ。」
「はっ・・・はいっ!!」
教頭はホッと胸を撫で下ろし、持っていたフラッグを校長に渡した。
“何とか教頭先生の首は繋がったーっ!!さて、バトルもいよいよ後半戦、3対2でワカナちゃんが少し優勢、さて両者次のポケモンはーッ!?」
第23話 フルバトル!サトリVSワカナ:3 ニドラン活躍
「やるわねサトリ、こんなやりがいのあるバトル初めてよ。」
「あたしもよワカナ。でもこのバトルはあたしが勝つわ!行って、ニドラン!」
「左前足に傷痕・・・?まあいいわ、行くのよラッタ!」
“さぁ、今度は地上型対決!サトリちゃんは何とか残りポケモンを同数に持ち込みたい、一方のワカナちゃんも勝利に王手をかけたいところ、さぁどうなる!?”
「ラッタ、『体当たり』!」
「ラタッ!」
「ニドラン、かわして「二度蹴り」!」
「ニドッ!!」
“おーっと、ニドラン♀、ラッタの体当たりを十分引き付けてからかわしたーっ!そしてすかさずジャンピングキックだぁーっ!!”
「よしっ!続けて2発目・・・」
サトリがいうより早くラッタの体が沈み、ニドランの2発目の蹴りは空を切った。
「隙あり!ラッタ、『尻尾の鞭』!」
ラッタが尻尾を激しく振り回し、それをニドランの体に打ち付ける。
“あーっとニドラン滅多打ちーっ!!”
「ニドラン、『見切って』『噛みつく』のよ!」
「ニドッ!」
ラッタの尻尾をかわし、ニドランはガブリと音を立ててその尻尾に噛みついた。
「ラ、ラターッ!!」
“おーっとラッタ、これは痛そうだ、のたうち回っているーッ!だがニドラン、まだラッタの尻尾に噛みついたまま離れないーっ!!”
「ラッタ!振り落とすのよ!」
だがラッタは痛みのせいでワカナの指示を聞ける状況ではない。ニドランがやっと離れたとき、噛みつかれた部分は真っ赤に腫れ上がっていた。
「今よニドラン、『ポイズンクロー』ーっ!!」
「ニィードォーッ!!」
“あーっと!ニドランの爪がラッタに炸裂ーっ!!ラッタは吹っ飛んだーっ!!”
吹っ飛ばされたラッタは地面に叩きつけられ気絶した。
「ラッタ戦闘不能、ニドラン♀の勝ち!」
教頭に代わって審判を務める校長がサトリ側のフラッグを挙げた。
“また並んだーっ!!これで残るポケモンは2対2だーっ!!”
「戻ってラッタ!次は・・・この子!行くのよモルフォン!」
巨大な蛾の姿をしたポケモンである。その羽からは鱗粉がキラキラと輝きながらこぼれ落ちている。
“あーっとワカナちゃん、毒を以て毒を制する作戦で来たかーっ!”
「確かにこの子は毒ポケモンだけど、こんな技も使えるのよ。モルフォン、『サイケ光線』!」
ゴルダックが使ったのと同じ光線技だ。不思議な光がニドランに迫る。
「ニドランかわしてっ!接近戦は無理か・・・だったら効き目は低いかもしれないけど、『毒針』よ!」
「ニドーッ!」
無数の毒針が発射され、モルフォンの羽に突き刺さった。
「よしっ!もう1回!」
“あーっとニドラン、毒針の連射だーっ!!モルフォンは持ちこたえられるかーっ!?”
「よーし今よ、とどめを・・・」
「甘いわね。」
サトリが言い終わる前にワカナが言った。その顔は微笑を浮かべている。
「何よ・・・えっまさか・・・」
モルフォンは全くの無傷だった。最初に刺さったはずの毒針すらないではないか。サトリもニドランも驚きを隠せない。
「そう、あなたが攻撃してたのは『影分身』で作られた残像よ。今度はこっちの番、モルフォン、もう一度『影分身』!」
“おーっと!モルフォンの分身が次々と生み出されニドランを囲んでいくーっ!何が始まるんだーっ!?”
ニドランは自分を囲んでいくモルフォンの集団に戸惑っている。
「ニドラーン!本物は1匹よーっ、惑わされちゃ駄目ーっ!」
「もう遅いわ!モルフォン、『体当たり』!」
ワカナの指示と同時にニドランの真後ろのモルフォンが目にも止まらぬ速さで体当たりをしかけ、また分身の中に戻っていった。
“これは凄い技!分身で敵を惑わしつつ隙をついて攻撃を加える。まさに攻防一体!!”
「ニドラン、『見切る』のよ!」
「遅いわっ!『体当たり』!」
今度は右側から体当たりが来た。ニドランは何とか見切って反撃に転じようとしたがあまりの速さのためモルフォンを捉えることが出来ない。
“あーっと!ニドラン万事休すかーっ!?”
「どうすればいいのよ・・・せめてモルフォンのスピードを下げげるか動きを止められれば・・・そうだわ!ニドラン!ジャンプして地面に向かって『二度蹴り』1発目よ!」
「!?何をするつもりなの!?はっ!!」
「こうするつもりよっ!」
ニドランのキックが地面に炸裂し、砂埃が周囲に巻き起こされた。
“おっ?何とモルフォンの動きが止まったーっ!!砂埃が目に入ってひるんだかーっ!?”
「くっ!これが狙いだったのね!」
ワカナの悔しそうな顔を見てサトリがニッコリ微笑んだ。
「その通りよ!動きが止まればこっちのもの!ニドラン、『二度蹴り』2発目ーっ!!」
「ニードォーッ!!」
“モルフォンの腹にニドランの強烈なキックが炸裂ーっ!これは決まったかーっ!?”
倒れたモルフォンは起きあがろうとするもやはりニドランのキックがこたえたのか気を失った。
「モルフォン、戦闘不能。ニドランの勝ち!」
“あーっと!先に王手をかけたのはサトリちゃんだーっ!果たしてこのまま逃げ切れるか、それともまたワカナちゃんが追いつくかーっ!?”
「フッ・・・フフフ・・・」
ワカナの笑いにサトリはぎょっとした。
「な、何よ、どうしたのよワカナ?」
「戻ってモルフォン。・・・本当にやるわねサトリ・・・あなたが相手ならこの子も満足できるわ・・・」
そう言いながらワカナが次のボールに手をかけた。
“ま、まさかワカナちゃん・・・自分の最強のポケモンを出すのでありましょうか・・・”
「えっ・・・?」
サトリは思わず後ずさりした。ワカナはすでにボールを構えている。
「行くのよ、エビワラー!」
「エビーッ!!」
“出たーっ!ワカナちゃん最強のポケモン、エビワラーっ!!サトリちゃん、どう戦うっ!?”
「ニドラン・・・ひとまず戻っ・・・」
サトリがモンスターボールを構えてニドランを戻そうとした。
「エビワラー、『追い打ち』!」
エビワラーがニドランに向けてダッシュで近付き拳を繰り出した。
「えっ!?」
エビワラーの拳は空を切ったが、かすりもしていないのにニドランの右髭がはらりと落ちた。
第24話に続く。
あとがきにかえて
このシリーズは本当は3回で終わらせる予定だったのですがフルバトルのスケールが予想以上に大きかったため急遽4回にしました。てなわけで次回こそは決着がつきます。それにしてもフルバトルって難しいな・・・書いてて楽しいけど。そうそう、ラストの方の「拳」は「けん」と読んでくださいね(何)。
[一言感想]
確かに6匹全てのポケモンに見せ場を作ろうとすると、フルバトルはかなり大変です。
ある程度は「また今度活躍させてやるからなー」と、活躍シーンを切ってしまうのも必要な場合があるかも(ぇ)。
校長先生の登場でしたが、教頭はひとまず助かったようです。
でも個人的にはむしろ、実況の理解力に注目してしまいました(何)。